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2010年10月

2010年10月28日 (木)

ベートーヴェン 交響曲第7番イ長調op.92 名盤(ステレオ録音編)

それでは、ベト7のモノラル録音編に続いてステレオ録音の愛聴盤を聴いてゆくことにします。

Beethoven_cluytensアンドレ・クリュイタンス指揮ベルリン・フィル(1957年録音/EMI盤) 全集盤に収められている演奏です。ドイツものを得意とするクリュイタンスですが、この7番の演奏は余り感心しません。テンポが遅めなのは良いとしても、フォルテに音の芯が無い印象ですし、緊張感にも欠けています。音色感に乏しいEMIの録音(マスタリング)も更に印象を悪くしています。まだベルリン・フィルがドイツ的な音を持っていた時代の録音なのに、これでは失望させられます。

3198080736ブルーノ・ワルター指揮コロンビア響(1958年録音/CBS盤) ワルター晩年のユニークなベト7です。第1楽章はゆったりと落ち着いています。独自の味わいが有ります。第2楽章も非常に遅いのですが、悲壮感を全く感じさせません。こんな表現が出来るのはワルターのみです。第3楽章は迫力は不足していますが、逆に優雅さを感じるほどです。第4楽章は晩年のワルターにしては随分と躍動感を感じます。後半の追い込む迫力も中々です。オケの音に厚みは有りませんが、優雅で美しい演奏として他の指揮者とは全く異なる個性で存在感を感じます。

41gh0rfq9cl ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウイーン・フィル(1959年録音/DECCA盤) カラヤンは3年後にもベルリン・フィルと録音を行いますが、それは過剰なレガートと粘るリズムに違和感が感じられて好みませんでした。その点、このウイーン・フィルとの演奏は遥かにオーソドックスで素晴らしいです。テンポは速過ぎず遅過ぎず堂々としていますし、後年に感じられるカラヤン一流の演出臭さがまだ見られません。同じウイーン・フィルでも後述のCクライバー盤よりもずっと良いと思います。

Cci00055フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1960年頃録音/edel classics盤) これも全集盤に収められている演奏ですが、ゲヴァントハウス管の古色蒼然とした音が本当に魅力的です。第1楽章は幾らか遅めのテンポで実に堂々としています。重量級ですがもたれることは有りません。但し提示部を繰り返すのは余分です。2楽章はすっきりとしていてことさらに悲劇性を強調しません。3楽章と数楽章は立派です。終楽章など意外にテンポは速いのですが、安定感が有ります。その反面、余り熱狂的にはなりません。

Furicsay938 フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリン・フィル(1960年録音/グラモフォン盤) 特筆すべきは当時のベルリン・フィルの暗く分厚い響きで、この演奏が素晴らしいのはこの響きが有ればこそです。1楽章は遅いテンポでスケールが大きく、念を押すようなタメが効果的です。2楽章もやはり遅めで悲哀の大きさはフルトヴェングラーのようです。3楽章も遅く重量感です。中間部のホルンの立派さには惚れ惚れします。終楽章は幾らかテンポが速まりますが、堂々として豪快に鳴り切るベルリン・フィルの重い音が最高です。

905 ヨゼフ・カイルベルト指揮バイエルン放送響(1967年録音/オルフェオ盤) 「ミスター・ドイツ」と呼べそうなこの人はオペラは別として、ドイツもの以外の曲をおよそ聴いたことがありません。「ベト7」にはベルリン・フィルとのスタジオ盤もありましたが、これはミュンヘンでのライブ演奏です。演奏はいかにもドイツ的。イン・テンポで武骨に進めます。テンポが特別に遅いことはありませんが、実に堂々としています。終楽章では実演ならではの高揚を感じます。バイエルン放送響の渋過ぎない音色も中々悪くありません。

Hans_schumit_beeth7 ハンス・シュミット‐イッセルシュテット指揮北ドイツ放送響(1960代後半/GreenHill盤) イッセルシュテットはウイーン・フィルともDECCAに正規録音を残していますが、これは海賊盤です。とはいえ優れたステレオ録音ですので鑑賞に何の支障も有りません。それどころか北ドイツ放送の暗く厚い音がこの曲にとても適しています。腰の据わったテンポで重量感のある指揮も素晴らしいです。そのくせ完全なイン・テンポではなく1楽章の終結部でぐっと重みを増すところなど実に惹かれます。2楽章も非常に美しいですし、3楽章以降の充実度も素晴らしいです。

4107090040 パブロ・カザルス指揮マールボロ音楽祭管(1969年録音/CBS盤) マールボロ音楽祭管というのはアメリカの音楽祭の為の臨時編成ですが、この時のメンバーにはヴァイオリンには後にイムジチのコンマスになるピーナ・カルミレッリや潮田益子、チェロには元ブッシュSQのヘルマン・ブッシュなどの凄いメンバーが参加しています。カザルスはこの時既に92歳ですが、魂の演奏家だけあって非常に力強く感動的な演奏をしています。およそ「洗練」というには程遠いサウンドなのですが、最近の機能的なオケの音に慣れ親しんだ方にこそ是非聴いて貰いたい演奏であり音楽です。

