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2011年11月16日 (水)

ブラームス 「悲劇的序曲」op.81 ~泣く序曲~

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ブラームスの管弦楽曲の中では、「ハンガリア舞曲集」を別とすれば、「ハイドンの主題による変奏曲」が最も頻繁に演奏されています。変奏曲の”鉄人”ブラームスの非常な傑作なのは間違いありませんが、もう一曲僕がとても好んでいるのが、「悲劇的序曲」です。この曲は作品番号80の「大学祝典序曲」と双子の作品81です。というのも、ブラームス自身の記述に、「陽気な”笑う序曲”(大学祝典序曲のこと)と対になる”泣く序曲”(悲劇的序曲のこと)を書こうと思う。」と有るからです。

「大学祝典序曲」は、ブラームスが大学から名誉博士号をもらった時に、大学への謝礼に仕方なく書いた明るい曲ですが、「悲劇的序曲」にはブラームスのアイロニーが感じられます。自分が書きたいのは本当はこういう音楽なんだよと、言わんばかりの様です。果たして、この「泣く序曲」は、素晴らしくブラームス的な傑作です。傑作揃いのブラームスの交響曲のどの楽章と比べても、聴き劣りしません。しかも僅か十数分の曲の中で音楽は完結しています。嵐のように緊迫した部分と、胸いっぱいに広がる懐かしい歌、淡々とした孤独な歩み、切羽詰まった追い込み、とこの曲はあたかも「小交響曲」にも例えられると思います。

もうひとつ、この曲の特徴的な点は「アウフ・タクト」です。元々、アウフ・タクトはブラームスの音楽の重要な要素ですが、この曲ほどそれが頻繁に、これでもかこれでもかと現れる曲は他に有りません。人によっては、それが「しつこい音楽」に感じられるのかもしれませんが、ブラームジアーナーにとっては、たまらない魅力となります。

2曲の序曲は、初めはピアノ連弾によってペアで披露されました。もちろん奏者の一人はブラームス自身ですが、もう一人はクララ・シューマンでした。その後、ベルリンで正式にオーケストラによる初演が行われた時にも両曲はやはりペアで演奏されました。

それでは、僕の愛聴盤のご紹介です。

Cci00039_2 ルドルフ・ケンペ指揮ベルリン・フィル(1960年録音/IMG盤) オリジナルはEMI録音です。僕は「20世紀のグレート・コンダクター」シリーズで持っていますが、現在はテスタメントの交響曲全集盤に収録されているはずです。これは実に素晴らしい演奏です。冒頭から緊迫感が凄まじい上に、リズムを刻むアウフ・タクトの処理がずっしりとドイツ的な重量感を感じさせるのに圧倒されます。中間部のロマンティックな歌いまわしも魅力的で惹きつけられます。ベルリン・フィルがまだカラヤンのカラーに染まる前なので音色も伝統的なドイツ風で素晴らしいです。同時期のベルリン・フィルとのブラームスでは交響曲1番も素晴らしいですが、それを更に上回る出来栄えです。

Walter3200081099 ブルーノ・ワルター指揮コロムビア響(1960年録音/CBS SONY盤) ワルター最晩年の録音にもかかわらず、かなりの熱気に包まれた演奏をしています。いわゆるドイツ的な剛直さでは有りませんが、リズムに迫力を感じます。にもかかわらず、どうも聴きごたえを感じないのは、オーケストラの厚みに不足するからだと思います。この曲は、シンフォニー以上に音の厚みを要求する為なのでしょう。

Cci00036b カール・シューリヒト指揮バイエルン放送響(1961年録音/Scribendum盤) 以前はDENONから発売されていました。シューリヒトのブラームスは晩年のシュトゥットガルト放送響との交響曲2番を例外として、軽く颯爽と進む演奏で、重厚さとは無縁です。この演奏も快速で突き進み、リズムが完全に前に倒れています。張りつめた緊張感は凄いですが、普通の意味ではブラームスには聞こえません。ところが聴き終えたあとに凄いものを聴いたなぁと感心させてしまうのが流石シューリヒトです。

