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2011年12月17日 (土)

ブラームス ピアノ四重奏曲集 続・名盤

「ピアノ四重奏」という編成は、弦楽四重奏団にとっては少々半端な編成です。なぜなら、第2ヴァイオリンの出番が無いからです。ですので、常設のカルテットは余り演奏を行いません。ところが、ブラームスはこのジャンルにも非常な名作を3曲書いています。幸いなことに、バリリ四重奏団の往年の名盤や、イザベル・ファウストを中心としたメンバーの素晴らしい録音が有るので、家で楽しむのに不自由はしません。その二つの演奏については、3年前のブラームスの室内楽特集の時に「ブラームス ピアノ四重奏曲集 名盤」としてご紹介しました。ところが隠れた名盤というのは有るもので、更に二つの素晴らしい演奏に出会うことが出来ました。それを是非ご紹介したいと思います。

ピアノ四重奏曲第1番~3番

41uudouvwkl__sl500_フェスティヴァル四重奏団(1957-60年録音/RCA盤) ”祝祭カルテット”ってなに?とお思いでしょうが、彼らはアメリカのロッキーマウンテンの小さな町アスペンで毎年夏に催される音楽祭に出演して大好評だったために、定期的に活動を行うようになった団体です。メンバーはシモン・ゴールドベルク(Vn)、ウイリアム・プリムローズ(Va)、ニコライ・グラウダン(Vc)、ヴィクター・ヴァビン(Pf)という名手揃いです。ゴールドベルクとグラウダンは、かつてフルトヴェングラー時代のベルリン・フィルの首席奏者どうしでした。その間の音を”神様”プリムローズが埋めるのです。この団体の演奏の特色は、簡単に言えば、ミニ・ベルリンフィル(といっても当然昔の)という印象です。非常に良く練り上げられたアンサンブルと音色、人間的な歌いまわし、力強く刻むリズムなど、全て「古き良き」ベルリン・フィルの味わいです。彼らは常設では無いにしても、固定メンバーで活動した珍しい”ピアノ四重奏団”でしたが、グラウダンが急死してからは、「代わりのメンバーを迎えて活動を続けるなど論外のこと」と、解散をしてしまいました。この団体がどれほど素晴らしい演奏を行なっていたかは、この録音を聴いて貰えれば一目瞭然です。

Brahms_piano_qurtet_schneiderアレクサンダー・シュナイダー(Vn)、ワルター・トランプラー(Va)、レスリー・パーナス(Vc)、ステファニー・ブラウン(Pf)(1977年頃録音/ヴァンガード盤) Aシュナイダーは知る人ぞ知るブダペストSQの第2ヴァイオリニストです。彼は一度ブダペストから離れてシュナイダーSQを主宰し、10年後に再びブダペストに戻ります。ブダペスト解散後には、もう一度リーダーとして、このメンバーで録音を行いました。ヴィオラのトランプラーはブダペストSQが弦楽五重奏曲を演奏するときに必ず起用された名手です。チェロのパーナスもカザルス時代から共演をしている名手です。女流ピアノのブラウンについては何も知りませんが、この演奏を聴いていると、シュナイダーが妥協無しで選んだのだろうと納得します。それにしても、この演奏を聴いてまず感じるのが、音がブダペストSQそのものだということです。骨太で男性的な力強さに溢れます。シュナイダーの演奏は、かつてのブダペストの第1ヴァイオリンであった、ヨゼフ・ロイスマンそっくりです。高い技術に裏付けされた構築性と、しばしば聞かせる「泣き節」がまるでロイスマンです。これほどの名人が第2ヴァイオリンを弾いていたのですから、どれほどブダペストSQが凄かったか納得します。ブダペストでこの3曲を聴きたかったという夢がかなえられたような嬉しい気持ちです。

