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2011年6月 8日 (水)

モーツァルト ピアノ協奏曲第8番「リュッツォウ」ハ長調K.246

モーツァルトは第7番「3台のピアノのための協奏曲」K.242に続いてすぐにピアノ協奏曲第8番K.246を作曲しました。この曲もまた、ザルツブルクの貴族からの依頼で作曲しました。依頼主はリュッツォウ伯爵夫人ですので、この曲は「リュッツォウ・コンチェルト」と呼ばれています。そのリュッツォウ伯爵夫人はザルツブルクのコロレド大司教の姪にあたる人なのですが、ピアノをモツパパのレオポルトに習い、音楽に中々の才能を示したようです。

伯爵夫人のために書かれた曲なので、ピアノのパートは比較的易しく書かれています。けれども曲想は非常に魅力的です。5番、6番も素晴らしかったですが、モーツァルトの才能が飛躍的に進化して花開いた作品はこの第8番です。一般的には、よく第9番「ジュノーム」がピアノ協奏曲の最初の傑作というように述べられますが、僕はこの8番こそが最初の傑作だと思います。

曲の内容については以下の通りです。

第1楽章 アレグロ・アペルト この曲で最も魅力的な楽章です。天空に舞い上がるかのような生命力が素晴らしいです。ピアノとオーケストラの掛け合いに迫力を感じます。

第2楽章アンダンテ この楽章は非常に美しく、心に迫りくる何かが有ります。

第3楽章ロンド、テンポ・デ・メヌエット ピアノのソロで開始する非常に優美で美しい音楽ですが、終楽章としては幾らか物足りない気もします。但し、それは初期のモーツァルトの曲に案外多く見られるパターンです。

それでは、僕の愛聴盤です。

41h5p5kghfl__sl500_aa300_ ウイルヘルム・ケンプ独奏/ライトナー指揮、ベルリン・フィル(1962年録音/グラモフォン盤) 第1楽章は、ゆったりとしたテンポで進みます。ケンプはおよそ「切れの良さ」を感じない大時代的なピアノですが、逆に現代では決して聴くことが出来ない「ゆとり」を感じます。これは非常に得難いです。第2楽章は意外にあっさりと流していますが、味わいは深く、正に至芸と言えます。そして第3楽章の優美なことはこの上ありません。日本のオールドファンにはおなじみのライトナーが指揮する当時のベルリン・フィルも落ち着いた音色が美しいです。

671 ゲザ・アンダ独奏/指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム室内管(1968年録音/グラモフォン盤) 全集盤からの演奏です。相変わらず、硬質で素朴なピアノの音は個性的ですが僕は好きです。第1楽章では突き進む推進力が非常に素晴らしいです。かと言って決して速過ぎるようには感じません。テンポ設定が抜群だと思います。2楽章と3楽章は逆に遅めのテンポで一音一音を慈しむような弾き方です。典雅な表情付けとニュアンスの変化が実に見事です。

2edebf2ef962870ed7a190d588ced904 ダニエル・バレンボイム独奏/指揮、イギリス室内管弦楽団(1973年録音/EMI盤) EMIの全集盤に含まれています。バレンボイムはこの曲でも全体にテンポを遅く取って、典雅さや優美さを醸し出しています。その為に、第1楽章などは天馬空をゆく勢いが薄れてしまいました。2、3楽章では魅力を発揮しますが、聞かせどころの1楽章でマイナスポイントは痛手です。この曲でもピアノのフィンガリングには幾らか凸凹を感じさせます。

Fi2546314_0e アンネローゼ・ シュミット独奏、マズア指揮ドレスデン・フィル(1977年録音/独edel盤) 全体的にテンポが速めです。ピアノもオーケストラも歯切れの良さと爽快感は見事なのですが、ちょっと速過ぎのような気がします。2、3楽章もずっと速めで通すので、典雅さや優美さの味わいが欠けてしまいました。実に端正でスッキリしているので、ロココ調というよりはバロック調、と言い方も出来るのかもしれません。

