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2010年11月 6日 (土)

ベートーヴェン 交響曲第2番ニ長調op.36 名盤

Beethoven1 ベートーヴェンが、この第2交響曲を作曲したのは、彼が有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いた1802年です。弟の問題、難聴や体調の問題、音楽家としての人気の低下などから、あれほど絶望的な感情に陥っていながらも、いざ創作をするとこれほど明るく生命力のみなぎった曲を書いてしまうのですから、なんという人なのでしょう。音楽家としてのプロフェッショナルさには脱帽です。

この曲は古典形式を強く残してはいますが、ハイドンの影響下に留まっていた第1番とは異なって、そこから大きく脱皮したロマンの香りや情熱のほとばしりが聴き手に強く迫ってきます。ですので第3番以降の傑作群と比べても、それほど聴き劣りがしません。特に素晴らしいのは1楽章と2楽章です。第1楽章はいかにもベートヴェンらしい勇壮な主題ですし、終結部も素晴らしく何度耳にしても興奮します。そして第2楽章のロマンティックな歌も実に美しいです。時を忘れてずっと浸っていたい気分になります。そのくせ、どこかにベートーヴェンの苦しい気持ちが隠されているような陰りを感じます。1、2楽章の魅力と比べると後半の3、4楽章は少々物足りない感は有ります。とはいえ、この第2交響曲はやはり魅力的な佳曲だと思います。

それでは、僕の愛聴盤をご紹介します。順番に聴いていきたいと思いますが、まずはモノラル録音からです。

Beethoven4_furjpg ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル(1948年録音/EMI盤) ロンドンへの演奏旅行中のライブ録音です。これは正直、愛聴盤とは呼べません。録音が劣悪で、戦時中の録音以下だからです。けれどもフルトヴェングラーに他の録音が無いために、EMIの全集に含まれています。間違ってもこの曲を目当てにしてはいけません。但し演奏そのものは、さすがにウイーン・フィルです。音のしなやかさと、こぼれるようなロマンの香りが素晴らしいです。録音がせめてもう少し良ければ、と思わずにはいられません。

3200060182 アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC響(1951年録音/RCA盤) カーネギーホールでの録音です。1楽章は相当に速いテンポで力強く突き進みます。音の迫力が凄いです。2楽章は速めですが、カンタービレを効かせてよく歌っています。3楽章も非常に力強いです。終楽章は速めですが、極端ではありません。全体として、どこまでも明晰で、あたかも地中海の気候のような演奏なので、もう少し陰りというものが欲しくなる気がします。もっともこれはこの人の全ての演奏について言えるのですけれど。

Schu_bet_758カール・シューリヒト指揮パリ音楽院管(1957年録音/EMI盤) これもEMIへの全集に収められています。1楽章の序奏のあとの主部は相当に速めです。けれども音のタメに余裕が有るので、せかつく感じは有りません。このあたりはシューリヒトの魔法と言って良いです。2楽章は粘らず清楚で実に美しいです。3楽章はリズムの切れの良さが光ります。終楽章のテンポは意外にゆとりがあります。フレーズ毎に丁寧に念押ししながら進む感じがしますが、決してもたれません。

ここからはステレオ録音になります。

51ysbm2rlel__sl500_aa300_ ブルーノ・ワルター指揮コロンビア響(1959年録音/CBS盤) 1楽章はかなり速めです。情熱と生命力が凄く、これはワルターが82歳のときの録音ですが、とても年齢を感じさせません。時々感じさせることのある、音の結晶度不足もここでは全く感じません。そしてゆったりと歌う2楽章のロマンの香りはいかばかりでしょう。ここには「田園」の2楽章にも匹敵する深い味わいが有ります。3楽章はリズムが生き生きしています。終楽章は幾らか遅めでゆとりが有りますが、決してもたれるわけではなく、フレーズの歌いまわしが非常に美しいので、せかせかした指揮者の演奏とは別の曲を聴く感じがします。