他には、第2番単独ですが、やはり良い演奏が有りますので、ついでにご紹介します。

ピアノ四重奏曲第2番

Brahms_piano_qurtet_bordinボロディン弦楽四重奏団員、スヴャトスラフ・リヒテル(Pf)(1983年録音/タワーレコード盤) ボロディンSQは昔から好きなカルテットです。彼らがピアノにリヒテルを迎えた、シューベルトの「ます」やシューマンのピアノ五重奏曲など、いずれも素晴らしい演奏でした。このブラームスでも、第1ヴァイオリンのコぺルマンの甘いポルタメントが古き良きウイーンの味わいを醸し出していて実に素敵です。リヒテルもこのメンバーとの共演がよほど気に入っているのでしょう、実にはつらつと弾いています。終楽章では熱く成り過ぎて荒いほどですが、ピアノの貫禄ぶりは流石です。甘さと力強さが溶け合った良い演奏だと思います。なお、このCDはタワーレコードがフィリップスのライセンス販売をしています。

というわけで、全3曲揃った演奏としては、1950年代のミニ・ウイーンフィルとも呼べるバリリと、ミニ・ベルリンフィルのようなフェスティヴァル四重奏団を聴き比べるだけでも楽しいですが、個人的にはブダペストそっくりの骨太な音が聴けるシュナイダー達の演奏にとても惹かれます。そして、イザベル・ファウスト達の非常にしなやかな演奏も外せません。これだけ素晴らしい演奏を幾つも味わえるとは、ブラームジアーナー冥利に尽きます。

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コメント

あら~めずらしい!ハル様の記事にコメントがありませんよ~。 という訳でコメント1号になるため、探しに行ってきました「コンチェルト」へ。全品7割引!もはや出血大サービスを越えて血も鼻水も 出やしない…でしょうね。でも無いんですよ。ブラームスピアノ四重奏。で、代わりにブラームスのホルン・ヴァイオリン・ピアノの三重奏を購入。美しく悲しい曲ですね。うーん、ブラームス!しかし、CD10枚買っても、諭吉さん1枚で英世さんのお釣がくるなんて…


投稿: from Seiko | 2011年12月23日 (金) 20時24分

Seikoさん、こんにちは。

いえいえ、何はともあれコメント第一号です。どうもありがとうございます。

そうですか、ピアノ四重奏曲はありませんでしたか。残念ですね。
でもホルン三重奏曲もとっても素敵な曲ですので、良かったですね!

投稿: ハルくん | 2011年12月25日 (日) 16時39分

おはようございます、ハル様。
今朝のBSクラシッククラブでベルリンフィル主席ヴィオラ奏者の清水直子さん率いるアウラータ・クィンテットの演奏会が放送されました。清水直子さんのお名前くらいは知っていましたがじっくり聞くのは初めてかな。なかなか陽のあたる場所に出てきてくれませんからね、ヴィオラ奏者は…ピアノ四重奏作品25から残念ですが抜粋でしたけど。清水さん、ちょっと阿木燿子さん似の知的な素敵な方ですね。ピアニストの旦那様とも息もぴったり。演奏も素敵でした。ヴィオラ奏者と言うと、徳仁殿下しかクローズアップされないので、もっとこういった世界のトップで活躍している人を紹介して欲しいですね。

投稿: from Seiko | 2012年1月 9日 (月) 10時55分

Seikoさん、こんにちは。

それはまた素晴らしい放送をご覧になりましたね。何しろ陽の当たらない楽器の代表ですので、僕も清水直子さんの演奏をろくに聴いたことが有りません。日本の女流ヴィオリストの女帝今井信子さんあたりになるとCDで聴ける機会も多いのですけれども。

アウラータ・クィンテットの演奏も同様に実際に聴いたことはありません。でもユニークな活動をしていますし、是非聴いてみたいですね。

徳仁殿下のソロも聴いたことはありませんが、余り上手くはないそうです(学習院オケの某OBから聴いた話です)けれども、是非聴いてみたいですねー。

まあ、ヴィオラはブラームスが好きだった楽器なぐらいですので、やはり陽の当たらないのが似合うのかもしれません。

投稿: ハルくん | 2012年1月 9日 (月) 17時48分

ピアノ四重奏は私も1番と3番がいいと思います。2番はなぜか異常に長くてしかも地味ですからあんまり人気はないのではないでしょうか。ブラームスは3拍子系に名曲が多いですね。1番の3楽章は殿堂入りの名曲だと思います。室内楽をやる人ならいつか弾いてみたいと思うのでは?