Brahms_monteux ピエール・モントゥー指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1962年録音/TAHRA盤) ライブ演奏のモノラル録音ですが音質は良好です。演奏には気合が入っていて迫力充分です。中間部の歌いまわしにも心惹かれます。ただ、この人のブラームスはテンポに伸縮性が有るために、どうしてもドイツ的な剛直さを失うことになってしまいます。そこが、個人的にいま一つ好きになれない理由です。

416gjxaqwml__sl500_aa300_ クルト・ザンデルリンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1972年録音/DENON盤) このコンビによるシンフォニーの演奏ほど絶対的な存在ではありません。もちろん徹底したマルカート奏法やイン・テンポで押し通す安定感は素晴らしいのですが、ザンデルリンクにしては速めのテンポで、ややスタイリッシュな印象です。白熱度にも物足りなさを感じます。この演奏には、SKドレスデンのいぶし銀の響きをゆったりと楽しめる点で、満足したいと思います。

41mqvx5jevl__sl500_aa300_ カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウイーン・フィル(1989年録音/グラモフォン盤) 遅いテンポでイン・テンポを守り、スケールの大きさを感じさせます。たたみ掛けるような切迫感は有りませんが、決して緊張感に欠ける訳ではありません。むしろ、アウフ・タクトの一音一音に念押しをする重量感がたまりません。中間部のじっくりとした足取りにも、ブラームスの情念が深く込められているかのようです。音楽の持つ底知れなさを余計に感じる演奏です。

学生時代に良く聴いたのはカラヤン/ベルリン・フィルでしたが、迫力と緊張感が凄かったと記憶しています。しかし、現在のマイ・フェイヴァリット盤は、ケンぺ/ベルリン・フィル盤です。次点としては、ザンデルリンク盤、ジュリーニ盤を上げたいです。

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ブラームス(管弦楽曲)」カテゴリの記事

コメント

ハルくん、こんにちわ

悲劇的序曲ですか、私も大学祝典序曲よりは好きです。と言っても特別、誰々の指揮でないと思っている曲ではありません。

この曲の録音は一応、10種類以上、持っていると思いますが、ハルくんが取り上げている録音では、シューリヒトのものを持っています。これ、元は通信販売会社「コンサートホール」のための録音ですね。シューリヒトは1956年に未完成交響曲を録音したのですが、その時、録音陣と軋轢があって、デッカを追い出されてしまったので、ここの録音するようになったようです。

ステレオ録音では、「ワルター指揮コロンビアso.」や「クレンペラー指揮フィルハーモニアO.」の録音も中々だと思います。

投稿: matsumo | 2011年11月17日 (木) 17時41分

matsumoさん、こんばんは。

シューリヒトがコンサートホールへあれだけの録音を残してくれたのは有り難いのですが、録音の質が優れないのが残念です。
DECCAやEMIへ多くステレオ録音を残して欲しかったですね。

言われてみれば、ワルターのディスクも有ったはずだと思って捜してみたら有りました。確かに中々の演奏ですが、オケの音が薄いのが不満かなぁ。

投稿: ハルくん | 2011年11月17日 (木) 21時35分

こんばんは。
ご無沙汰してます。
いつもは読み逃げしてるんですが、今回は久々に知ってる曲ということでコメントします。私はワルター/コロンビア響のものとザンデルリンク/SKDのものを持ってまして、どちらも気に入ってます。ただ、この曲聴きすぎて最近はあまり聴かなくなってしまいました(汗)
久々に聴いてみようと思います。