Beethoven_cluytensアンドレ・クリュイタンス指揮ベルリン・フィル(1959年録音/EMI盤) 全集盤に収められている演奏です。第1楽章の主部に入ると快速テンポでグングンと進み行くのが快感です。アンサンブルの良さも流石はベルリン・フィルです。2楽章の牧歌的な味わいと美しさは秀逸ですし、3、4楽章の切れの良いリズムによる躍動感と音楽の生命力も最高です。録音についてはEMIなので元々期待は出来ませんし、リマスターが高域型で音そのものが軽く感じられますが、この曲の場合には曲想から抵抗感は少ないです。

Cci00055フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1960年頃録音/edel classics盤) これも全集盤に収められていますが、昔、学生時代に廉価LP盤で聴いて非常に好きだった演奏です。1楽章序奏部の和音から厚いドイツの響きがとても美しく魅了されてしまいます。更に主部に入ると、ゲヴァントハウス管の合奏の上手さと切れ味に驚嘆させられます。それは単に機能的に優れているだけではなく、ドイツの伝統そのものから成り立つ凄さを感じるからです。2楽章は速めで甘さは控えめですが、和音はやはり美しいです。続く3楽章も良いですが、終楽章は分厚い合奏に凄みすら感じます。それにしても、この凄さは実際に耳で聴いてみないと分からないと思います。

51pbpkptral__ss500_ カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1972年録音/グラモフォン盤) 全集盤の中に収められた録音です。1楽章序奏部の響きはドイツのオケとはまた違ったウイーン的な柔らかさです。それが主部に入ると驚くほど速いテンポで生命力に満ち溢れます。晩年のベームの演奏が全て重いと思ったら大間違いです。2楽章は一転して、ゆったりとロマンの歌を奏でます。ウイーン・フィルの美しく抒情を感じる音も最高です。3、4楽章のテンポはゆとりが有りますが、リズムの切れも良く、決してもたつくことは有りません。

649 カール・ベーム指揮バイエルン放送響(1978年録音/audite盤) ウイーン・フィル盤から6年後のミュンヘンでのライブ録音です。1楽章のテンポは6年前とほぼ同じで非常に躍動感を感じます。2楽章も非常に美しく、ウイーン・フィルに中々に迫っています。3、4楽章もウイーン・フィル盤と余り変わりませんが、ドイツのオケのせいか、4楽章の立派さは更に上回っているような気がします。総合的にウイーン・フィル盤とどちらを取るかは非常に難しいですが、個人的には僅差でウイーン盤を選びたいです。

0184442bcヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1978年録音/Berlin classics盤) これも全集盤に収められています。ゲヴァントハウス管の音も素晴らしかったですが、SKドレスデンの音も最高です。演奏の凄みという点ではコンヴィチュニーに及びませんが、この演奏も実に素晴らしいです。1楽章主部は結構速いテンポなのですが、マルカートで全ての音符を弾き切っているので、実際よりも落ち着いて聞こえます。やっぱり伝統的なドイツのオケの響きと演奏には理屈抜きで惹かれます。

以上の中から、特に好きな演奏を上げるとすれば、コンヴィチュニー/ゲヴァントハウス盤がダントツです。これは学生時代から全く変わりません。他には、ウイーン・フィルが美しいベーム盤、SKドレスデンが素晴らしいブロムシュテット盤、そして指揮者の芸格が抜きんでたワルター盤も外せません。

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コメント

ハルくんさん、おはようございます。

第2番は、トスカニーニの歯切れよくダイナミック且つよく歌う演奏を長らく聴いて来た後に、クリュイタンス/ベルリン・フィルの優美さと力強さを備えた演奏を聴くようになり、その後いろいろ聴いてきましたが、結局、以上の2種類の演奏に戻って聴いてきました。
コンヴィチュニーのはLPとCDで持っているのですが響きのユニークな第6番以外はあまり聴いておらず、第2番については聴いた記憶がないので今朝改めて聴いてみました。各声部の動きがよく分かります。第2楽章など、各楽器の絡み合う様子が、とてもよく聴こえて来て、合奏が盛り上がるところでは、熱いものを感じます。終楽章ではこの曲の持つドラマが、スケール大きく表現されています。大変な名演奏ではないかと思います。この曲の堂々とした別の面も知ることが出来ました。ご紹介、ありがとうございました。