51pbpkptral__ss500_ カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1972年録音/グラモフォン盤) グラモフォンへの全集盤のスタジオ録音です。何といっても音楽そのものを心から味あわせてくれますし、演奏の安定感が抜群です。ドイツ音楽をこれほど品格を感じさせて安心して聴かせる指揮者は居ないと思います。つくづく偉大な指揮者だったと思います。但しベームが真に燃え上がるのは実演で、スタジオ録音も決して悪くありませんが、後半の3、4楽章では少々迫力不足を感じます。

649 カール・ベーム指揮バイエルン放送響(1973年録音/audite盤) グラモフォン盤の翌年にミュンヘンで行われたライブ演奏です。1楽章導入部は慎重に始まりますが、提示部に入ってから徐々に感興が高まって行きます。60年代の実演のような鬼神とまではいきませんが、スタジオ録音と比べるとやはり燃え方が違います。特にグラモフォン盤で弱いと感じた3、4楽章が別人のように躍動感と迫力を増しています。録音もバランスが良く優れています。

0184442bcヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1975年録音/Berlin classics盤) これも全集盤に収められています。この全集の最大の魅力は、SKドレスデンのいぶし銀の響きを聴けるということですが、もちろん曲による凸凹が無いわけではありません。この7番は特に出来の良い演奏だと思います。1~3楽章は遅めのテンポで落ち着いていますが、もたれることはありません。終楽章では幾らかテンポが速まりますが、少しも前にのめらないで全ての音符を完全に弾き切っているのが圧巻です。ホルンやティンパニの音には本当に惚れ惚れとします。

51chtd6fxsl__sl500_aa300_ カルロス・クライバー指揮ウイーン・フィル(1976年録音/グラモフォン盤) その名を世界に轟かした第5の演奏の翌年の録音です。「舞踏の聖化」とも言われるこの曲のリズムを強調した、正に踊っているような演奏です。指揮者が腰を振り振りしているような姿が目に浮かんできます。良く言えばリズミカル、悪く言えば腰が軽いということですが、こうなると聴き手の好み次第でしょうね。僕自身は第5ほどには魅力を感じないので余り好みません。特に2楽章のあっさりとした演奏には拍子抜けします。

Ten_betho7 クラウス・テンシュテット指揮北ドイツ放送響(1980年録音/EMI盤) ハンブルグでのライブ録音です。テンシュテット/北ドイツ放送というとどうしても驚異的な「復活」の名演を思い出しますが、この「ベト7」も遅いテンポでスケールが巨大です。フリッチャイに似ていると言えるでしょうが、テンポが必ずしも厳格では無く浮遊感が有るのと、部分部分でホルンやティンパニが強奏されたりするのは、むしろクナッパーツブッシュのスタイルに似ています。但し終楽章はテンポが随分と速く他の楽章とアンバランスに感じます。

以上のステレオ録音盤の中で僕が特に好きなのは、フリッチャイ/ベルリン・フィル盤ですが、他にも外せないのは、カラヤン/ウイーン・フィル盤、カザルス/マールボロ音楽祭管盤、ブロムシュテット/シュターツカペレ・ドレスデン盤、それに海賊盤ながらイッセルシュテット/北ドイツ放送響盤です。

次回は第8番、通称「ベト8」です。モノラル/ステレオ盤をまとめて聴こうと思っています。

<補足>
カラヤン/ウイーン・フィル盤、クリュイタンス/ベルリン・フィル盤を追記しました。

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2010年10月21日 (木)

ベートーヴェン 交響曲第7番イ長調op.92 名盤(モノラル録音編)

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ベートーヴェンの交響曲作品の中で、昔から一般に広く知られているのは、やはり副題の付いた「英雄」「運命」「田園」「合唱」です。けれどもクラシックファンの間では副題無しの第7番も、昔からとても人気が有りました。それはひとえに曲そのものの魅力からです。また、アマチュア・オーケストラに在籍する者にとっては、この曲は「ベト7」として必ず一度は演奏をしたくなる人気曲です。そんなこの曲が、一般にも広く知られてブームを巻き起こしたのは、言わずと知れた「のだめカンタービレ」の主題曲に使用されてからです。このTV番組と映画がきっかけでクラシックファンそのものの裾野が広がったことも事実ですし、これは大いに歓迎すべきです。

この曲を高く評価したのはリヒャルト・ワグナーで、曲全体が非常にリズムが強調されているので「舞踏の聖化」と呼びました。また、この曲は「バッカスの饗宴」と呼ばれることもあります。バッカスというのはローマ神話の酒の神様ですが(上の絵で金色の車に乗っている人です)、要するにこの曲が酒宴での乱地気騒ぎに例えられたのです。どうですか、あなたの大学や職場にもミスター・バッカスが一人や二人はいるんじゃないですか?