Mozart_serkin ルドルフ・ゼルキン独奏、アバド指揮ロンドン響(1982年録音/グラモフォン盤) ゼルキンが晩年にアバドと録音した演奏のBOX選集に含まれます。第1楽章はケンプ以上に遅いテンポでゆっくりです。これは幾らなんでも遅過ぎかなぁと思いますし、この曲の持つ「天馬空を行く」雰囲気は全くありません。ピアノの切れもケンプ以上に有りません。けれども第2楽章や第3楽章の中間部で聞かせる沈み込む雰囲気は、老境のゼルキンならではでユニークです。個性的な演奏として価値が有ると思います。

というわけで、僕はこの曲に関してはケンプとアンダを好んでいます。

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モーツァルト(協奏曲: ピアノ 第01~9番)」カテゴリの記事

コメント

ひらけんです。コメント第9番です。
モーツァルトのピアノコンチェルトについては、特に前半曲のコレクションが不足していたため、ハルくんの曲の紹介に合わせ、この度、買い増ししました。
バレンボイム新盤とソフロニツキー(ピリオド演奏)です。まだ一部しか聴けていませんが、どちらも素晴らしいです。録音も良質です。
これで、第八番は、五枚所有となりましたが、内訳は、上記のほか、ゼルキン、シュミット、キルヒェンライト(?)です。いわゆるお買い得の箱入り全集セットです。
どの盤の演奏も甲乙つけがたいですが、ゼルキンが一歩リードでしょうか。歌い方、リタルダンド、スローテンポ・・・。安心して聴けます。私にピッタリとハマるんです。
ということは、買い増しは無駄だったか?でも、内田さんやアシュケナージも欲しいなあ。

投稿: ひらけん | 2011年8月 2日 (火) 22時42分

ひらけんさん、こんにちは。

ゼルキンが一歩リードですか。ゆったりとりた演奏がお好きであれば、ケンプなんかも良いと思いますよ。
アシュケナージは元々余り好きではありませんが、モーツァルト演奏の美しさは中々のものだと思います。
内田さんは、どうも堅苦しさを感じて苦手です。
色々と聴き比べてみるのは本当に楽しいですよね。またのご感想を楽しみにしています。

投稿: ハルくん | 2011年8月 3日 (水) 22時51分

ハルくんさん、こんにちは。ひらけんです。
ゼルキンを購入されたのですね。また、記事も更新ということで、感謝!感激!です。
ということで、私も、ハルくんのお薦めのケンプを購入しました。
良い演奏ですね。八番が大好きになってしまいました。やっぱり、名演奏があれば、曲も光りますね。
ちなみに今日は仕事が夏休みで、朝からCD聴いて、これから昼はドイツビール飲んで、午後は名曲喫茶で、夜はコンサートに行ってきます。極楽です。

投稿: ひらけん | 2011年8月 8日 (月) 11時14分

ひらけんさん、こんばんは。

ゼルキン盤はもちろん曲によっての好みは有りますが、まとめて聴くと素晴らしさを実感します。ケンプも気に入られたようなので良かったです。

今日は正に天国のような一日なんですね。思う存分満喫されたことでしょうね。

投稿: ハルくん | 2011年8月 8日 (月) 22時31分

こんばんは。

アンダ盤、なかなかの名演だと思います。
段々と尻上がりに美しさが増していきます。

特に第3楽章の流れの良さとピアノの美しさは特筆ものです。

曲自体は少し単調ですが、モーツァルトの魅力は十分ですね。

投稿: 影の王子 | 2014年10月11日 (土) 20時25分

影の王子さん、こんにちは。

アンダの演奏は良いですよね。
曲は確かに幾らか単調さがあるかもしれませんが、良い演奏で聴くと非常に魅力を感じる曲で大好きです。

投稿: ハルくん | 2014年10月12日 (日) 15時37分

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