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2011年7月14日 (木)

モーツァルト ピアノ協奏曲第12番イ長調K.414

ウイーンに引っ越したモーツァルトが、自ら主催する「予約演奏会」の為に作曲したのが、ピアノ協奏曲第11番、第12番、第13番の3曲です。その中で最初に書かれたのは第12番ですが、この曲が出来上がったあとにモーツァルトは、「僕の予約演奏会に間に合わせるために、あと2曲のピアノ協奏曲を書かなくてはなりません。」と語っています。その、「あと2曲」というのが、第11番と第13番のことなのです。

さて、3兄弟の実は長男の第12番ですが、イ長調という調性からは、大傑作の第23番K.488を思い浮かべてしまいますよね。曲の雰囲気に似たものを感じる気がします。もちろん音楽の充実度に於いてK.488と比べるわけにはゆきませんが、「さあこれからウイーンで活躍してみせるぞ!」というモーツァルトの意気込みを感じる非常に美しい作品です。

第1楽章アレグロは、ウイーンらしい柔らさや甘さ、それに優雅さを感じさせる曲想です。やはり新天地での影響が少なからず有ると思います。

第2楽章アンダンテですが、実はこの曲を書く直前に亡くなったヨハン・クリスティアン・バッハのオペラ「誠意の災い」序曲から、主題をそっくり流用しています。これは、追悼の意を示すために違いありません。但し後半に転調しながら、ほの暗さから徐々に寂寥感を感じさせる部分などはモーツァルトそのものです。

第3楽章はロンド‐アレグレットは、ウイーンに意気揚々と乗り込んできたモーツァルトの気分が良く表れています。実に楽しい楽章です。

それでは、僕の愛聴盤のご紹介です。毎回同じ演奏家で申し訳ありません。

671 ゲザ・アンダ独奏/指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム室内管(1965年録音/グラモフォン盤) 全集盤からの演奏です。アンダの演奏はどれも凛としていて良いのですが、1楽章では何となくノリの悪さを感じます。ピアノのスケールも流れが今一つに感じますし、曲に対してどこか手探り状態のような気がしてしまいます。第2楽章も同じような印象です。3楽章でようやく、ウイーンに意気揚々と乗り込んできたモーツァルトの楽しい気分が表れます。1楽章からこういう気分が出ていれば良かったのになぁと思ってしまいます。

2edebf2ef962870ed7a190d588ced904ダニエル・バレンボイム独奏/指揮、イギリス室内管弦楽団(1973年録音/EMI盤) EMIの全集盤に含まれています。格調の高さよりは、ウイーンらしい柔らさや甘さ、それに型にはまらない自在さを感じさせる演奏です。ロマンティックに傾いていますが、それはモーツァルトの本質だと思うので、違和感は全く感じません。1楽章から全開で、本当にモーツァルト自身のピアノを聴いているような楽しい演奏です。2楽章のこぼれるような美しさも実に素晴らしいです。3楽章はテンポが速く、心が浮き立つようです。

Fi2546314_0e アンネローゼ・ シュミット独奏、マズア指揮ドレスデン・フィル(1978年録音/独edel盤) 全集盤からの演奏です。相変わらず格調の高い演奏です。シュミット女史のピアノは実に堅実なのですが、勇んでウイーンに乗り込んできたモーツァルトにしては、1楽章などは少々真面目過ぎて面白みに欠ける感も有ります。2楽章も堅実ですが、後半では寂しさを意外に感じさせます。3楽章の心が浮き立つような躍動感は良く出ています。ピアノのタッチも歯切れがよく安心して聴いていられます。この演奏は中々に良いと思います。

Mozart_serkin ルドルフ・ゼルキン独奏、アバド指揮ロンドン響(1981年録音/グラモフォン盤) BOX選集に含まれています。第1楽章は、柔らかい表情のオケ伴奏で開始します。こういう曲はアバドは実に上手いですね。ゼルキンのピアノはゆったりしていますが、風格の有る演奏を聞かせます。しかし白眉はやはり第2楽章で、老境ゼルキンが実に深い呼吸でモノローグのように淡々と演奏するさまには自然と引き付けられます。第3楽章も遅めですが、一つ一つのフレーズをじっくり丁寧に弾き切っていて魅力的です。決して流れを失うことなく音楽の熟成を感じる演奏です。

