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2010年7月17日 (土)

テンシュテット/ロンドン・フィルのライヴ盤 マーラー交響曲第2番「復活」

547喉頭がんのために1994年に引退、1998年に亡くなった名指揮者クラウス・テンシュテットは何と言ってもマーラーの演奏が一番凄かったのですが、EMIレーベルにロンドン・フィルとスタジオ録音した全集だけを聴いていると、いいマーラーの演奏だなぁとは思えても、決してこの人の真価は判りません。その理由は、演奏が彼が喉頭がんを発病して治療のために一度楽壇から離れる以前の録音だからです。がんの治療を終えて彼は再び音楽活動を始めますが、それ以後の演奏には常に一期一会という言葉を意識させられるような正に鬼気迫るような趣を感じます。その最高の姿が、EMIにライヴ録音で残した第6番と第7番です。そこではロンドン・フィルもスタジオ録音で感じさせた力量不足の印象をまったく感じさせませんでした。

「復活」には1981年のEMIスタジオ録音の他に、ファンの間では非常に有名な北ドイツ放送響との1980年のライブ演奏の海賊盤(First Classics)があります。この演奏は、再起後の演奏とは趣が異なりますが、ロンドン・フィルとはオーケストラの格の違いを見せつける北ドイツ放送響に、それは正に命がけの大熱演をさせています。そんなテンシュテットの「復活」に、また新しい音源が登場しました。リリースは今年の3月でしたが、記事にするのが少々遅くなりました。

この新音源は1989年にロンドン・フィルとフェスティヴァル・ホールで行われたコンサートです。どうしても北ドイツ放送盤との比較になるわけですが、北ドイツ放送盤はオンマイク気味の録音なので、楽器の音が非常に生々しくとらえられています。冒頭のコントラバスの演奏なんかも、弓の松やにが飛び散るのが見えるようです。それに対して、今回のロンドン・フィル盤はもっとホール・トーン的な録音です。違いはありますが、どちらも優秀な録音です。

演奏については、どちらも振幅が非常に大きく、緩急の変化がもの凄いという点で変わりません。大見得を切るようなドラマティックさも、バーンスタインと双璧です。けれども全体的に、ロンドン・フィル盤は北ドイツ盤よりもテンポがより遅くなっています。そのために空間の広がりはロンドン盤のほうに大きさを感じる気がします。ゆったりした部分では何か枯淡な雰囲気も醸し出します。一聴した時には、北ドイツ盤がずっと良いように思ったのですが、ロンドン盤を何回か聴き直してみると、これはこれで捨てがたい味わいがあるのが分かってきました。終結部の天にも届けとばかりの大合唱も比較出来ないほどに、やはり凄まじいです。

北ドイツ放送のFirst Classics盤は入手が難しいこともあるので、テンシュテットのマーラー演奏の凄さを知るためには、今回のロンドン・フィル盤のリリースは大歓迎すべきです。マーラーの音楽を、そして「復活」を、心から愛する人には是非とも聴いていただきたい名盤がまたひとつ増えました。

<旧記事>マーラー 交響曲第2番「復活」 名盤

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マーラー(交響曲第1番~4番)」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
夜分遅くにすみません。

私はテンシュテットが大好きで、このロンドンライブ盤が復活のマイベストです。

他方、当方が所有している北ドイツ
盤はメロディアからのものしかなく、ハルさんのおススメするファーストクラシック盤も是非聴いてみたいのですが、メロディア盤とファーストクラシック盤では、聴こえ方にどのような差があるのでしょうか。

別の記事で、音量のリミッターがかかると仰っていましたが、浅学なもので具体的にはどう変わるのかをお聞かせ願えないでしょうか。

宜しくお願い致します。

P.S.春に明大を卒業し、今年度から明大大学院に通っております。今月にある明オケの演奏会がすごく楽しみです。

投稿: パズー | 2015年6月 8日 (月) 00時30分

バズーさん、こんばんは。

テンシュテット、凄い指揮者ですね。
このロンドン盤も凄いですが、北ドイツ放送響響の「復活」は、やはりその最たるものですね。メロディアからもリリースされているのですか?残念ながら聴いたことがありません、

”リミッター”というのは、本来の録音の持つダイナミックレンジを狭めているものです。ピークのフォルテシモが幾らか小さく聞えますが、その差は小さく、単独では判別は難しいでしょう。比べてみて初めて気付きます。
昔のレコードでは頻繁に使われた録音技術です。