投稿: HABABI | 2010年11月 6日 (土) 07時32分

HABABIさん、おはようございます。
今日も朝から良い天気で気持ちが良いですね。

コンヴィチュニー盤はLP時代から大好きでしたが、現在聴き直してみてもやはり素晴らしいと思います。

クリュイタンスは好きな指揮者ですが、ベートーヴェンは余り聴いていません。この曲もきっと良いでしょうね。機会あれば聴いてみます。ありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2010年11月 6日 (土) 09時13分

こんばんは

私はワルターとマズアの演奏が好きです。ワルターのものは、このコンパクトな曲がダイナミックに響いている気がしますし、弦が美しいと思います。マズアのものはテンポがワルターのものより高速な演奏なのですが(古楽奏法風)、ライヴ盤ということもあってか第4楽章でマズアの「はっ!」という掛け声が入っているのがイヤです。私はやはりワルターですね。少しテンポが遅すぎる感がありますが、第2楽章など最高に好きです。

残念ながらコンヴィチュニーのものは聴いたことがないですが、いずれ全集を購入したいと思ってます^^

投稿: kurt2 | 2010年11月 6日 (土) 18時32分

kurt2さん、こんばんは。

マズア盤は聴いたことが有りません。元々余り好きな指揮者ではないこともありますけど。
ワルター盤はとても好きですよ。僕は遅くは感じませんし、2楽章は特に好きです。

コンヴィチュニーは全集として大好きですし、2番が抜群に素晴らしいと思います。是非聴かれてみてください。

投稿: ハルくん | 2010年11月 7日 (日) 21時29分

ハルくんさん
はじめましてコバと申します。
取り上げている演奏は私も全て聴いたこと
があります。中でもベームの演奏は私の
最も好きな演奏です。ハルくんさんとまったく同じ感想を持ってます。
 ワルターの演奏の大好きで、その時の気分
によって、ベームとワルターを聴きわけております。コンヴィチュニーは久しく聴いていないので、改めて聴いてみてその重厚な演奏に感動しました。
 スケールの大きなクレンペラーの演奏の素晴らしいので、ぜひ聴いてみて下さい。

投稿: コバ | 2010年11月10日 (水) 22時01分

コバさん、はじめまして。
お立ち寄りくださいまして有難うございます。
随分と色々な演奏をお聴きになられていますね。ベーム、ワルターは本当に良いですよね。
クレンペラーはもちろん嫌いでは無いのですが、ベートーヴェンは自分と余り相性が良くない気がしています。と言っても全部聴いたわけでは無いですし、2番も未聴です。機会あれば是非聴いてみたいです。
またお気軽にコメントください。楽しみにお待ちしています。


投稿: ハルくん | 2010年11月11日 (木) 00時06分

ハルくん様
ときどき拝見させて頂いておりました
コンビチュニーの全集版を買っておかなかったのが悔やまれます、良い演奏なのでしょうね
自分は音楽のこと、皆さまのように詳しくありませんが、2番はワルターとクリュタンスが好きです、特にクリュタンスの第2楽章にほれ込んでいます
挙げられたベーム、トスカニーニ、シューリヒトもみな大家の芸、スタイルは恐ろしく違いますが説得力があります
シューリヒトとクリュタンスには他のベートーヴェンの交響曲でもそうですが、多くの共通点を感じています、シューリヒトがクリュイタンスのオーケストラを指揮しているからなのかどうかは分かりませんが・・・
ベームは80年の最後の来日時のライブ、並録の7番と共に世評は芳しくないようですが、自分には音楽の奥底に乾坤一擲とはこういうものだ、と感じさせてくれるものがあるように思っています
コンビチュニーは何となく分かるような気がします、多分気に入りそうです、今度CDショップで見かけたら購入します
またいろいろご教示下さいますよう

