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2011年9月19日 (月)

~追悼~ クルト・ザンデルリンク

Sanderling_bc

ドイツの巨匠指揮者クルト・ザンデルリンク氏が9月18日に死去されたそうです。享年98歳でした。

僕はこの人には、物凄く思い入れが有ります。高校生の時に初めて耳にしたレコードによるブラームスの交響曲の演奏。これがブラームスの響きというものなのか、音楽というものなのかと目を覚まさせられた体験です。それは30年以上経た今でも少しも変わっていません。

ザンデルリンク氏はプロイセンに生まれましたが、ユダヤ系であったためにナチス政権が起こってからは旧ソヴィエトに亡命しました。そこでは、かのレニングラード・フィルハーモニーの指揮者の一人として活動しました。戦後ドイツに帰国してからは、東ドイツのドレスデン国立歌劇場やベルリン交響楽団で指揮をしました。氏は、ソヴィエトで活動したことから、チャイコフスキー、ショスタコーヴィチや、あるいはシベリウスなども多く指揮しましたが、やはり生れながらに持つプロイセン魂を如何なく発揮したのは、ドイツ音楽、それも特にブラームスの曲です。ブラームスの音楽の古典的構築性、微動だにしない重量感と、じわじわと心の底からにじみ出てくる情感を、この人ほど素晴らしく表現出来た指揮者を他に知りません。僕にとっては、この人の演奏するブラームスは、フルトヴェングラーのベートーヴェンやムラヴィンスキーのチャイコフスキーと同じような意味を持つのです。

既に現役を引退して10年近く経っていましたが、氏の残してくれた名演奏はいつでもCDで聴くことができますし、今後もライヴ録音が新たに陽の目を浴びることを願ってやみません。

ザンデルリンクさん、本当にありがとうございました。黙祷。

最後に氏の録音の中から、特に素晴らしいものを5つ挙げておきます。

①ブラームス 交響曲全集(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団/DENON盤) 最高のオーケストラと最高の指揮者との一期一会の全集です。

 <旧記事>ブラームス交響曲全集/最高の名盤

②ブラームス ピアノ協奏曲第1番(ベルリン国立歌劇場管弦楽団、エレーヌ・グリモー独奏/エラート盤) オーケストラの響きと重圧さが最高です。独奏も素晴らしいです。

③ブラームス 交響曲全集(ベルリン交響楽団/カプリッチオ盤) 人によっては再録音の全集を好む方も居ます。重量感は旧盤以上ですが、オケの響きはドレスデンには敵いません。今となってはどちらも大切にしたいです。

④ブルックナー 交響曲第3番(ライプチヒ・ゲヴァントハウス管/Berlin Classic盤) 武骨で野趣に溢れたブルックナーです。響きも素晴らしいです。

⑤ブルックナー 交響曲第7番(シュトゥットガルト放送響/ヘンスラー盤) 雄大なスケールのブルックナー。それでいて音楽がもたれません。

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名指揮者」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。

そうだったんですね…
故郷のプロイセンを離れざるをえなかった、そんなやるせない思いが音楽にあらわれていたのでしょうね。
リンク先のSKDとの全集、すべて持っていますが、普段はどうしてもフルトヴェングラーを聴いてしまって。
いい加減にこの病から脱却しなければなりませんね。
これを機に、しっかりこちらの全集を聴き込んでみようと思います。
追悼をこめ、まずはいちばん好きな4番から聴くことにします。

投稿: micchik | 2011年9月19日 (月) 14時49分

micchikさん、こんにちは。

ブラームスの音楽って、外側は古典的な造形性で、内側が濃厚なロマンと情念だと思うんです。室内楽は情念だけでも許容できますが、シンフォニーともなるとどうしても両方を求めてしまいます。フルトヴェングラーはロマンと情念は比類ないのですが、造形性に不足を感じます。その点、ザンデルリンクは両方のバランスが正に黄金比なんです。それにオーケストラの音楽的な上手さを、よーく聴いてみて下さい。まずは4番がうってつけですよ。

投稿: ハルくん | 2011年9月19日 (月) 15時21分

ハルくん、こんにちわ

ザンデルリンクが亡くなったことは読売新聞で知りました。

氏は、私には興味が無かった指揮者の1人でしたが、氏の録音で、おそらく、私が持っている唯一のCD「マーラー:交響曲第10番」を本日、聴きました。

この曲に関しては、交響曲第9番・大地の歌 の系統の演奏の方が好きですが、バルシャイ版の録音(バルシャイ指揮)を聴いて以来、明るい方向からの解釈も良いのではと思い始めたこともあり、今回は第5楽章が中々良いのではと思いました。

