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2011年9月10日 (土)

モーツァルト ピアノ協奏曲第19番ヘ長調K.459

モーツァルトが故郷ザルツブルクを離れてウイーンに乗り込んできて3年目の1784年に一気に書いた6曲のピアノ協奏曲(第14番から第19番)の最後を飾る作品です。さしずめ、6つ子兄弟の末っ子です。この曲はレオポルト2世の戴冠式の祝賀コンサートで、第26番「戴冠式」と共に演奏されたことから、やはり「戴冠式」と呼ばれることもあります。但し、元々その祝賀のために作られたわけでも有りませんし、まぎらわしくなるからか現在ではほとんど使われていません。

第1楽章アレグロ・ヴィヴァーチェは、確かに戴冠式にふさわしい、毅然としていて華やかな曲想です。但し第17番、18番あたりと比べると、やや単調な印象も拭いきれません。

第2楽章アレグレットは、穏やかな中にも哀愁がただよう主題が印象的です。特に短調に転調しての、もの悲しい表情にはとても惹かれます。

第3楽章アレグロ・アッサイは、パパゲーノ的なコミカルな動きで始まりますが、リズミカルでシンフォニックに展開してゆきます。この辺りのオーケストレーションは、いよいよ第20番以降の傑作群に到達する、いわば予告編のような気がします。そしてフィナーレはパパゲーノの「パパパパパパパ」で幕を閉じます。

それでは、僕の愛聴盤のご紹介です。

671ゲザ・アンダ独奏/指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム室内管(1967年録音/グラモフォン盤) 全集盤からの演奏です。この演奏はあらゆる点で中庸です。「中庸の良さ」というのも有るのでしょうが、この場合は余りに普通過ぎて印象に残りません。もちろん全集の順番を埋める演奏としては、決して悪いことは無いのですが、アンダの素晴らしい演奏を知る者としては、この人にはもっともっと期待したいのです。

2edebf2ef962870ed7a190d588ced904ダニエル・バレンボイム独奏/指揮、イギリス室内管弦楽団(1972年録音/EMI盤) EMIの全集盤に含まれていますが、この録音の頃はバレンボイムの演奏が非常に乗っていたと思います。1楽章のあふれ出る楽しさとニュアンスの変化は充実感で一杯ですし、短調部分でのアタックの力強さは聴きごたえが有ります。2楽章のこぼれ落ちるような哀しみの表情にも大いに惹かれます。3楽章は堂々と立体的なオケ伴奏に乗って自由自在に駆け回るピアノが魅力的です。全体的にロマンティックに傾いた演奏ですが、曲の小粒さを感じさせない素晴らしさです。

Fi2546314_0e アンネローゼ・ シュミット独奏、マズア指揮ドレスデン・フィル(1975年録音/独edel盤) 全集盤からの演奏です。1楽章ではシュミットもマズアも、どういうわけか普段の男勝りで堂々とした雰囲気は無く、非常に女性的で小粒な演奏となっています。もちろん古典的な造形性は美しいとは思いますが、元々小粒な印象のこの曲を等身大で演奏されると、やや聴きごたえが無く感じてしまいます。過不足無いことがもの足りません。但し、2、3楽章では一転して「中庸の良さ」の美しさと充実感を感じます。

Mozart_serkin ルドルフ・ゼルキン独奏、アバド指揮ロンドン響(1983年録音/グラモフォン盤) BOX選集に含まれています。どういうわけか、この演奏も1楽章が小粒に感じます。特にアバドのオケ伴奏です。ゼルキンのピアノも想定範囲内で特徴に欠けています。それは2楽章に入っても印象が変わりません。3楽章では、ようやく曲にも演奏にも躍動感を感じて楽しめますが、どうもこの曲は、2楽章までが意外に難曲なのかもしれません。

これ以外では、以前はハスキルのフリッチャイ伴奏盤(グラモフォン録音)を持っていましたが、余り印象に残っていません。というわけで、僕にとってはこの曲もやはりバレンボイム盤が群を抜いた魅力を感じさせてくれます。

さて、次回からはいよいよ20番台に入ります。本当の傑作群ですし、愛聴盤の数も増えますので、毎週の記事アップは難しいかもしれませんが、頑張って行きます。

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モーツァルト(協奏曲: ピアノ 第10~19番)」カテゴリの記事

コメント

こんにちは

この曲はやはり地味な印象で、古いハスキル盤を
持ってはいますが、ハスキルの演奏を聴きたくて
取り出すように思います。
そうなるとやはり20番以降を聴いてしまうので、
登場回数は少ないかな。

投稿: メタボパパ | 2011年9月11日 (日) 14時59分

メタボパパさん、こんばんは。

地味な曲ですが、悪くないですよ。もちろん20番台に比べると、どうしても聴き劣りはしてしまいますけれどね。
ハスキルの演奏は録音も含めて、正に地味だったように思います。僕はむしろバレンボイムがいいと思うんですけれど。

投稿: ハルくん | 2011年9月11日 (日) 21時02分

ハルくん、おはようございます。
19番については、ラビノヴィチ盤が最高です。エキサイティング、スリリング、アクティブ…。名曲とは言えない19番を見事に弾いています。
カップリングもアルゲリッチの20番、デュオの10番で、録音も良いのですから頻繁に聴いています。
次は、いよいよ20番ですね。名曲中の名曲ですし、私も大好きな曲です。記事を楽しみにしてます。

投稿: ひらけん | 2011年9月15日 (木) 06時38分

ひらけんさん、こんばんは。

19番は名曲とは言えないでしょうかね?確かに13,15,17,18番あたりと比べると、幾らか魅力が薄いかもしれません。でも、やはり良い曲だと思うのですが・・・・

ラビノヴィチのピアノはアルゲリッチとの連弾で何か聴いた気がするのですが確かでは有りません。指揮のほうはアルゲリッチの独奏でベートーヴェン2番の伴奏をコンサートで聴いたことが有ります。リズムと表情づけに凄い表現意欲を感じました。ですので、19番についておっしゃられる内容は分かるような気がします。

20番以降はほとんどの曲が名曲シリーズになってしまいますね。自分でも手持ちの演奏を改めて聴き直すのがとても楽しみです。

投稿: ハルくん | 2011年9月15日 (木) 20時37分

表現ぶりが悪く申し訳ございません。名曲の定義を理解していなかったことが原因ですが、私はどちらかというと、主観ではなく、名曲=有名曲(世間で名曲と評価されている)といった意味合いで使ってしまいました。軽率で、すいません。

投稿: ひらけん | 2011年9月15日 (木) 22時10分

ひらけんさん、こちらこそ意味を取り違えてしまいまして申し訳ありませんでした。
世間的には、間違いなく「名曲」の中には入れないでしょう。良い曲なのに残念ですよね。

投稿: ハルくん | 2011年9月15日 (木) 23時28分

こんばんは。
バレンボイム西独盤18,19番を単品入手。録音も素晴らしいし作曲者らしい華やかさをまぶした演奏が、(録音が古いとはいえ)ハスキル/フリッチャイ盤の暗さとは対照的なのが興味深いです。

投稿: source man | 2012年7月14日 (土) 20時04分

source manさん、こんんばんは。

バレンボイム盤は僕はとても好きですね。個人的にはハスキル盤よりも好んでいます。
18番のほうも曲といい、演奏といい実に素晴らしいと思います。

投稿: ハルくん | 2012年7月14日 (土) 23時58分

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