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2010年8月22日 (日)

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー ~最高のベートーヴェン~

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僕がクラシック音楽というものを聴くようになったきっかけは、高校生の時に「新世界交響曲」やチャイコフスキーのピアノ協奏曲という素晴らしい名曲を耳にする機会があって、心の底から感動したからです。けれども、それから更に深く入りこんだ理由としては、フルトヴェングラーの演奏するベートーヴェンを聴いたことが一番の理由だったと思います。

僕が高校生の時代、とは言っても1970年代に入っていましたから、当然フルトヴェングラーが亡くなってから既に十数年が経っていました。それでも当時の音楽雑誌の推薦盤は大抵、カラヤン、ワルター、フルトヴェングラー、それにトスカニーニだったと記憶しています。ですので、それぞれの演奏を当時のLPレコードで色々と聴いてみたのです。当時はカラヤンの人気が凄くて、一番店頭を賑わしていたのですが、実際に聴いてみると、どうも面白くないのです。特にベートーヴェンが全く心を打たないのですね。余りにスタイリッシュに過ぎるというか、ベートーヴェンのあの「苦悩を突き抜けて歓喜へ」というイメージから遠く離れているのです。それに比べてフルトヴェングラーの演奏はどれもモノラル録音で音質が貧しいのですが、心への響き方がまるで違いました。特に第二次世界大戦中の「英雄」「運命」「第七」「第九」などの演奏には、余りの凄さに魂を抜き取られてしまうぐらいの衝撃を受けました。

その後も色々な音楽、演奏を聴いてきましたので、もちろんフルトヴェングラー以外にも大好きな演奏家は大勢居ます。作曲家によっては、フルトヴェングラーが一番好きなわけでは無いケースも多くあります。けれども、ことベートーヴェンに関しては、いまだにフルトヴェングラーが最高です。もちろん全ての曲で一番では無いのですが、多くの曲において他の指揮者の演奏はフルトヴェングラーの到達した崇高な境地には遠く及ばないと思うのです。その理由は、フルトヴェングラーの創り出す音楽の持つ「ドラマ」です。絶妙なフレージングに、リタルダンドとアッチェレランド、クレッシェンドとデミュニエンドを魔法のような上手さで駆使して、比類なくドラマティックな表現と化すのです。それはフルトヴェングラーにしか出来ない天才の業です。そしてそれはベートーヴェンの音楽の持つ激しさや劇的な要素に正にピタリと一致するのです。

余り語られませんが、戦前のドイツ/オーストリアでフルトヴェングラーは、ベルリン・フィルとゲヴァントハウス管弦楽団とウイーン・フィルの首席指揮者を同時期に兼任しました。ヨーロッパのこれほどの主要ポストを掌握できた指揮者は後にも先にも決して存在しません。それほど絶対的な存在だったのです。

夏休みも終わって、段々と芸術の秋が近づいてきます。そこで、しばらくはベートーヴェンを集中的に聴こうと思っています。但し、恐らくはベートーヴェンの記事を書いているのか、フルトヴェングラーの記事を書いているのか分からなくなりそうな気がします。一応このことをお断りしておいて、次回からベートーヴェンの交響曲を聴いていきます。

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名指揮者」カテゴリの記事

コメント


こんばんは^^

こちらのページを開いて真っ先に飛び込んできたカオに、思わず「わっっ!」と叫んでしまいました(笑)

戦時中のベートーヴェン交響曲に魂を抜き取られるとのお気持ち、同感です。
フルトヴェングラーを聴き始めた頃は音質の悪さにいちいち絶句したものですが、不思議なことに気づいたときには、そんなことはまったく気にもならないぐらい音楽そのものに惹かれていました。

ハルくんさんのこれからのベートーヴェン記事、楽しみにしています^^

投稿: micchik | 2010年8月22日 (日) 20時43分

micchikさん、こんばんは。

使う写真をどれにしようかと思ったのですが、やはりインパクトのある大きいのが良いかと・・・(笑)

そうなのですよね。特に戦時中の演奏は、異常な緊迫感なので、聴き始めて数分も経つとすっかり没入しているのですね。

記事を書くときには一応全部のCDを聴き直すんです。結構これ疲れるんですよ~。
でもがんばりますね。ありがとうございます!

投稿: ハルくん | 2010年8月22日 (日) 22時14分

こんばんは

私も中学時代にフルトヴェングラーによってベートーヴェン像が確立したので、この二人の結びつきが強く、他の指揮者も聴きますけど、根底に流れているのは何といってもフルトヴェングラーのベートーヴェンなのです。
ハルくんさんの切り口で読ませていただいて新たな世界を垣間見ることを楽しみにしています。

投稿: メタボパパ | 2010年8月24日 (火) 23時24分

そうきましたか!(笑)
私が知るハルくんさんの趣味にぴったりの指揮者のような気がします。自分が若い頃は偉そうに品評していましたが、いま聴き直すと案外新鮮、もっと暑苦しい演奏だと思っていたのにと感じます。私は録音の悪さをあまり気にしませんし(奏者の音質は気になるけど)
では続きを楽しみにしています。

投稿: かげっち | 2010年8月25日 (水) 12時15分

メタボパパさん、こんばんは。

いやー中学生でフルトヴェングラーですか!(驚)
でも、この人のベートーヴェンは、やはりクラシック演奏の原点ですね。

最近は聴く機会がだいぶ減ってはいましたが、今回久々に集中して聴くのが楽しみなんです。

投稿: ハルくん | 2010年8月25日 (水) 22時39分

かげっちさん、こんばんは。

作曲家によっては向き不向きを感じないでは有りませんが、やはり自分の一番の指揮者です。同じように思う人はきっと多いでしょうね。

”暑苦しい”という表現はどうかと思いますが、この人ほど”熱い”演奏は稀ですね。それも悲劇的な面と裏表ですから、真に「劇的」です。

投稿: ハルくん | 2010年8月25日 (水) 22時50分

ハルくんさん、こんばんは

フルトヴェングラーのベートーヴェンについてのハルくんさんのお話、楽しみにしています。

小生にとってフルトヴェングラーと言えば、映画で観たモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」、LPでのブラームスの交響曲第4番、第3番、ブルックナーの第7番(ローマでの録音)...肝心のベートーヴェンでは、スタジオ録音の交響曲第5番で、まさにベートーヴェンを聴いたという満足感がありました。
もう、このような指揮者は出ませんね。

