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2011年12月11日 (日)

ブラームス クラリネット・ソナタ集 名盤 ~こちらが元祖です~

Muhlfeldブラームスは晩年にマイニンゲンを訪れて、宮廷管弦楽団のクラリネット奏者である、リヒャルト・ミュールフェルト(写真)に出会います。その演奏に深く感激したブラームスは、クララ宛の手紙に「ミュールフェルト以上に美しくクラリネットを吹く人間はいません」と書きしるしました。そして、彼の為にクラリネット/ピアノ/チェロの三重奏曲(作品114)、五重奏曲(作品115)、2曲のソナタ(作品120の1と2)を書きました。このうち規模も内容も最高の五重奏曲は非常に有名ですが、他の曲は名作であるにもかかわらず知名度が高いとは言えません。ソナタについては、ブラームスが書き換えたヴィオラ版のご紹介をしましたが、そういうわけでクラリネット版が元祖なのです。

クラリネットという楽器は日本でも昔から広く親しまれていますね。子供のころに商店街の大売り出しで見かけた、ちんどん屋さんの中心楽器はクラリネットでした。歌謡曲や行進曲など、何を演奏してもレトロな雰囲気が漂ってきますし、悲しい曲を演奏してもどこか明るいとぼけた雰囲気を失いません。とても人懐っこい愛すべき楽器だと思います。

そんなクラリネットで聴くブラームス晩年のソナタは、遠く過ぎ去った青春への懐かしい想いを運んでくれるかのようです。諦念を感じますが、決して哀しくは有りません。懐かしい想いで胸がいっぱいになるのです。個人的には、情熱的な若さを取り戻したかのように聞こえるヴィオラ版のほうをより好んでいますが、心静かにクラリネット版で聴きたくなる時も有るのです。特に第1番の2楽章のような緩徐楽章はむしろクラリネットの味わいが勝ると思います。

どうしてもヴィオラ版を聴くことが多いために、所有するクラリネット版のCDは僅かに一つのみですが、昔からアナログ盤で親しんできた演奏です。

Brahms_cla_sonata
レオポルト・ウラッハ(Cl)、イエルク・デムス(Pf)(1953年録音/ウエストミンスター盤)

かつてのウイーン・フィルの首席奏者ウラッハは、しっとりとした柔らかい音とゆったりとした独特の歌い回しでオールド・ファンにはいまだに絶大な人気を誇っているでしょう。クラリネット五重奏曲などは、アントン・カンパ―の素晴らしいヴァイオリンともども、それ以上に心を打たれる演奏には出会ったことがありません。
この2曲のソナタでも、柔らかい音と懐かしい雰囲気にとても惹きつけられます。録音はウエストミンスターレーベルといえども、さすがに古さは感じさせますが、この曲の場合には逆にレトロな雰囲気が増して、かえって良いのかもしれません。若い時代のデームスのピアノも素晴らしいです。
これは古典的な名盤として不滅の価値が有ると思います。

<追記>
その後、クラリネット版のCDを幾つか購入しましたので、ご紹介することにします。
ブラームス クラリネット・ソナタ集 続・名盤

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コメント

昔からクラ奏者には、お金のないモーツァルトに貸して友となったり、ウェーバーと歌姫の仲を取り持ち、かけおちの助けまでしたり、初老期うつ病(?)のブラームスに作曲の情熱を再び与えたりと、人助けに労を惜しまぬ善人が多いのです。

巨匠が馴染みの薄い楽器のため作曲する際には、その楽器の特性をよく調べ、魅力を存分に引き出そうと努めるものですが、この曲も同じです。特に、ピアノが低音のみ、クラの高音が中空に漂うような箇所は、冴え渡った冬の夜空にこうこうと月が照るような悲しみをたたえ、前代未聞の響きでした。これをヴィオラで弾く場合、全く異なる音色づくりをしなければならず、さぞ大変でしょう。

ハルくんさんも同意してくださるでしょうが、クラはドイツ・フランス・イギリスで奏法が異なるので、ブラームスにはドイツ系奏者です。とはいえウラッハは独特で、分厚いリードに豊かな息づかい、音の末尾がぶつ切りなのに音楽になっている、誰も真似できない世界です。もっと一般的な魅力を聴くとしたら、プリンツかライスターでしょう。少し古いものでは、ハインリヒ・ゴイザーやヨナ・エトリンガーもお薦めです。シュミードルは好きじゃないです。

