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2011年7月27日 (水)

モーツァルト ピアノ協奏曲第15番変ロ長調K.450 名盤

いよいよモーツァルトのピアノ協奏曲第15番です。ウイーン時代のピアノ協奏曲の六つ子作品、第14番から第19番までの次男坊にあたります。この曲は掛け値なしに傑作だと思います。もしも、第20番以前の作品をこれから聴き始めるという方が居れば、まずはこの第15番と第9番「ジュノーム」をお勧めしたいところです。また、第15番は演奏家の間でもとても人気が有る曲ではないでしょうか。全集録音を行うピアニストでは判りませんが、録音曲の少ない演奏家、たとえば指揮者でピアノの上手いバーンスタインがウイーン・フィルとの弾き振り演奏で選んだのはこの曲でしたし、ミケランジェリも昔からこの曲を好んで演奏していました。実は僕がこの曲を大好きになったのも、この二人の演奏を学生時代に聴きこんだからでした。

第15番は第16番とともに1784年の春に、モーツァルトが自分自身のために作曲したのですが、彼はこの2曲について、「僕は2曲とも汗をかかせられる協奏曲だと思います。」と語っています。それだけモーツァルトが妥協無しに書いた、技巧的にも難しい難曲ですが、第15番が特に傑作なのは、音楽的内容にも一切の無駄が無く本当に充実し切っているからです。

第1楽章アレグロは、チャーミングな主題がオーケストラにより開始されます。そして主役がピアノに移ると、流れるように自然に、かつ華麗に展開されます。曲に力みや技巧への過度な傾斜が全く感じられません。中期の最良のモーツァルトと言えるでしょう。

第2楽章アンダンテは、余りの美しさに言葉を失うほどです。それも音楽が決して外面的では無く内省的なので、心の奥底に浸みこんできます。う~ん、モーツァルト!

第3楽章アレグロは舞曲風ですが、やはり非常に魅力的です。これほどチャーミングで美しいのに聴きごたえが有るというのは奇跡です。

それでは、僕の愛聴盤のご紹介です。

671ゲザ・アンダ独奏/指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム室内管(1968年録音/グラモフォン盤) 全集盤からの演奏です。冒頭から軽快で、テンポは煽り気味です。即興的なのは良いのですが、少々落ち着きの無さを感じます。スケールが小さくも感じます。第2楽章は淡々としていて淀みません。音楽の深さは平均レベルのところですので、この人ならもっと深く表現出来たのではと思ってしまいます。第3楽章は良いテンポで非常に楽しいです。録音はピアノもオケもやや古い印象です。

2edebf2ef962870ed7a190d588ced904ダニエル・バレンボイム独奏/指揮、イギリス室内管弦楽団(1968年録音/EMI盤) EMIの全集盤に含まれています。第1楽章は肩の力が抜けて、ゆったりとした気分です。第2楽章では沈滞するモノローグのような雰囲気が独特ですが、引きずるようなテンポに完全にもたれてしまいます。これは好きではありません。第3楽章も遅いテンポで落ち着いていますが、もう少し高揚感が有って良いと思います。

Fi2546314_0e アンネローゼ・ シュミット独奏、マズア指揮ドレスデン・フィル(1976年録音/独edel盤) 全集盤からの演奏です。実はシュミットのモーツァルトを聴くきっかけは、この曲でした。偶然耳にして、非常に気に入ったのです。1楽章では、引き締まった古典的な造形美が素晴らしいです。2楽章は遅めのテンポで淡々と歌わせますが、寡黙な中に心がこもり切ったユニークさに惹かれます。3楽章も大げさにならない躍動感が心地よいです。マズアの率いるオケ伴奏も相変わらず充実しています。

Mozart_serkin ルドルフ・ゼルキン独奏、アバド指揮ロンドン響(1985年録音/グラモフォン盤) BOX選集に含まれています。第1楽章は、柔らかい表情のオケ伴奏で開始しますが、幾らかレガート過多のように感じます。ゼルキンのピアノはゆったりと風格を感じさせる演奏ですが、やや凹凸感に不足してのっぺりとした印象です。第2楽章も、この曲の持つ青空を見上げるような立体感は有りませんが、深い呼吸でモノローグのように演奏するさまには妙に心を打たれます。第3楽章も遅めですが、ここでは一つ一つのフレーズをじっくりと弾き切っていて音楽の美しさを堪能させてくれます。

