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2011年5月21日 (土)

モーツァルト ピアノ協奏曲第5番 ニ長調K.175 ~記念すべき協奏曲~

ピアノ協奏曲の第1番から4番までの4曲は他人の曲を編曲した習作でしたが、それから6年後の17歳になって、ついにモーツァルト自身の作によるピアノ協奏曲を完成させました。それが、ピアノ協奏曲第5番 ニ長調 K.175です。従って、これは記念すべき作品なのです。一般には「まだヨハン・クリスティアン・バッハの影響を留めている」と評価される一方で、オリヴィエ・メシアンは「試作というには、あまりに見事な腕前」と評価しましたし、モーツァルト愛好家のアインシュタインも「独奏楽器とオーケストラの釣合、ならびに規模の点で、既にヨハン・クリスティアンをはるかに越えている」と絶賛するなど、多くの人に高く評価されています。使用楽器はトランペットとティンパニを加えるなど、非常に華々しく色彩的な響きになっています。

第1楽章アレグロは、天馬空を行くような曲で、若きモーツァルトがオーケストラを従えて、堂々とピアノを弾く姿が思い浮かびます。間違いなく初期の傑作だと思います。

第2楽章アンダンテ・マ・ウン・ポコ・アダージョは、音楽にそれほどの深みこそは有りませんが、翳りの無い幸福なモーツァルトそのものです。

第3楽章アレグロは、曲の素材自体には特別な閃きこそ感じませんが、天才的な編曲の上手さを感じます。音楽は誰も止められないような生命力に満ち溢れています。なお、有名な「ロンド」K.382は、ウイーンでの演奏の際に、新しい終楽章として書かれたそうですが、やはり原曲のほうがずっと良いように思えます。

モーツァルトはこの記念すべき協奏曲に相当に愛着を持っていたらしく、各地で繰り返し演奏しましたし、最晩年まで弾き続けていたそうです。

それでは僕の愛聴盤をご紹介します。

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ゲザ・アンダ独奏/指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム室内管(1968年録音/グラモフォン盤) 全集盤に含まれています。初期の曲の演奏で感じた左手の和音の荒さが気になりません。恐らくモーツァルトの書いた管弦楽の響きが充実したために、バランスが適度になったからなのかもしれません。やはり素朴なピアノの音が好ましいです。表情のニュアンスの変化も過度では無く、適量に感じます。オーケストラが音符ごとにきめ細かくスタッカートとレガートを弾き分けているのは、明らかにアンダの指揮のせいで、本職顔負けのセンスの良さを感じます。全体的に立派な演奏で、クリスティアン・バッハの影響から抜け出して、モーツァルト自身の堂々とした音楽になっている印象です。

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ダニエル・バレンボイム独奏/指揮、イギリス室内管弦楽団(1969年録音/EMI盤) EMIの全集盤の中に含まれています。幾らか遅めのテンポで堂々と演奏される1楽章のオーケストラは、クリスティアン・バッハの影響ではなく、後期のモーツァルトかベートーヴェンをも感じさせます。但し、ピアノに関しては音の粒に重さを感じます。もう少し、音に羽の生えたような軽味が有る方が好みです。フィンガリングにも大雑把さを感じます。ところが2楽章では、逆に遅いテンポが生きています。何とロマンティックで音楽に深みを感じることでしょう。他の奏者とは別の曲を聴く趣が有ります。この楽章の演奏がある限り、このCDは外すことが出来ません。

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アンネローゼ・ シュミット独奏、マズア指揮ドレスデン・フィル(1977年録音/独edel盤) シュミットの全集には初期の4曲は無く、5番から収められています。録音当時はシュミットは堅実でも面白みのないピアニスト程度にしか思っていなくて、余り聴きませんでした。現在聴いても、堅実なのは間違いが有りません。一音一音を弾き飛ばすことなく、ドイツ的に確実に演奏しています。まるで譜面を見ながら聴いているような印象を受けます。けれども、これが無味乾燥でつまらないということでは決して無く、あくまでもスタイルの問題です。速めテンポの1楽章や3楽章の切れの良さと爽快感は見事ですし、マズアの指揮も含めて古典的に引き締まっていて、クリスティアン・バッハの影響を感じさせます。

とういうことで、この3つの演奏は、どれも捨てがたい魅力があります。

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モーツァルト(協奏曲: ピアノ 第01~9番)」カテゴリの記事