この曲の初演の際にはベートーヴェン自身の指揮で第1ヴァイオリン18人の大編成で演奏されたので、さぞかし迫力があったことでしょう。ですので同業者からは「ベートーヴェンは頭が狂った」などと言われたりもしたそうです。実際に、この曲の第1、3、4楽章は激しくリズムが刻まれていて実に興奮させられます。第2楽章のみが緩やかなアレグレットで悲哀の旋律が美しく奏されて、見事な対比となっています。

それでは、モノラル盤の愛聴盤を聴いてゆきますが、もちろんフルトヴェングラーが中心です。

803 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1943年録音/オーパス蔵盤) 第二次大戦中のベルリンでのライブ演奏ですので、当然音は良くありません。けれども元々ドラマティックなフルトヴェングラーの中でも特に壮絶な演奏です。1楽章の鬼気迫るような雰囲気、2楽章の重い運命を背負ったような悲劇性も素晴らしいですが、終楽章の鳥肌が立つような切迫感には怖れさえ感じさせられます。ここには「健康的な」興奮とは全く異なる世界が存在しています。現代との時代の違いは無視出来ないでしょうが、どうか違いを比べてみて下さい。元々古い録音で一部音の揺れはありますが、オーパス蔵のメロディアLPからの復刻盤は中々しっかりした音です。他ではメロディア盤のCDが手堅いと思います。

Betho5_furemi ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル(1950年録音/EMI盤) 晩年のEMIへのスタジオ録音は皆音質は良好なのですが、この’50年の7番だけは録音が余り良くありません。海外References旧盤は高音が比較的刺激的で無く低域が厚いので聴きやすいですが、それでも他のEMI録音よりも大分劣ります。演奏はスタジオ録音なので、それほど熱狂的では有りませんが、それでも終楽章などはまるでライブのような迫力をも感じさせます。僕自身はウイーン・フィルの持つしなやかさは好きで、2楽章の演奏はこれが一番好きかもしれません。

1161001303 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1953年録音/グラモフォン盤) ベルリンでのライブ演奏です。録音は分離も鮮度も今一つですが’50EMI盤より幾らか良く感じます。演奏は1、3楽章はベルリン・フィルの重圧な音と迫力が素晴らしく、EMI盤以上に惹かれます。2楽章は逆にウイーン・フィルのしなやかな美しさを取りたいと思います。終楽章は即興的な感が有り、音の間を幾らか大きくとっています。テンポも前半ではじっくりと進みますが、後半から徐々に加速してゆき、フィナーレには荒々しく突入します。

857 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル(1954年録音/オルフェオ盤) 最晩年夏のザルツブルクでのライブ演奏です。1楽章は遅めで大きさと広がりがある分、かつての切迫感は薄れました。2楽章は逆に幾らか速めですが、ウイーン・フィルのしなやかさはやはり魅力です。弦も非常に美しいです。終楽章は遅めで躍動感には欠けますが、それでも後半の気力などは、とても3か月後にこの世を去る人の演奏とは思えません。録音は’50年、’53年盤よりは各楽器の分離の良さと音の鮮度を感じます。

Toscanini_beethoven_3_4 アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC響(1951年録音/RCA盤) カーネギーホールでの放送用録音です。トスカニーニの演奏はとにかく力強く明快です。1楽章アレグロ部の躍動感は正に「舞踏の聖化」というイメージです。一つ一つの音の持つエネルギーが半端でありません。2楽章も沈滞することなく力強くリズムを刻みます。3楽章も当然ながら同様で、中間部も実に明るく強靭です。終楽章も情熱的で明るいです。この演奏に「フルトヴェングラーのような陰りの部分が欲しい」などと言うのは野暮というものです。

Mahcci00006 カール・シューリヒト指揮ウイーン・フィル(1956年録音/Tresor盤) ウイーン・フィルがアメリカに演奏旅行したときに国連会議場で行った記念コンサートです。会場の残響は少ないですし、音質には不満を感じます。我々にとってはシューリヒトとウイーン・フィルのライブを聴けるだけでも嬉しいのですが、演奏は手堅いものの特別な凄みは有りません。終楽章などはかなりの熱演なのですが、会場の音響がマイナスしているのかもしれません。僕は現在はTresor盤で持っていますが、初出のarchiphon盤と音質に差は有りません。

