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2011年7月

2011年7月31日 (日)

オーケストラの森 尾高忠明/札幌交響楽団 「悲愴交響曲」  ~青春の思い出~

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今日のNHKテレビ「オーケストラの森」の出演は創立50周年の”北の雄”札幌交響楽団で、指揮は尾高忠明氏でした。曲目はチャイコフスキーの「悲愴交響曲」です。尾高さんには特別な思い出が有るので、とても楽しく観ることができました。それは、今から約30年以上前になりますが、当時の「青少年音楽祭」のジュネス・コンサートで尾高さんの指揮でマーラーの「復活」の演奏をすることができたからです。もちろん僕は当時一般大学で三年生のアマチュア、ビオラ奏者でしたので本当に幸運で貴重な体験だったのです。当時まだ30代だった尾高さんは、アマチュア大学生たちに本当に気さくに接してくれて、親身になってぐいぐいと引っ張ってくれました。皆は尾高さんのことを親しみを込めて「忠(チュー)さん」と呼んでいました。そんな風に指揮者とメンバーが一体となった結果、演奏会当夜のNHKホールの上でマーラーの大シンフォニーが爆発しました。正に火の出るような熱演だったのです。たぶん僕が今まで生きてきた中で五指に入る感動的な体験です。

残念なことに最近は、尾高さんの演奏会をずっと聴いていませんが、今夜はテレビ放送とは言え指揮姿をじっくり観て堪能することができました。北の大地の唯一のプロ・オーケストラ、札幌交響楽団のチャイコフスキーやシベリウスはいうなれば「本場もの」です。そして尾高さんの若々しく情熱的な指揮ぶりは、昔も今も少しも変わりません。とても素晴らしい「悲愴交響曲」でした。おまけにアンコールには尾高さん得意のエルガーの「エニグマ変奏曲」から「ニムロッド」です。これも素晴らしかったです。嗚呼、音楽とは何と素晴らしき哉!

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2011年7月27日 (水)

モーツァルト ピアノ協奏曲第15番変ロ長調K.450 名盤

いよいよモーツァルトのピアノ協奏曲第15番です。ウイーン時代のピアノ協奏曲の六つ子作品、第14番から第19番までの次男坊にあたります。この曲は掛け値なしに傑作だと思います。もしも、第20番以前の作品をこれから聴き始めるという方が居れば、まずはこの第15番と第9番「ジュノーム」をお勧めしたいところです。また、第15番は演奏家の間でもとても人気が有る曲ではないでしょうか。全集録音を行うピアニストでは判りませんが、録音曲の少ない演奏家、たとえば指揮者でピアノの上手いバーンスタインがウイーン・フィルとの弾き振り演奏で選んだのはこの曲でしたし、ミケランジェリも昔からこの曲を好んで演奏していました。実は僕がこの曲を大好きになったのも、この二人の演奏を学生時代に聴きこんだからでした。

第15番は第16番とともに1784年の春に、モーツァルトが自分自身のために作曲したのですが、彼はこの2曲について、「僕は2曲とも汗をかかせられる協奏曲だと思います。」と語っています。それだけモーツァルトが妥協無しに書いた、技巧的にも難しい難曲ですが、第15番が特に傑作なのは、音楽的内容にも一切の無駄が無く本当に充実し切っているからです。

第1楽章アレグロは、チャーミングな主題がオーケストラにより開始されます。そして主役がピアノに移ると、流れるように自然に、かつ華麗に展開されます。曲に力みや技巧への過度な傾斜が全く感じられません。中期の最良のモーツァルトと言えるでしょう。

第2楽章アンダンテは、余りの美しさに言葉を失うほどです。それも音楽が決して外面的では無く内省的なので、心の奥底に浸みこんできます。う~ん、モーツァルト!

