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2011年8月20日 (土)

マーラー 交響曲第5番&第6番 ジョルジュ・プレートル/ウイーン響 ~夏の夜のマーラー~ 

夏休みやお正月休みがやってくる前は、それはもう嬉しくてたまらないのですが、それが終わってしまい、また仕事に戻らなければならないときには、この世の終わりのような厭世的な気分になります。そんな時には、やはりマーラーでしょうか。ちょうど今夜は涼しいですし、夏の夜のマーラーも悪くありません。

そこで聴いたのは、ジョルジュ・プレートルの指揮するマーラーです。プレートルは昨年、サントリーホールでウイーン・フィルを指揮して、非常に素晴らしい「エロイカ」を聴かせてくれました。そのプレートルがウイーンで、フィルハーモニーではなくシンフォニカ―のほうを指揮したマーラーの第5、第6のライブCDが以前から出ていて評判だったのですが、実は僕はまだ聴いたことが有りませんでした。ですので、やはり一度はと思って聴いてみました。

マーラー 交響曲第5番

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ジョルジュ・プレートル指揮ウイーン響(1991年録音/WEITBLICK盤)

この演奏は宇野功芳先生が絶賛していましたし、色々な方のブログでも「凄い」と評判でした。確かにかなりの熱演であるのは間違いないです。表情が中々濃い部分もあります。ただプレートルは元々オーケストラを厳しく統率するタイプでは無いだけに、悪く言うとかなり雑な演奏になっています。この曲には同じウイーン響をオーケストラ・ビルダーのガリー・ベルティーニが指揮したライブ盤がありますが、聴き比べるとその差が歴然としています。ベルティーニの方はオケのコントロールが実に緻密なのです。もっともプレートルのおおらかさ、「えい一丁上がり!」という神経質にならない味わいが良いという人だって居るかもしれません。それに不思議なほどに明るいマーラーです。暗いマーラーが嫌いな人には良いでしょう。でも、それってマーラーだろうか?とは思います。ウイーン・フィルを指揮した「エロイカ」が素晴らしかったのは、誰が指揮しても、自発的にアンサンブルを整えてしまう能力のあるオケだったからかもしれません。それにマラ5のように至難のアンサンブルの曲では、やはり相当のバトンテクニックが必要になるんじゃないでしょうか。

というわけで、この演奏は世の評判ほどには良いと思いませんでしたが、決して嫌いな演奏ではありません。特に第4楽章アダージェットは、まるでオペラの一幕のように愛を語りかけてきます。ああ、これはマーラーが愛妻アルマに捧げたラブレターです。それをここまで熱く演奏した人は、もしかしたら居なかったかもしれません。終楽章も表情豊かで楽しさに満ち溢れています。この二つの楽章だけならば、掛け値なしの名演だと思います。

マーラー 交響曲第6番「悲劇的」

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ジョルジュ・プレートル指揮ウイーン響(1991年録音/WEITBLICK盤)

第1楽章は非常に速いテンポで始まります。しかもドイツ系の指揮者のように強固なリズムを刻むわけではないので、だいぶ前のめりに感じます。推進力が有るのは良いとしても、もう少し重さを感じさせて欲しくなります。特に展開部ではプジョーさながらにギアーをチェンジしてテンポを一段と上げます。どんなに巨匠になってもやはりフランス人ですね。アルマのテーマの処理は、まあまあというところです。この演奏では第2楽章にスケルツォ、第3楽章にアンダンテの順に並べられているので不満は有りません。但し、第2楽章主部は相当な快速テンポです。切迫感を通り越して、音楽が上滑りしているのでこれでは頂けません。第3楽章は、5番のアダージェットのように一遍の愛の詩になっています。主部はもちろんですが、中間部になっても余り深刻さを感じさせません。この世の終わりのような演奏が普通かと思っていると、すっかり肩透かしをくらいます。さすがはラテン系です。その点、終楽章は元々切迫した曲想ですので、快速テンポが不自然には感じません。無難に及第点と言って良いと思います。第5交響曲の場合には4、5楽章が中々の聴きものだったので、「終わり良ければ、全て良しとするかなぁ」と思えたのでしたが、第6の場合にはちょっと難しいところです。

というわけで、プレートルはマーラーの演奏には本質的に適していないのではないか、というのが僕の感想です。その代わり、暗く重苦しいマーラーが苦手の方には丁度良いのではないかと思います。

<過去記事>
マーラー交響曲第5番 名盤
マーラー交響曲第6番「悲劇的」 名盤

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コメント

ハルくん、こんにちわ

プレートルですか、私にとっては、マリア・カラスの歌劇のステレオ録音の指揮者と言うイメージが強すぎて、その以降に聴いたものは、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートが放送された時位です。

マーラーの第5・6番の録音では、ノイマン指揮ゲバントハウス管弦楽団のものが好きです。後、第6番ではセル指揮のものも好きです。

投稿: matsumo | 2011年8月21日 (日) 09時42分

matsumoさん、こんにちは。

プレートルというと昔からずっと「カルメン」かフランスものという認識でしたが、ニューイヤーコンサートで認識を新たにしました。やはり現役の巨匠と言って良い指揮者ですよ。

ノイマンのマーラーは晩年のチェコフィルとの録音で聴いていますが、この人はゲヴァントハウス時代から素晴らしかったと思います。
セルの6番は僕も好きですよ。

投稿: ハルくん | 2011年8月21日 (日) 18時33分

こんばんは

私もプレートルというと、カラスとのセットでしか
演奏を思い出せません。
たしか、道化師を持っていたと思うのですが...
マーラーの5、6番というとワルターや、バルビローリ、
シノーポリあたりを聴いています。

投稿: メタボパパ | 2011年8月21日 (日) 22時09分

メタボパパさん、こんばんは。

パパさんもやはり、プレートルといえばカラスとの「カルメン」なんですね。マーラーやブルックナーというドイツものを昔から指揮していたかどうかはよく知りませんが、昨年のベートーヴェンはとても素晴らしかったですよ。

ワルター、バルビローリのマーラーは定番ですね。シノーポリのマーラーは残念ですが一部の曲しか聴いていません。

投稿: ハルくん | 2011年8月21日 (日) 23時03分

おひさしぶりです。こんばんは。
プレートルのマーラーは、雰囲気重視なところがありますね。プレートルが売れてから大騒ぎで「名盤」の扱いをされています。すぐれた演奏ではありますが、私もそこまでいいかという感じでした。5番の終楽章は熱狂的でいかにもプレートルらしくてよかったです。でも、全体的には、マーラーの音楽はもっと分析的で、ち密で、少し病的な要素がある方が合うと思うのです。

投稿: ushinabe1980 | 2011年8月23日 (火) 23時04分

ushinabeさん、こちらこそご無沙汰して失礼しています。でもブログはよく拝見していますよ。

プレートルのマーラーについては、まったく同感です。自分が記事に書き足りなかったことを補足頂いたように思います。5番の3楽章までは期待にはだいぶ遠い印象でした。

投稿: ハルくん | 2011年8月24日 (水) 21時30分

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