投稿: HABABI | 2010年8月26日 (木) 22時53分

HABABIさん、こんばんは。

音質はともかくとすれば、1920年代あたりからの録音演奏を聴くことができますけれど、この100年の歴史の中で、この人のような指揮者は他に存在しませんよね。特にベートーヴェンの3番、5番、9番あたりは絶対に真似のできない神業です。
その詳しいところは自分なりに追々触れていきたいと思っています。

投稿: ハルくん | 2010年8月26日 (木) 23時23分

うまく書き込めなかったので書き直します。

かつて「フルトメンクラウ」と異名を付けた人がいたようですが、リハーサルまでの間に打合せができていて、全身から出るオーラが音楽の方向性を指し示しているならば、棒さばきなどプロの演奏には関係ありません。それに、いま映像を見ると、マタチッチや山田一雄の棒よりは明解だと感じます。

一時代を画した人ですね・・・

投稿: かげっち | 2010年8月27日 (金) 12時12分

かげっちさん、こんばんは。

どうやら何かのキーワードがスパム判定されてしまったようです。申し訳ありませんでした。

フルトヴェングラーは、演奏者は常に初演のつもりで演奏しなければならないという信念を持っていました。ルーティンワークになるのを恐れたのです。毎回指揮を少しづつ変えてしまう理由はそこに有ったと思います。奏者にわざと「面食らわせて緊張を強いた」のだと思いますよ。至芸ですね。
誰が見ても分かりやすい棒は、音楽も分かりやすい反面、緊張感が失われやすいのじゃないでしょうか。

投稿: ハルくん | 2010年8月28日 (土) 01時21分

私がクラシックに目覚めて、
よし最初にベートーベンを攻めてやろう、
というわけで最初に買ったCDが、
フルトヴェングラーの第九でした。

あれが私の基準になっていると思います。

というわけで、私にはフルトヴェングラーが
神様です。

投稿: 四季歩 | 2010年8月29日 (日) 20時32分

四季歩さん、こんばんは。

フルトヴェングラーの第九から入られましたか。それはクラシックへの最高の入り方をされましたね。
でもどのような順番で入られようとも、フルトヴェングラーが神様であることには変わりありません。ちなみに僕はフルトヴェングラーのベートーヴェンにはエロイカから入りました。

投稿: ハルくん | 2010年8月30日 (月) 00時04分

お久しぶりです。ここ数年フルトヴェングラーの全集がかなりお安くなってて、100枚以上のboxセットも1万円を切るという破格商品も出てるので、どれを買おうか色々調べてたらハルくんさんのサイトにいきつきました。
自分も最初にフルトヴェングラーに感銘を受けた録音がベートーヴェンのエロイカでした。1944年のだったか。とにかく別次元の音が出てて、これがフルトヴェングラーなのか...と驚嘆した覚えがあります。彼のベートーヴェンはどれも素晴らしいですが、今でも一番感動するのが彼のエロイカですかね。あとシューマンの4番とか...
彼の演奏する音楽は、オーケストラだとか音楽とかを頭で感じさせないぐらいに別なものに化けてる凄さがありますね。聴いてると自分もそのドラマの一員というかオーケストラの団員になってる気分になります。
インタビュー記事で、フルトヴェングラーに心酔している内田光子が、カラヤンのイタリアオペラは最高だけどベートーヴェンは絶対に聴かない、って言ってたのをなんだか思い出しました。
自分も初めて聴いたベト響は父親の持っていたカラヤン盤でしたが、いま一つピンと来ないな...と思っていたのです。それからクライバーに行って、最終的にフルトヴェングラーに行き着きました。

投稿: ひゅーい | 2013年1月 6日 (日) 10時44分

ひゅーいさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

エロイカ、第九、シューマン4番などは、他の指揮者との違いが余りに大きいですね。貧弱な音質を超越して演奏に魂を奪われてしまいます。凄いとしか言いようがありません。

カラヤンのベートーヴェンは昔からピンと来ませんでした。イタリアオペラも「最高」とまでは思いませんけれど、良いものは確かにあります。
息子のクライバーのベートーヴェンは実は運命以外は余りピンと来ません。

やはりフルトヴェングラーのベートーヴェンだけは誰も越えられませんね。

投稿: ハルくん | 2013年1月 6日 (日) 12時02分

フルトヴェングラーといえば
やはりベートーヴェン第5ですね!

なかでも1947年5月27日盤は
中学生のときLPを買って聴きほれていました。
なぜかCDでは感動できませんが??

事実上の戦後復帰演奏会の25日盤は
録音が遥かに良いCDが出て、聴くのは今はこれです。

投稿: 影の王子 | 2013年7月31日 (水) 21時31分

影の王子さん

LPに比べてCDの感動が薄れるというのは結構感じることが有りますね。
レコード会社のエンジニアは、デジタルマスタリング段階で、どうしてもクリアさを求める余りに高音強調の音にしてしまう愚を犯すのですね。結果的に薄っぺたい音になってしまいます。RIASの25日盤は素晴らしい音ですからね。同感です。

投稿: ハルくん | 2013年7月31日 (水) 21時59分

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