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2011年6月30日 (木)

モーツァルト ピアノ協奏曲第11番ヘ長調K.413

生まれ故郷ザルツブルクでのモーツァルトの音楽活動は、コロレド大司教の権力下で随分と制約を受けていました。例えば、大好きな旅行に行くのにいちいち許可を貰わなければならないとか、教会での典礼音楽は45分以内に短く収めなければならないとかです。そのためにモーツァルトはザルツブルクを離れたくて仕方が無かったのです。

1782年になって、やっと希望が実現したモーツァルトは、ザルツブルクを後にしてウイーンに拠点を移しました。ウイーンでは「予約演奏会」を自ら主催し、新曲を披露して、その後に楽譜を出版して収入を得るという、作曲家兼ピアニストの生活を送るようになります。

31rt4f3b26l__sl500_aa300__3 その予約演奏会の為に3曲まとめて作曲したのが、ピアノ協奏曲第11番、第12番、第13番です。ですので、3曲はいわば「だんご3兄弟」なのです。但し、最初に書かれたのは12番で、それから11番と13番が書かれました。この3人、いえ3曲に共通しているのは、ウイーンの聴衆を意識した柔らかい甘さと美しさです。それは、まるでウイーンのお菓子のようです。ですので、「だんご」というよりは「ザッハトルテ3兄弟」と言ったほうがピッタリなのかもしれません。

ということで、今回は3兄弟の「長男」として届けられている第11番です。

第1楽章アレグロは珍しい3拍子ですが、古典的な格調の高さの中に躍動感と喜びが一杯に満ち溢れています。

第2楽章ラルゲットはこの曲の白眉であって、大変に魅惑的な楽章です。ゆるやかな規則正しいリズムに刻まれて、幸福な静けさを感じます。それは「天国的」というよりも、むしろ「母親の胎内で誕生を待つ子供の至福の時」というような印象を受けます。もちろん自分は、その時のことを憶えているはずはありませんが、何かそんなことを思い浮かべてしまいます。

第3楽章テンポ・デ・メヌエットも第2楽章の余韻を破らない幸福感と美しさが有ります。終楽章としては、力強さや高揚感に欠けますが、やはり魅力的な曲です。

それでは、僕の愛聴盤のご紹介です。

671 ゲザ・アンダ独奏/指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム室内管(1968年録音/グラモフォン盤) 全集盤からの演奏です。アンダの演奏にはどれも凛とした品格を感じます。リズムを正確に刻み、きりりと引き締まってはいますが、無機的に感じることは無く、常に暖かい肌触りを感じるのです。2楽章は速めのテンポですが、味わいが欠けることは無く、曲の素晴らしさを満喫できます。また、1、3楽章の格調の高さはいかばかりでしょうか。ピアノの音は硬質ですが、タッチの滑らかさはさすがです。

2edebf2ef962870ed7a190d588ced904ダニエル・バレンボイム独奏/指揮、イギリス室内管弦楽団(1973年録音/EMI盤) EMIの全集盤に含まれています。僕はこの曲では第2楽章に最も惹かれますが、その理由は、多分このバレンボイムの演奏が有るからだと思います。本文で「母親の胎内の至福の時」と表現したのも、この演奏を聴いてイメージさせられました。非常に遅いテンポがそれを感じさせてくれます。もちろん第1楽章や第3楽章のウイーンらしい柔らさや甘さも最高です。型にはまらない自在さを感じるのも、モーツァルト自身のピアノを聴くようで楽しいです。バレンボイムの全集には曲による出来不出来が有ると思いますが、この演奏はベストのうちの一つです。

Fi2546314_0e アンネローゼ・ シュミット独奏、マズア指揮ドレスデン・フィル(1978年録音/独edel盤) 全集盤からの演奏です。この演奏の格調の高さもアンダ盤に劣りません。シュミット女史はどの曲でも、きっちりと明解にピアノを弾きますが、この曲ではそこに力強さを感じます。この曲には、ふつう男性的な要素は余り感じませんが、彼女の演奏にはそれを感じます。決して「武骨」という意味では無くて、「情緒に流されない」という意味合いでです。それを「ウイーン風」では無く、「ドイツ風」と言えないことも無いかもしれません。但しその分、2楽章はテンポが速過ぎてすっきりし過ぎに思います。

というわけで、この曲についてはバレンボイムが最高です。もしもこの曲にピンとこない方がおられたら、一度バレンボイムの演奏を聴かれてみてはいかがでしょうか。

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モーツァルト(協奏曲: ピアノ 第10~19番)」カテゴリの記事

コメント

ひらけんです。コメント第11番です。
モーツァルトのピアノコンチェルト11番です。所有盤は、バレンボイム新盤、旧盤のほか、いろいろですが、今日は名曲喫茶で聴いたリリークラウスについてです。馴染みの名曲喫茶があって週に1回くらい通っています。オーディオシステムは、もちろんアナログで大きな古そうなスピーカーがどーんとあります。良い音しますね。リリークラウスの録音は古いですが、音は新しく、というより目の前で弾いているかのようで、イキイキとしています。
昔はレコードを所有していましたが、すべて手放してしまいました。スペースの問題が大きかったからですが、これからの時代はCDだと錯覚したことでしょうか。失って分かりました。でも、自分のオーディオではいい音を聴くことはできませんでしたので、また、今は名曲喫茶で素晴らしい音で聴くことができるので後悔はしてません。
ということで、リリークラウス、ハスキル、ヘブラーなどは大好きですので、名曲喫茶でリクエストして楽しんでいます。

投稿: ひらけん | 2011年8月 7日 (日) 15時33分

ひらけんさん、こちらへもコメントありがとうございます。

昔は結構、街中に名曲喫茶が多く有りましたが、最近はすっかり減ってしまいましたね。とても残念です。
大きなオーディオ装置も魅力的なのですが、あの何とも言えないくつろげる癒しの空間が好きです。
アナログ盤をリクエストして聴けるのも素晴らしいですね。ゆっくり楽しまれてください。
また新しい発見などの感想をお聞かせ頂ければ嬉しいです。

投稿: ハルくん | 2011年8月 7日 (日) 16時30分

こんばんは。

本当に久しぶりにこの曲を聴いた(アシュケナージ盤)のですが
本当に感動しました。
日々の悩みや苦しみが癒されました。

おっしゃる通り、第2楽章がこの曲の白眉ですが
私は「恵みの雨」的な優しさを感じました。
また、全曲が多彩なニュアンスに富んで、単調さとは無縁です。
私はピアノ協奏曲にこそ
モーツァルトの最高の「職人芸」を感じます。

投稿: 影の王子 | 2016年5月20日 (金) 21時09分

影の王子さん、お返事が大変遅くなり申し訳ありません。

この曲、本当に素晴らしいですよね。第2楽章はやはり最高です。
ピアノ協奏曲、それとオペラがモーツァルトのベストカテゴリーでは無いでしょうか。

投稿: ハルくん | 2016年5月25日 (水) 00時03分

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