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2010年12月 7日 (火)

ドレスデン聖十字架合唱団 2010日本公演 J.S.バッハ「マタイ受難曲」

Dresdener_kreuzchor_2010

師走ですが、今年は第九を聴きに行かずに、代わりにドレスデン聖十字架合唱団の日本公演を聴きに行きました。会場は横浜みなとみらいホール。曲目はバッハの「マタイ受難曲」です。第九の代わりに聴くには充分の大作です。でも考えてみたら、僕がこの曲を生で聴くのは何と約30年ぶりです。その20代の時に聴いたのはライプチヒの聖トーマス教会合唱団でした。その後、聴く機会はいくらでも有ったはずですが、何故か聴かなかったのは、たぶん聖トーマス教会合唱団のその時のマタイが余りに素晴らしく、そのイメージを大切にし過ぎたからかもしれません。ともかく今回は久しぶりに聴きに行くことにしました。

この合唱団は、古都ドレスデンの聖十字架教会に所属する聖歌隊です。団員は全員、教会の寄宿舎で一緒に生活をして学校で学ぶ9歳から19歳の少年達です。その点は、聖トーマス教会合唱団と同じです。実際、この二つの聖歌隊はドイツの代表的な教会合唱団です。

バッハの合唱曲というと、現代ではプロの合唱団や大人のそれが少人数で歌うのが流行になりました。それは確かに透明で完璧なハーモニーを聴くことが出来ますし、素晴らしいと思います。でも僕はやはり宗教曲は教会合唱団で聴くのが好きですね。少年の純粋無垢の合唱は、上手い下手を超えて心に響くものが確かにあります。大人の合唱は得てして表情付けにわざとらしさが出てしまうことがあるように思います。聖十字架合唱団を生で聴くのは初めてですが、やはり素晴らしい合唱団です。中には休みの曲で座っているときに足を崩したりしている少年も居ましたが、それもまた微笑ましいものです。けれども、彼らがひとたび歌い出せば実に感動的なハーモニーを届けてくれます。

ソリスト達は全員が大人です。時々ソプラノをボーイ・ソプラノが歌うこともありますが、その場合には相当な技量が求められるので、この選択は賢明だと思います。中でも福音史家のテノール、アンドレアス・ヴェラーは声が非常に美しく、圧倒的な上手さでした。表情が本当に豊かです。というと合唱団の話と矛盾するようですが、あれだけ上手いと有無を言わせません。

指揮はローデリッヒ・クライレは10年以上前から聖十字架合唱団のカントール(音楽監督)なのですね。オーケストラはドレスデン・フィルですが、小編成で表情の豊かな演奏でした。現代楽器使用ですが、ビブラートは非常に控えめで、古楽的な奏法です。この辺りは当然でしょうね。クライレさんのテンポは概して速めで、三拍子の曲は非常に舞曲リズムを強調しています。第1部では淡々と進めていた印象ですが、第2部に入ると徐々に話に連れて表現も劇的に変わっていきました。ある意味オペラティックな解釈とも言えないことはありません。けれども教会少年合唱が直ぐに厳かな雰囲気に戻してくれます。この辺のバランスは絶妙です。宗教的な厳かさな雰囲気とイエスの受難のドラマティックな要素の混じり合った素晴らしい演奏でした。ですのであの感動的な終曲の終了後に、指揮者がまだ腕を下げていない状態で、我先に盛大な拍手をした一部の輩が居たのにはがっかりしました。周りの聴衆が静かにしているのに気が付いて、すぐに拍手を止めてくれたのがせめてもの救いですが、困ったものです。指揮者が順に歌い手、奏者を立たせて、聴衆のとても温かく盛大な拍手に応えているうちに忘れてはしまいましたが。

というわけで、純真な歌声と偉大な曲に感動できた至福のひと時でした。

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J.S.バッハ(ミサ曲、受難曲)」カテゴリの記事

コメント

よいものをお聴きになりましたね。

声楽には詳しくありませんが、このソプラノソロを大人が歌うことには賛成です。合唱もそうすべきだという意見はあるのでしょうが、少年の声の美しさがあるのは確かですね。導入唱で第五の合唱パートとしてソプラノ・リピエーノが「見よ神の子羊」と歌う部分だけ少年にする(他は大人)、という編成もあるようですが。

アリアを試しに弾いたり歌ったりしてみると、めちゃめちゃ難しいことがわかりました。

投稿: かげっち | 2010年12月 8日 (水) 12時07分

こんにちわ。

 本場ドレスデンの聖歌隊・フィルハーモニーによる「マタイ受難曲」聴かれて羨ましいです。とは言うものの横浜みなとみらいホールは私の家や勤務先から近いのに気がつきませんでした。アンテナをみがいていなかったので、ただの怠け者でした。

 「マタイ受難曲」は知人の娘さんが、合唱の一員として歌うというので去年の5月にカザルスホールにて秋山和慶さんの指揮で聴きました。今、思えば中高生の女子のグループもいましたので、ボーイソプラノがわりに歌われたのかも知れません.........確かなことはわかりませんが。

