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2010年9月17日 (金)

ベートーヴェン 交響曲第4番変ロ長調op.60 名盤(モノラル録音編)

Image51 第4交響曲は、第3番「英雄」と、第5番「運命」の間の曲なので余り目立たない存在です。そのうえ副題も付いていないので尚更です。けれども、この曲は大変素晴らしく、実に魅力的だと思います。シューマンがこの曲を「二人の北欧神話の巨人(3番と5番)の間にはさまれたギリシアの乙女」と例えたと伝えられています。さすがは音楽評論家でもあったシューマン先生ですね。でもこの曲は「乙女」と呼ぶほどやわな曲でもないと思います。激しさも充分に持ち合わせているからです。それともギリシア美人はもしや案外と激しい気性を秘めているのでしょうか。シューマン先生はもしかしたら、そんなギリシア美人もお気に入りだったのかもしれませんね。

この曲は僕も昔から大好きですが、特に素晴らしいのが第1楽章です。不気味な静けさの導入部からアレグロの主部へ移るときのスリルは何度聴いても興奮します。そして気分を高揚させたまま、表情を刻々と変化させてゆくのは最高の聴きものです。第2楽章アダージョも深いロマンの香りが溢れていて実に美しいです。第3楽章スケルツォも楽しいですが、ベートーヴェンとしては平均的な出来というところでしょうか。第4楽章アレグロでは再び躍動感と楽しさに溢れます。というわけで、この第4交響曲は全体が短めで簡潔なせいもありますが、一度聴き始めるとあっという間に聴き終えて、また初めから聴き直したくなるほどです。

さて、僕の愛聴盤のご紹介ですが、まずはモノラル録音からです。例によってフルトヴェングラーを中心に聴いてみましょう。

Beethoven4jpg ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1943年録音/メロディア盤) 僕が初めて聴いたべト4の演奏はこの演奏でした。第二次大戦中のライブ録音です。廉価LP盤の音は貧弱でしたが、演奏の凄さに感動しました。お化けが出そうに不気味な導入部に続くアレグロの推進力と迫力が凄く、フォルテの音の激しさは尋常ではありません。ティンパニーの強打にも鳥肌が立ちます。第2楽章ではロマンティックな雰囲気が一杯で音楽に陶酔させてくれます。それは極めてロマン的で古い演奏スタイルかもしれませんが、フルトヴェングラーの演奏でこの曲を聴くと、3番と5番にも決して見劣りしない曲に思えてきます。

803 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1943年録音/オーパス蔵盤) これはメロディア盤の演奏会に先立って聴衆無しで放送用に録音された別テイクです。ですので、ここにはライブ演奏の鬼気迫るような雰囲気は有りません。ティンパニーの強打などはかなりのものですが、フォルテの音は常識範囲に留まっています。オーパス蔵の板起こし(アナログ盤からの直接復刻)の音質はメロディア盤よりもずっと良好ですので、この曲のロマン的な面と古典的な面をバランスよく楽しむことが出来ます。

Beethoven4_furjpg ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル(1952年録音/EMI盤) 戦時中の演奏と比べるとテンポがずっと遅くゆったりとしています。全体的に少々生ぬる過ぎる印象が残りますが、逆にウイーン・フィルの柔らかな音でくつろげる良さが有ります。この曲には、激しい演奏と穏やかな演奏のどちらでも許容できる音楽の懐の深さを感じます。僕はこの演奏もとても好きです。第4楽章のイン・テンポでスケール大きく広がりのあるところなどは特に気に入っています。EMIへのスタジオ録音ですので音質は良好です。僕はこれも海外References盤で聴いています。

Toscanini_beethoven_3_4 アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC響(1951年録音/RCA盤) ギリシア彫刻を思わせるような力強く明快な演奏です。これは乙女どころではなく、若くたくましい男性のイメージです。1楽章アレグロ部の躍動感には聴いていて思わず腰が動いてしまいます。2楽章ではロマンに深く沈滞することなく明るく健康的に歌われます。3楽章は速めでリズムが実に生きています。終楽章は速過ぎず遅過ぎず実に良いテンポです。そしてこの強靭な生命力に惚れ惚れしてしまいます。

Schu_bet_758 カール・シューリヒト指揮パリ音楽院管(1958年録音/EMI盤) これもEMIへの全集に収められています。この年でモノラル録音なのは残念です。シューリヒトの古典派の演奏は案外トスカニーニと共通点が有ります。速めのテンポで引き締まっていること、基本的にイン・テンポなのに時々デフォルメを見せること、強靭ともいえる生命力があること、楽譜の読みが非常に深いこと、オケを自分の手足のように統率すること、などです。そしてどちらも本当に素晴らしいので、とても甲乙などは付けられません。

次回はステレオ録音編です。モノラル盤に負けず劣らず素晴らしい演奏が色々と有ります。

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ベートーヴェン(交響曲第4番~6番)」カテゴリの記事

コメント

こんばんは^^

とうとうベートーヴェンシリーズ始まりましたか!

