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2010年7月 8日 (木)

ブルックナー交響曲第5番 ティーレマン/ミュンヘン・フィル盤

Buru5_thielemann

ドイツ後期ロマン派の伝統的な演奏スタイルというと、深遠で巨大、重圧というような言葉が思いつきますが、それらは現代ではすっかり失われてしまった感が有ります。かつての大巨匠たち、フルトヴェングラーやクナッパーツブッシュ、クレンペラーなどに代表されるスタイルは、すっかり遠い過去のものとなりました。けれども、現代の演奏家の中にも、そのようなスタイルを追求しようという人が存在しないわけではありません。たとえばクリストフ・エッシェンバッハ、それにクリスティアン・ティーレマンです。エッシェンバッハはマーラーを好んで取り上げていますが、ティーレマンのほうはブルックナー、ワーグナーを好んでいるようです。彼は今年の3月にミュンヘン・フィルと来日してブルックナーの第8番を演奏しましたが、残念ながら僕は聴き逃しました。

同じミュンヘン・フィルとは第5番のCDが有ります。これは、しばらく前に聴いて中々気に入っていたのですが、記事にするのが後回しになっていました。

ティーレマンの遅く重圧な指揮ぶりを「伝統的なふりをしている」というように意地悪く書かれているのを見かけることがあります。けれども、実際に聴いてみると、どうしてどうして、あたかも往年の巨匠が現代に蘇ったみたいなので嬉しくなります。たとえ「ふり」だろうが何だろうが、聴いて良けりゃ文句はありません。ミュンヘン・フィルは昔からブルックナー指揮者にとても恵まれていて、クナッパーツブッシュ~ケンペ~ヨッフム~チェリビダッケ~ヴァントの元で何度も演奏を繰り返してきました。第5番の録音も数多く存在します。ティーレマンは、2004年にミュンヘン・フィルの常任指揮者としての就任記念の演奏会で、この曲を選んだのですが、その時のライブ録音がこれです。その前には、ギュンター・ヴァントが1995年に残したやはりライブ盤がありますが、同じガスタイク・ホールでのコンサートなので響きがとてもよく似ています。どちらも弦と管のハーモニーに注意をはらっています。決して金管を騒々しく咆哮させるような真似はしません。ヴァントよりもティーレマンのほうが幾分金管の音量が強めなのですが、それはほんの僅かの差です。テンポは全体的にティーレマンのほうが遅く、第2楽章あたりは少々もたれ気味ではありますが、チェリビダッケのように息ができないほどに遅いわけではありません。素晴らしいのは終楽章で、巨大なフーガも聴き応え充分ですが、それ以上に魅力的なのは弦楽で奏される中間部です。旋律が美しく織り合わされて、まるで合唱のように聞こえます。この楽章が、これほど魅力的に奏されたのも稀な気がします。

この演奏は、オイゲン・ヨッフム/コンセルトへボウ盤(但し1986年録音)の神々しさには及びませんが、マタチッチ/チェコ・フィル、ケンペ/ミュンヘン・フィル、ヴァント/ミュンヘン・フィルといった名盤に充分肩を並べると思います。今後の彼には大いに期待したいと思います。

でも、CDジャケットの写真はちょいとスカし過ぎですよねぇ。こういう写真が古いファンから悪印象を持たれるのかもしれません。クナやマタチッチの無骨な顔と表情を真似しなくっちゃ。そりゃムリか・・・(笑)

<過去記事> 「ブルックナー交響曲第5番 名盤」

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コメント

ハルさん、こんばんは。

世間で評判の良いティーレマンはCDでも、生でも未聴です。聴かない理由は特にないのですが、特に機会がなかったのです。

ハルさんが書かれている第5の演奏も勿論聴いたことがありませんが、今月発売予定のシュターツカペレ・ドレスデンとの第8のCDは予約済みです。

ティーレマンがドイツ名門オケとどのような第8を演奏するのかとても楽しみです。そのCDが気に入ったら、ミュンヒェン・フィルとの第5も聴いてみたいと思いますsign03

投稿: たろう | 2010年7月10日 (土) 20時56分

たろうさん、こんにちは。

僕もティーレマンは、まともにはほとんど聴いていなかったです。オールドファンからは概して辛口の評が多いような気がしますが、深みが出てくるのは年齢的にまだまだこれからですからね。シュターツカペレ・ドレスデンとの8番は是非聴いてみたいですね。僕も期待しています。いつまでもクナ、シューリヒトでもなぁ、と思わないわけでもないんです。

投稿: ハルくん | 2010年7月11日 (日) 09時21分

ハルくんさん、こんばんは。

そう、そうでした。ティーレマンは、3月に来日公演があったのですよね。あの時期、私は他に幾つか演奏会の予定が入っていて、演奏会予算を超過??していたために、結局行けなかったのでした。ブル8ということで、どうしよう?聴きたいなあと、とても迷ったのですがね…こういうことが、私はよくあります。とっても多いです。

大好きなブル5ですから、ぜひ聴いてみたいと思います。

投稿: ANNA | 2010年7月11日 (日) 21時59分

ANNAさん、こんばんは。

僕も「聴きに行きたいなぁ」と思っても予算超過で結局諦めてしまうというのは毎度のことです。なので厳選したつもりでも、後から「やっぱり聴いておけばよかったな」と後悔するのもしょっちゅうですよ。

ブル5はいいですよね。一つ聴くと他のものもみんな聴きたくなってしまいます。ブルックナーの深い森というか、底無し沼というのか。ぜひ聴かれてみてください。ご感想楽しみにしています。

投稿: ハルくん | 2010年7月12日 (月) 23時17分

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