Schu_bet_758 カール・シューリヒト指揮パリ音楽院管(1957年録音/EMI盤) これもEMIへの全集に収められています。当然、ウイーン・フィル盤よりも録音条件は格段に良いです。モノラル録音なのに立体感を感じるほどです。案外じっくりとしたイン・テンポで進みますが、良く聴くと楽譜の読みが非常に細かく徹底していることに気づきます。例えば終楽章終結部で各弦楽パートが掛け合う部分などは、スラーを外して弾かせているので驚くほど歯切れの良さが出ています。シューリヒトの個性的なこだわりを表現するには、むしろドイツ音楽に伝統を持たないオケのほうが良いのかもしれません。録音、演奏ともにウイーン・フィル盤よりもずっと好みます。

以上から、7番に関してはフルトヴェングラーのフェイヴァリット盤がどうしても絞れません。’43年盤は迫力が有るが音質が悪い。’50年盤は演奏のバランスは良いですが音質が今一つ。’53年盤は音の厚みは良いですが2楽章がベストではない。’54年盤は音質は良いですが迫力不足。ということで4種類を聴き分けるよりありません。フルトヴェングラー以外では、シューリヒト/パリ音楽院盤に惹かれます。他にはエーリッヒ・クライバーがウイーン・フィルを振った演奏をLP盤時代に愛聴しましたが、現在CDは持っていません。

それでは、次回はステレオ録音盤を聴くことにします。

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2010年10月15日 (金)

ベートーヴェン 交響曲第6番へ長調「田園」op.68 名盤(ステレオ録音編)

Photo高校生の時にこの曲をすっかり好きになったころ、アンドレ・ジッドが書いた「田園交響楽」という本を読んでみました。主人公が盲目の娘ジェルトリュードを音楽会に連れて行き、この曲を聴かせると、彼女は「あなたがたの見ていらっしゃる世界は、本当にあんなに美しいのですか?」と言います。それは第2楽章の”小川のほとりの情景”のことでした。そして彼女は更に「目の見えない私は、耳で聞く幸福を知っていますわ。」と語ります。

けれどもベートーヴェン自身はこの曲を作曲したころには、難聴の病気がかなり悪化していましたので、この美しい音を自分の耳で聞くことは出来なかったはずです。きっと頭と心の中で音楽を美しく響かせていたのでしょう。

僕らがこの曲を聴くときには、出来ればステレオ録音で聴きたいと思います。必ずしも絶対条件では有りませんが、この曲の持つ刻々と変わりゆく音の色彩と光の変化を感じ取るには録音が良いに越したことは無いからです。それではステレオ録音の愛聴盤を聴いてゆくことにします。

41ldzhd1sdl__sl500_aa300_ ピエール・モントゥー指揮ウイーン・フィル(1958録 音/DECCA盤) 1950年代のウイーン・フィルの演奏がDECCAの優秀なステレオ録音で残されているのは幸せなことです。さしものウイーン・フィルといえども戦前の音の甘さと柔らかさが時とともに確実に薄れてしまっているからです。ですが、ここにはまだ都会的でない鄙びたウイーンの雰囲気が一杯に漂っています。モントゥーはメカニカルな統率をしない昔風の指揮者ですので、この時代のこのオケとこの曲にはベスト・マッチといえます。何の作為もなくウイーン・フィルに自然に歌わせた演奏だからこそ素晴らしいのです。変に神経質なところが無く、とても温かみを感じます。もしもワルター/ウイーン・フィルの戦前の演奏を良い音で聴きたければ、このCDを聴かれることをお勧めします。

41zm61pqq4l__sl500_aa300_ ブルーノ・ワルター指揮コロムビア響(1958年録音/CBS盤) 言わずと知れた天下の名盤です。他の指揮者ではアメリカのオーケストラにこれほど柔らかい演奏をさせるのはまず不可能でしょう。歌いまわしや音のタメ、間の取り方などが、ワルターの意思の通りに表現し尽されています。それが、オケに教え込んだ跡がまるで感じられないのです。ワルターならではの至芸だと思います。但し管楽器のソロはウイーン・フィルと比べると聴き劣りするのは仕方が有りません。ともかく、これは大好きな演奏です。

Cci00055 フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1960年頃録音/edel classics盤) これも全集盤に収められている演奏です。ウイーンの流麗なスタイルと比べると、明らかに異なる一音一音マルカートで明確に弾かれるドイツ流の音です。他の曲ではそこが断然魅力となるのですが、この曲の場合にはコンヴィチュニーの指揮も含めて、いささか堅苦しさを感じてしまいます。現代の国籍不明の都会的な音よりはずっと好きですが、やはりこの曲を聴くときには、ゆったりと浸れるような気分になりたいです。但し3楽章以降は、厚みのある音に聴き応えを感じられて中々に素晴らしいです。