4番は私も好きです。フルトヴェングラーのものは43年ライヴ盤を持ってます。久しぶりに聴いてみたくなりました。

投稿: kurt2 | 2010年9月18日 (土) 22時14分

kurt2さん、こんにちは。

ベト4って良い曲ですよね。
フルトヴェングラーの43年ライヴもホントに凄い演奏です。僕も滅多に聴きませんが、聴くといつでも圧倒されます。

投稿: ハルくん | 2010年9月19日 (日) 07時12分

ハルくんさん、おはようございます

私は4番の古いモノラル録音は少ししか持っておらず、それも全集で買っておいて、まだ殆ど聴いていないものばかりです。
先ほど、そんな中から引っ張り出して、メンゲルベルク指揮コンセルトヘボウ管弦楽団の1940年4月25日ライブ録音を聴きました。まるで「俺はこう演奏するんじゃ!」とでも言っているかのようで、テンポ設定がユニークだったり、あるいは予想を裏切って案外まともだったりする演奏で、ちょっとスリルがあって、とにかく集中して最後まで聴けました。余程指揮の特徴を全員知っているのでしょうが、よくオケがついて行けるものと感心します。録音は意外とバランスよく、聴き苦しさはそれ程ありませんでした。今まであまり意識しなかった特定の旋律が強調されて弾かれている第2楽章など、第9の第3楽章を想起する神々しささえ覚えるほどでした。
以上、参考まで

投稿: HABABI | 2010年9月19日 (日) 08時07分

HABABIさん、こんにちは。

メンゲルベルクのベートーヴェンで僕に記憶の有るのは第九だけです。それもやはり凄い演奏でした。単なるデフォルメを越えて徹底的に芝居がかっているのですが、あんな演奏の出来る人は他に居ませんね。現代では冗談音楽に受け止められてしまうことでしょう。
フルトヴェングラーといい、トスカニーニといい、この人といい、かつての巨匠達の個性の豊かなことにはつくづく驚かされますね。あの時代の聴衆になってみたいものです。

投稿: ハルくん | 2010年9月19日 (日) 15時15分

ハルくんさん

こんばんは^^
モノラルばかりに反応してしまってスミマセン~^^;
ベートーヴェン4番、ご紹介のオーパス盤を持っているのですが、実はもっぱら7番ばかり聴いています。。。
でもこれを機に、どんな「ギリシャ乙女」なのかしら?じっくり耳を傾けてみようとと思います。イメージとしては、やはり内面に激しさを潜めた美人ですね~

投稿: micchik | 2010年9月21日 (火) 22時44分

micchikさん、こんばんは。

オーパス蔵盤はライブ盤とEMI盤の丁度中間的な演奏なので、確かに「内面に激しさを潜めた美人」です。すると、さしずめライブ盤は「気性の激しい男勝りの美人」、EMI盤は「性格もおっとりとした美人」こんなイメージでしょうかね。
それぞれ良さが有りますし、4番の曲自体いいですよ~。じっくり聴き込まれてくださいね。

投稿: ハルくん | 2010年9月22日 (水) 00時46分

やはり沢山お持ちで、タメイキが出ます。
(笑)

私が持ってるのは、フルトヴェングラーの
1952年EMI盤を24Bitリマスタリング
したCDです。
この演奏けっこう気に入ってます。

貴兄の記事を参考にして、もうちょっと
増やしたいなと思ってます。

投稿: 四季歩 | 2010年9月25日 (土) 19時35分

四季歩さん、こんばんは。

同曲異演盤を購入されるなら、なるべくタイプの違うものを選ばれると良いですよね。同じフルトヴェングラーならLIVE盤とか、正反対のスタイルのトスカニーニとか、あるいは音質の良いステレオ録音のなかから選ぶとか、色々と選び方が有りますよ。

投稿: ハルくん | 2010年9月25日 (土) 19時50分

こんばんは。

フルトヴェングラー/EMI、同じくReferenceを。コノ人はスタジオ録音でも、他の指揮者とは違って聴き応えがthink。'43年ボクのはVenezia盤で、調べたらMelodiya盤とは録音が違うのですねcoldsweats01