投稿: ブルー | 2010年11月15日 (月) 00時39分

ブルーさん、こちらにもコメント頂きありがとうございます。

ベートーヴェンの交響曲すべての演奏が最高レベルというのは至難の業だと思いますが、コンヴィチュニーは全集盤としては中でも第一に挙げて良いのではないかと思っています。古い割に録音が良いですし、是非お聴きになられてみて下さい。

ドイツ人のシューリヒトにフランスのオケと録音させて、ベルギー人のクリュイタンスにドイツのオケと録音させるという、EMIの面白いアイディアは、素晴らい結果を生んだと思います。

またお気軽にコメント下さい。楽しみにお待ちしております。

投稿: ハルくん | 2010年11月15日 (月) 23時19分

お早うございます。

実は先日、バラ売りのワルター/コロンビア最初期35DC盤のベートーヴェンが全曲安価で中古屋に入荷し買い占めました。

昨夜1枚目(1~2番)を。1番はベートーヴェンを感じず「・・・」も、2番の冒頭数小節で「ムムっ」。

>特に素晴らしいのは1楽章と2楽章
>2楽章のロマンの香り~「田園」の2楽章にも匹敵する深い味わい

全く同感で、弦楽器が重く厚く響く1楽章、「田園」を感じる2楽章は本家より好きかもと。コレは掘り出し曲と浸っていると3楽章に。でも4楽章も含め「アレ?」笑。

シューベルト未完成みたく、2楽章までの曲ならば、もっと世に聴かれた曲かも知れません...笑。

投稿: source man | 2015年3月11日 (水) 08時56分

source manさん、こんばんは。

第3、5、6、7、9を除いた残りの曲の第2、4、8は、個人的には差がそれほど無いぐらい好んでいます。
この第2番は「良い曲だなぁ~」と聴くたびに思いますね。でも、幾ら前半が素晴らしくても後半をカットしてはやはり寂しいですね。

投稿: ハルくん | 2015年3月11日 (水) 23時58分

こんばんは。
コンヴィチュニー盤に魅かれるも、つべで何曲か聴いたら、2,4番だけ欲しくなり、amazonでコノ2曲がカップリングの単売盤を¥700で購入でき、先程聴き終えました。

2番、ワルターでは3~4楽章に「アレ?」という感想を書き込みましたが、コノ演奏では全く感じず、合奏での厚みに酔えます。

ワルターには魅惑の2楽章が在るものの、総合力では圧倒的にコンヴィチュニーですッ。

続く4番も終始厚みの在る音色に全くZzzz..ならずに聴き終えられました。全集だとコノ組み合わせで1枚になってなかったので大正解です。

投稿: source man | 2015年4月 9日 (木) 21時47分

source manさん、こんにちは。

コンヴィチュニー盤は2楽章が颯爽とし過ぎていて甘さに不足しますが、あの端麗辛口さが味わいなのですね。
その他の楽章では”切れの良さ”が最高です。
当時のゲヴァントハウスのアンサンブルの優秀さは言葉に成りません。

投稿: ハルくん | 2015年4月11日 (土) 14時45分

こんばんは。

この「第2」のピアノ三重奏曲版(作曲家自身の編曲)で聴くと
(CDはボザール・トリオ等があります)
ベートーヴェンがいかに卓越したメロディー・メーカーなのかを痛感します。
あまりにも器楽的作品(「運命」等)が凄すぎて見落としがちですが。

ワルター盤はやはり良いですが
ソニーはそろそろ「決定盤」マスタリングを出して欲しいところ。

新しい録音では、ケント・ナガノ&モントリオール響(ソニー)が
なかなか良かったです。
モダン・オケでも古楽器奏法に毒されず
それでいて回顧的演奏ではない瑞々しさが魅力です。

投稿: 影の王子 | 2017年4月16日 (日) 23時54分

影の王子さん、こんにちは。

ピアノ三重奏版は聴いたことが有りませんでしたが、この曲は室内楽的なところが有るので良いでしょうね。

ワルターをはじめとした様々な演奏で楽しめるポテンシャルの大きい名曲だと思います。

投稿: ハルくん | 2017年4月18日 (火) 14時32分

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