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2011年6月18日 (土)

モーツァルト ピアノ協奏曲第10番「2台のピアノのための協奏曲」変ホ長調K.365

モーツァルトが生まれ故郷のザルツブルクを離れる前に書いた最後のピアノ協奏曲が、第10番「2台のピアノのための協奏曲」です。これは「3台のピアノのための協奏曲」と同じように、誰かからの委嘱によって書かれたという説が有る一方で、モーツァルトが姉ナンネルと一緒に演奏するために自発的に作曲したという説も有ります。本当のところは分かっていません。「3台のピアノの協奏曲」では、第3ピアノが技巧的に易しく、いわば付け足しのような存在でしたが、この曲では2台のピアノの両方にかなり高度な技巧が要求されます。そのことを考えると、ピアノの名手であったナンネルと自分の二人で弾くつもりだったのではないかなぁ、と思えてしまうのですが。曲としては、前半はいま一つかなぁと思って聴いていると、2楽章の後半以降が断然素晴らしくなります。

第1楽章アレグロは、堂々とした風格を持つ楽章です。曲想に特別な閃きは感じません。どちらかいうと作曲技巧を駆使している印象の方が強いです。それでも聴き手を楽しませてしまうあたりは、さすがにモーツァルトです。

第2楽章アンダンテは、ゆったりと優雅に流れる楽章です。前半はモーツァルトとしては標準的な出来かなと思いますが、後半に入ると音楽がどんどん美しさを増してゆき、心に深く浸みこんできます。

第3楽章ロンド、アレグロは、この曲の白眉であり、僕の大好きな楽章です。曲想はとてもシンプルなのですが、非常に快活で楽しく、独特の愉悦感を持っていて少しも飽きさせません。特に後半に入って、少しづつかげりを感じさせながら彩が刻々と変化してゆく様は本当に魅力的で、モーツァルトの魅力ここに極まれりです。

この曲でも「3台のピアノの協奏曲」と同じように、僕の所有するCDは一つだけです。

Mozart_2_pianos_3_pianos

ウラジーミル・アシュケナージ、ダニエル・バレンボイム独奏/指揮イギリス室内管(1972年録音/DECCA盤)

二人の名手の息がぴったりです。この曲でも指揮をしているのはバレンボイムなのですが、音楽の造り方はむしろ、くせが無いアシュケナージのスタイルに近いと思います。二人の独奏者の実力が拮抗していること、そのピアノの音の美しさ、オーケストラの美しさ、アンサンブルの見事さと、これ以上の演奏はそうそう望めないのではないでしょうか。まずは理想の演奏だと言えます。

ということで、ここまではザルツブルク時代の作品である第10番までを聴いてきました。第9番「ジュノーム」の出来映えが一番とは言うものの、他の曲のどれもが捨て難い名曲ばかりだと思います。次回からはいよいよウイーンに移り住んでからの作品です。どの曲も美しい名作なので、今回あらためて聴き直すのがとても楽しみです。

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モーツァルト(協奏曲: ピアノ 第10~19番)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん
おはようございます。
ボクは「2台ピアノ」はなかなか好きです。聴いていて楽しい曲で、何だかワクワクしてきます。
かつてはグルダ/コリア/アーノンクールで楽しんでいましたが、今はカサドシュ夫妻とか、ラローチャ/プレヴィンも聴いています。
アシュケナージ/バレンボイムはまだですが(笑)

投稿: アルトゥール | 2011年6月19日 (日) 06時03分

アルトゥールさん、おはようございます。

アルトゥールさんはカサドシュがお好きなのでしたよね。この人のモーツァルトはやっぱり良いですね。この曲の演奏も聴いてみたいです。
他には今は持っていませんが、ベーム伴奏で、ギレリス父娘の演奏も昔聴いたことがありました。

どちらにしても、この曲はとても良い曲ですよね。特に後半が大好きです。

投稿: ハルくん | 2011年6月19日 (日) 08時10分

ハルくん、おはようございます。ひらけんです。コメント第3番は、二台のピアノのためのコンチェルトですが、名曲ですね。ハルくんのコメントのとおり、第2楽章の後半以降、アンダンテのピアノとオーボエとのアンサンブルのところ、終楽章のピアノのアンサンブルなど最高ですね。
さて、私の愛聴盤ですがアルゲリッチ、ラビノヴィチ盤ですね。二人とも自由奔放でスリリングでありますが、フレーズの抑揚などは一つ一つに意味があって繊細であり、アンサンブルも申し分なしです。このアルバムには他にピアノコンチェルト19番、20番が入っていて、10番も必ず一緒に聴いています。メジャーな曲ではありませんが、この二人が演奏すると素晴らしいですね。

投稿: ひらけん | 2011年7月19日 (火) 06時51分

ひらけんさん、コメントたくさんありがとうございます。

この曲は隠れたる?名曲ですよね。特に後半は大好きです。
アルゲリッチのピアノにラビノヴィチが伴奏指揮したコンサートを生で聴いたことがあります。ただしベートーベンでしたが。
演奏は非常に二人の息が合っていましたね。音楽的にも合うのでしょう。20番なんかはすごく面白そうですね。

投稿: ハルくん | 2011年7月20日 (水) 12時38分

ハルくんさん、こんばんは。
ルプーの 協奏曲 第21.12のCDを聴いてみました。
なるほど どちらも良い演奏ですね。確かに リパッティやハスキルを思い起こさせますね。
私は、どちらかと言うと 第12番の方が好みの演奏だったので、ペライアとルプーが演奏した、10番と7番(モーツァルト自身による2台のピアノ編曲版)も聴いてみました。
この組み合わせは良いですね。二人のピアノが 「光」 「影」、「陽」 「陰」、「硬」 「軟」 など、好対照的で 何もしてない様に聴こえて、実は なかなか深い演奏になっていると思います。
第3楽章など、まるで名歌手同士のオペラの二重唱のようです。
もちろんオケも イギリス室内管なので 非常に美しいです。

投稿: ヨシツグカ | 2014年6月 7日 (土) 23時17分

ヨシツグカさん、こんばんは。

ルプーのモーツァルト良いですよね。
そうですか、ペライアと共演した”2台の協奏曲”のCDも有ったのですね。確かに両者のピアノの音は割に近い気がしますし、なによりリリシズムを大切にしている点も似ていますね。
これは是非聴いてみたいですね。
ありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2014年6月 8日 (日) 00時12分

こんばんは。

例のバーンスタインBOXでこの曲を聴いてみました。
ソリストは「3台の」と同じ
アーサー・ゴールドとロバート・フィッツデイル
そして、ニューヨーク・フィル、1970年録音です。

第2楽章のおっとりとした趣きが良いですし
ご指摘の通り、第3楽章が一番愉しいです。

今後は、この曲の録音が増えるといいですね。

投稿: 影の王子 | 2015年1月 2日 (金) 18時19分

影の王子さん、こんにちは。

この曲は好きですし、特に第3楽章は素晴らしいですよね。
同感です。もっと録音が増えて多く聴かれると良いなと思います。

投稿: ハルくん | 2015年1月 4日 (日) 18時44分

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