Michelangeli15 アルトゥーロ・ベネディッティ・ミケランジェリ独奏、ガーベン指揮北ドイツ放送響(1990年録音/グラモフォン盤) 僕が昔愛聴したのはモーシェ・アツモンが伴奏指揮したミケランジェリのライブのFM放送録音でしたが、それは目の覚めるように鮮やかな演奏でした。いま思えば、それはモーツァルトを超越したミケランジェリの音楽だったようには思いますが、とにかく気に入っていたのです。このCDでは、テクニックの鮮やかさはだいぶ影を潜めていますが、華麗さは失われていないのですね。ゆったりと慈しみ奏でる繊細なピアノが本当に魅力的です。カップリングの第13番と比べても、ずっと完成度の高い熟した演奏です。

というわけで、この曲についてはシュミット盤を横目で見ながらも、やはり理屈抜きでミケランジェリ盤を溺愛しています。

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モーツァルト(協奏曲: ピアノ 第10~19番)」カテゴリの記事

コメント

ひらけんです。コメント第7番です。
いよいよ、ですので即コメントです。本当は家で眠っている盤をいろいろ聴いてからコメントしようかと思いましたが、15番が傑作であること、バーンスタイン盤が好き、ミケランジェリ盤を溺愛など、ハルくんと同意見なので、記憶だけでコメントです。少しだけ付言すれば、ミケランジェリは某海外の激安レーベルの放送録音もよく聴いています。音質が悪かろうが、バックが貧弱であろうが、ひょっとしたら演奏者が違うかもしれませんが、崇拝しております。
また、バーンスタイン盤を聴くときは、いつもリンツもセットです。ピアノコンチェルトの前にフィガロ序曲があれば、コンサートですね。行きたいなあ。
ちなみに、今、通勤電車の中ですが、バーンスタイン盤を聴いています。仕事に行くのが億劫になってきました。

投稿: ひらけん | 2011年7月28日 (木) 07時38分

ひらけんさん、こんにちは。

第15番は本当に素晴らしいですよね。同ご意見とのことで、大変うれしく思います。
それにミケランジェリをお好きなのも嬉しいですね~。
バーンスタインはアナログディスク時代の愛聴盤です。ピアノも良いですが、何と言っても伴奏がウイーンフィルですしね。

投稿: ハルくん | 2011年7月28日 (木) 22時28分

ハルくんさん、おはようございます

久しぶりに15番を聴きました。明るいオペラの一場面のような、成熟した響きの素敵な音楽ですね。私はミケランジェリのを持っていないのですが、きっと素晴らしいピアノでしょうね。
私が棚から取り出して聴いたのは、カザドシュのピアノ、セル指揮クリーヴランド管弦楽団のLP、1968年録音です。かちっとした演奏ですが、香る様なふくよかさや、絶妙なニュアンスも感じさせる、往年の名盤です。他にも多くの素晴らしい演奏があるでしょうが、この演奏を繰り返し聴いているだけで、もう他のを聴く時間がなくなってしまいそうです。HABABI

投稿: HABABI | 2011年7月30日 (土) 09時38分

HABABIさん、こんにちは。

僕もカザドシュのモーツァルトは大好きなのですが、残念ながらこの曲のCDは持っていません。他の名演奏から想像するに、とても素晴らしいだろうなぁと思います。聴いてみたいですね。どうもありがとうございます。
ミケランジェリ盤もとても素晴らしいので、機会があれば是非。

投稿: ハルくん | 2011年7月30日 (土) 23時27分

ハルくんさん、こんばんは。

こちらの記事を参考に、モーツァルトのピアノ協奏曲の10番台を少しずつ聴き進めています。気に入った曲は、いろいろな演奏で楽しみたいと思っているので、15番はこちらでお薦めのあったミケランジェリのものを、つい最近ですが買い求めました。おかげさまで、とても気に入っています。

モーツァルトのピアノ協奏曲は大好きなのですが、20番以降の作品を聴くことがほとんどで、カサドシュ/セルの選集が手元にあったものの、実は数回聴いただけ…だったのでした。

あらためてじっくりと聴いてみて10番台のコンチェルトの魅力に目覚めたところです。ここで聴く機会が持ててほんとうによかったと思っています。10番台の作品をご紹介下さって、ほんとうにありがとうございました。ゆっくり、じっくりと味わいながら聴いていこうと思っています。

投稿: ANNA | 2012年8月28日 (火) 22時39分

ANNAさん、こんばんは。

お久しぶりです。でも、お元気そうなので嬉しく思います。

モーツァルトのピアノ協奏曲の20番以降の充実度は格別ですが、10番台も本当に捨てがたい魅力を持っていますね。中でも15番は大好きな曲ですが、ミケランジェリが無心でただひたすら美しく弾こうとしているのが好きです。

他の曲も、どうぞゆっくりお聴きになられてみてください。またの機会に感想なども教えて頂ければとても嬉しいです。

投稿: ハルくん | 2012年8月28日 (火) 23時52分

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