投稿: ハルくん | 2015年6月 9日 (火) 22時50分

失礼致しました、メロディアではなくメモリーズでした。

そうなのですね。
ロンドンライブに比べて、メモリーズ盤の音質には満足できなかったので、海賊版通販サイトで音質良好という評価だった復活のELS 02-210/1 (EN LARMES)が、同じレーベルから出ている北ドイツとのブルックナー8とブラームス1とセットになっているCult of Classical Music/COCOM1006をヤフオクにて格安で購入しました。

今から手元に届くのが楽しみです。

投稿: パズー | 2015年6月11日 (木) 23時54分

バズーさん

ロンドンライブと北ドイツライブは録音タイプの違いによる好みは出るでしょうが、どちらも優れていると思います。またメモリーズ盤でもリミッターさえ気にしなければ鑑賞に支障はないものと思っています。

EN LARMESも海賊CDRとしては優秀なので期待は出来ますね。
聴かれたあとのご感想を楽しみにしています。

投稿: ハルくん | 2015年6月12日 (金) 11時24分

ハルさん、こんにちは。

先日お話ししたCDが届きまして、早速聴いてみました。

まだ5楽章のフィナーレしか聴き比べられていないのですが、明らかにメモリーズ盤に比べて音の面積・奥行き(容積とでも言うのでしょうか)が拡大し、情報量が増えており、充分に満足のいくものでした。
早く全楽章を聴きたいです。

このCDがブラ1とブル8と一緒で2,000円ちょっとだなんてお得すぎです(笑)

ハルさんがお持ちのファーストクラシック盤の音の傾向はどのようなものなのでしょうか?

投稿: パズー | 2015年6月18日 (木) 10時16分

追伸

1楽章の後半部分にノイズが見受けられました。
ファーストクラシック盤でも同様なのでしょうか?

投稿: パズー | 2015年6月18日 (木) 14時03分

バズーさん、こんにちは。

メモリーズ盤に比べて奥行き感など情報量が増えているとすれば、音質はファーストクラシック盤相当なのではないでしょうか。
但しファーストクラシック盤でノイズの記憶は有りません。CDRのためにもしかしたら書き込みにエラーが起きたのかもしれません。
実際に聴いていないので何とも言えませんが。

投稿: ハルくん | 2015年6月18日 (木) 16時22分

そうなのですね。
でしたら良かったです(^-^)
教えて頂き有り難うございます。

1楽章のノイズは、23分10秒台と24分20秒台にあり、メモリーズと同じ箇所にありました。

元の音源はメモリーズと同じなのに、プレスの関係で音質が全く異なるということなのでしょうね。
新しく購入したものは、ホールに吸い込まれていく残響(特に高音)の美しさはメモリーズ盤とは比較になりません。

投稿: パズー | 2015年6月23日 (火) 20時39分

バズーさん

ファーストクラシックのご指摘の箇所を確認してみたところ微細な静電気ノイズのようなものが有るような・・・
同じものかどうかは分かりませんが、かなり微細なものをおっしゃられているのでしょうか?
アナログ時代に育った身としては微細なノイズには慣れっこになっているのかもしれません。

どちらにしても、この演奏は「復活」の演奏史上で特筆されるものですね。

投稿: ハルくん | 2015年6月23日 (火) 23時28分

ハルさん

ファーストクラシック盤でも同様なのですね!
恐らく同じであると思います。
私の場合は、クラシックの聞き始めの頃に、ショスタコーヴィチ5番が好きになり、必ずしも録音がいいとは言えないものを聴いてきたので、あの程度のものでしたら気にならない性分になって良かったです(笑)

今回この演奏の録音がいいものを手に入れられたので、テンシュテットのロンドンライブ盤、ショルティシカゴ盤、コバケン日フィル盤と共に愛聴盤になっております。
なお、テンシュテットのロンドンライブ盤が泣けるほど感動できてマイベストです。

他に泣けるCDがありましたら、是非教えて頂きたいです。

長々とコメントにお付き合いして頂き有り難うございました!

投稿: パズー | 2015年6月24日 (水) 10時29分

バズーさん

アナログ盤時代にはノイズはつきものでしたし、ライブ録音も会場ノイズが派手に入るものもあります。実演の場合もしかりです。
肝心な演奏そのものに集中できるほうが良いですものね。

今後ともどうぞよろしくお願いします!

投稿: ハルくん | 2015年6月24日 (水) 11時59分

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