第3楽章アレグロは舞曲風ですが、やはり非常に魅力的です。これほどチャーミングで美しいのに聴きごたえが有るというのは奇跡です。

それでは、僕の愛聴盤のご紹介です。

671ゲザ・アンダ独奏/指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム室内管(1968年録音/グラモフォン盤) 全集盤からの演奏です。冒頭から軽快で、テンポは煽り気味です。即興的なのは良いのですが、少々落ち着きの無さを感じます。スケールが小さくも感じます。第2楽章は淡々としていて淀みません。音楽の深さは平均レベルのところですので、この人ならもっと深く表現出来たのではと思ってしまいます。第3楽章は良いテンポで非常に楽しいです。録音はピアノもオケもやや古い印象です。

2edebf2ef962870ed7a190d588ced904ダニエル・バレンボイム独奏/指揮、イギリス室内管弦楽団(1968年録音/EMI盤) EMIの全集盤に含まれています。第1楽章は肩の力が抜けて、ゆったりとした気分です。第2楽章では沈滞するモノローグのような雰囲気が独特ですが、引きずるようなテンポに完全にもたれてしまいます。これは好きではありません。第3楽章も遅いテンポで落ち着いていますが、もう少し高揚感が有って良いと思います。

Fi2546314_0e アンネローゼ・ シュミット独奏、マズア指揮ドレスデン・フィル(1976年録音/独edel盤) 全集盤からの演奏です。実はシュミットのモーツァルトを聴くきっかけは、この曲でした。偶然耳にして、非常に気に入ったのです。1楽章では、引き締まった古典的な造形美が素晴らしいです。2楽章は遅めのテンポで淡々と歌わせますが、寡黙な中に心がこもり切ったユニークさに惹かれます。3楽章も大げさにならない躍動感が心地よいです。マズアの率いるオケ伴奏も相変わらず充実しています。

Mozart_serkin ルドルフ・ゼルキン独奏、アバド指揮ロンドン響(1985年録音/グラモフォン盤) BOX選集に含まれています。第1楽章は、柔らかい表情のオケ伴奏で開始しますが、幾らかレガート過多のように感じます。ゼルキンのピアノはゆったりと風格を感じさせる演奏ですが、やや凹凸感に不足してのっぺりとした印象です。第2楽章も、この曲の持つ青空を見上げるような立体感は有りませんが、深い呼吸でモノローグのように演奏するさまには妙に心を打たれます。第3楽章も遅めですが、ここでは一つ一つのフレーズをじっくりと弾き切っていて音楽の美しさを堪能させてくれます。

Michelangeli15 アルトゥーロ・ベネディッティ・ミケランジェリ独奏、ガーベン指揮北ドイツ放送響(1990年録音/グラモフォン盤) 僕が昔愛聴したのはモーシェ・アツモンが伴奏指揮したミケランジェリのライブのFM放送録音でしたが、それは目の覚めるように鮮やかな演奏でした。いま思えば、それはモーツァルトを超越したミケランジェリの音楽だったようには思いますが、とにかく気に入っていたのです。このCDでは、テクニックの鮮やかさはだいぶ影を潜めていますが、華麗さは失われていないのですね。ゆったりと慈しみ奏でる繊細なピアノが本当に魅力的です。カップリングの第13番と比べても、ずっと完成度の高い熟した演奏です。

というわけで、この曲についてはシュミット盤を横目で見ながらも、やはり理屈抜きでミケランジェリ盤を溺愛しています。

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2011年7月23日 (土)

モーツァルト ピアノ協奏曲第14番変ホ長調K.449

Img_osomatsu さて、モーツァルトのピアノ協奏曲特集も第14番までやって来ました。彼の残したピアノ協奏曲は全部で27曲ですので、ちょうど真ん中の折り返し地点ということになります。ウイーンに乗り込んできて3年目のモーツァルトは、第14番から第19番まで続けて6曲のピアノ協奏曲を書きました。第11番から13番までが「だんご3兄弟」ならば、今度はさしずめ松野家の「6つ子兄弟」というところでしょうか。それでは曲の紹介だよ~ん。

この第14番は、モーツァルト自身が初演を行ないましたが、曲そのものは弟子のバルバラ・フォン・ブロイヤー嬢のために書いたものです。モーツァルトの初演の後にブロイヤー嬢も客の前で演奏しています。この曲は第13番と次の第15番という傑作に挟まれてしまい余り目立たない存在ですが、どうしてどうして中々に魅了的な曲だと思います。

第1楽章アレグロ・ヴィヴァーチェは、とても華麗な出だしで始まりますが、次々とドラマティックに展開されるあたりはモーツァルトの作曲テクニックの飛躍的な進化を感じます。

