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2011年1月10日 (月)

チャイコフスキー 弦楽四重奏曲第1番ニ長調「アンダンテ・カンタービレ付き」op.11 ~ロシア音楽紀行~

寒い冬が続きますので、「暖炉にあたった気分でロシア音楽を聴きましょうシリーズ」第2回です。今回は本当に暖炉にあたっている気分になりますよ。

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ご紹介するのはチャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番「アンダンテ・カンタービレ付き」です。チャイコフスキーは生涯に弦楽四重奏曲を正式には3曲しか残していません。そのうち悲歌の印象が強い第3番にも惹かれますが、やはり最も魅力を感じる作品は第1番です。また一般に広く知られているのもこの曲です。その大きな理由としては、第2楽章の「アンダンテ・カンタービレ」が有名だからです。チャイコフスキーはかつてウクライナの村に滞在したときに、村のペチカ(ロシア式の暖炉)造り職人が仕事をしながら歌っている民謡を聴いて、この曲の第1主題をつくりあげたそうです。どうりで暖炉にあたっている気分になるわけですよね。

けれどもこの曲は第2楽章以外もとても充実しています。第1楽章モデラート・エ・センプレーチェはゆったりとした、いかにもロシア情緒を湛えた雰囲気です。曲の魅力は第2楽章に少しも負けないと思います。第2楽章アンダンテ・カンタービレはもちろんロシア民謡そのものの悲歌ですが、この曲を演奏会で聴いた文豪トルストイが感動の余りに涙を流したと伝えられています。第3楽章スケルツォも民族舞曲を感じさせる個性的なリズムが魅力的です。第4楽章アレグロ・ジェストもやはりロシアの民族舞曲の性格を持つ胸の高鳴るような素晴らしい楽章です。

曲全体が非常に民族的で、第2楽章にエレジーを持ち、続く3、4楽章が民族舞曲風という構成はドヴォルザークの「アメリカ」によく似ています。どちらの曲も非常に魅力的で、広く愛聴されているのも同じです。

それでは僕が愛聴している演奏をご紹介します。

418bgpvydul__sl500_aa300_ ボロディン弦楽四重奏団(1979年録音/Aulos盤) ロシアの名カルテットの演奏です。彼らは3曲とも3回は録音していますが、僕の所有しているのは2度目のものです。第1バイオリンのミハイル・コぺルマンはシューベルトあたりを弾かせてもウイーン風に柔らかく聞かせる相当な名人だと思いますが、ロシアものを弾くときには正に最高です。全ての旋律の節回しがロシアの味そのものに感じます。他のメンバーも上手いですし、アンサンブルも優秀です。従って決定盤と言えると思います。このCDは韓国のAulosレーベルがメロディアのライセンスで発売したので音質は優れています。但し現在は廃盤のようなのでワーナーミュージックから出ている新盤のほうが入手性は良いと思います。同じコぺルマンが弾いていますので演奏は間違いないですし、どちらも3曲の他に弦楽六重奏曲「フィレンツェの想い出」がカップリングされていて楽しめます。

41zm8h2t6al__sl500_aa300_ スメタナ弦楽四重奏団(1966年録音/EMI盤) 僕の大好きなスメタナQも録音を残しています。全盛期の録音ですのでメンバーの技術が安定しています。但し、非常にしなやかで柔らかく歌っているのですが、どうもロシアものにしては少々しなやかに過ぎる気がします。美しい演奏には違いないのですが、ボロディンQたちに比べると、ロシアの良い意味での荒々しさに欠けるかな、と感じます。このCDにカップリングされたドヴォルザークの「アメリカ」の演奏のほうも若々しく、晩年の円熟した演奏とはまた別の魅力があって素晴らしいです。

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チャイコフスキー(室内楽)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、こんにちは

別な曲、チャイコフスキーの交響曲第5番もいかがでしょう。第1楽章と第2楽章でロシアの暗い大雪原を見てすっかり冷えた後、部屋中が暖かく、大きな暖炉で火がちろちろ燃えている第3楽章など。第4楽章は、年寄りの昔の自慢話として。
ロシアでなければ、ヴィヴァルディの「四季」から、「冬」の第2楽章が最高なのですが、アーヨのヴァイオリンで。HABABI

