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2010年7月11日 (日)

パーヴォ・ヤルヴィのマーラー交響曲第2番「復活」

Mahler2_jarvi パーヴォ・ヤルヴィは今年から名門パリ管弦楽団の常任指揮者に就任するらしいです。エッシェンバッハの後任なのですね。彼は間違いなくこれからの指揮界の中心となる人物の一人だと思います。実父のネーメ・ヤルヴィが、豪快でおおらかな指揮ぶりなのに比べると、ストイックなほどにきめ細かくデリカシー溢れる指揮をします。けれども脆弱な印象は決して無く、一本筋の通った強さをも感じるのです。出身がエストニアですから北欧ものは得意なはずですが、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーなどのドイツものが大好きみたいです。マーラーの演奏では、2008年にフランクフルト放送響と来日した際にサントリーホールで第9番を聴きました。それはユダヤ系の情念たっぷり型や爆演型のマーラーとは全く違う、抑制のきいた演奏でしたが、美しくデリカシーに富んでいてマーラーの音楽への共感を感じられたので、とても満足できました。

最近Versin Classicsからリリースされた「復活」は昨年2009年の最新録音です。同じフランクフルト放送響を振っています。どうやら彼は、オーケストラごとにレパートリーを固めているように思います。この先もマーラーの録音はフランクフルト放送が中心になるのかもしれません。

さて、この「復活」ですが、1楽章はともすると、力が入り派手に大見得を切る「松竹大歌舞伎」のような演奏になるか、逆に分析的に過ぎて冷めた演奏になることが多いのですが、パーヴォはどちらでもありません。テンポは中庸で、速くも遅くもないのですが、表情が異常なほどに多彩で刻々と変化するのに驚かされます。弱音部ではほとんど聞こえないぐらいのピアニッシモになります。しかし、それらのきめ細かい表情が造り物めくことはありません。音楽を堪能させてくれるのです。深く沈滞するべきところでは心憎いくらいにゆったりと対応しています。演奏方法としては分析的なのですが、決して冷めて聞えないところにパーヴォの非凡さを感じます。

2楽章は美しい演奏なのですが、個人的には更にのんびりした表情が求めたくなります。3楽章はリズム感が素晴らしく、弾んで揺れるような流れの中で各楽器が次々とセンス良く出入りをするのが非常に心地良いです。

4楽章は繊細で美しくかわして、いよいよ終楽章に突入ですが、この先はリミッターを外してエンジン全開にしてほしいところです。冒頭から緊張感があるので期待しますが、中間の行進曲の部分ではやや燃焼不足に感じました。ここはもっと突っ走って欲しかったです。ですが追い込みのたたみかけは中々に凄いです。合唱の登場は極限の弱音で、あたかも天上界から遠くかすかに聞こえてくるような雰囲気です。ここは非常に感動的です。それが徐々に盛り上がってゆき、ついには大合唱となります。どんなにフォルテになってもハーモニーの美しさを失わないのですが、渾身の合唱は非常に感動的です。その合唱と管弦楽を優秀な最新録音で堪能できるのも快感です。

バーンスタインやテンシュテットの熱烈なファンがこの演奏をどう受止めるかは判りません。爆演型ではないので、物足りなく感じるかもしれません。けれども、全く異なるタイプの演奏、ある意味「毒消し」として聴くのにも良いと思います。などと言って誤解されると困るのですが、この演奏にはマーラーの音楽への共感はしっかりと込められています。過去のどの演奏とも一線を画すということで、是非一度お聴きになられてみてはいかがでしょうか。

<過去記事> マーラー交響曲第2番「復活」 名盤

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マーラー(交響曲第1番~4番)」カテゴリの記事

コメント

パーヴォ・ヤルヴィ
マーラーは持ってませんが、
ベトの3番と8番持ってます。
なんか生きの良さそうな評判で買いました。
満足しています。
ほんとに、これからの期待される星
だと思います。
こんなこと言うと笑われるかも、
顔がいい。
マーラー向きの顔
(笑)

投稿: 四季歩 | 2010年7月14日 (水) 19時30分

四季歩さん、こんばんは。

ベートーヴェンは聴いていませんが、評判良いですね。
しかし「マーラー向きの顔」はいいとしても、「不向きな顔」って居るのでしょうか?誰かなぁ・・・

投稿: ハルくん | 2010年7月14日 (水) 21時56分

ハルくん さま

以前、オーディオの件で相談させていただきました、まさです。

先日、ついに購入しました!!

CDプレイヤー、アンプともにmarantzのPM5003、スピーカーがB&WのCM1です。
合計12万円で、個人的にはとても良い買い物をしたと思っています。お店の試聴で、CM1から流れ出る音の美しさに「買うしかない!」と思い込み(笑)、迷わず決断。本日家に届き、喜びに浸っております♪相談にのってくださりありがとうございました。

ちなみに、ヤルヴィ、ベートーベンはもっています。ソリッドで、パワフルなエンジン搭載、という印象でした。マーラーも、いつか聴きたいです。

投稿: まさ | 2010年7月14日 (水) 23時26分

まささん、こんにちは。

ついにオーディオセットを購入されましたか!
何もご相談に乗れたようなことは有りませんでしたが、良かったですね。でもマランツにB&Wとはとてもセンスの良い組み合わせだと思います。それに実際に試聴して気に入られたのであれば間違いないですしね。
この夏は、クラシック三昧ですね!

投稿: ハルくん | 2010年7月15日 (木) 22時58分

こんばんは。

このCDは以前に聴いて、ピンときませんでしたが
本日放送されたパーヴォ&N響の演奏はなかなかでした。
とにかくセンスが良いというか
マーラーのオーケストレーションを過不足なく絶妙に鳴らしている
という感じでした。
映像で観ている分、感銘が付加されているとは思いますが。
とりあえず、ブルーレイに保存するのは決定です。

投稿: 影の王子 | 2015年12月 6日 (日) 23時16分

影の王子さん、こんにちは。

私も放送を観ました。
N響の団員の真剣な顔つきが印象的でかなり気合が入っていたと思います。
ただ、パーヴォのマーラーというとフランクフルト放送響の日本公演の第5番のLIVEが圧倒的な名演奏で忘れられません。それと比べると曲の割には感銘が幾らか薄かったように感じました。もっとも同じ実演で聴けば印象はまた変わったのかもしれませんね。

投稿: ハルくん | 2015年12月 8日 (火) 17時05分

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