第2楽章アンダンティーノは、淡々とした流れの中に深いロマンティシズムを湛えています。正にモーツァルトの音楽の至福の時です。

第3楽章アレグロ・マ・ノントロッポは、二つのロンド形式です。とてもチャーミングなテーマが変奏されてゆき、いっぱいの幸福感に心がうきうきしてきます。

それでは、僕の愛聴盤のご紹介です。毎回同じ演奏家で申し訳ありません。

671 ザ・アンダ独奏/指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム室内管(1966年録音/グラモフォン盤) 全集盤からの演奏です。冒頭は幾らか煽り気味ですが、アンダ指揮のオケ伴奏が子気味良いので惹き付けられます。ピアノも煽り気味なので、安定感よりも気分の高揚が前面に押し出されています。そして、それは幾らか即興的であるとも言えます。第2楽章のロマンティックな雰囲気は素晴らしく、思わず惹きつけられます。

2edebf2ef962870ed7a190d588ced904ダニエル・バレンボイム独奏/指揮、イギリス室内管弦楽団(1968年録音/EMI盤) EMIの全集盤に含まれています。この演奏もウイーンらしい柔らかさや甘さがこぼれるようで、ロマンティックな味わいが充分です。第2楽章の沈滞する雰囲気などはとてもユニークです。全体に堅苦しさの無い自在さを感じさせるので、それがモーツァルトにとても良く似合います。反面、この曲の持つ古典性が薄れているので、評価は聴き手の好みに左右されると思います。

Fi2546314_0e アンネローゼ・ シュミット独奏、マズア指揮ドレスデン・フィル(1976年録音/独edel盤) 全集盤からの演奏です。相変わらず格調の高い演奏です。マズアの率いるオケ伴奏が充実しています。すこぶる堅牢でいて柔らかさを失いません。ここではドレスデン・フィルが第一級の響きを醸し出しています。シュミット女史のピアノも堅実で安定感を感じます。1楽章のきりりと引き締まった古典的な風情も素晴らしいですが、2楽章では逆に遅めのテンポで淡々と歌わせます。3楽章の立体的な造形も素晴らしく、全体に知情のバランスの取れた秀演です。

というわけで、この曲については、古典性とロマン性のバランスが非常に良いシュミット/マズア盤に一番惹かれています。

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2011年7月18日 (月)

なでしこジャパン W杯優勝おめでとう!

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今朝は当然、早朝に起きて女子サッカーのW杯決勝をテレビ観戦しました。強く速く、おまけに上手い米国のチームの激しい攻撃にさらされましたが、点を奪われると取り返すという粘りの展開。とうとうPK戦にもつれこんだ末に勝利を勝ち取りました。いやー、涙が止まらなかったですね。

それにしても日本の若い女性達の素晴らしさをつくづく感じました。ニックネームの「撫子(なでしこ)」は、もちろん「大和撫子」から来ているのでしょうが、『見た目は弱々しく可憐でも、内面はしっかりして我侭でない女性』という意味のようです。確かに欧米の選手たちと比べると、まるで大人と子供の違い。中学生ぐらいにしか見えないでしょう。その小さな娘たちが献身的なプレーでチーム一丸となって優勝を勝ち取ったのですから、世界の人たちが驚きと称賛を与えるのも当然です。なでしこたち、優勝おめでとう!そして感動をありがとう!

それはそうと決勝進出が決まったとたんに、菅首相がドイツに決勝戦を観戦しに行きたがったそうですね。党内から、震災復興が遅れている時に、政府専用機で2000万円の費用をかけて行くとは何事かと制止されてあきらめたみたいですが、ホントに我が国の首相の頭はどうなっているのでしょう。

あと、この大会は開催前からサッカーファンには話題になっていたのに、NHKの放送がBSのみというのはけしからん話です。決勝戦こそフジテレビが生放送をしてくれたので、BS契約をしていない我が家でも観戦が出来ましたが、それが無ければ一試合も観戦出来ませんでした。放送受信料を取っていながら、そして地デジ地デジと進めていながら、国民的行事の扱いがこれとは一体どういうことでしょうか。NHK受信料を払うのは止めようかと思ってしまいます。