投稿: matsumo | 2011年9月20日 (火) 18時23分

はじめまして。
ザンデルリンクが亡くなって、色々検索していましたらこちらに辿り着きました。
私は大好きな指揮者でした。
氏のラフマの2番は私の宝です・・
とても残念です。

トラックバックさせていただきましたが、もし支障がおありでしたら結構ですので、宜しくご検討ください。

投稿: sucala | 2011年9月20日 (火) 19時20分

ハルさん、こんばんは。
昨日(19日)、改めてザンデルリンク=シュターツカペレ・ドレスデンのブラームスの「第4」を聴きましたが、悠然としたテンポで、かつブラームスの内面で燃え上がる情熱を余すことなく表現した秀演ですね。
最近、アルヴィド・ヤンソンス=シュターツカペレ・ドレスデンのブラームスの「第4」のCDを購入したのですが、ザンデルリンクの表現よりもやや外側で情熱が燃え上がる表現で、ザンデルリンクがいかにブラームスの音楽を表現するのに適した指揮者だったかを感じさせました。勿論ヤンソンスの指揮も、数ある並の指揮者に比べれば、素晴らしい表現でしたが・・・。

投稿: たろう | 2011年9月20日 (火) 21時13分

matsumoさん、こんばんは。

マーラーの10番というと、僕は作曲者自身が書いた1楽章しか聴かないことから、ザンデルリンクの全曲盤は持っていません。
この人の演奏を聴くのはもっぱらブラームスとブルックナーなんです。本当に素晴らしいですよ。

投稿: ハルくん | 2011年9月20日 (火) 22時28分

sucalaさん、はじめまして。
ようこそお越し頂きました。

ザンデルリンクは本当に凄い指揮者でした。
僕の場合はなんと言ってもブラームスの演奏が一番ですが、ソヴィエトで活躍しただけあって、ロシア音楽も得意ですよね。ただ、どうでしょう。晩年にはほとんどドイツ音楽を演奏していたようなので、やはりこの人の根源はプロイセンだったんじゃないかなって思ってはいます。

しばらくぶりに頂戴したトラックバックですので早速公開させて頂きました。

今後ともどうぞよろしくお願い致します。

投稿: ハルくん | 2011年9月20日 (火) 22時38分

たろうさん、こんばんは。

ブラームスの交響曲ではやはり4番と3番が好きですが、ザンデルリンクの演奏もこの2曲が文句なしに素晴らしいと思います。

パパ・ヤンソンスも素晴らしい指揮者ですので、今回のSKドレスデンとのブラ4も興味津々なのですが未聴です。中々ザンデルリンクを越えるというのは至難の業なんでしょうね。普通の指揮者は熱演すると、外側がメラメラ燃えてしまいますものね。ブラームスはやはり内面から燃え上がって欲しいです。

投稿: ハルくん | 2011年9月20日 (火) 22時48分

ハルくん、こんばんは。
ザンデルリンクさんが亡くなられたということで、残念です。私はCDでしか接したことはありませんが、SKDとのブラームス全集は愛聴盤です。そのほか、ベートーヴェン全集やチャイコフスキー後期交響曲集などもしばしば聴いています。また、引退コンサートも忘れることができません。昨日から、ブラームス3番、マーラー9番を聴きましたが、今後もザンデルリンクさんのCDは何度も繰り返し聴くでしょう。
心より御冥福をお祈りいたします。

投稿: ひらけん | 2011年9月21日 (水) 00時20分

ひらけんさん、こんばんは。

SKDのブラームスが余りに素晴らしいので、どうしてもベートーヴェンやチャイコフスキーは印象が薄れますが、この人はどんな音楽を指揮しても巨匠的な聴き応えのある演奏をしましたね。クナッパーツブッシュやチェリビダッケのようにやや特異な印象を全く与えずに巨大な音楽を作り出す点では本当に稀有な存在でした。

投稿: ハルくん | 2011年9月21日 (水) 18時57分

こんばんは

ザンデルリンクは実はあまりいい印象がない
指揮者で、ベートーヴェンの交響曲を聴いて
そう感じていました。
私の初期盤の師匠が、好きで、よく「じっくり
聴いたらそのよさがわかるよ」と言っていたの
を思い出しました。
ブラームスを聴いたら印象が変わるかも知れ
ませんね。

