ブラームス 「ドイツ・レクイエム」 旧東独勢による名盤
ブラームスの声楽曲の大作「ドイツ・レクイエム」は、今年3月の東日本大震災の時に「亡くなられた被災者の方へ」で、追悼の為に取り上げました。その中でご紹介した、ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響のライブ録音(audite盤)こそは、いまだにお気に入りの愛聴盤なのですが、新たに2種のディスクを購入しました。一枚はヘルムート・コッホ盤、もう一枚はヘルベルト・ケーゲル盤です。どちらもドイツ人指揮者がドイツのオーケストラと合唱団を指揮した演奏ということで、自分の嗜好にはピタリと合っています。しかもオール旧東ドイツ勢による演奏です。それと、コッホはもちろん合唱指揮者ですが、ケーゲルも初めは合唱指揮者でした。従って、当然のことながら合唱曲には優れているのではないかと思えたのです。
ヘルムート・コッホ指揮ベルリン放送響/合唱団(1973年録音/Berlin Classics盤)
第1曲から合唱の美しさに感心します。力強さよりも声の美しさが目立つので、第2曲あたりは幾らか物足りなさを感じます。それでも中間部の合唱はやはり美しいです。オーケストラはあくまで合唱の脇役であり、主役は徹底的に合唱です。コーラスパートの対旋律がとてもよく聞き取れます。独唱歌手も声は美しいのですが、幾らか線が細い印象です。とても地味ですが、妙に神経質にならない大らかさを感じる良い演奏だと思います。
ヘルベルト・ケーゲル指揮ライプチヒ放送響/合唱団(1985年録音/カプリッチオ盤)
コッホ盤とは逆に、良い意味で神経質なほどに繊細な印象です。合唱の弱音がとても美しく、静寂を保っている部分はさしずめ天国からの調べのようです。何か凄く厳かな響きに感じてしまいます。オーケストラは管楽器が時々目立ち気味ですが、とても雄弁です。ケーゲルらしい非常に素晴らしい演奏だと思います。それにしても、この録音から5年後にピストル自殺をしてしまうケーゲルはこの曲をどのような心境で演奏していたのでしょうか。
ということで、両盤ともクーベリック盤とはまた違った素晴らしさが有ります。名曲を色々な名演奏で味わえるのは音楽鑑賞の大きな喜びですね。
晩秋のブラームス特集ですが、次回からは室内楽を聴いてゆきます。
| 固定リンク
「ブラームス(声楽曲)」カテゴリの記事
- ブラームス 「ドイツ・レクイエム」Op.45 名盤 ~人は皆 草のごとく、草は枯れ、花は散る~(2022.12.27)
- ブラームス 「4つの厳粛な歌」op.121 ~ああ、死よ~(2012.12.18)
- ブラームス「ドイツ・レクイエム」 堀 俊輔/合唱団アニモKAWASAKI 演奏会(2012.04.29)
- ブラームス 「ドイツ・レクイエム」 旧東独勢による名盤(2011.12.01)
- ブラームス 「ドイツ・レクイエム」op.45 ~亡くなられた被災者の方へ~(2011.03.14)
コメント
ハルくん、こんにちわ
あの東日本大震災から8ヶ月以上経ちましたね。私はその前日に水戸に梅の撮影に行っていたので、もし1日、行くのが遅れたら、地震後、常磐線が1週間以上止まったので、帰宅難民になってしまうところでした。その上、私の部屋は、積み上げられている本やCD等が足の踏み場も無い程の散乱しましたし、浴室やトイレのタイルの一部はヒビが入りましたし。
さて、ドイツレクイエムですが、以前にも書かせていただきましたように、ワルター指揮ニューヨークpo.のモノラル録音が最も好きですが、ステレオ録音だと、マタチッチ指揮ザグレブpo.やクレンペラー指揮フィルハーモニアO.のものも好きです。
投稿: matsumo | 2011年12月 1日 (木) 19時01分
オルフェオ盤ってどれですか?
