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2012年4月16日 (月)

J.S.バッハ ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲ニ短調 BWV1060 名盤

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バッハには「2台のチェンバロのための協奏曲」BWV1060という曲が有りますが、実はこれは元々「ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲」として書かれた曲をバッハ自身の手で2台のチェンバロ用に書き替えたものです。ところがオリジナルの楽譜は紛失されてしまったので、残されたチェンバロ用の楽譜を元に後年バッハ以外の人の手によって原曲の楽譜が復元されたという、少々ややこしい経緯が有ります。

なにはともあれ、こうして復元されたのが「ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲ニ短調BWV1060」です。おかげで、我々は今こうしてバッハの名曲を鑑賞することが出来るのです。

それにしても、この曲は本当に素晴らしい作品です。比較的短めですが、バッハの魅力が一杯に溢れています。個人的には、3曲のヴァイオリン協奏曲よりも更に好んでいます。もっとも、原曲の復元のために大きな貢献をしたチェンバロ協奏曲として聴くのは余り好んでいません。オーボエの音が抜けると、どうも間が抜けて聞こえます。まるで、歌の無いカラオケの伴奏だけを聴かされているような気がします。ですので、僕はもっぱらヴァイオリンとオーボエの版で、聴いています。特に第1楽章に絶大な魅力を感じますが、2楽章、3楽章も聴くほどに味わいの深まる名曲です。

第1楽章アレグロ いきなり押しの強い旋律が弦楽合奏とともに登場します。どこか哀しみに包まれているようでいて、同時にその涙をふり払うかのような強さを感じて素晴らしいです。オーボエとヴァイオリンの二つの音色のからみ合いは絶妙で、名旋律を最高に生かし切っています。

第2楽章アダージョ この楽章でも、ゆったりとした美しい旋律がオーボエとヴァイオリンによって歌い継がれてゆきます。

第3楽章アレグロ 毅然としたリズムに乗って、ヴァイオリンが妙技を展開します。中間で頻出するシンコペーションは非常に効果的で、ブラームスばりです(逆か??)。

それでは僕の愛聴盤をご紹介します。

Winschermanヘルムート・ヴィンシャーマン(指揮、Ob)、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(Vn)、ドイツ・バッハ・ゾリスデン(1962年録音/CANTATE原盤:日本コロムビア盤) ドイツ・バッハ・ゾリスデンは日本でも古くから人気が有って何度も来日しましたが、僕は残念ながら実演に触れる機会は無くて、LP盤で親しんでいただけでした。けれども、この演奏は本当に好きでした。ヴィンシャーマンの太く男っぽい音色が、いかにもドイツ気質を感じさせて、フランス系の奏者とはまるで異なりました。素朴で深く、ゆったりと重みのある演奏が何とも言えません。やはり自分にとっては、ヴィンシャーマンのこの演奏がこの曲の原点なのです。GFヘンデルのヴァイオリンはヴィブラートをかなり控えているので、昔は下手なのかと勘違いをしましたが、実は古楽器奏法の先取りをしていたのですね。今改めて聴くと、オーボエとのからみ合いが実に素晴らしいです。

Winscherman_livejpegヘルムート・ヴィンシャーマン(指揮、Ob)、ドイツ・バッハ・ゾリスデン(1970年録音/日本ビクター盤) 幸いなことにドイツ・バッハ・ゾリスデン4回目の来日公演が録音で残されています。会場は東京の杉並公会堂です。前述のスタジオ盤と比べると随分と流麗な音の印象を受けます。ライブならではの感興の高さを感じますので、スタジオ盤とはなかなか甲乙がつけがたいところです。ヴィンシャーマンは、このずっと後にスタジオでの再録音を行っていますが、残念ながらオーボエを吹いているのは別の奏者です。それに、テンポ設定も古楽器派のように速めていますので、自分の好みからは遠ざかってしまいました。