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2011年7月17日 (日)

モーツァルト ピアノ協奏曲第13番ハ長調K.415

ウイーンに引っ越したモーツァルトが、「予約演奏会」の為に作曲した3曲のピアノ協奏曲、第11番、第12番、第13番の中で最後に作られたのが第13番ハ長調です。言うなれば3兄弟の三男坊です。ところがこの末っ子は、すこぶる出来の良い優等生です。長男も次男もとても魅力的ですが、三男の魅力にはさすがの兄貴二人も脱帽です。

モーツァルトはこの曲に、オーボエ、ホルンの他に、ファゴット、トランペット、ティンパニーまで使っていますので、非常に壮麗な響きを生み出しています。

第1楽章アレグロは、編成の大きさが最も生かされています。冒頭の弦によるフーガに始まり、展開されて気宇壮大にオーケストラが鳴り渡る様は、まるで「ハフナー」か「ジュピター」をも思わせるほどです。ピアノ・パートも華麗にテクニッックを駆使してとても聴き応えがあります。

第2楽章アンダンテは、実は作曲の直前に亡くなったヨハン・クリスティアン・バッハのオペラ「誠意の災い」序曲から、そっくり流用しています。これは、追悼の意を示すために違いありません。但し後半に転調しながら、ほの暗さから徐々に寂寥感を感じさせる部分などはモーツァルトそのものとなっていて非常に素晴らしいです。

第3楽章アレグロは、ウイーンに意気揚々と乗り込んできたモーツァルトの気分が良く表れています。実に楽しい楽章です。

それでは、僕の愛聴盤のご紹介です。

671 ゲザ・アンダ独奏/指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム室内管(1967年録音/グラモフォン盤) 全集盤への演奏です。何故かこの曲は録音がパリッとしません。その為か、演奏もそんな風に聴こえてしまいます。モーツァルテウム管の演奏も雑に感じられますし、ピアノもどうも鈍く、いつものアンダの魅力が感じられません。水準の高いアンダの全集の中では珍しく、余り出来の良くない演奏だと思います。

2edebf2ef962870ed7a190d588ced904ダニエル・バレンボイム独奏/指揮、イギリス室内管弦楽団(1967年録音/EMI盤) EMIの全集盤に含まれています。バレンボイムの演奏は、堅苦しいところが無く、型にはまらない自在さを感じさせるのが最大の魅力です。自分にとっては正にモーツァルトのイメージそのものなのです。バレンボイムとしては平均的な出来栄えに思いますが、他のピアニストでは聴けない良さが有るので、存在価値が高いのです。2楽章の哀愁漂う雰囲気も非常に素晴らしいです。

Fi2546314_0e アンネローゼ・ シュミット独奏、マズア指揮ドレスデン・フィル(1976年録音/独edel盤) 全集盤からの演奏です。導入部で、マズア/ドレスデン・フィルがとても充実した響きを聞かせてくれます。シュミット女史のピアノは相変わらず堅実ですが、1楽章などは速めのテンポで実に立派に弾き切っています。2楽章も淡々としてはいますが、しっとりとした情緒を感じさせます。3楽章ではアレグロ部の躍動感とアダージョ部の寂寥感との対比がとても効果的です。この演奏はとても気に入っています。

Michelangeli15 アルトゥーロ・ベネディッティ・ミケランジェリ独奏、ガーベン指揮北ドイツ放送響(1990年録音/グラモフォン盤) 何しろ録音の数の少ないミケランジェリですが、90年代にもなってモーツァルトのコンチェルトを何曲か聴けるとは思ってもいませんでした。第15番とのカップリングのこの録音は、かつての目の覚めるような鮮やかなテクニックはだいぶ影を潜めた感じですが、一つ一つの音を細心の注意を払って弾くスタイルは少しも変わりません。ゆったりとしたテンポで本当に音楽を慈しんでいます。この人は誰の曲を演奏しても全部ミケランジェリですが、そこがいいんですね。

この曲に関しては、オーケストラとトータルでシュミット/マズア盤が一番気に入っています。それとバレンボイムとミケランジェリも捨てがたいです。昔、アナログ盤で聴いていたのはハスキル/パウムガルトナーでしたが、現在CDは持っていません。久しぶりに聴き直してみたいものです。