投稿: unknown | 2011年12月 1日 (木) 20時29分
matsumoさん、こんばんは。
そうですね、8カ月が経ってしまったのですね。遠く離れた土地に居ると、過ぎ去った過去のように感じてしまいますが、実際に被災を受けられた土地では災害の爪痕がまだまだ大きく残っていると聞きます。本当の復興を早く実現してもらいたいものです。
ワルター、マタチッチ、クレンペラーいずれも大巨匠ですね。Hコッホのような声楽指揮者の演奏もイイものですよ。
投稿: ハルくん | 2011年12月 1日 (木) 22時02分
失礼いたしました。
クーベリック盤はオルフェオ盤ではありませんでした。正しくはaudite盤です。
3月の記事でも、やはり誤っていましたので、さっそく訂正させて頂きました。unknownさま、ご指摘を誠にありがとうございます。
投稿: ハルくん | 2011年12月 1日 (木) 22時09分
最近自宅で聴いているのはラファエル・クーベリックでした。しかし昔はジュリーニVPOを聴いて勉強したのを思い出しました。
ふだんはオケ伴など使わない某合唱団が、たまたま何周年だかでオケ伴ドイツレクイエムをやることになり、私の団に依頼が来たので、既にOBだった私ですが早々にパート譜を確保してしまったのでした(内緒)。何しろ一生に一度あるかないかの演奏機会ですから。
いろいろな意味で不思議な、奥深い、安らぎに満ちた曲です。私は自分の葬儀で使ってほしい曲を既に遺言のように指定してあるのですが、第4曲は葬儀の終曲でお願いすることになっています。死は悲しみで終わらないのだということを皆さんに覚えていただくために。
先日はプレヴィンN響の演奏をTVで見ました。誠意と慈愛に満ちた演奏とでも言えばよいのでしょうか。プレヴィンも若い頃の精力的な姿と異なり、身体的には衰えたように見えますが、ますます深い境地に達したという感じでしたね。
投稿: かげっち | 2011年12月 2日 (金) 12時45分
かげっちさん、こんばんは。
この曲を演奏されたことが有るのですね。僕は残念ながらアマオケ現役時代に演奏したことはありません。本当にブラームスらしい、聴くごとに味わいの深まる美しい曲だと思います。
第4曲は短めですが美しい曲ですね。美しい曲と、第2、第7曲のように力強い曲との対比が何とも魅力的です。
プレヴィンのTVは観ませんでしたが、良かったようですね。いよいよ円熟の境地に入ったのでしょうか。
投稿: ハルくん | 2011年12月 2日 (金) 23時12分
明日12月4日の朝6時よりNHKのBSプレミアムでアンドレ・プレヴィン指揮NHK交響楽団による「ドイツ・レクイエム」の放送があります。当然、全曲の放送です。
ご興味のある方は、どうか御覧下さい。
投稿: | 2011年12月 3日 (土) 22時06分
もう一生演奏機会はないでしょう。25歳の年でした。しかし、こんな曲を30そこそこで書いたブラームスって、いったい・・・(^^;
投稿: かげっち | 2011年12月 5日 (月) 12時25分
かげっちさん、こんにちは。
そうですよね。30代の作品ですからねぇ。
音楽的には随分と熟成していたものですね。
まあモーツァルトがほぼ同じ年齢で「レクイエム」を書いたのも驚きなのですが・・・
投稿: ハルくん | 2011年12月 5日 (月) 22時21分
Auditeのクーベリックの盤、私も大好きです。
ちょっととてつもない演奏で、ドイツレクイエムの最高の演奏だと思います。この記事を読んで嬉しくなりました。
ケーゲルの演奏を聴いてみたいと思いました。
投稿: 夜のガスパル | 2014年5月27日 (火) 11時28分
夜のガスパルさん、はじめまして。
コメントを頂きましてありがとうございます。
こちらこそクーベリック盤の素晴らしさに共感頂けてとても嬉しく思います。この演奏は映像盤でも出ていますが、それだとクーベリックの姿が神々しく見えるほどですね。
ケーゲル盤も機会が有りましたら是非お聴きになられてみてください。
いつでもまたお気軽にコメント下さい。
よろしくお願い致します。
投稿: ハルくん | 2014年5月27日 (火) 22時39分
めちゃめちゃごぶさたしております、幸いまだ生きていますww 病後の演奏復帰の道は長く遠かったのですが、少しずつオケに顔を出し(昨年は魔弾の射手、今年はシベリウス2番)、先日ついにアンサンブル復帰を果たしました(クラ四重奏)。小編成だと小さなミスもばれるから怖いことは、おわかりと思います。幸いノーミスで15分ほどの演奏を乗り切りました。さて、健康のこと、残された人生のこと、いろいろ考える中で、人生か意義の一環として自分の葬儀で使う音楽も指定しておこうと考えています。かねてよりドイツレクイエムを指定してはいたのですが、具体的にこの盤を使ってほしい、という録音を持っていなければ遺された人が困ると思いまして、どの録音にしようかと悩んでいます(笑)どれがいいですかね、と人に聞くようなことでもないのですが。
投稿: かげっち | 2019年12月17日 (火) 14時30分
かげっちさん
お久しぶりです!