51ef28vxmyl__ss500__2カール・リヒター(指揮)、エドガー・シャン(Ob)、オットー・ビュヒナー(Vn)、ミュンヘン・バッハ管弦楽団(1960年代録音) ヴィンシャーマンに比べれば、ずっと速めのテンポでリズミカルですが、ドイツ的な堅牢さも感じさせるのが良いです。古楽器派全盛の時代に改めて聴き直すと、古めかしさよりも逆に新鮮な印象すら受けます。もちろんソリストの演奏は悪くありませんが、ヴィンシャーマン盤ほどの音の太さとコクは感じません。あくまでもリヒターの指揮するドッペル・コンチェルトの魅力を味わうべきだと言えそうです。

419wmnm084l__sl500_aa300_ネヴィル・マリナ―(指揮)、ハインツ・ホリガー(Ob)、ギドン・クレーメル(Vn)、アカデミー室内管(1982年録音/フィリップス盤) リヒター盤とはうって変って、指揮者のマリナーの存在が霞んでしまう演奏です。ホリガーとクレーメルという、それぞれの楽器の最高の名手が繰り広げるスリリングな掛け合いの楽しみが全てです。第1楽章などは少々速過ぎるように思いますが、この、手に汗握る演奏こそが彼らの真骨頂です。但し個人的には、やはりこの曲はヴィンシャーマンの旧盤のようにどっしりとした演奏が好みではあります。

というわけで、何と言ってもヴィンシャーマンの2種類の演奏が最高です。

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コメント

こちらにもコメントさせていただきます。個人的にホリガーの音色は好きじゃないので、ここは一枚目のヴィンシャーマンに一票です。オーボエ吹きにとって、この曲以降の協奏曲といえばモーツァルト、その後はR.シュトラウスまで無きに等しいので、とても貴重なレパートリーなのだそうです。

投稿: かげっち | 2012年4月17日 (火) 12時33分

かげっちさん、こちらへも有難うございます。

モーツァルト時代以降の独奏楽器としてはクラリネットが大きく台頭しましたからね。かつての主役の座を奪われたのは気の毒でした。
でも世の中には、ファゴットとかヴィオラとか、もっと主役になる作品が少ない楽器もありますからね。

投稿: ハルくん | 2012年4月17日 (火) 22時15分

ハルくんさん、おはようございます。

ヴィンシャーマンとドイツ・バッハ・ゾリスデンの日本における演奏会に行ったことがあります。ご紹介の曲の演奏もありました。
圧巻だったのはハイドンのハ長調のチェロ協奏曲で、シュタルケル似のソリストが切れ味のよい見事なテクニックだったことに加え、カデンツァの時には、指揮者と演奏者の全員がチェロの演奏に耳を凝らしており、全員で音楽を作っている様子が伝わって来て、音楽創造の場に居合わせているという実感がありました。今でも鮮明に記憶に残っている大変貴重な経験をしました。
ご紹介の二つの録音も持っていて、聴くたびに演奏会のことを思い出します。

投稿: HABABI | 2012年4月18日 (水) 07時11分

「オーボエとバイオリンのための協奏曲ニ短調」ですか。ほとんど聴かない曲ですが、大昔、この曲で始まった中波放送のクラシック番組があったことを懐かしく思い出しました。と言っても、誰が司会していた、あるいは、どのような曲が放送されたかはすっかり忘れていますが。

ご紹介の録音は聴いたことがありませんが、持っているのは「レーデル指揮ミュンヘンプロアルテO.」と「ボベスコ指揮ヤング・ソロイスツ・ストリング・アンサンブル」のもので、今、後者を聴いていますが、中々の演奏だと思います。

