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2010年11月27日 (土)

ブラームス チェロ・ソナタ集 名盤 ~秋は夕暮~ 

Brahms_cello_sonata

秋は夕暮。うら寂しく、人を恋しく思うころ、ひとり窓より外を眺め、ブラームスの調べなど聴きたるは、いとをかし。(清少ハル納言)

今年のあれほど長かった夏もいつしか終わり、気がつけばすっかり秋が深まりました。こんな季節には、やはりうら寂しいブラームスの音楽が最高です。上の写真は非常に珍しいブラームスの写真です。この人も深まりゆく秋に窓の外を眺めながら、自作のメロディを頭に浮かべては物想いにふけっていたのでしょうね。

自称”ブラームジアーナー”の僕ですが、一昨年にブラームスの特集をした時に取り上げなかった曲があります。それはチェロ・ソナタ第1番と第2番です。そこで今日は晩秋にうってつけのこの曲を聴くことにしましょう。

チェロ・ソナタ第1番ホ短調op.38 

ブラームスが32歳の時の作品です。第1楽章冒頭から渋く暗い旋律で始まります。いかにも晩秋の空気が漂い、心が沈んでしまいそうです。もっとも、このセンチメンタルな雰囲気がブラームスのファンにはたまらないのです。続くシンコペーションによる哀愁漂う旋律もブラームス以外の何物でもありません。う~ん、ブラームス! 続く第2楽章はメヌエット楽章ですが、やはり暗く感傷的な気分に溢れています。中間部の旋律も実に魅力的です。第3楽章はアレグロで音楽に緊迫感を感じます。

チェロ・ソナタ第2番へ長調op.99 

ブラームスが53歳の時の作品です。第1番に比べるとずっと明るさを感じます。第1楽章はいきなりチェロの高音で力強く開始されますが、勇壮さと輝きを持つ曲です。第2楽章はとても美しい曲ですが、同時にやはり渋さも感じます。第3楽章では再び明るくおおらかな気分を取り戻します。そして第4楽章はとてもリズミカルで南国的とも言える明るさを表出していて楽しいです。

という風に2曲の性格はだいぶ異なります。秋の夕暮れにふさわしい1番と、昼間の明るい陽射しを感じる2番と、絶妙な組み合わせの2曲だと思います。

それでは僕の愛聴盤です。

673 ピエール・フルニエ(Vc)、ウイルヘルム・バックハウス(Pf)(1955年録音/DECCA盤) モノラル録音時代の名盤です。僕もLP盤で何度も聴いてきました。ブラームスの心のひだに触れるようなフルニエのチェロが素晴らしいです。音符の一つ一つを慈しむように繊細に奏でるのは、この人ならではです。バックハウスのピアノももちろん良いのですが、残念なのはモノラル録音なので、この人のベーゼンドルファーの柔らかく美しい音が充分に再現できていません。全体として、とても室内楽的で派手さやハッタリの少しも無い、地味ですこぶる滋味にあふれる演奏です。

Brahms_cello_sonatajpeg ピエール・フルニエ(Vc)、ルドルフ・フィルクスニー(Pf)(1965年録音/グラモフォン盤) フルニエのステレオ再録音です。旧盤も素晴らしかったですが、やはり録音が良い分だけ、フルニエの繊細な音や表情を一層感じ取ることができます。フィルクスニーのピアノも実に素晴らしいです。仮にピアノがケンプか、あるいはバックハウスと再録音しても果たしてこれ以上の演奏になったかどうか。ですので僕はこれで十二分に満足しています。フルニエの旧盤同様に、実に室内楽的な演奏なのがまた嬉しいところです。このグラモフォン録音は長らく廃盤でしたがタワーレコードがCD発売してくれました。実に有り難いことです。

Rostropovich_serkin_brahms ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(Vc)、ルドルフ・ゼルキン(Pf)(1982年録音/グラモフォン盤) ロストロポーヴィチのチェロはいつものように太く厚い音で恰幅の良い弾きっぷりです。ですので第1番では、演奏が立派過ぎて曲想と少々マッチしないように感じます。ブラームスの侘しさや寂しさ、心の弱さが余り感じられないのです。シンコペーションのブラームス節も大げさでなんだかチャイコフスキーを聴いているようです。その点、曲内容が最初から立派な第2番については違和感を感じません。良い演奏だと思います。問題は第1番です。

この曲は、ヴァイオリン・ソナタほど幾つも演奏を聴いたわけでは有りませんが、いかにもブラームスらしい演奏を良質の録音で聴けるフルニエ&フィルクスニー盤は本当に最高です。