Beethoven56_hshumitjpegハンス・シュミット‐イッセルシュテット指揮ウイーン・フィル(1967年録音/DECCA盤) 同じウイーン・フィルとの「運命」の演奏は、中々に素晴らしい演奏だと思いましたが、この曲は幾らか不満が有ります。まず1楽章冒頭の主題のフレージングが作り物めいていて自然さに欠けます。クレッシェンドが大げさなんですね。それに2楽章の伴奏音型が硬くて流れません。主旋律の歌わせ方はとても綺麗なのにもったいないです。但し、それを除いては非常に良い演奏です。モントゥーとの演奏よりは甘さが減ったとはいえ、ウイーン・フィルの音を聴くだけでもこの曲の場合には大いに楽しめます。

3201081432 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1971年録音/グラモフォン盤) 1970年代に入ってコンサートマスターがウイーン生まれではないヘッツェルに交代してからは、ウイーン・フィルの音の甘さが少しづつ減少していきます。但し最晩年のベームにとってはオケを引き締めて統率するヘッツェルとはベストの組み合わせだったと思います。この演奏は、2楽章ではもう少し柔らかさが欲しいかなという印象ですが、3楽章以降では音が実に立派になり大変に感銘を受けます。甘さの少ない硬派の「田園」としてベストを争うと思います。

670 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1977年録音/Altus盤) 日本公演のNHKホールでのライブ録音です。当日の後半プログラムの「運命」と一緒にCDに収められています。ベームの「田園」はFM放送で聴いたザルツブルクでのライブがベストだったと思いますが、これはそれに迫る演奏だと思います。グラモフォン盤とは一長一短ですが、僕は1、3楽章はグラモフォン盤を、2、5楽章はライブ盤のほうを好みます。なお1楽章の提示部の反復はライブでは行いません。この時のテレビではヘッツェルがオケを強力にリードしている姿が非常に印象的でした。老ベームはこの4年後に亡くなりますが、まさかその後を追ったわけでも無いでしょうに、ヘッツェルも50代の若さでアルプス登山中に転落して亡くなってしまいます。そんなことを思い出しながら聴いていると感慨深いです。

0184442bc ヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1977年録音/Berlin classics盤) これも全集盤に収録されています。いかにもドイツ的なきっちりした明確な演奏ですが、オケの音はゲヴァントハウスと比べるとずっと明るく柔らかいです。1楽章はブロムシュテットの指揮にやや譜読みの甘さを感じますが、2楽章以降はオケの素朴な音色を生かしていて美しいです。特に終楽章は流れが良く素晴らしいと思います。これはオーストリアではなくドイツの片田舎の美しさを感じさせる演奏です。

Abbdo_beethven6_8 クラウディオ・アバド指揮ウイーン・フィル(1986年録音/グラモフォン盤) 昔の音の柔らかさと甘さを失いつつあるウイーン・フィルをアバドが目いっぱい歌わせた演奏です。美しいことは無類ですが、極端なレガートが音楽の彫の深さを失わせて、どうもBGM的に聞こえる感も有ります。特に1、5楽章にその欠点が出ています。逆に2楽章はビブラートの美しさが際立っていて、このうえない陶酔感を与えてくれます。全体的に演奏の格調の高さはベームには遠く及びませんが、まろやかなアバドもやはり魅力的です。

以上のCDの中で特に好きなのは、いにしえのウイーン・フィルの音に魅了されるモントゥー盤、歌わせ方と間の取り方が絶妙なワルター盤、格調が高く立派でしかも美しいベームのグラモフォン盤とNHKライブの両盤、というところです。それにしてもウイーン・フィルの演奏するこの曲はやはり特別です。

次回は「ベト7」です。まずはモノラル盤から聴いてみます。

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2010年10月 8日 (金)

ベートーヴェン 交響曲第6番へ長調「田園」op.68 名盤(モノラル録音編)

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ベートーヴェンの「田園交響曲」を初めて聴いたのは中学校の音楽鑑賞の授業でした。その頃は(自分はハードロック小僧でしたので)クラシック音楽には全くと言ってよいほど興味を持っていなかったのですが、第1楽章の明るい旋律と、第4楽章の嵐の情景だけはとても印象に残った記憶があります。この曲は作曲当時では珍しい標題音楽であることと、5楽章形式であったことから非常に革新的な作品でした。ベートーヴェンは既に古典形式の枠に捉われず、ロマン派的な作風に進みつつあったのです。この交響曲第6番は第5番「運命」と並行して作曲されましたが、曲想はまるで正反対で、ドイツ・オーストリアの自然や田園風景の美しさを一杯に湛えていて、あたかも目の前にその情景が浮かんでくるようです。