でもこうしてまたコメントを頂けるのを大変嬉しく思います。
そしてアンサンブル復帰おめでとうございます!私などアンサンブルなど夢のまた夢の状態です。
うーん、ドイツレクイエムの葬儀用ですか。。。
それはまた難しいですね。自分なら大好きなクーベリックか、合唱がメインのコッホというところでしょうが、確かにご自分で選ばれるより他にありませんよねえ。
決まりましたら教えてください(笑)
投稿: ハルくん | 2019年12月18日 (水) 09時03分
ヘルムート・コッホ、懐かしいですね。
日本から某音楽評論家(名前は失念)がベルリンのアパート(当時は東独)にコッホ氏を訪ねた記事が大昔、レコ芸に掲載されていたことを思い出しました。夫人の手作りの焼き菓子と共に厚く歓迎された内容だったと記憶しております。
ところで、コッホのドイツレクイエムはソリストの線が細いとのことですが、V. Ihr habt nun Traurigkeitに関してはケーゲル盤よりも合唱共々繊細な表現を私は評価しております。コッホ氏がロマン派の楽曲の録音を残していること自体珍しいことですが、このドイツレクイエムはただ珍しいというに留まらない名演と思います。
そのコッホ氏がシュターツカペレ・ドレスデンを振ったドボルザークの7番の交響曲(終楽章)の演奏録音がYouTubeにアップロードされています。他の楽章の録音があるのか判りませんが、燻し銀と称されたオケの音色と相乗して素晴らしい演奏です。ご一聴をお勧めします。
https://youtu.be/c9MB0-6i5dQ
ドイツレクイエムはソリストを選びますね。私はElisabeth Grümmer (ケンペ指揮)が好きです。ステレオ録音でないことを除けば同曲屈指の名演ではないでしょうか。
投稿: Film Photography | 2020年8月 8日 (土) 08時31分
Film Photographyさん
コッホのドヴォルザークとは意外ですね。
いかにもドイツの指揮者風ですし、合唱指揮者のコッホのイメージとはだいぶ異なるのが面白いです。
ケンペのドイツレクイエムは評判が良いですね。
なにせ聖ヘトヴィヒ合唱団ですし私も聴きたいのですが、入手性が悪いみたいなので機会があればと思っています。
投稿: ハルくん | 2020年8月 9日 (日) 13時24分
ヘルムート・コッホ様。お懐かしい御名前です。ドイツ・シャルプラッテンが『クラヴィエール』と言うレーベル名で、徳間音工から出ていた頃に、御名前のみは伺っておりました。限定の千円盤CDで購入のハイドンのオラトリオ『天地創造』、大事に所持しております。旧ソ連のレフ・オボーリン、コンスタンティン・イワーノフのように、昨今は殆ど話題に登らなくなってしまいました。Eurodiscから出ていた、ベートーヴェン『オリーブ山上のキリスト』、モンテヴェルディ『聖母マリアの夕べの祈り』(最後のマニフィカートが除かれて居るらしく、故・皆川達夫先生が憤りかつ残念がっておられましたが)等も、何とか試聴してみたく思ってます。
投稿: リゴレットさん | 2021年4月13日 (火) 14時12分
リゴレットさん
「餅は餅屋」ではありませんが、合唱曲、宗教曲はやはり専門の指揮者が演奏すると、やはり良いなと思いますね。
投稿: ハルくん | 2021年4月18日 (日) 00時24分