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ブラームス(室内楽)」カテゴリの記事

コメント

ハルさん、こんばんは。

晩秋のこの時期、ブラームスを聴かずに何を聴くのか!という感じですね。ただ、私は晩秋という気候がない場所にいる為、ブラームスを聴いても、ピンときません(笑)。

さて、私もチェロ・ソナタは大好きです。チェロの音色自体が好きで、ブラームスのほの暗い曲想がまた素晴らしいですね。

私はフルニエは未聴です。さぞかし素晴らしいのでしょう。

私が所有しているのはブルネロのCDです。ブルネロはイタリアのチェリストで、ブラームスを演奏するには音色が明るいかなという先入観もあったのですが、ブルネロのチェロの音色は格調高く、素晴らしいのです。

時々ブルネロは来日するので是非生でブラームスを聴いてみたいものです。

フルニエのCDも購入して聴いてみたいと思います。

投稿: たろう | 2010年11月28日 (日) 01時00分

たろうさん、おはようございます。

まだ南国にご出張中なのですか。お好きなブラームスを聴くのに最高のシーズンにご愁傷さまです。(笑)

フルニエ/フィルクスニーはタワーレコードの販売なので他の店で売られているかどうかわかりませんが、チェロ好きのたろうさんならきっと気に入られることと思います。
ブルネロは未聴ですが評価が高いですね。「新版クラシックCDの名盤」の中でも中野雄さんがお薦めでした。聴いてみたいです。

投稿: ハルくん | 2010年11月28日 (日) 07時55分

わたしはシュタルケルも好きです。

ブラームスなら誰の演奏でも好きなんだと思っていましたが、やはりそうでない場合もあります。あっさりしすぎているのは、つらいです。

投稿: かげっち | 2010年12月 1日 (水) 12時28分

ブラームス大好きで
チェロの音色も大好きなのに・・・・

この曲持ってません(汗)

しまったなあ・・・・・
今日、CDの買い出しに出かけたのになあ(泣)

次には、絶対に買いましょう。

投稿: 四季歩 | 2010年12月 1日 (水) 20時22分

>わたしはシュタルケルも好きです。

私も、シュタルケル(ピアノ:シェベック)の演奏録音が好きで、よく聴きます。
音色がピッタリしているように思います。

投稿: HABABI | 2010年12月 1日 (水) 21時47分

かげっちさん、こんばんは。

シュタルケルもいいですね。ヴァイオリンとチェロの二重協奏曲ではシュタルケル盤は2枚も有るのに、ソナタは未聴です。こりゃイカン!
あまりにもあっさりしたブラームスは「らしく」ないですよね。やはり本人にようにウジウジしてもらいませんとね。

投稿: ハルくん | 2010年12月 1日 (水) 21時49分

四季歩さん、こんばんは。

ブラームスがお好きでチェロもお好きでしたら、この曲を気に入られること請け合いです!
是非聴かれてください。ご感想を楽しみににしていますね。

投稿: ハルくん | 2010年12月 1日 (水) 21時55分

HABABIさん、こんばんは。

おおっ、HABABIさんもシュタルケル・ファンでしたか!これは是非とも聴きたくなりました。
でもフルニエの再録盤もとってもいいですよ。

投稿: ハルくん | 2010年12月 1日 (水) 21時59分

諏訪内さんのコンサートから一週間。未だに彼女の白い背中が瞼の裏に…はぁ~(ため息)
いけません。これでは変態と言われてしまいます。
フルニエのCDは、バッハの無伴奏チェロ組曲しか持っていません。しかもビルスマのCDが欲しくて買いに行き、お目当てのビルスマがなくて、まぁフルニエでもいいか的な、ドラフトの外れ1位みたいな買い方だったんです。フルニエファンの方に怒られそうですね(怖っ) でも素晴らしい演奏で泣きそうになるくらい。だから是非、ハル様ご推薦のこのCD買いに行きましょう!それからフランソワーズ・サガンの小説を本棚から探さなきゃ!

投稿: From Seiko | 2010年12月 4日 (土) 00時50分

Seikoさん、こんにちは。

いやー、僕なんか諏訪内さんの白い背中が瞼の裏に焼きついてしまったら一週間どころか三年は忘れられないでしょう。僕って大変態!?タイヘンだ~。

ビルスマのは僕も聴いていませんけど、フルニエの無伴奏チェロ組曲はホントに素晴らしいですよね。ブラームスのこのCDも是非聴かれてみてください!

投稿: ハルくん | 2010年12月 4日 (土) 11時58分

こんにちは、自分もこのゼルキン、ロストロポーヴィチ盤が好きです。
フルニエ、バックハウス盤はまだ聴いていないと思います。これから聴く楽しみがあり探してみようと思います。
ブントのブラームスのシンフォニーもいいと思いますがいかがでしょうか、渋すぎますか?ではまた。

投稿: 動物公園前 | 2010年12月 6日 (月) 10時18分

動物公園前さん、こんにちは。

フルニエでしたら、僕はバックハウス盤よりもフィルクスニー盤のほうをお勧めしたいと思います。

ヴァントのブラームスですが、個人的には余り魅力を感じていません。渋いというよりも、ちょっと堅苦しさを感じてしまうのですね。まあこの辺りは好みの問題だとは思います。

投稿: ハルくん | 2010年12月 7日 (火) 00時04分

ハルくんさん こんばんは。

もう昨年のことになりますが、こちらで紹介されていたフルニエ/フィルクスニーのチェロソナタ、聴いてみました。

フルニエのチェロはもちろんですけれど、初めて聴いたフィルクスニーのピアノが、ほんとうにすばらしいですね!