想像以上lovelyだったのが、ムラヴィンスキー/レニングラード'73/Melodiya盤。会場の残響も捉えた音色にconfident。寝かせてある日本公演/Altus盤が在るので躊躇してたのですが、貴Blogに背中を押され入手し大正解good

投稿: source man | 2010年10月 2日 (土) 18時55分

source manさん、こんばんは。

フルトヴェングラーのVenezia盤というのはオーパス蔵盤として紹介した放送用録音ですかね?ライブ盤とはだいぶ違いは有ると思いますが、僕は両方とも好きですよ。

ムラヴィンスキーのこの曲の演奏はどれも素晴らしいですね。Altus盤も実に素晴らしいです。

投稿: ハルくん | 2010年10月 2日 (土) 21時17分

はじめまして^^
僕はオーマンディーのフィラデルフィア管がたまらなくすきでーす。

投稿: ハロウィーン | 2010年10月26日 (火) 01時43分

ハロウィーンさん、はじめまして。

オーマンディの4番の演奏というのは知らなかったです。あの人でしたらオーソドックスで良いかもしれませんね。
またのコメントお待ちしておりますのでよろしくお願いします。

投稿: ハルくん | 2010年10月26日 (火) 06時13分

この曲は指揮者によって曲想ががらっと変わって聞こえるのが面白いですね。
フルトヴェングラーではやはり迫力満点の43年ライヴと気力充実の50年スタジオ録音が双璧ですね。個人的には最初のスタジオ録音が入手困難なのは残念です。もちろん二度目のスタジオ録音も悪くはないですが・・・。
シューリヒトはリズムの取り方が流石と思わされます。これはクライバーのベーム追悼コンサートよりもしっくりきます。

投稿: ボナンザ | 2014年6月22日 (日) 21時03分

ボナンザさん

指揮者によって随分と変わりますね。特に昔の指揮者だと尚更です。最近の指揮者ではそれほど違うようには感じないのですが。

フルトヴェングラーの演奏はどれを聴いても別格ですね。戦中の演奏と戦後のEMI盤ではまるで異なるのに、どちらも素晴らしいのは流石です。

Cクライバーのベト4は人気が高いですが、自分は余り好みません。速けりゃ良いというものでもないと思うのですがねぇ。

投稿: ハルくん | 2014年6月22日 (日) 23時09分

こんばんは。久し振りにコメントさせて貰います。
「田園」に限ったことではありませんが、全集盤を取り上げれば各曲の出来不出来に触れねばなりませんので、今回はこのグループでお話させていただきます。

私はクレツキー指揮チェコフィルの輸入盤全集を持っていますが、もし、ハルくんさんがこの曲を未聴でありましたら、出来れば是非一度聴いていただいて、レビューをして欲しいと思います。
併録されている「コリオラン」も素晴らしい演奏、録音と思うからです。

さまざまの「田園」のご感想を伺いましたが、私も上げられたCDの8割くらいは所持しています。
中ではモントゥーとE・クライバーを好きですし、高く買っています。
好みの問題でどのような意見があってもいいと思いますが、私の場合、音場重視(生のコンサートに近づけるコンセプト)の録音でなく、内声部の動きまで聞き取れて、楽員の気迫が伝わるような録り方で、かつオケのソノリティーがそこそこいいものが好みに合います。

クレツキー盤はよそでは殆ど話題にならないようですが、私は大変優れた演奏ではないかと常々おもっております。
ワルターやモントゥーのような柔らかいムードの表現とは異なりますが、ルドルフィヌムという素晴らしいホールに響くオケの響きは、管、弦の重奏部になると、他では味わえない独特なソノリティーだといえます。

スプラフォンの緻密な音の捉え方による録音は、再生装置によると、その美しさと力強さが表現されないケースが多々見受けられたという経験から、評価の対象から外されてはいないだろうかと思っているのです。
低歪み率、高解像度のNS-1000Mをお持ちの貴兄、私の期待に応えて貰えそうに思いましてー笑

気長にブログを拝見させていただきますので、よろしくお願いいたします。

投稿: 田舎爺 | 2014年11月16日 (日) 23時46分

田舎爺さん、こんばんは。
お久しぶりのメール大変嬉しく思います。

ベートーヴェンの交響曲全集で全ての曲の演奏を気に入るというのは有り得ないですね。最大公約数を取るか、あるいはウイーンやドレスデンなど特徴的な音を持つ楽団で選ぶかしかないと思います。

クレツキは余り聴いていない指揮者ですが、案外と高く評価している友人も居ます。機会が有れば聴いてみたいですね。チェコフィルの全集というのは多くないので貴重かも知れません。
ご紹介ありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2014年11月17日 (月) 20時40分

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