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2011年8月 4日 (木)

モーツァルト ピアノ協奏曲第16番ニ長調K.451

ウイーン時代のピアノ協奏曲の六つ子作品、第14番から第19番までの三男坊にあたるのが、ピアノ協奏曲第16番です。第15番とともに1784年の春に、作曲されました。第15番は技巧的にとても難しい難曲ですが、この第16番も中々の技巧が要求されます。第15番と比べると規模も小さく、閃きも薄いので幾らか地味ですが、管弦楽のシンフォニックな響きやピアノとのからみ合いの見事さは、さすがにウイーン時代の作品です。

第1楽章アレグロは、シンフォニーのように壮麗な主題がオーケストラにより演奏されます。部分的にはプラハ交響曲のような箇所もあります。ピアノ・パートも華麗に力強く対抗しますが、展開部ではとてもチャーミングです。

第2楽章アンダンテは、「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」のロマンツェを想わせるような甘くとても美しい曲です。但し「中間部でいくらか間伸びがする」と厳しい指摘をしたのは、モーツァルトの姉のナンネルです。モーツァルトも、それには否定せずに「何かが足りません。」と答えています。確かにそうなのかもしれませんが、ちょっと厳しすぎるんじゃないでしょうかね。

第3楽章モルト・アレグロは、何かのディヴェルティメントのフィナーレのように楽しく魅力的です。ピアノもオーケストラと渡り合って聴きごたえが有ります。

この曲の愛聴盤ですが、アナログ盤時代に聴いていたのは、ピーター・ゼルキンがピアノを弾いて、ブダペスト四重奏団のアレキサンダー・シュナイダーが指揮をした珍しい演奏でした。現在聴いているCDは、やはり下記の3種です。

671ザ・アンダ独奏/指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム室内管(1963年録音/グラモフォン盤) 全集盤からの演奏です。テンポは幾らか速めで躍動感を感じます。これは他の曲の演奏にも共通していますが、ピアノもオーケストラも非常に力強く男性的です。決して雑ということではありませんが、多少の荒々しさを感じるとても線の太い演奏です。ウイーン時代中期の曲には非常に勢いがあるので、余り繊細に過ぎる演奏よりも向いている面も有るのではないでしょうか。

2edebf2ef962870ed7a190d588ced904ダニエル・バレンボイム独奏/指揮、イギリス室内管弦楽団(1973年録音/EMI盤) EMIの全集盤に含まれています。1楽章はゆったり目のテンポですので、やや躍動感に不足してもたつく感があります。ピアノも平凡な印象です。ところが2楽章では柔らかく歌って、静かに沈み込むような佇まいが良いです。3楽章は幾らか遅めのテンポで各フレーズが充分聴きとれるのは良いのですが、その分躍動感はいま一つです。

Fi2546314_0e アンネローゼ・ シュミット独奏、マズア指揮ドレスデン・フィル(1976年録音/独edel盤) 全集盤からの演奏です。このコンビの演奏は、どれも躍動感が有りながらも、がっしりしたリズムのいかにもドイツ的な演奏です。シュミットのピアノは現代的に過ぎない伝統的な「ピアノらしい」音なので好きですし、マズアのオケ伴奏もシンフォニックでとても立派です。両者のバランスの良さは抜群だと思います。目新しくハッとさせるものは何も無いので地味な印象かもしれませんが、何度聴いても飽きのこないオーソドックスで充実仕切った演奏だと思います。

Mozart_serkin ルドルフ・ゼルキン独奏、アバド指揮ヨーロッパ室内管(1988年録音/グラモフォン盤) BOX選集に含まれていますが、この曲だけがオケがロンドン響ではありません。第1楽章は、躍動感の有るオケ伴奏で開始します。立体感も素晴らしいです。そしてゼルキンはしっかりとしたタッチで立派なピアノを聞かせます。最晩年にもかかわらず、老いを少しも感じさせません。第2楽章でも決してもたつくことなく深い呼吸で淡々と弾き進めます。第3楽章は中庸の実に良いテンポです。躍動感に加えて愉悦感も感じさせる素晴らしい演奏だと思います。

というわけで、この曲では、僕はシュミット盤が一番安心して身を任せて聴いていられますが、ゼルキン盤も同格か、それ以上の素晴らしさです。

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モーツァルト(協奏曲: ピアノ 第10~19番)」カテゴリの記事

コメント

今晩は、ハル様。
今日は2011年日本海夕日コンサートだったのですね。そう言えば去年、この会場から2周年おめでとうコメントした事を思い出しました。ブログ開設3周年おめでとうございます。
尾崎亜美さん、キマグレンさん、財津和夫さんをお迎えしての3時間半。財津さんは尾高さんと同学年。二人とも素敵な63歳ですね。ハルくん、50歳代なんてヒヨッコです。まだまだこれからヒトハナもフタハナも…ですよ。わがままは男の罪。それを許さないのは女の罪。わがまま言って女性を困らせるくらいやっちゃって下さいまし。
夏の日本海は素晴らしい美しい夕日の景色が見られますが、冬は鉛色で暗く寂しい風景です。
新潟海岸から拉致された横田めぐみさんの事を、嫌でも思い浮かべます。私は偶然ですが、めぐみさんと同じ小学校の卒業生なんです。歳も違うし、彼女は1年しか新潟の小学校に通っていませんから、一緒に過ごした時間は無いのですが、何年間かの時間を経て、同じ学舎で同じ先生の指導を受けた私には、めぐみさんを含めての拉致事件には、特別な思い入れがあります。
広島原爆投下の日でもある今日、いろんな思いが交錯します。震災、原発、経済不安。そして、それらの前に置き去り

投稿: From Seiko | 2011年8月 6日 (土) 21時55分

さっきの続き…にされた形の拉致問題。首相はじめ政治家さん達。しっかりしてください!
纏まりのないコメントの上にモーツァルトは何処にもなしで申し訳ありませんでした。ハル様は、音楽から政治まで多岐にわたり記事をアップされておられるので、ついつい心情を吐露して(ぶちまけて)しまいました。お許しを…

投稿: From Seiko | 2011年8月 6日 (土) 22時01分

Seikoさん、こんにちは!

いやー3周年ですが、すっかり忘れていました。(苦笑) それを思い出して頂き、お祝いのお言葉をどうもありがとうございました。

今年も日本海夕日コンサート良かったですね。財津和夫さんは僕も大好きで、「青春の影」や「心の旅」は、ビオラでは無くギター片手に時々歌いますよ。

それにしても、拉致問題がすっかり置き去りになってしまいましたね。元々現在の政権党は外交問題が苦手なのは間違いないですし、カン首相にいたっては北朝鮮に関連する団体に選挙活動資金の寄付までしていたそうなので、横田さんのお母さんが怒っていました。これはもう言語道断です。
本当に何とかしなければいけないです。その政治家さんたちを真剣に選ぶのは我々国民の義務であり責任ですからね。

投稿: ハルくん | 2011年8月 7日 (日) 11時58分

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