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2012年4月22日 (日)

J.S.バッハ 管弦楽組曲全集 BWV1066~1069 名盤

バッハの「管弦楽組曲」は全部で4曲存在しますが、この「管弦楽組曲」という呼び名は元々は使われていませんでした。単に「序曲(Overtures)」とされていただけです。4曲とも、その「序曲」で開始され、そのあとに「クーラント」だの「ガヴォット」だの「メヌエット」だのと、短い曲が幾つか自由に並べられています。けれども、どの「序曲」も長大で、組曲全体の長さの約三分の一から半分をも占めますので、後ろに続く曲はなんだかおまけのようです。

これらの中で最も頻繁に単独でも演奏されるのは第3番の2曲目「Air」で、一般に「G線上のアリア」と呼ばれる曲です。この曲は本当に敬虔な美しさを湛えた曲ですし、その「序曲」も輝かしい曲で非常に良いのですが、全体の出来栄えとなると、やはり第2番が群を抜いていると思います。荘厳な序曲はまるで「マタイ受難曲」を想わせますし、ロンド、サラバンド、ブーレ―、ポロネーズ、メヌエット、バディネリーと、どれも名曲ぞろいです。個人的には終曲の短い「バディネリー」が大好きで、子供のころにラジオから流れたこの曲に凄く惹きつけられた記憶が有ります。

第2番に次いでは、むしろ第1番が気に入っています。第4番も悪くはありませんが、他の曲に比べると大分インパクト不足です。「ブランデンブルク協奏曲」は全曲が名曲なのに比べると、幾らか物足りないですね。もちろん好みの問題もありますが。

CDでは、全曲を買い求めるのがもちろんベストなのですが、よく第2、第3番だけで1枚のCDに収められてもいますので、それだけでも決して不足は無いと思います。

それでは、僕の愛聴盤をご紹介します。

1197040818カール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管(1960年録音/アルヒーフ盤) オールド・ファンなら誰に聞いても「定番」に上げると思います。演奏は第2番が最高です。序曲の峻厳さはまるで、この人の「マタイ受難曲」の演奏を聴いているようですし、オーレル・ニコレの滋味溢れるフルート演奏を聴くことができます。ところが、第3番の序曲などでは堂々として聴きごたえが有りますが、トランペットの音量が大き過ぎてバランスを崩しています。これはこの人の「ロ短調ミサ」でも感じた欠点です。ですので、全体は手放しで好きな演奏というわけでもありません。

727パブロ・カザルス指揮マールボロ祝祭管(1966年録音/SONY盤) 実は昔アナログ盤で愛聴したのはカザルス盤でした。この人の「無伴奏チェロ組曲」や「ブランデンブルク協奏曲」の演奏には、少々古臭さを感じてしまいますが、この管弦楽組曲には感じません。もちろん現代楽器による編成の大きい演奏ですが、あくまでも弦楽が主体となり、トランペットの音は完全に柔らかく弦に溶け込んでいます。その点では古楽オケ以上かもしれません。また、驚くほどにリズムが厳しく、生命力を持っています。この老カザルスの指揮ぶりには、畏怖心すら感じてしまいます。第2番、第3番はもちろん素晴らしいですが、1番や4番なども、とても良い曲に感じさせてくれます。この組曲の芸術的価値を最も高めている演奏かもしれません。最後に「G線上」の演奏が、うわべの綺麗さとはまるで無縁で感動的なことを記しておきます。

41cbn4e0rkl__sl500_aa300_ラインハルト・ゲーベル指揮ムジカ・アンティクヮ・ケルン(1982、85年録音/アルヒーフ盤) 初めは82年に録音された第2番だけを聴きましたが、それまで聴いて来たこの曲とはまるで異なる新鮮さがとても気に入りました。楽器の響かせ方も含めて非常に室内楽的で、緻密なアーティキュレーションが実にスリリングだったからです。しかも表面的な印象は全く無く、バロック音楽と真剣勝負する真摯さに圧倒されたのです。その後、85年に録音された3曲もやはり同様に素晴らしい出来栄えです。ゲーベルという演奏家の底知れない凄さを感じてしまいます。彼らの「ブランデンブルク協奏曲」も素晴らしい演奏でしたが、この演奏もまた格別です。

51ufofldizl__sl500_aa300_トン・コープマン指揮アムステルダム・バロック管(1988年録音/RCA盤) 古楽器派としては非常にオーソドックスな演奏です。響きは古雅で美しく、安心して聴いていられます。ただし、逆に「古楽器による演奏」だということ以外には余り魅力を感じません。第2番の序曲や「G線上」などは、軽やかに通り抜けてしまうだけで、感動には程遠いように思います。それが「バロック音楽」というものなのであれば、僕はバロック音楽には縁遠い人間だということになるかもしれません。皆さんはどのように感じられるのでしょうね。