というわけで、この曲についても、第11番と同じくバレンボイムのEMI盤が僕は一番好きですが、ゼルキンも好きです。

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コメント

こんばんは

ハルくんさんのご紹介に合わせて、我が家にあるものを聴いています。12番は、キーシンのピアノ、スピヴァコフ指揮、State Chamber Orchestra "Virtuosi of Moscow"で聴きました。
1984年11月録音となっていますので、キーシンが13才の時の録音です。これ以上ないくらい活き活きとしたタッチと、前のめりにならないギリギリのところの勢いで、ピアノがモーツァルトの音楽を魅力的に聴かせてくれます。オケとの息も合っています。やっぱり、モーツァルトっていいですね、という気持ちで一杯です。HABABI

投稿: HABABI | 2011年7月16日 (土) 23時28分

HABABIさん、こんにちは。

キーシンのこの曲の演奏は聴いていませんが、デビュー当時は、ある意味現在よりも向いているかもしれませんね。
若いころのモーツァルトの音楽の魅力には後年とはまた違う、本当に抗しがたいものが有りますよね。素晴らしいですね。

投稿: ハルくん | 2011年7月17日 (日) 10時04分

こんばんは、ハルさま。
たった今、録画しておいた、パリ管弦楽団演奏・エッシェンバッハ指揮独奏でモーツァルトピアノ協奏曲12番・23番を見終わったところです。指揮をやりながらピアノを弾く…すごいですねぇ。
どうしても20番以降が聞く機会が多いので、12番を真剣に聞いたのは初めてかなぁ…名曲23番より私は好きかもしれません。何か可愛くてうぶな感じがイイなぁって♪
この時のエッシェンバッハ氏は70歳。頭部は大巨匠然としていますが、古稀とは思えない若々しい演奏。素敵ですねー。素敵に歳をとるにはどうすれば良いか教えてくださいハルさま。

投稿: From Seiko | 2011年9月30日 (金) 00時43分

Seikoさん、こんばんは。

エッシェンバッハさんは、若い頃にはさかんにモーツァルトを弾いていましたね。
指揮者に転向してからは、それほど弾いていないんじゃないかと思いますが、指揮もピアノも出来る彼にとってはお茶の子さいさいなのでは。

12番もイイでしょう?僕は23番が非常に好きなので、それ以上ということは有りませんが、やはり良い曲だと思います。

「素敵に歳をとるにはどうすれば良いか?」と僕に尋ねられても困ってしまいますが、頭部だけはドイツの巨匠並みに着々と近づいていますよ~(笑)

投稿: ハルくん | 2011年9月30日 (金) 21時46分

こんばんは。

この曲は宇野功芳氏が激賞してますが
大いに賛成です。

第1楽章の美しさ
第2楽章の味わい
第3楽章の躍動感

モーツァルトらしい傑作です。

ブーニン盤(EMI)で聴いてますが過不足ありません。

この曲はもっと取り上げられて欲しいですね。

投稿: 影の王子 | 2015年3月28日 (土) 20時57分

影の王子さん、こんばんは。

12番は良い曲ですが、10番台には名作が目白押しなので自分はこの曲が特別ということでもありません。でもやはり素晴らしい曲です。
10番台はもっと演奏されて、もっと聴かれて欲しいです。

投稿: ハルくん | 2015年3月29日 (日) 23時00分

こんばんは。

アシュケナージ盤を久々に聴きましたが、美しさの限りです。
表情付けはタップリですが、形式美を損ねていないのが凄いです。

ところで、ハイドンの作品がまったく取り上げられていない
ようにお見受けするのですが?
正直「ハイドンを聴く時間をモーツァルトとベートーヴェンにあてる」
のが本音ですが
アルゲリッチのピアノ協奏曲(旧盤)と
リヒテルのピアノ・ソナタだけは大好きです。

投稿: 影の王子 | 2017年10月14日 (土) 23時46分

影の王子さん、こんにちは。

実はハイドンも好きなのですがまだ記事に出来ていません。交響曲や室内楽が特に好きですね。ただ、なにせシューベルトの歌曲や室内楽、それどころかベートーヴェンのピアノソナタまで未記事ですのでまだ先になりそうです。
毎週記事をUP出来ていたころが懐かしい今日この頃です。(苦笑)

投稿: ハルくん | 2017年10月17日 (火) 00時33分

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