曲の標題内容については皆さんはとっくにご存じのことでしょうが、一応書きしるしておきます。

第1楽章 田舎に着いて喜びの気分がよみがえる

第2楽章 小川のほとりの情景

第3楽章 農民たちの楽しい集い

第4楽章 雷雨~嵐

第5楽章 牧人の歌、嵐のあとの喜びと感謝

ベートーヴェンらしいドラマティックな作風の「英雄」「運命」「第7」「第9」は大傑作ですが、この「田園」も実に美しく素晴らしい曲であり、僕は非常に好きです。特に好むのは、身も心もゆったりと水面の流れに漂っているような第2楽章と、祈りの気分に溢れた第5楽章です。いつまでも時間の過ぎるのを忘れて浸っていたくなります。この曲の初演はアン・デア・ウイーン劇場で第5番と同じ日に演奏されました。但しその演奏会では、どういうわけか「田園」が第5番、「運命」が第6番とされていました。

それでは、今回はフルトヴェングラーを中心にモノラル録音の愛聴盤を聴いてみます。

Walter_betho6_wien ブルーノ・ワルター指揮ウイーン・フィル(1936年録音/EMI盤) 古いSP盤への録音です。後にワルターはステレオ録音で、あの有名な名盤を残しますが、その原点と言える演奏です。そもそもこの曲でのウイーン・フィルの演奏は特別なものですが、ここでは昔のウイーン・フィルの夢見るように甘く柔らかい音を味わうことが出来ます。SP盤からの復刻ですので、途中でディスクの切り替え部分があったり、針音が入っていますが、聴いているうちに不思議と気にならなくなります。

Cci00054 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1944年録音/ターラ盤) 第二次大戦中のライブ録音ですが、これも僕はターラのボックスで持っています。フルトヴェングラーは「田園」においてもスタイルを変えません。遅い部分は遅く、クレッシェンドに合わせてどんどんクレッシェンドしてゆくいつものドラマティックな表現です。「嵐」の部分のティンパニーの強打など余りに壮絶過ぎるのに驚かされます。ですのでフルトヴェングラーの第3番、5番、7番、9番の時のような絶対的な素晴らしさは感じていません。同じ古い録音を聴くならば、僕はワルター/ウイーン盤のほうがずっと好きです。

41uvmjpcql__sl500_aa300_ ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1947年録音/audite盤) 第二次大戦後のベルリン・フィルへの復帰演奏会初日の5月25日ティタニア・パラストでの録音です。RIASボックスに収められています。フルトヴェングラーが戦後の裁判によってしばらく指揮台から離れていたせいか、どことなく音楽の流れの悪さが感じられます。終楽章のアッチェレランドも性急に過ぎて落ち着きません。ベルリン・フィルも緊張感からか全般的にアンサンブルが今ひとつです。録音は1944年盤に比べれば随分良いのですが、auditeのリマスターが高音域を強調しているのが気になります。

Furt_beetho_6_wien ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル(1952年録音/EMI盤) フルトヴェングラーのウイーン・フィルとの「田園」は大戦中の古いスタジオ録音も有りますが、そちらは聴いていません。この曲に関してはやはりウイーン・フィルとの演奏が最高だと思います。1楽章は相当に遅いテンポで通しますが、弦や木管の音の柔らかさやデリカシー溢れる美しさは例えようもありません。2楽章も同様ですが、ベルリン・フィルのような暗さを感じません。大げさ過ぎない音楽的な「嵐」が過ぎ去った後の終楽章の祈りが感動的なことも比類がありません。途中のアッチェレランドもそれほど極端では無く自然さが有ります。海外Referencesシリーズの旧盤は厚い中低域の上に自然な高域がバランス良く乗った音なのでとても好きです。

Furt_beetho_6 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1954年録音/ERMITAGE盤) 演奏旅行中にスイスのルガーノで行ったライブ録音です。2年前のEMI盤の演奏に近く、全体的に遅くゆったりとしています。けれどもこの曲に限っては、ウイーン・フィルの柔らかく魅力的な音と比べると、どうしてもベルリン・フィルでは聴き劣りします。とはいえ2楽章の暗く小川の底に沈んでゆくような雰囲気はユニークですし、3楽章の農民たちの踊りも大男達が踊っているようで楽しめます。「嵐」での壮絶さはだいぶ影を潜めましたが、終楽章のアッチェレランドは相変わらず極端でやはり抵抗があります。スイス・イタリア放送による録音は水準以上でバランスの良いものです。

41uvmjpcql__sl500_aa300_ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1954年録音/audite盤) 最後の長い演奏旅行を終えてベルリンへ戻って行われたライブ録音です。演奏の特徴はルガーノのライブとほとんど同じで、終楽章のアッチェレランドも相変わらず極端です。けれども地元に帰って来たせいか、演奏全体に落ち着きや安定感をとても感じます。ルガーノ盤よりもずっと美しく感じられるのは、RIASによる録音がスタジオ録音並みに優秀なせいかもしれません。但し、auditeのリマスターは相変わらず高音上がりです。僕はフルトヴェングラーがベルリン・フィルを振った「田園」の中ではこの演奏を一番好んでいます。