投稿: matsumo | 2012年4月18日 (水) 18時01分

HABABIさん、こんにちは。

ヴィンシャーマンを生で聴かれているんですね。羨ましいです! でもハイドンの方が強く印象に残っていますか。

ヴィンシャーマンの演奏した二つの録音は本当に素晴らしいと思います。愛聴されてるとお聞きして、大変嬉しく思いました。

投稿: ハルくん | 2012年4月18日 (水) 19時33分

matsumoさん、こんにちは。

この曲で始まった中波放送のクラシック番組というのは、思い出せないのですが、誰が司会だったのでしょうね。多分音楽家か評論家なのでしょうけれど。

クルト・レーデルはそれほど聴きませんでしたが。懐かしい名前ですね。後者のボべスコのものという演奏は聴いたことが有りません。

投稿: ハルくん | 2012年4月18日 (水) 19時37分

今晩は、ハル様。こちらは桜が満開です。日本って美しい国だなぁと再認識。
この曲滅茶苦茶好きですね。オーボエって牧歌的で長閑な音色というイメージでいましたが、こんなにも哀愁をおびた繊細な音色でもあるんだと考えを改めさせられた曲です。そして私の愛聴盤は…ヴァイオリン諏訪内晶子/オーボエフランソワ・ルルー…J・S・バッハヴァイオリン協奏曲集に収録された演奏です。BWY1041~1043も入った全4曲まとめてドーン!!晶子さまが指揮もなさったヨーロッパ室内管弦楽団との2005年の録音。カバー写真はレンブラントの絵から抜け出してきた様な晶子さま…もうため息ものでしてよ(ほぅ)
ハル様なら当然このCDをお持ちなのかと思っていましたので、あまり賢しげな事を書くのも良くないかと、雑誌記事で前ふりをしてからの本題突入!もう演奏も写真も最高に美しいです~。天国のバッハも人の望みの喜びを感じておられるのでは♪

投稿: from Seiko | 2012年4月21日 (土) 22時10分

Seikoさん、こんにちは。

神奈川の桜はすっかり終わってしまいましたが、丹沢の山の中ではまだまだ観ることが出来ます。でも今日の風と雨で散ってしまうのかな。

この曲イイですよね!僕も本当に好きな曲なんですよ。

いえいえ、実は晶子さんのCDは残念ながらまだ購入していません。CDジャケットが素敵なのはもちろん知っていますので、是非とも晶子様コレクションに加えなければなりませんね。

投稿: ハルくん | 2012年4月22日 (日) 22時28分

 こんにちわ。

 バッハの管弦楽組曲第2番と第3番とカップリングになっています「オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ハ短調 BWV1060a」をビノック指揮、イングリッシュ・コンサートで聴きました。
私のCDではハ短調となっていますが、ニ短調の誤植でしょうか?
または、同一作品で調性がニ短調とハ短調に調性されているものなのか別の作品なのか解りませんので、ご教示いただければ幸いです。

投稿: たつ | 2012年4月23日 (月) 21時47分

たつさん、コメントありがとうございます。

楽器の特性が異なるために、オーボエ&ヴァイオリン版はニ短調で、チェンバロ版はハ短調で書かれています。ですので誤植ではありませんよ。でも時々、オーボエ&ヴァイオリン版がハ短調と本当に誤植の場合も有ります。

投稿: ハルくん | 2012年4月24日 (火) 00時15分

 こんにちわ。

 そういうことでしたか。
回答をくださり、ありがとうございました。

投稿: たつ | 2012年4月24日 (火) 20時06分

こんにちは。
ヴィンシャーマンで聴いてみたく探してますが、廃盤で異常な高値...。でも昨日検索したら、YouTubeに上がってました。歓喜!