投稿: メタボパパ | 2011年9月24日 (土) 22時39分

メタボパパさん、こんばんは。

ザンデルリンクのベートーヴェンは僕もそれほど強い印象は有りません。
この人の指揮が音楽と最も幸福な結びつきを示しているのは、何と言ってもブラームスだと思います。是非お聴きになられてみて下さい。

投稿: ハルくん | 2011年9月25日 (日) 21時58分

こんばんは。
「ハルくん」さん大推薦のシュターツカペレ・ドレスデンとのブラ1アップしましたのでお暇な時にでもお聴きください。
ブログ内の駄文は無視してください。(笑)

投稿: sucala | 2011年9月27日 (火) 22時51分

sucalaさん、こんばんは。

ザンデルリンク/SKDのブラ1の演奏をアップして頂いたのですね。
録音については厳しいご意見ですが、これは70年代初頭の典型的な東独エテルナ録音だと思います。録音場所のルカ教会は残響が長いので、オンマイクでないと恐らく「銭湯」での録音のようになってしまうからではないでしょうか。
それにしても、注目すべきはトゥッティでのSKDの溶け合った響きですね。分厚さとまろやかさとが感じ取れると思います。

投稿: ハルくん | 2011年9月27日 (火) 23時47分

こんにちは。

ザンデルリンクは久しく聴いていなかったので、氏には申し訳ないけれど「え!まだご存命だったんだ」という印象で訃報を聞きました。

私には、テンポがちょっと遅いかなという印象を受けることが、少なくないです。ドイツものだとそれはそれで一つの音楽なのですが、ロマン派やシベリウスあたりになるとちょっと辛い・・・録音年代にもよるのかもしれません。

投稿: かげっち | 2011年9月28日 (水) 13時22分

かげっちさん、こんにちは。

現役を引退してから、もう随分と経っていましたからね。無理はありません。

この人のシベリウスも、昔はディスクを持っていましたが、ちょっとイメージと違いましたね。ロマン派は曲によります。ブルックナーなんかは本当にいいですよ。

投稿: ハルくん | 2011年9月28日 (水) 19時50分

亡くなったこと、知りませんでした。
彼の凄さを知ったのはNHKでのベルリン・フィルを振ったショスタコーヴィチの8番を聴いて(見て)からです。いつも彼の指揮を真似しながら、CDを聴いていました。

実は今年8月末に音楽好きの叔父が亡くなったばかりですが、最後に3月に会話したのがザンデルリンクのブラームスのことでした。病床の叔父にシュターツカペレ・ドレスデンのCD4枚を早速プレゼントしました。生前にこのCDを聴かせられて、喜んでもらえたのが今は思い出です。

叔父にもザンデルリンクにも合掌。

投稿: sarai | 2011年9月28日 (水) 22時44分

saraiさん、こんばんは。

叔父様との素敵な思い出ですね。
これからザンデルリンクのCDを聴くと毎回思い出されることでしょうね。
実は自分の叔父も同じ8月に亡くなりました。
その叔父はベートーヴェンの「皇帝」が好きなので、自分の部屋でレコードを聴かせてあげたことがありました。


投稿: ハルくん | 2011年9月28日 (水) 23時11分

失踪(笑)中に、こんな訃報が在ったとは...。
Miles Davis、Bill Evansも亡くなった9月...。
今夜は、ザンデリングを聴くコトにします。

投稿: source man | 2011年10月 6日 (木) 15時59分

source manさん、お帰りなさい!(笑)

コメントの復活を心待ちにしておりました。二フティのネット接続問題は解決されましたか?

今宵はザンデリンクを偲ぶ鑑賞会を是非!

投稿: ハルくん | 2011年10月 6日 (木) 21時23分

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今日から、予定を変更しまして、去る9月18日に」亡くなりましたクルト・ザンデルリンクを偲びまして、何回かに分け、氏の演奏を聴いていきたいと思います。 奇しくも先日ボロディンをお聴きいただきましたが、私の少ない手持ちのものの中から、いくつかお聴きいただこうかと思います。 2002年に氏が引退して、もうクラシックは終わったと思っていますが、 幸い私たちは、過去の素晴らしい演奏の記録をこうして聴く事が出来るわけですから、心して聴かなければなりません。 ありがたいことです。 私... [続きを読む]

受信: 2011年9月20日 (火) 19時13分

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