ブラームスの室内楽が大好きな私のお気に入りの演奏となりました。ご紹介ありがとうございました。

投稿: ANNA | 2011年1月11日 (火) 17時29分

ANNAさん、こんばんは。

そういえばANNAさんもブラームジアーナーでしたっけね。同じ穴のムジナですね。(笑)

そうなんです。ここでのフルニエは最高ですが、フィルクスニーもとってもいいでしょう!
気に入って頂けて、とても嬉しく思います。

投稿: ハルくん | 2011年1月11日 (火) 22時35分

昨晩、ビルスマのCDを聴いたばかりです。
とてもいいですよ!

古楽器の繊細な響きが、なんとも言えない。
どちらかと言えば、やはり2番が最高かな。

あと、1番のモスクとグリモーの録音もすばらしい!
グリモーの「リフレクション」と題するCDにはいっています。

おすすめ!

投稿: papapapapa | 2011年1月14日 (金) 11時53分

papapapapaさん、コメント頂きましてありがとうございます。

ビルスマのブラームスというのはノーマークでした。なるほどブラームス時代の楽器は古楽器に近いですから面白いかもしれませんね。

グリモーのブラームスは協奏曲や晩年の小品の演奏が素晴らしいので、是非聴いてみたいです。貴重な情報をありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2011年1月15日 (土) 00時15分

我が家のチェロソナタはデュ・プレ/バレンボイム盤です。1番ではデュ・プレらしいロマンを感じましたが、2番の演奏は多少ささくれだった感があり、いまひとつかなと思っています。それにしても2番はわかりにくい曲ですね。私はいまだに良さが十分わかっていないのかも。デュ・プレは好きですけど、ピアニストとしてのバレンボイムは昔からどうも苦手です。演奏によっては素晴らしい音楽なのかもしれません。

投稿: NY | 2012年12月 2日 (日) 20時56分

NYさん、こんばんは。

第2番って曲自体が「ささくれだって」いるかもしれませんね。デュプレの演奏は聴いたことが有りませんが、彼女なら尚更そう聞えるのかもしれません。
悪い曲とまでは思いませんが、いわゆる「渋い」ブラームスの魅力からは随分と遠い曲だと思います。

投稿: ハルくん | 2012年12月 2日 (日) 21時59分

ハルくんさん、こんばんは。
エマーソンQの弦楽四重奏曲も良さそうですね。購入リストに入れておきます。
四重奏曲と同じくらい、大好きな作品が この チェロ・ソナタです。
ここに聴かれる「内に秘めた情熱」の味わい深さは たまりませんね。
愛聴盤は 気品溢れる フルニエ/フィルクスニー盤、"大人の熱さ"を感じさせる シュタルケル/シェベック盤、"森の音"を感じる 自然な ビルスマ/オーキス盤です。
どれも 素晴らしい"ブラームス"です。

投稿: ヨシツグカ | 2013年10月27日 (日) 20時19分

ヨシツグカさん、こんばんは。

チェロ・ソナタもとても人気が高いですね。本当にブラームスらしい名曲なのですが、個人的にはヴィオラ・ソナタやヴァイオリン・ソナタのほうが好きなのです。ですのでフルニエ/フィルクスニーで満足していて、新しいCDを購入する機会は余り有りません。でもお気に入りというシュタルケルは一度聴いてみたいですね。

投稿: ハルくん | 2013年10月28日 (月) 20時22分

お早うございます。

未聴のまま忘れていたフルニエ/フィルクスニーを、バックハウスとの旧録を聴いてから開封しました。

チェロの録音状態に歴然とした差が在る新録、よく聞こえるピアノに耳が追ってしまうからこそバックハウスの魅力を感じる旧録。強弱を余り付けないバックハウス、結構付けるフィルクスニーの違いも興味深かったです。

投稿: source man | 2016年12月 9日 (金) 09時00分

source manさん、こんにちは。

フル二エは恐らく一番好きなチェリストのように思います。ですのでどちらも大好きな演奏なのですが、バックハウスについてはピアノ協奏曲ほどには感銘を受けません。ですのでフィルクスニー盤をあえて上位に位置づけています。
ファンにとっては余り意味のないことですので、単なる「個人感想」と思ってください。

僕もダニール・シャフラン盤を購入してあるのですが、未だ聴けていません。近いうちに感想を追記したいなとは思っています。

投稿: ハルくん | 2016年12月 9日 (金) 12時44分

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