« ブラームス クラリネット五重奏曲 続・名盤 | トップページ | チャイコフスキー 交響曲全集 ロジェストヴェンスキー/モスクワ放送交響楽団 »

2011年12月27日 (火)

エレーヌ・グリモーのモーツァルト/ピアノ協奏曲第23番他

Title0005_2今年を振り返って、というわけでもありませんが、自分のブログについて言えば、一年の半分もの時間を費やしたモーツァルトのピアノ協奏曲に尽きると思います。こんなに長い期間、来る日も来る日もそれを聴き続けたことはありません。そのうちの第23番K488の記事の時に、発売のタイミングで間に合わなかったディスクが有りました。それは僕の大好きなエレーヌ・グリモーの演奏です。彼女が弾いたブラームスの協奏曲第1番は最高に好きな演奏のひとつですし、ブラームスやシューマンの独奏曲も気に入っていますが、モーツァルトに関しては、これまで全く聴いたことが有りませんでした。ですので、初めて出す協奏曲のCDの曲目が第23番と知った時には、聴くのが楽しみで仕方ありませんでした。

070_2

① ピアノ協奏曲第19番K459
② コンサート・アリア「どうしてあなたを忘れられよう」K505
③ ピアノ協奏曲第23番K488
エレーヌ・グリモー(ピアノと指揮 )、モイカ・エルトマン(ソプラノ)、バイエルン放送響室内管(2011年録音/グラモフォン盤)

このCDのユニークな点は、2曲の名作協奏曲の間に、素晴らしいコンサート・アリアが収まっていることです。幼少の時に、このアリアを初めて聴いたグリモーは、この曲に込められたモーツァルトの音楽ならではの優美さに心を打たれて、それ以来ずっと愛して止まない曲となったそうです。

まず、1曲目の第19番を聴いて、オーケストラの音のきりりと引き締まった端正な響きに驚きます。この団体の母体はバイエルン放送響ですが、少人数で室内管弦楽団の編成をとっています。グリモーは指揮もこなしていますが、スタッカート気味でノン・ヴィヴラートに近い古楽器的な弾き方にもかかわらず、非常に繊細な表現を聞かせています。その反面、ピアノは現代に近い弾き方なので、オケの音とギャップが生まれそうですが、両者はとても上手く融合していて少しも不自然でありません。2楽章の哀しみの表情もとても深々しています。

2曲目のコンサート・アリアは若手のモイカ・エルトマンの美しい声に惹かれます。この曲は、昔からテレサ・ベルガンサの美声で親しんで来ましたが、エルトマンの歌も非常に素敵です。そして、もちろんグリモーも、この曲への愛情がにじみ出るような美しいピアノ伴奏を聞かせています。

3曲目が第23番です。もちろんスタイルは第19番と同様です。早めのテンポで引き締まった両端楽章も良いですが、2楽章の一見無表情の演奏が虚無感までも感じさせて、言いようも無く哀しくなります。大げさに歌うよりもよほど孤独な怖さを感じるのです。一転して、3楽章の飛び跳ねるような生命力のほとばしりは見事です。ピアノもオケも最上の出来栄えです。この曲の一番好きなハイドシェックの演奏に肉薄するか、あるいは並び立つほど魅力的な演奏だと思います。僕の大好きな第23番に素晴らしい愛聴盤が増えました。それにしても、本業のピアノはともかくも、グリモーの指揮の才能には驚嘆します。彼女のモーツァルトの弾き振りの第二弾、そしていずれは全曲を聴いてみたくなります。この美貌にして、この才能。う~ん、参った!

|

« ブラームス クラリネット五重奏曲 続・名盤 | トップページ | チャイコフスキー 交響曲全集 ロジェストヴェンスキー/モスクワ放送交響楽団 »

モーツァルト(協奏曲: ピアノ 第20~27番)」カテゴリの記事

コメント

こんにちは、ハル様。お正月気分は払拭されましたか。昨日ヨハンシュトラウス管弦楽団ニューイヤーコンサートに行って参りました。オールヨハンJr&ヨーゼフのシュトラウスプログラム。明るいポルカとワルツも、年の始まりには良いものです。かなりメタボな指揮者ヴィルトナー氏も楽団の皆さんも底抜けに明るく、大変楽しい時間を過ごせました。嬉しいお知らせです。1/16にエレーヌ・グリモーの演奏会がテレビで見られます。そして残念なお知らせです。その放送チャネルはNHKBS3です。なので、ハル様は見ることが出来ません。

投稿: from Seiko | 2012年1月 7日 (土) 13時22分

Seikoさん、こんにちは。

お正月気分は消え失せましたよ。グスン(>_<)
でも、実は僕は初詣にまだ行っていませんので、明日か明後日にでも行って、お正月気分を取り戻してきますよ。も~い~くつ寝ると~おしょうがつ~♪なんてね(笑)

ニューイヤーコンサートはとても楽しまれたようで良かったですね!ウイーンのTV放送も良いですが、生演奏のニューイヤーはまた格別ですね。

愛しのエレーヌの放送が観られなくて悲しいです・・・。
あー代わりに晶子さまの放送やらないかなぁ。ポッ(←溜息です)

投稿: ハルくん | 2012年1月 7日 (土) 19時04分

モーツアルトの曲の全てのアルバムの中で3指に入る超名演奏。驚嘆で言葉を失う。

投稿: tora | 2012年2月16日 (木) 20時16分

toraさん、こんばんは。

このアルバムの特にK488は本当に凄い。
彼女が弾き振りをした理由がよく分かります。世の凡百の専門指揮者には、これほどまでに素晴らしい指揮は、まず出来ないからです。
彼女の全集を聴きたいですが、これほど突き詰めた演奏では全部録音するのは難しいでしょう。次にK466、K491あたりが是非聴きたいですね。