コメント

今晩は、ハルくん様。
本日5月22日東響定期演奏会に行って参りました。
演目はモーツァルトの協奏曲3番…でも、ハルくんの記事はピアノですが、ヴァイオリンの方でしたが…
この曲は弾むような躍動感や、素朴さのある協奏曲ですね。小編成な事もあり、何か可愛らしさも感じられました。
が反面、あまり盛り上がらないまま、あっさり曲が終わってしまった感が残ったかなぁ…モーツァルトファンに怒られちゃうかな↓ピアノの次はヴァイオリンの記事の予定はありますか?
ハルくんの意見を聞きたいです。
もう一曲はマーラー5番。これはもう、指揮者・楽団員ひとつになった熱演でした。ブラボーの声・声・声…素晴らしかったです。ただ悲しいかな、その中でも出口や駐車場が混雑しないうちに会場を出ようと席を発つ人が、かなりいるんですね。
熱演してくれた方々に申し訳なくて(涙&怒)
楽団員さんが解散するまで拍手しようよ~

投稿: From Seiko | 2011年5月22日 (日) 23時13分

Seikoさん、こんばんは。

今月は本当に音楽三昧ですね!
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲ももちろん好きです。3番はとてもチャーミングな曲ですよね。5番が一番好きですが、3番の繊細な魅力も捨てがたいです。最後が尻切れトンボみたいなのは、まあ御愛嬌でしょう。

ピアノのあとはシンフォニーです。ヴァイオリンはその後かなぁ。気長に待ってください。

マーラーも良かったようですね。僕はマーラー
の曲はしばらく生で聴いていないなぁ。

終演後の拍手のうちに席を立つ人は居ますね。遠いとか、終電の都合が有るとかいろいろ理由は有るのでしょうが、残念なことですね。

投稿: ハルくん | 2011年5月23日 (月) 23時01分

こんにちは。

連休の間はc-mollのPコンばかり聴いていました(深い意味はありません)。
しかし、初期のPコンでもすでに自分のスタイルをものにしているのは、まったくすごいですね。

投稿: かげっち | 2011年5月24日 (火) 12時25分

かげっちさん、こんにちは。

C-mollですか。K.491ですね。
後期の傑作のひとつですね。僕ももちろん好きですよ。

初期の作品で聴くことができる幸福なモーツァルトはなんとも魅力的に感じます。後期とはまた違った良さが有りますね。モーツァルトのスタイルとしてはとっくに完成されているのが、本当に凄いことです。

投稿: ハルくん | 2011年5月25日 (水) 00時28分

まったくモーツァルトとは何者なのでしょう。Sym25のような凄味のある曲を17歳くらいで書いたのですよね。かと思えば、晴れやかに快活になったり、天上の美しさを味わわせてくれたり、困った人です(笑)

投稿: かげっち | 2011年5月25日 (水) 12時18分

かげっちさん、そうなんですよぉ。
交響曲25番はK.183ですから、このP協5番の直後の作品なんですね。信じられませんよね。
それにしても、モーツァルトは神様がこの星に遣わした人間の姿をした宇宙人?としか思えませんね。とても人間とは思えません。彼の音楽は植物の成長を早める効果が有るのも確かだそうですし。

投稿: ハルくん | 2011年5月25日 (水) 22時37分

こんばんは。

アシュケナージ盤でようやく聴きました。
やはり「若書き」の作品という印象は否めませんが
モーツァルトの「職人芸」は既に完成されていたと思えます。
第2楽章はなかなか聴きごたえがあります。

モーツァルトの初期交響曲(第24番以前)はく聴く気がしませんが
ピアノ協奏曲はどの曲も愉しめますね
(短調の2曲は別枠で)。

ところで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲には
13歳時の変ホ長調WoO4があるのですが
これも実に良い曲です。
残念ながら、オケ譜が紛失しているため
(CDのは他人の編曲)演奏されませんが
もったいないです。

投稿: 影の王子 | 2015年8月23日 (日) 22時25分

影の王子さん

若書きにもかかわらず、魅力の有るのがモーツァルトの凄さですね。
シンフォニーよりはずっと楽しめますよね。

ベートーヴェンのその曲は知りませんでした。

投稿: ハルくん | 2015年8月25日 (火) 00時03分

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