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2011年12月29日 (木)

チャイコフスキー 交響曲全集 ロジェストヴェンスキー/モスクワ放送交響楽団

本当に大変だった一年もいよいよ終わろうとしています。気が付けば「晩秋」もどこへやら、真冬となり各地から大雪のニュースが伝えられてきます。僕が住む神奈川に雪が降ることは滅多にありませんが、それでも冬の寒さはこたえます。そんな時には、やはりチャイコフスキーを聴くのが良いんですね。大オーケストラの勇壮な響きで、冬将軍に負けるな!という気になります。

そんなチャイコフスキーの交響曲全集というと、現在では幾らでも選ぶことが出来ますが、僕が学生の頃にはごく限られたものしか有りませんでした。世界初の録音として、スヴェトラーノフの全集について以前記事にしました。本国ロシアが1960年代に当時新進気鋭のスヴェトラーノフとソヴィエト国立交響楽団(現在ではロシア国立響)に託した事業です。その後を追って1970年初めに、モスクワの放送交響楽団と全集録音したのが、やはり当時若手のロジェストヴェンスキーでした。この全集はとても話題になり、僕もアナログLP盤で購入しました。そのような、とても思い出深い全集なのですが、そのアナログ盤は既に手放してしまい、長いことCDも出ていませんでした。前からもう一度聴いてみたいと思っていたところ、少し前にようやくリリースされたので、久しぶりに聴くことが出来ました。その感想をお伝えしたいと思います。

Tchaikovsky158_2
ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー指揮モスクワ放送交響楽団(1972年録音/ヴェネツィア盤)

オリジナルはロシアのメロディア録音ですが、定評のあるヴェネツィア・レーベルのリマスターですので、まずは信頼できます。アナログ録音のデジタルリマスターのために、どうしても高音型になり、かつてのアナログ盤と比べると低域の量感不足を感じますが、音造りとしては決して悪くないと思います。

250pxgennady_rozhdestvenskyロジェストヴェンスキーという指揮者は、たとえばスヴェトラーノフがロシアの広大な大地を想わせるような土臭さは持っていません。ずっと洗練されたスマートさを感じさせます。その点では、ムラヴィンスキー・タイプなのかもしれません。けれどもムラヴィンスキーもそうでしたが、一たび指揮棒に気合が入ると耳をつんざく様な金管が炸裂する凄まじい爆演を行ないます。ところが、それとは逆にチャイコフスキーにしばしば登場する軽やかなバレエ音楽のような美しい部分の表現にかけても、大変な素晴らしさなのです。この両面性がこの指揮者の最大の魅力です。

ところで、当時のモスクワ放送響は、相当のヴィトゥオーゾ集団でした。ホルンの首席の名前は知りませんが、長いパッセージを朗々と歌い切る実力は他の一流楽団の奏者と比べても群を抜いています。ですので第1番「冬の日の幻想」の2楽章や第5番の2楽章のような、ホルンのソロの聴かせどころは最高です。また、弦ではチェロ・パートをヴィクトル・シモンというロストロポーヴィチばりの名奏者が統率していましたので、低弦の歌い方といったらそれは素晴らしかったです。もちろん金管楽器のパワーもさすがにロシアの一流オーケストラです。当時のスヴェトラーノフのソヴィエト国立交響楽団、ムラヴィンスキーのレニングラード・フィルと並びます。

昔は、初期の第1番から3番までの演奏は非常に気に入っていましたが、4番以降についてはムラヴィンスキーと比べて物足りなさを感じていました。けれども現在聴き直してみると、4番以降も実に素晴らしい演奏です。いかにもロシア的な荒々しい音の迫力と、洗練されたおしゃれなセンスとを兼ね備えている非常に稀有な演奏だということに気づきます。チャイコフスキーの交響曲全集としては、スヴェトラーノフの晩年のスタジオ録音と東京ライヴの二種類が最高だとは思いますが、やや違う味わいを楽しめる演奏としてはこのロジェストヴェンスキー盤が真っ先に挙げられそうです。

この全集は6枚組ですが、実はサービスが満点なのです。「マンフレッド交響曲」が入っているだけでも有り難いのに、更に「ヴァイオリン協奏曲」のオイストラフ/ロジェストヴェンスキーの1968年ライブの天下の名演が入っています。そのほかに、ロストロポーヴィチ独奏の「ロココの主題による変奏曲」や序曲「1812年」、バレエ「くるみ割り人形」組曲も全てロジェストヴェンスキーの指揮で入っています。正にジャパネット・タカダばりの出血大サービスです。