投稿: ハルくん | 2012年2月16日 (木) 22時49分

アマゾンで3週間くらいかかってやっと買えました。輸入版は安いですけど、多少時間がかかります。これ、ライブ録音だったのですね。私はどちらかというとリバーブがかかっていない音が好きなのですが。

それにしてもグリモーは美人ですね。CD表紙の写真はナチュラルメークなんでしょうか、見ているだけでうっとりします。

それはともかく、23番の3楽章は素晴らしかった。グリモーは意外に音が鋭角的な感じがします。性格的には情熱的というよりはむしろ知性派ではないかと思うのですが、2楽章でテンポが少しゆらいでいるのは意図的なんでしょうか。好きな曲だけになんとなく気になりました。

グリモーもすでに40歳を超えました。デビュー当時はアイドル的な感じでしたけど、私は同世代なので個人的にはとても好きなんです。動物の研究をしているところも個性的でいいです。モーツァルトのピアノ協奏曲はピアノソナタよりもはるかに重要度が高い傑作群なのでこれからもっと弾いて欲しいです。芸術の世界ではまだ若いですし。

投稿: NY | 2012年4月 2日 (月) 19時09分

NYさん、こんにちは。

グリモー盤をお聴きになられましたか。
ひとまずお気に入られたようですので良かったです。

2楽章のテンポのゆらぎは意図的なのでしょうね。3楽章の生命力は本当に素晴らしいですが、この楽章も僕は大いに気に入っています。

グリモーのモーツァルトは他の曲では、いったいどんな風に弾くのか是非聴いてみたいですね。

投稿: ハルくん | 2012年4月 3日 (火) 00時32分

今日、数回聴きまして私もこれは愛聴盤になると思ってます。もっと歳をとってから聴くと哀聴盤になるかもしれません。聴いた時代や状況とリンクしますから。

若い頃ってモーツァルトのすごさがわからないものなのですね。私はつい最近までわかりませんでした。おそらく今でもわかってないところだらけなのでしょう。

グリモーも、それから往年のハスキルもある程度年齢を重ねてから弾いているところが名演につながっているのかもしれないと思います。なにか一本のまっすぐできれいな音楽線というのか、突き詰めて凛としてますよね。

投稿: NY | 2012年4月 3日 (火) 01時50分

NYさん、こんばんは。

モーツァルトの凄さって「シンプル・イズ・ベスト」みたいなところがありますね。あれこれ音符を並べ立てるよりも、単純な曲に底知れない深さを感じることが多くあります。若いころは、どうしても音符の多さに惑わされてしまいがちなのかもしれません。

>一本のまっすぐできれいな音楽線というのか、突き詰めて凛としてますよね

本当にそう思います。「姑息さ」とか「あざとさ」とは、もっとも遠い位置を感じます。

投稿: ハルくん | 2012年4月 3日 (火) 21時11分

23番の2楽章はテンポのゆらぎというより、テヌートして弾いているのですね。この楽章はモーツァルトの緩徐楽章でも屈指の名曲だと思います。シチリアーナですね。こういう曲はハイドンもベートーヴェンも絶対に作れないだろうなあと思います。

モーツァルトの晩年は貧乏説とそうでもなかった説が混在していて、本当のことは誰も証明できないのでしょうけど、フリーターであったからこそ誰にも媚びずに作曲できる立場であったというのは事実でしょう。

芸術や文化に国の補助金が入ったり、市場の意向が反映するのは世の常ですが、モーツァルト以降の大作曲家はほとんどがフリーターですから、そういう意味では健全なんでしょうね。とくに、ロマン派以降は一人あたりの作品数も100程度に凝縮されますが、それも当然のような気がします。

投稿: NY | 2012年4月16日 (月) 16時30分

NYさん、こんばんは。
いつもコメントをありがとうございます。

グリモーの2楽章のテンポは随分と変化しているように感じます。中間部の明るい部分ではテンポをかなり速めていますね。
それに対して主題部分は相当遅く、かつルバートしますので、増々遅く感じます。なんだかシチリアーナらしく無く聞こえますよね。
中間部分や、続く3楽章との対比が実に素晴らしいと思います。

この曲は絶対にモーツァルトにしか書くことのできない傑作ですね。

投稿: ハルくん | 2012年4月16日 (月) 22時39分

こんばんは。

グリモーの第23番、非常に良いです。
随分と「攻める」演奏ですが
デリケートさとか繊細さを少しも損なっていません。
第2楽章の孤独さは胸を打つし
それがあるからこそ第3楽章の愉しさが活きる。
この曲の演奏では、「辛気臭く」なりがちなので
活気と繊細さを兼ね備えたグリモー盤は
曲をリフレッシュさせた感があります。

投稿: 影の王子 | 2016年8月 8日 (月) 21時04分

影の王子さん、こんにちは。

ある意味「辛気臭く」(=情緒的に)感じさせるようなハスキルの演奏も大好きなのですが、このグリモーの演奏には本当に新鮮さと驚きを感じました。
生命感と寂寥感の両立した稀有の名演ですね。別の曲の演奏も聴いてみたいですが、中々出てこないのが残念です。

そういえば、以前この演奏を大絶賛されていた方のこともふと思い出しました。

投稿: ハルくん | 2016年8月 9日 (火) 12時47分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1080200/43531488

この記事へのトラックバック一覧です: エレーヌ・グリモーのモーツァルト/ピアノ協奏曲第23番他:

« ブラームス クラリネット五重奏曲 続・名盤 | トップページ | チャイコフスキー 交響曲全集 ロジェストヴェンスキー/モスクワ放送交響楽団 »