ということで、現代楽器では偉大な精神を感じさせるカザルス盤、古楽器ではゲーベル盤が気に入っています。

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コメント

ハルくん、こんにちは

管弦楽組曲ですか、私はやはり、第2番と第3番ですね。後の曲は、二番煎じと言う感じがします。

さて、私が最も好きな演奏は、ミュンヒンガー指揮シュツトガルト室内O.の録音です。室内オーケストラですので、音的にはそれほど重くはありませんが、壮大さには欠けていません。特に第3番の序曲は名演だと思っています。これに比べると、所謂、オリジナル楽器系の演奏はリズムやアクセントが異なるので(当時の楽譜はそう言う読み方が正しいと主張しているのだと思いますが)、好きではないです。

あとは、リステンパルト指揮ザール室内O.の録音も好きですね。

壮大さを求めるのであれば、上げられているカザルスが一番だと思います。

投稿: matsumo | 2012年4月23日 (月) 16時14分

ハルくんさん、こんばんは。 管弦楽組曲は 私が小学生の時に 初めて買ったバッハのレコードです。パイヤールの演奏で、この人らしい明るくて さわやかな演奏でした。(今にして思えば、だから、リヒター盤のトランペットを違和感なく受け入れられたんだと思います・・・笑) 今 持っているCDは リヒター盤、バウムガルトナー新盤、カザルス盤、コッホ盤です。特に コッホの演奏は リヒターや ミュンヒンガーの流れを汲む ドイツ的な演奏で なかなか良いですよ。

投稿: ヨシツグカ | 2012年4月23日 (月) 19時03分

matsumoさん、こんばんは。

ミュンヒンガーのこの曲は聴いていませんが、他の曲を聴いた限りではきっと良いのでしょうね。リステンパルトもやはり聴いていません。

カザルスは壮大な割にリズムが明確ですので、少しも重ったるくはなりませんね。今回改めて聴いて素晴らしいと思いました。

古楽器派でもゲーベルの演奏は結構気に入っています。非常に新鮮に感じます。

投稿: ハルくん | 2012年4月24日 (火) 00時07分

ヨシツグカさん、こんばんは。

パイヤールのこの曲は聴いていませんが、明るく爽やかですか。トランペットがどうだかは・・・やはり聴いてみないと分かりませんね。(笑)

バウムガルトナー新盤、コッホ盤、みな良さそうですね。色々と聴いてみたいです。ありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2012年4月24日 (火) 00時11分

ハルくんさん、おはようございます。

あまり頻繁には聴いて来なかったのですが、ハルくんさんのブログに刺激を受けて、取ってあった演奏録音を引っ張り出して来ました。
サーストン・ダート指揮/フィロムジカ・オブ・ロンドン。1950年代の録音と思われるモノラル録音のLPです。数年前に中古で入手しました。ダートは1921年ロンドン生まれの音楽学者/チェンバロ等の奏者です。ホグウッド、マンロウ、ガーディナーの先生でもあったようです。49歳で亡くなる直前にマリナーに協力して録音したブランデンブルク協奏曲の演奏録音は小生の愛聴盤ですが、ダートは管弦楽組曲でも、生き生きとしたリズムとテンポで、聴くものを晴れ晴れとした気分にさせてくれます。G線上のアリアも大変美しく奏でられています。入手が難しく、モノラル録音ですので、お奨めという訳には行きませんが、貴重な録音と思ったので、ご紹介まで。
一般的には、同じく生き生きとした演奏で録音も良い、リヒターのものが良い様に思います。但し、繰り返し聴くと、疲れるかもしれません。

投稿: HABABI | 2012年4月25日 (水) 07時30分

HABABIさん、こんばんは。

ダートという人は聴いたことが無いのですが、ホグウッド、マンロウ、ガーディナーの先生というと大変な大御所なのですね。一度聴いてみたいものですね。

リヒター盤は壮麗で素晴らしいのですが、唯一トランペットの派手さだけが気になります。

投稿: ハルくん | 2012年4月25日 (水) 22時44分

リヒターの録音ははじめてバッハを聴いた頃の愛聴盤です。中学生くらいでした。どれも序曲のテンポが遅いのが特徴ですけど、この重厚さはまさにリヒター盤の真骨頂ですね。特に2番の序曲は切ないです。2番はフルートが有名ですが、チェンバロの緊張感が高い通奏も見事。これでバッハに目覚めた人は数多いことでしょう。

バッハのフランス風序曲ではロ短調のパルティータとしてクラヴィーアでも名曲があります。重厚さと軽みが混在した素晴らしい組曲だと思います。バッハのロ短調は本当に名曲が多いです。

投稿: NY | 2012年4月29日 (日) 23時19分

NYさん、こんばんは。
いつもコメントをありがとうございます。

リヒターの第2番は本当に素晴らしいです。この人の良さが最もよく出ていると思います。

「ロ短調」というのは、バッハの他にも、チャイコフスキーの「悲愴交響曲」とか、ドヴォルザークのチェロ協奏曲とか、味わいの深い名曲が多いですね。やはり、そういう性格の調なのでしょうね。

投稿: ハルくん | 2012年4月30日 (月) 00時26分

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