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2011年7月14日 (木)

モーツァルト ピアノ協奏曲第12番イ長調K.414

ウイーンに引っ越したモーツァルトが、自ら主催する「予約演奏会」の為に作曲したのが、ピアノ協奏曲第11番、第12番、第13番の3曲です。その中で最初に書かれたのは第12番ですが、この曲が出来上がったあとにモーツァルトは、「僕の予約演奏会に間に合わせるために、あと2曲のピアノ協奏曲を書かなくてはなりません。」と語っています。その、「あと2曲」というのが、第11番と第13番のことなのです。

さて、3兄弟の実は長男の第12番ですが、イ長調という調性からは、大傑作の第23番K.488を思い浮かべてしまいますよね。曲の雰囲気に似たものを感じる気がします。もちろん音楽の充実度に於いてK.488と比べるわけにはゆきませんが、「さあこれからウイーンで活躍してみせるぞ!」というモーツァルトの意気込みを感じる非常に美しい作品です。

第1楽章アレグロは、ウイーンらしい柔らさや甘さ、それに優雅さを感じさせる曲想です。やはり新天地での影響が少なからず有ると思います。

第2楽章アンダンテですが、実はこの曲を書く直前に亡くなったヨハン・クリスティアン・バッハのオペラ「誠意の災い」序曲から、主題をそっくり流用しています。これは、追悼の意を示すために違いありません。但し後半に転調しながら、ほの暗さから徐々に寂寥感を感じさせる部分などはモーツァルトそのものです。

第3楽章はロンド‐アレグレットは、ウイーンに意気揚々と乗り込んできたモーツァルトの気分が良く表れています。実に楽しい楽章です。

それでは、僕の愛聴盤のご紹介です。毎回同じ演奏家で申し訳ありません。

671 ゲザ・アンダ独奏/指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム室内管(1965年録音/グラモフォン盤) 全集盤からの演奏です。アンダの演奏はどれも凛としていて良いのですが、1楽章では何となくノリの悪さを感じます。ピアノのスケールも流れが今一つに感じますし、曲に対してどこか手探り状態のような気がしてしまいます。第2楽章も同じような印象です。3楽章でようやく、ウイーンに意気揚々と乗り込んできたモーツァルトの楽しい気分が表れます。1楽章からこういう気分が出ていれば良かったのになぁと思ってしまいます。

2edebf2ef962870ed7a190d588ced904ダニエル・バレンボイム独奏/指揮、イギリス室内管弦楽団(1973年録音/EMI盤) EMIの全集盤に含まれています。格調の高さよりは、ウイーンらしい柔らさや甘さ、それに型にはまらない自在さを感じさせる演奏です。ロマンティックに傾いていますが、それはモーツァルトの本質だと思うので、違和感は全く感じません。1楽章から全開で、本当にモーツァルト自身のピアノを聴いているような楽しい演奏です。2楽章のこぼれるような美しさも実に素晴らしいです。3楽章はテンポが速く、心が浮き立つようです。

Fi2546314_0e アンネローゼ・ シュミット独奏、マズア指揮ドレスデン・フィル(1978年録音/独edel盤) 全集盤からの演奏です。相変わらず格調の高い演奏です。シュミット女史のピアノは実に堅実なのですが、勇んでウイーンに乗り込んできたモーツァルトにしては、1楽章などは少々真面目過ぎて面白みに欠ける感も有ります。2楽章も堅実ですが、後半では寂しさを意外に感じさせます。3楽章の心が浮き立つような躍動感は良く出ています。ピアノのタッチも歯切れがよく安心して聴いていられます。この演奏は中々に良いと思います。

Mozart_serkin ルドルフ・ゼルキン独奏、アバド指揮ロンドン響(1981年録音/グラモフォン盤) BOX選集に含まれています。第1楽章は、柔らかい表情のオケ伴奏で開始します。こういう曲はアバドは実に上手いですね。ゼルキンのピアノはゆったりしていますが、風格の有る演奏を聞かせます。しかし白眉はやはり第2楽章で、老境ゼルキンが実に深い呼吸でモノローグのように淡々と演奏するさまには自然と引き付けられます。第3楽章も遅めですが、一つ一つのフレーズをじっくり丁寧に弾き切っていて魅力的です。決して流れを失うことなく音楽の熟成を感じる演奏です。