私はアイザック・スターンとヨーヨー・マ達の全集を聴いています(というか、それしか持ってない)。ピアノはアックスという人で、昔ヨーヨー・マの人気が出始めた頃からの共演者ですね。ヴィオラのラレードって有名な人なんでしょうか。グールドと共演してたようなしてなかったような。記憶があいまいなのであんまりいい加減なこと書けないんですが・・・。

投稿: NY | 2012年5月22日 (火) 22時08分

NYさん、

2番ももちろん好きですが、1、3番が好きですね。最近は特に3番でしょうか。
ブラームスの室内楽はどれも演奏してみたくなりますよね。僕には難し過ぎて、とても無理ですけど。

スターンのブラームスはVnソナタやピアノトリオがとても好きでしたが、考えてみたらヨーヨー・マ達とのピアノカルテットは聴いていませんでした。一度聴いてみたいです。

ラレードは一応知られていますが、僕は余り聴いた覚えは有りません。

投稿: ハルくん | 2012年5月22日 (火) 22時56分

 フェスティヴァル四重奏団といえば、当時最高級の奏者ばかりを集めた夢のようなカルテットですね(ソリストとしてだけでなく、アンサンブルも上手い奏者なのがポイントです)。結構古い録音ですけど、僕はこれにすっかり満足してしまって他の盤を買う気が起きません。カップリングされているシューベルトの「ます」も素晴らしい演奏ですね。
 こういう特殊な編成だと、息の合った演奏というのは実現しにくいですから、フェスティヴァル四重奏団の録音は貴重だと思います。

投稿: ぴあの・ぴあの | 2013年11月20日 (水) 16時41分

ぴあの・ぴあのさん、こんにちは。

フェスティヴァル四重奏団をご愛聴されていらっしゃるとはさすがです。
あれだけのメンバーが常設のピアノ四重奏団を組んでいたとは、現在では考えられませんね。

ただ、ブラームスのピアノ四重奏曲集には意外に良い演奏が多くて、バリリ四重奏団はもちろんですが、やはり名人揃いのシュナイダー四重奏団、それにイザベル・ファウストたち盤なども同じようにアンサンブル的に素晴らしいです。もしも機会が有りましたら是非。

投稿: ハルくん | 2013年11月21日 (木) 14時38分

こんばんは。

シュナイダーを入手。3番が特に魅かれます。2003年発売盤なのですが、1番はピアノの音に対して(3人いるのに)弦楽隊が遠く感じる録音バランスなのが悩ましく...2番になると少し改善され、ピアノが伴奏に徹しているかの3番は満足できました。

ピアノの打鍵が強くて、より聞こえるのでなく、あくまで録音バランスの問題です。通して素晴らしい演奏なのは間違いなく、教えて下さり感謝です。

モーツァルトVnソナタみたく、主役はピアノと云われれば仕方ないのですけど、他でも聴いてみたくなりました。

投稿: source man | 2016年12月 4日 (日) 17時56分

source manさん、こんにちは。

そうですね、録音が特別古いわけでは無いのですが、セッション録音にしてはバランスが気になるかもしれませんね。もともとピアノと弦楽器の音量は違いますから、考慮しなければいけません。エンジニアのセンスが不足していたということでしょうか。
演奏は本当に素晴らしいと思います。
名盤の案外少ない曲目ですので有りがたいですね。

投稿: ハルくん | 2016年12月 5日 (月) 12時49分

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