投稿: HABABI | 2011年1月10日 (月) 13時13分

HABABIさん、こんにちは。

交響曲第5番もいいですね。暖炉の傍らで年寄りの昔の自慢話を聞く、とはぴったりの表現ですね。

「四季」の冬もいいですね~。
やはりHABABIさんもアーヨ盤なんですね。この人の演奏は本当に素晴らしいです。

投稿: ハルくん | 2011年1月10日 (月) 15時34分

ハルくん、こんにちわ

「チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番」ですか、結構、好きな曲ですが、なぜか、CD等、持っていません。勿論、「アンダンテ・カンタービレ」の録音は持っていますが。

あ、持っているのは、「レナーSQ.」によるSP盤と、日本の「ハイドンSQ.」によるソノシートです。どちらも、好きな録音です。

投稿: matsumo | 2011年1月10日 (月) 18時16分

matsumoさん、こんにちは。

レナーSQとはまた古くて貴重な録音をお聴きになられていますね。
いい曲ですので、もしもお気が向けばロシアのボロディンSQお聴きになってみてください。「アンダンテ・カンタービレ」とてもいいですよ。

投稿: ハルくん | 2011年1月10日 (月) 18時38分

こんにちは。ここ数日、九州でもそれなりに寒い日が続いているので、こういう曲が恋しいです。
でもこのアンダンテ、山田耕筰作曲の「ペチカ」に似ていると前から思っているのですが、いかがですか?もちろん山田のほうが後ですけど。おばあさんの昔話みたいな感じですよね。そういえばミヨーにも「ルネ王の暖炉」という曲がありますが。

投稿: かげっち | 2011年1月11日 (火) 12時41分

今晩はハルさま。
今日、1月11日はこのブログに初めてお邪魔した記念すべき日なのですよ~。もう1年…でも、まだ1年?いろんな素敵な記事を沢山頂いて、何年分も楽しませてもらった気がします。ありがとうございます。
手元を確認したら『アンダンテ・カンタービレ』や他の曲が抜粋で入っている、CDしか持っていませんでした。これは是非ともハルさまご推薦盤を購入しなければ!
『アンダンテ・カンタービレ』はかな~り昔、海野義雄御大の生演奏を聞きましたが、テンポが速くせわしない感じがして、あまり良いと思えませんでした。

では、ハルさま。寒~い冬の夜、風邪などめしませぬよう。
私は、高見沢宏さんを偲んでダークダックスの『ペチカ』を聞いて過ごします。

投稿: From Seiko | 2011年1月11日 (火) 21時52分

Seikoさん、こんばんは。

そう言われてみれば、ちょうど1年前になるのですね。こちらこそいつもコメントを本当に楽しませて頂いてますよ。どうもありがとうございます。

Seikoさんも「ペチカ」を聴きながら、暖かくしてお休みくださいね。

投稿: ハルくん | 2011年1月11日 (火) 22時48分

かげっちさん、コメントお返事の順序が遅くなりました。

今年は西日本で雪が多いですから、チャイコフスキーを聴くには気分が出ていいですね。但し大雪での災害は困りますが。

感じは似ていますよね。やはり山田耕作がチャイコフスキーに影響されて作ったのじゃないですかね。「ルネ王の暖炉」という曲は全く聴いたことが有りません。

投稿: ハルくん | 2011年1月11日 (火) 23時41分

ルネ王とは15世紀のプロヴァンス伯、曲はミヨーが映画の中の中世の場面につけた音楽を木管五重奏に編み直したもので、書法は新しいですが題材は古風な味わい深い曲です。私は不勉強にも映画の内容をよく知らないのですが。
話は飛びますがつい先日ブラームスのピアノ五重奏の公開レッスンを聴きました。受講生はピアノ学生で弦4人はN響コンマスなど一流プロという贅沢な企画で、弦の響きの作り方に感銘を受けました。これから弦の曲の聴きかたが変わりそうな気がします。

投稿: かげっち | 2011年1月14日 (金) 12時24分

かげっちさん、詳しい説明をどうもありがとうございました。曲も聴いてみたいですが、その映画というのも観てみたいものですね。

ブラームスのピアノ五重奏曲は僕の偏愛する曲ですが、貴重な体験をされましたね。僕も昔は弦楽器を弾いていましたが、改めてそのようなレクチャーを受講してみたいです。

投稿: ハルくん | 2011年1月15日 (土) 00時23分

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