「マタイ」はバッハの中でも最も好きな作品のひとつです。CDはメンゲルベルク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1939年4月2日ライヴ)で聴きいています。
コラールや第47曲:憐れみたまえ、終局の第78曲:涙ながらに......など音楽を超えたような芸術が<たまりません>。

今度、本場の「マタイ受難曲」を聴いてみたいと思います。

投稿: たつ | 2010年12月 8日 (水) 21時20分

かげっちさん、こんにちは。

合唱を少年合唱に「すべき」だと言うつもりはありません。カール・リヒターのミュンヘンバッハ合唱団などは大人達ですが、全く持って感動的で素晴らしいですし。僕は少年合唱が好きなだけです。

かげっちさんはアリアを歌うんですか?いやー難しいというよりは歌えないですね。(苦笑)

投稿: ハルくん | 2010年12月 8日 (水) 22時46分

たつさん、こんにちは。

お近くのマタイ公演をご存じなかったのは残念でしたね。

カザルスホールの時の中高生の女子のグループは、(ボーイ)ソプラノパートで間違いないでしょうね。中々興味深いですね。聴いてみたかったです。

メンゲルベルクのマタイは凄いですね。本当に「音楽を超えたような芸術」だと思います。色々なタイプの演奏をすべて受け入れるような偉大さがこの曲には有りますね。

投稿: ハルくん | 2010年12月 8日 (水) 23時13分

saraiです。

奇遇ですね。まさか、ハルくんさんもいらっしゃっていたとは思いませんでした。

正直、よい演奏だったのに驚きました。特に合唱と福音史家の素晴らしさには感動です。
saraiの初マタイ聴きでした。

投稿: sarai | 2010年12月 9日 (木) 14時32分

saraiさん、こんにちは。

いやー、こちらこそsaraiさんがいらしていたとは知りませんでした。金星に最接近して通り過ぎてしまったあかつきのようですね。(笑)

合唱と福音史家の素晴らしさは自分も同感です。肝の部分が良かったので大満足ですね。

投稿: ハルくん | 2010年12月 9日 (木) 21時50分

こんばんは

マタイはバッハの中で最も好きな曲です。
しかし、この曲はレコードでしか聴いた
ことがなく、素晴らしい生演奏を聴かれ
てうらやましく思います。

ディズニーランドで遊んでいる場合では
なかったか(涙)

投稿: メタボパパ | 2010年12月 9日 (木) 23時58分

メタボパパさん、こんばんは。

いえいえ、ディズニーランドは最高ですよ。最近はとんと行っていませんが。

マタイはバッハの曲のみで無く全ての曲の中でも最右翼かもしれませんね。
宗教合唱曲の生演奏はいいですよ。次の機会には是非聴きに行かれてみてください。そういえば再来年の春には聖トーマス教会合唱団がまた来日するそうですし。

投稿: ハルくん | 2010年12月10日 (金) 00時07分

ドイツ語の授業で「マタイの評論を読む」というのがあって、実際にはほとんど演奏を聴いていました(笑)私のドイツ語がものにならなかったことは言うまでもありません。

その時の先生は「合唱は大人が歌うべきだ」という持論でした。私はどっちでもよいような気がします。

80年代半ばに聖トーマス教会合唱団のライブを聴いた記憶があります。少人数なのに素晴らしい深みのある声で、ある意味「これが大人の演奏なのか」と感嘆しました(比喩としての大人です)。

投稿: かげっち | 2010年12月10日 (金) 12時26分

かげっちさん、こんにちは。

そのドイツ語の先生はよほどマタイが好きだったのでしょうね。(笑)

僕が聖トーマス教会合唱団を聴いたのは70年代後半でした。何も知らずに聴いたのですが、その美しさ、素晴らしさはちょっとショックでした。人間の声こそは最高の楽器かもしれませんね。

投稿: ハルくん | 2010年12月11日 (土) 00時03分

その先生はマタイが好きというより、バッハの研究者でした。貴重な体験ではありました。

投稿: かげっち | 2010年12月16日 (木) 12時43分

かげっちさん、こんにちは。

そうだったのですか。どちらにしてもドイツ語の授業で音楽ばかり聞いていられたなんて幸せなことです。

投稿: ハルくん | 2010年12月16日 (木) 18時15分

なんどもコメント送信に失敗して、同じことを書きなおしているうちに、力尽きてしまいました(;一_一)

ドレスデン聖十字架合唱団、私も大好きです。大人の男性になる前の過渡期のボーイソプラノ、永続しえないからこその美しさですね。中性的純潔を感じます。確かペ-ター・シュライヤーもこの合唱団出身だったと記憶しています。
当初の長さの半分になってしまいましたが、今度はうまく送信できるかしら?

投稿: aosta | 2010年12月23日 (木) 09時05分

aostaさん、こちらへもコメントありがとうございます。送信が調子良くありませんでしたか? もしかしたらPCか通信状態の問題かもしれませんね。そのような不安が有るときには一度文章のコピーを残してから送信トライされるといいですね。

少年合唱団やボーイソプラノはいいですよね。あの純真で美しい声を聴いているだけで胸がいっぱいになってしまいます。確かにペ-ター・シュライヤーさんも聖十字架合唱団の出身でした。

投稿: ハルくん | 2010年12月23日 (木) 15時42分

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