>ゆったりと重みのある演奏

同感で、バッハやモーツァルトでサロン的な軽さを感じる曲は相変わらず苦手なのですが、コノ曲は演奏がそう感じさせる要素も在るでしょうが、とっても好きです。今も聴きながら書き込んでます。

投稿: source man | 2013年10月 8日 (火) 11時08分

source manさん、こんばんは。

最近の古楽器派の演奏は大抵軽く楽しいので、それも悪くは有りませんし、決して重圧な演奏が良いというわけでも無いのですが、この曲に関してはやはりヴィンシャーマンで聴くと、一番心に深く浸み入って来ます。
本当に素晴らしい曲ですよね。

投稿: ハルくん | 2013年10月 8日 (火) 23時28分

ハル様

1970年に京都の会社に就職して、長岡京市にあった会社の寮に住んでいました。二人一部屋で、同僚は休みは昼の12時まで寝ている人でしたので、起こすに忍びがたく、私は京都の四条河原町のMUSEという音楽喫茶に出かけ、本を読んでいました。そのときによくリクエストされていたのがヴィンシャーマンの1060でした。たぶん日本ビクター版だったのであろうと思います。
1993年にドイツのヴィースバーデンに来てかつてヴィンシャーマンがここに住んでいたとの話を聞き、彼の1060のCDを探したところ近辺のCD屋さんでは、見つからず、後になって今もAMAZONで売っているMasterworksの5枚組のセットをアメリカから取り寄せました。
ところが私の入手したものはダイナミックレンジの狭い、平板な音しか聞こえない代物で、甚く失望し、果たしてあの演奏がこんな物であったのか、それとも別の録音かと疑問を持っておりました。そして先日ハル様の記事を発見し、別物であると確信する次第ですが、果たしてそうか? 私のCDのノーツにはProducer:Christian Lange、Prduction of Pro Arte KGとあります。ということはハル様紹介の上記の物とは異なるという理解で良いのでしょうか?

Esotericが日本ビクター版のSACD化をやってくれることを祈っています。

Takikura拝

投稿: Takikura | 2014年11月24日 (月) 04時12分

Takikuraさん

エピソードを詳しくご紹介下さいまして誠に有難うございました。自分の大好きな曲、演奏者に同じように強い思いを持たれているとのこと、本当に嬉しく感じます。
しかし御入手されたというCDはどうも別の(恐らくは古い)録音盤のようですね。
ヴィンシャーマンの素晴らしい演奏が埋もれてしまうのは本当に残念でなりません。
再リリースされれば良いのですがビクター盤は可能性が低いかもしれません。根気強くチェックされていればご紹介の両盤が中古で見つかるチャンスは有るのではないかと思います。

投稿: ハルくん | 2014年11月24日 (月) 23時34分

こんばんは。

ふふ。ふふふふふ。
貴Blogの紹介で知り、amazonのプレミアム感に唖然、つべに上がってて歓喜したヴィンシャーマン/CANTATE/日本コロンビア盤を入手ッ!

パトロール区域の中古屋、新入荷の棚でなく売れずに残ってる棚に在ったのですッ!何度も見てた棚なのに...灯台下暮らし。何気にバッハ棚を見てて、ふと目が合ったのです。取り出すと値段も優しい¥1,180。

その日、先週の木曜は自分にとって節目となる出来事が在り、善き日だと感じて、そういう時ってイイ出合いが在るモノなので、パトロールもして大正解でした。誰にも見つからずにいてくれて有難う...笑。

PCで聴くのとは、やはり違いますッ!

>いきなり押しの強い旋律が
>どこか哀しみに包まれているよう

冒頭の主題でぐっと掴まされます。バロックな格調高さなんだけど憂いも帯びてる感覚です。

なんと言っても第1楽章です。コノ主題で展開していくのがたまりません。

投稿: source man | 2015年3月 8日 (日) 22時54分

source manさん、こんばんは。

おおっ、ついに見つけましたか!
元々プレス数が少なかったのでしょうが、中古店でみかけることはまず無いですから本当に幸運ですね。
むしろ売れ残り在庫棚に紛れていたのが良かったのかもしれませんね。
音と演奏にすっかり気に入られたご様子ですし、とても嬉しく思います。今夜は抱いて寝て下さい。いや、寝返りで潰してしまうか・・・(笑)

投稿: ハルくん | 2015年3月 8日 (日) 23時44分

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