というわけで、これが本年最後の記事になると思います。明日明後日は家の大掃除ですので。

皆様方もどうか良い年越しをお過ごしになられ、そして素晴らしい新年をお迎えください。一年間拙ブログにお越し頂きまして本当にありがとうございました。

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コメント

ロジェストヴェンスキーは何となく気になる指揮者なので、これを聞いてみたくなりましたよ。来年も記事を楽しみにしております。

投稿: わんわん2号 | 2011年12月30日 (金) 16時01分

わんわん2号さん、こんにちは。

この全集は最新録音でこそ有りませんが、非常に良いと思いますよ。ご感想を楽しみにしています。

来年もどうぞよろしくお願い致します。

投稿: ハルくん | 2011年12月30日 (金) 23時00分

ハルさん、おはようございます。
そして、ご無沙汰しております。

実は昨日(30日)インドより帰国しました。今年も昨年に引き続きクリスマスを海外で過ごすことになってしまいました。これがヨーロッパであれば、風情もあるのですが、昨年はタイ、今年はインドとクリスマスとはほぼ無縁に近い国で過ごすことになりました。

さて、ハルさんが書かれているロジェストヴェンスキーのCD持っているのですが、1回聴いたきりで、まだじっくり聴けていません。

年始は少し自分の時間が持てそうなので、ロジェストヴェンスキーの指揮にゆっくり耳を傾けてみたいと思います。

今年も楽しいブログを有り難うございました。コメントを書くことは少ないですが、毎回楽しく拝読しています。

来年も無理なさらず、ご自分のペースでブログを更新していって下さい。

良いお年をお迎え下さい。

投稿: たろう | 2011年12月31日 (土) 10時34分

たろうさん、こんにちは。

ご無沙汰しましたが、お元気そうで嬉しく思います。
タイ、インドとご活躍なのですね。お正月はどうぞゆっくりと体を休めてください。

ロジェストヴェンスキーの全集は良いですよ。僕も本当に久しぶりに聴いてすっかり見直しました。

お気づかいをどうも有難うございます。
来年もどうぞよろしくお願いします。

投稿: ハルくん | 2011年12月31日 (土) 12時05分

明けましておめでとうございます。穏やかな元旦になりました。旧年中は沢山楽しませていただきありがとうございました。
恒例のN響の第九などの放送を見ながらの大晦日の夜でした。御大スクロヴァチェフスキ指揮でしだが、90近い年齢とは思えない熱演でしたね。昼間は辻井伸行さんのカーネギーホール挑戦のドキュメンタリーに涙しました。彼の演奏や映像には切なくなるものがあります。彼のハンディへの同情ではなく、あまりに純粋で清らかで曇りのない美しさで、自分が恥ずかしくなってしまうから。世の中の汚い部分を見ていない(もしかしたら心の目で見ているのかも)辻井さんの音楽を前に、ひがみや愚痴や慢心や、そういったつまらないものに溢れている自分が情けなくなります。
新年早々、こんな暗い話を…申し訳ありません。今年は明るい良い一年にと願わずにいられません。本年も素敵な記事、期待しております。宜しくお願いします。

投稿: from Seiko | 2012年1月 1日 (日) 09時58分

Seikoさん、明けましておめでとうございます。

新潟も穏やかな天気ですか?良かったですね。
昨年も沢山のコメントを頂きまして本当にありがとうございました。演奏評に限らず、色々と楽しい話題を提供して貰えるので、こちらこそ毎回とても楽しませてもらっています。

昨夜は、だいぶ影が薄くなりながらも「国民的行事」であるNHK第一放送を観ていました。今年はいつもの余計な出し物が無く、歌のみで構成していたのが良かったです。

辻井さんの姿や、未だ復興が進まずも懸命に頑張っておられる災害地の方々の姿を見て、わが身と心を引き締めたいですね。

今年もどうぞよろしくお願いします。

投稿: ハルくん | 2012年1月 1日 (日) 12時05分

年を越してしまいました、新年おめでとうございます。

高校生のころ5番をやりました、主にロジェストヴェンスキーを聴いて勉強しました。なつかしいですね。

投稿: かげっち | 2012年1月 2日 (月) 14時40分

明けましておめでとうございます。

昨年はお世話になりました。
本年もよろしくお願い申し上げます。

ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲はベームのものを所持しております。

投稿: kurt2 | 2012年1月 2日 (月) 15時15分

かげっちさん、明けましておめでとうございます。

ロジェストヴェンスキーの演奏は現在聴くと非常に正統派に感じます。オケの勉強には最適かもです。スヴェトラーノフやムラヴィンスキーでは勉強には不向きでしょう。

投稿: ハルくん | 2012年1月 2日 (月) 16時18分

kurt2さん、明けましておめでとうございます。
こちらこそよろしくお願い申し上げます。

ベームの「マイスタージンガー」というと日本でのライブでしょうか?スタジオ録音盤も有ったような気がしますが。

投稿: ハルくん | 2012年1月 2日 (月) 16時30分

ロジェストヴェンスキー氏、亡くなられましたね。
氏のCDではショスタコーヴィチの交響曲第9番
バレエ「明るい小川」しか聴いていませんでした。
今後、聴いてみます。

投稿: 影の王子 | 2018年6月27日 (水) 21時37分

影の王子さん

ロジェストヴェンスキーは中々に想い出の多い指揮者でした。
チャイコフスキーやプロコフィエフなどやはりロシア音楽に名演奏が多いと思います。

投稿: ハルくん | 2018年6月29日 (金) 12時01分

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