投稿: kurt2 | 2011年11月18日 (金) 21時40分

kurt2さん、こんにちは。こちらこそご無沙汰をしています。

この曲は本当によく出来た曲だと思います。あらためてじっくり聴いてみてください。

投稿: ハルくん | 2011年11月19日 (土) 10時17分

今晩は、ハルくん。この曲、交響曲とカップリングで、ウィーンフィル/カラヤン盤とウィーンフィル/バルビローリ盤を持っていました。早速両方聞いてみました。時間にして、1分10秒くらいカラヤン盤の方が長いです。 非常に緩急のついた演奏なのでしょうね。でも、ちょっとやり過ぎ感もあるかなぁ。始めと終わりは強い音で、中間部は弱い音での演奏なのは、バルビローリも基本的には同様なのだと思いますが、カラヤン氏ほど極端な強弱ではありませんね。
比べるとバルビローリ氏の演奏の方が好ましいです。
「大学祝典序曲」この曲をオープニングテーマに使ってたラジオ(テレビではなかったと思うのですが…)番組が何だったか思い出せなくて今、悶々としてます。

投稿: from Seiko | 2011年11月25日 (金) 00時11分

Seikoさん、こんばんは。

カラヤンの演奏は今は無いので詳しくは憶えていませんが、どの演奏も強弱が極端で聴きづらい傾向は有りますね。中々に的を得ていらっしゃると思います。

「大学祝典序曲」がテーマのラジオ放送はどこかの受験講座番組でしたね。旺文社?ちがったかなぁ。

投稿: ハルくん | 2011年11月25日 (金) 22時57分

旺文社のラジオ講座でしょう。私はよい子だったので遅い時間には寝ていましたけど(笑)

悲劇的のラストのクラ×2が好きです。いつも自分のパートしか聞いていない私です(どこがよい子だ?)。

アマチュアの管だと1曲しか乗れないことも多く、私は悲劇的を楽屋で聞きながら2曲目の出番に備えて楽器3本を調整していました。

投稿: かげっち | 2011年11月28日 (月) 12時44分

ハルくん、かげっちさん、今晩は。私のつまらない問いかけにイケメンお二人からのお返事。感謝感激雨アラレ…半世紀前のギャグ言っちまいました↓
旺分社ラジオ講座~ありましたね。暗いと不平を言うよりも進んで灯りをつけましょう…ここで田園第一楽章 by心の灯火。パックインミュージック。オールナイトニッポン。コッキーポップお相手は大石悟郎 などなど又、昭和ノスタルジーに浸ってしまいましたよ。ほぅ(ため息)

投稿: from Seiko | 2011年11月28日 (月) 20時35分

かげっちさん、Seikoさん、こんばんは。

旺文社のラジオ講座!
いま一つはっきり覚えていませんでした。
よく、布団に入って枕元のラジオで聴いていたのを憶えています。もちろん勉強していたわけではありません。(笑)

当時のラジオはよく聞きましたよ。僕はオールナイトニッポン派でした。
カメカメエブリボディのカメさんも今では社長ですからね。
昭和もだんだん遠くなりにけり、でしょうかね。

投稿: ハルくん | 2011年11月28日 (月) 22時04分

ハルくんさん、Seikoさん、こんにちは。

「心のともしび」ってカトリック教会の番組じゃありませんでしたっけ?ラジオ講座はラ講座と略して書くこともありました。

出張でANAの機内放送を聴く時、クラシックチャンネルの曲が好みでない場合は、オールナイトニッポンClassicsを聴きます。DJアンコーさん、ゲストはカメさんとか。先月のゲストは北山修さんでした。

投稿: かげっち | 2011年11月29日 (火) 13時01分

かげっちさん、こんばんは。

普段滅多に飛行機に乗らない自分は、「オールナイトニッポンClassics」というものを知りませんでした。なーるほど、ANAでしかオン・エアー(!)されていないのですね。
今度飛行機に乗った時には必ず聴きますよ。

投稿: ハルくん | 2011年11月29日 (火) 23時55分

ヽ(´▽`)/なるほどオンエアだ!

60~70年代の懐かしい曲が多く流れる番組ですよ。路線(機種)によっては機内放送がないこともありますが。

投稿: かげっち | 2011年11月30日 (水) 12時14分

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