31hy76477kl__sl500_aa300_ アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC響(1952年録音/RCA盤) トスカニーニは昔は「即物的だ」などと良く評されましたが、それは大きな誤りです。この演奏もテンポは幾分速めですが、機械的にさっさと味気なく進むわけではなく、絶妙なカンタービレとニュアンスが一杯に織り込まれています。「嵐」ではストレートな音の迫力を聴かせてくれます。全体は一貫して明るく明瞭な演奏なので、のどかな田園風景というよりもゴッホが描いた輝かしい陽光の中の風景を想わせます。

Erich_betho5 エーリッヒ・クライバー指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1953年録音/DECCA盤) 当時のコンセルトへボウは非常に上手く、音色もウイーン・フィルの柔らかい音とはまた違う艶があって魅力的です。1楽章では軽快に過ぎて、少々せわしなさを感じますが、2楽章になるとしっとりと良い流れで曲に酔わせてくれます。3、4楽章は颯爽としてリズムの切れが良くとても楽しめます。終楽章はテンポは速めですが、祈りと感謝の気持ちがとても良くでていて大いに惹かれます。

Schu_bet_758 カール・シューリヒト指揮パリ音楽院管(1957年録音/EMI盤) 全集盤の中でも特に印象に残る演奏です。1楽章の主題が弦ででてくると目いっぱいのレガートで弾かれていささか驚かされますが、その後は速めのテンポで流れ良く進みます。パリ音楽院管の明るい音の管楽器も印象的です。2楽章も速めですが非常に瑞々しい美しさに溢れています。3、4楽章は一転して躍動感と生命力で一杯です。終楽章は祈りというよりも歓喜の気分に溢れるというイメージです。録音はモノラルですが明快です。

というわけで、フルトヴェングラーの演奏ではウイーン・フィルのEMI盤が断然好きです。それ以外ではワルター/ウイーン・フィル盤も良いのですが録音が相当古いので、それよりもずっと新しい親父クライバー/コンセルトへボウ盤とシューリヒト/パリ音楽院盤とに惹かれます。

次回は、ステレオ録音盤を聴いてみることにします。

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2010年10月 2日 (土)

ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調op.67 名盤(ステレオ録音編)

さて「運命交響曲」の、前回のモノラル録音編に続いて今回はステレオ録音編です。

031 ブルーノ・ワルター指揮コロムビア響(1958年録音/CBS盤) ワルターのベートーヴェンは偶数番号の曲が良いと言われていて、それは事実なのですが、僕は奇数番号も良いと思っています。1楽章のテンポは意外に速めですし緊張感も有ります。ワルターらしい音の流れを損なわない微妙な間やタメも随所に見られます。2楽章の気品も実に素晴らしく、曲の美しさに酔わせてくれます。但し3楽章以降が、やや迫力不足と言う印象が残ります。ワルターの晩年のスタジオ録音は体調を考慮して、時間を短く区切りながら収録したそうなので、これはやむを得ないでしょう。ステレオ録音で聴けるだけでも有り難いです。

Beethoven_cluytensアンドレ・クリュイタンス指揮ベルリン・フィル(1958年録音/EMI盤) 全集盤に収められている演奏です。クリュイタンスのベートーヴェンは良いと思うのですが、オーケストラの響きにドイツらしさが感じられないのが不満です。せっかくベルリン・フィルがそういう重厚な音を残していた時代の録音なのにです。クリュイタンスの音造りも有るのでしょうが、それよりもEMIの録音(リマスタリング)だとパリ管もベルリン・フィルも音色が同じに聞こえてしまうのが問題です。グラモフォンではそのようなことは無いのすが、カラヤンは演奏に魅力が感じられませんし、フリッチャイは全集を完成させられませんでした。中々上手くいかないものです。

Cci00055 フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1960年頃録音/edel classics盤) これも全集盤に収められている演奏です。全曲に共通していますが、ゲヴァントハウス管の古き良き時代のドイツの響きが実に魅力的です。一音一音マルカートではっきり弾かれる音は、子音を明確に発音するドイツ語と同じです。現在のベルリン・フィルのように団員が国際化したオケではこういう音は出ません。但し、破格の曲の演奏にしてはコンヴィチュニー親父の指揮が真面目すぎて幾らか面白みに欠ける感は有ります。

Furicsay938 フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリン・フィル(1961年録音/グラモフォン盤) 昔、ブーレーズ盤が出た時に1楽章の遅さが話題になりましたが、一番遅かったのは実はこのフリッチャイ盤でした。その後、陽の目を見たクナッパーツブッシュの演奏は更に遅いうえにテンポの浮遊性が有るので古典的な造形を損なっていますが、フリッチャイは造形をしっかり保っています。続く第2、第3楽章も遅く、沈み込んでゆく雰囲気がユニークです。但し終楽章はそれほど遅くは有りません。勝利の歌を高らかに歌い上げます。特筆すべきは当時のベルリン・フィルの暗く分厚い響きで、この演奏が素晴らしいのはこの響きが有ればこそです。