投稿: かげっち | 2011年12月13日 (火) 12時53分

かげっちさん、こんにちは。

この曲はクラとヴィオラの両方で音の違いを楽しめるのでイイですね。「一度食べて二度おいしい!」そんな得した気分です。

ウラッハのモーツァルトにはそれほどは惹かれないのですが、ブラームスはホントに好きですね~。

一般的な演奏では、やはりライスターかプリンツですか。そのうちに色々と聴いてみたいです。アドヴァイスをどうも有難うございました。

投稿: ハルくん | 2011年12月13日 (火) 21時09分

誤解の無いよう補足すると、ウラッハは個人的に大好きです。ただ、私が言うのも変ですが、通好みに近い演奏です。彼の持ち味はモーツァルトよりブラームスで発揮されています。

ライスターやプリンツは、もっと万人受けする演奏です。これはこれで凄い演奏ですが。ライスターの方がごつごつしたゲルマン的な演奏、プリンツは甘いけれど健康的な音色で、ウィーンらしい都会的な演奏。甲乙つけられませんが、個人的にはプリンツが好きです。

投稿: かげっち | 2011年12月14日 (水) 12時13分

かげっちさん、こんばんは。

僕はプリンツのモーツァルトが大好きです。
柔らかく息の長い音が、協奏曲も五重奏曲も最高だと思います。一緒に演奏するウイーンのメンバーがまた素晴らしいですしね。

投稿: ハルくん | 2011年12月14日 (水) 21時43分

そうですね。
エピソードを二つ思い出しました。
ブラームス自身はトリオがいちばん気に入っていたらしいこと。
もう一つ、わたしの師匠がプリンツの楽器を吹かせてもらったところ、ほとんど鳴らなかったとのこと。それほど特殊なリードやマウスピースを苦もなく鳴らして繊細な音楽をつくる巨匠の技、すごいです。

投稿: かげっち | 2011年12月15日 (木) 12時19分

かげっちさん、こんばんは。

五重奏曲の評判が余りに高かったために、ブラームスが「自分はトリオの方が好きだ」と語ったという話は知っています。ソナタも「あの可愛い作品」と呼んで気に入っていたようですが、やはりトリオが一番だったのでしょうかね?

プリンツの楽器の話ですが、名人の楽器は皆そういうものなのでしょうか?管楽器のことは全く判りませんので。

投稿: ハルくん | 2011年12月15日 (木) 23時04分

名人だからということではありません。
いわゆる薄いリードを使うとコントロールしやすい代わりに軽薄な音色になります。厚いリードは音色が良い代わり、息の大半が音になりません。ウィーンフィルは伝統的にその対極で、厚いリードをつけたマウスピースを深くくわえて息をたくさん送る奏法のようです。ただし、最近のオッテンザマーなどは、もっと平均的な奏法のようにも聞こえます。
ドイツ以外の巨匠、現在でいえばフランスのモラーグとか、イギリスのエマなどは、中庸のリードを使っているように聞こえます。

ブラームスですが、五重奏は2楽章がロマ風にも聞こえるし、ちょっと「受けをねらった」部分があるかもしれません。トリオのほうが、書きたいように書いた感じです。たとえば1楽章第1主題の再現部の「拡大」「省略」など、実にブラームスらしいと思います。トリオの方が演奏は一層難しいとも思います。五重奏は全曲、トリオは1と4楽章だけやったことがあります。

投稿: かげっち | 2011年12月17日 (土) 22時00分

かげっちさん、こんばんは。

奏法の詳しい説明を教えて頂きまして、どうもありがとうございました。これから演奏を聴くときにとても参考になります。

トリオはブラームスの胸の内の独白のような曲ですよね。五重奏曲とはあれこれ比較をするべきでない曲のような気がします。

投稿: ハルくん | 2011年12月18日 (日) 22時45分

御意。

投稿: かげっち | 2011年12月20日 (火) 12時51分

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