というわけで、この曲についても、第11番と同じくバレンボイムのEMI盤が僕は一番好きですが、ゼルキンも好きです。

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2011年7月 6日 (水)

ホルスト 組曲「惑星」 名盤 ~七夕スペシャル~

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明日は七夕ですね。「七夕伝説」と言えば、織姫(おりひめ)と牽牛(けんぎゅう)が1年に一日だけ会えるという有名なお話ですが、この二人はご夫婦なんですよね。二人とも結婚する前は大変な働き者だったそうです。それが結婚したとたんに、毎日毎日天の川のほとりでラブラブばかりしていて、ちっとも働かなくなってしまいました。そこで天帝が怒って二人を天の川の両岸に別れさせてしまい、7月7日だけは会えるようにようにしたのだそうです。これ、ちょっと可哀そうですよね。新婚さんだったら仕方がないですよね。現代人じゃ無いのですし、新婚さんのうちぐらいゆっくりラブラブさせてあげれば良いのにね。どうせ、そのうちに熱は冷めちゃうんでしょうから。(苦笑)

でも、おかげで「元祖遠距離恋愛」状態になったので、逆にいまだにラブラブが続いているのかもしれませんね。1年に一晩だけじゃ、お二人ともさぞや燃え尽きるんでしょうね。明日も熱い熱い夜になることでしょう。

ところで、星にちなんだ曲と言えば、やはりホルストの「惑星」です。ホルストの代表作、というよりも20世紀の代表的な管弦楽曲の一つです。地球以外の太陽系の七つの惑星に、それぞれの名前の曲を作ったのですね。大編成のわりには親しみ易く分り易い内容です。ですのでとても人気が有りますね。

七つの曲は次の通りです。

 「火星」 戦争をもたらす者

 「金星」 平和をもたらす者

 「水星」 翼のある使者

 「木星」 快楽をもたらす者

 「土星」 老いをもたらす者

 「天王星」 魔術師

 「海王星」 神秘主義者

この中で、一番良く知られているのは「木星」です。何年か前に平原綾香さんが「ジュピター」として大ヒットさせたので有名ですね。原曲はさすがに素晴らしく、個人的にはやはりこの曲が好きです。「火星」も人気が有りますが、まるで「スターウォーズ」なのが、ちょっとです。というか、スターウォーズが真似したんでしょうけどね。一転して、静かで詩情のある「金星」を聴くと、ああ英国の音楽だなあ、と思います。全体的にイギリス音楽の趣きは希薄ですが、この曲は別です。

それでは僕の愛聴盤です。

Srcr9080 レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル(1971年録音/CBS盤) 昔、アナログ盤時代から愛聴しました。この演奏が好きな理由はただ一つ。「木星」が断然素晴らしいからです。特にこの曲の中間部で、ぐっとテンポを落として歌う部分には胸を揺さぶられます。ホルストの音楽からは少々はみ出しているかもしれませんが、この圧倒的な説得力の前ではどうでも良くなります。但し他の曲は、繊細さがいま一つのようにも感じます。イギリス音楽らしい詩情が更に欲しい気がします。幾ら「近代管弦楽」と言っても、何となくアメリカ音楽のように聞こえるのは気のせいでしょうか。

Holst エードリアン・ボールト指揮ロンドン・フィル(1978年録音/EMI盤) ボールト卿は、なにせこの曲の初演者です。生涯の録音回数は何と5回(!)に及びます。4回目の録音のニュー・フィルハーモニア管盤も評価が高いようですが、僕が持っているのは最後の録音です。この演奏は本当に素晴らしいですね。少しも派手派手しくならずに、「音の暴力」とはまるで無縁。大人の品格を感じさせます。「金星」では詩情が溢れるようで、実に美しいです。反面「木星」はバーンスタインと比べると軽く穏やか過ぎて、幾らか物足りなさを感じます。一番好きな曲なので残念ですが、他の曲の素晴らしさで、この演奏はやはり外せません。

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