Beethoven5_hshumit ハンス・シュミット‐イッセルシュテット指揮ウイーン・フィル(1968年録音/DECCA盤) この人は地味な存在ですが、北ドイツ放送やバイエルン放送を振ったライブでは非常に素晴らしい演奏を聴くことが出来ます。「運命」の演奏は、このウイーン・フィルとのDECCA盤しか聴いたことは有りませんが、これは中々に素晴らしい演奏です。テンポは中庸ですが生命力が有り、何も変わったことはしていませんが、ウイーン・フィルの柔らかくも張りの有る音を上手に生かしています。この演奏はもっと評価されて良いと思います。DECCAの録音も優秀です。

41f6bd5nchl__sl500_aa300_ オットー・クレンペラー指揮ウイーン・フィル(1968年録音/テスタメント盤) 1968年のウイーンでのライブです。晩年のクレンペラー・スタイルの遅めのテンポでスケールの大きい演奏です。この人も人間的なドラマティックな表現とは無縁です。クナッパーツブッシュの場合は更にスケールが大きく、かつテンポに浮遊性が有るので聴いていて飽きないのですが、クレンペラーは一貫してイン・テンポで通すの少々退屈します。しいて言えば終楽章は名演です。それにしても僕はどうもこの人とは余り相性が良くない気がします。もちろん好きな演奏も無いわけではないのですけれども。

Beethoven5_bohm カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1970年録音/グラモフォン盤) これはグラモフォンへの全集の中の録音です。前々年のイッセルシュテット盤とのウイーン・フィル競演になりました。ベームのほうが重量感が有りますが、ウイーン・フィルの美感と切れの良さではイッセルシュテットが勝っている印象です。また、1楽章前半と3楽章で幾らか緊張感に欠けるのが気になります。さすがに終楽章は中々の力演になっていますが。この第5の演奏は、あくまで全集盤のためのものと割りきった方が良いかもしれません。

522 エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1972年録音/Scribendum盤) モスクワでの演奏会録音です。’73の別録音も有り、そちらはモノラルですが、これはステレオです。但し録音の明瞭度にはやや欠けています。演奏は余分な脂肪分の無い筋肉質のものですので、もう少し潤いが欲しくなります。ティンパニーの強打などは凄まじいのですが、フルトヴェングラーのように流れの中で叩かれるのでは無く、そこだけが突出して聞こえてしまうのです。意外に繊細さを欠いた音も多々有りますし、僕は4番の演奏ほどは好みません。

51chtd6fxsl__sl500_aa300_ カルロス・クライバー指揮ウイーン・フィル(1975年録音/グラモフォン盤) エーリッヒの息子カルロスの名を世界に轟かしたセンセーショナルな演奏です。最初に聴いた時には、一気苛性な勢いにすっかり魅了されました。但しもう長いこと聴いていなかったので、今回聴き直してどう感じるかが楽しみでした。この躍動感と生命力はやはり凄いです。但し「苦悩や葛藤」という陰りは有りません。極めて健康的なのです。聴いたイメージはトスカニーニに近いです。やはりこれは「運命」の演奏を語るに外せない演奏だと思いますが、好きか嫌いかは全くの聴き手しだいです。

0184442bc ヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1977年録音/Berlin classics盤) これも全集盤に収録されている演奏です。毎回同じことばかり書いていますが、ルカ教会で録音された、このオケのいぶし銀の響きを味わえる演奏です。但しブロムシュテットの指揮に個性や主張は有りませんので、第3や第5のようなドラマティックな曲には余り向いていません。あくまでもシュターツカペレ・ドレスデンという唯一無二の典雅な響きの楽団で全集を聴けることに価値が有ります。

670 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1977年録音/Altus盤) 日本公演のNHKホールでのライブ録音です。グラモフォン盤から7年後の演奏ですが、力強さはスタジオ録音の比ではありません。テンポもずっと速めですし、緊張感が違います。音の持つ迫力はまるで別人のようです。やはりベームは実演の人ですね。NHKの録音も優秀ですので、この名演奏を心から味わうことができます。当日の前半プログラムは「田園」でしたが、これも非常な名演で同じCDに収められています。

以上のステレオ録音盤の中から、マイ・フェイヴァリットを挙げるとすれば、1にフリッチャイ/ベルリン・フィル、2にベームのNHKライヴ、3にイッセルシュテット/ウイーン・フィルです。他に外せ無いのはワルターと息子クライバーです。

さて連続して「運命」の記事ではみなさんお疲れでしょうから、ここでちょいと息抜きに、とても面白い「運命交響曲」の演奏をご紹介します。ある友人が教えてくれたYouTubeなのですが、大傑作です。名演奏の一角を占めるかもしれませんよ。

気分一新したところで、次回は第6番「田園交響曲」です。

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