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2010年6月13日 (日)

スロヴァキア・フィルハーモニー日本公演 ~スラヴの魂~

Slovak_po スロヴァキア・フィルが3年ぶりに来日しています。チェコを代表するのがチェコ・フィルならば、スロヴァキアを代表するのはスロヴァキア・フィルです。昔から地味なオーケストラでしたが、個人的には30年前に聴いた名匠ズデニェック・コシュラーとのドヴォルザークの交響曲の録音が余りに素晴らしかったので、忘れられない存在でした。とはいえ実際に生の音を聴いたのは、3年前の公演が初めてでした。チェコ・フィルがチェコの高級レストランの味だとすれば、スロヴァキア・フィルは片田舎のレストランの味とでも言いましょうか、実に素朴な音色と味わいなのです。僕がしばしば「本場もの」の演奏に固執するのは、こういう味わいにかけがえのなさを感じるからです。

昨夜、サントリーホールで聴いたプログラムはスメタナの「モルダウ」とドヴォルザークの「チェロ協奏曲」に「新世界より」という、これ以上の組み合わせはないというプログラムです。ツアー終盤の今週、東京芸術劇場と新潟の長岡では、話題の辻井伸行くんがショパンの協奏曲を弾くのと、メインもブラームスの1番です。そちらも興味深いプログラムですが、チケットはどうやら完売しているようです。

さて、昨日のコンサートですが、指揮はチェコのレオシュ・スワロフスキー。日本には何度も来ていますが地味な存在です。ノイマンやコシュラーに指揮を学んで、地元やヨーロッパでは随分と活躍しています。実は3年前の公演もこの人の指揮でしたので、今回も奇をてらわないオーソドックスな演奏だろうとは思っていました。1曲目の「モルダウ」は正にそういう演奏でした。安心して曲そのものの美しさをうっとりと味わえます。2曲目のチェロ協奏曲の独奏は、イスラエル人のガブリエル・リプキンでした。33歳ですから若手です。非常に表現力の豊かな人だなと感じました。ただし僕の席がバックステージで、ちょうどチェロが彼の体に隠れてしまうので、音がはっきり聞きとりづらかったです。ですので、音そのものの評価は出来ないと思います。それよりも感激したのは、オーケストラの響きです。僕はこの曲が本当に好きなのですが、CDで聴いて心の底から満足できるオケの演奏は、コシュラーがチェコ・フィルを指揮した録音(独奏は提剛さん)です。けれども、昨日のスロヴァキア・フィルの響きも本当に素晴らしいものでした。そしてメインの「新世界より」も、当然のことながら、このオケの民族的な響きを堪能できる名演奏でした。スワロフスキーの指揮は3年前よりも随分、テンポの動きや表情づけが大きくなった印象です。といってもアメリカ風やドイツ風の派手な表現とはまるで異なります。演奏がどんなに盛り上がっても、管が弦の音を掻き消すように咆哮することもありません。あくまでも節度があるのです。それでこそボヘミアの音楽は生きます。

アンコールは定番の「スラヴ舞曲集」から急速な曲の作品72の7です。これまで聴いた演奏の中でも特に速く切れの良い演奏だったので、体中の血が踊りました。これこそが本場のスラヴ舞曲ですね。スロヴァキア(スラヴの国)の民族の魂を聴いた気がします。演奏終了後の聴衆の拍手も凄かったです。

せっかくですので、僕の愛聴するスロヴァキア・フィルの名演をいくつかご紹介してみます。

Kosler_dvo9 ズデニェック・コシュラー指揮/ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」(オーパス/ビクター盤) この演奏こそが学生時代に聴いて感激した、コシュラー/スロヴァキア・フィルの名演です。この時にはこのコンビで交響曲全集を残したのですが、現在では全て廃盤です。せめて「新世界より」だけでも再リリースしてほしいところです。ちなみに自分の持っている海外盤CDは第3楽章の頭の音が編集ミスで欠如していますので、最近は仕方無く買いなおした中古LP盤で聴いています。コシュラーはこの後も、チェコ・フィルとのライブ盤、チェコ国立響との新盤を残しましたが、やはりスロヴァキア・フィルとの演奏が一番好きです。

Pesek_dvo9 リボール・ペシェク指揮/ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」(仏GMS盤) チェコの指揮者ペシェクは地味な存在ですが、幸いスロヴァキア・フィルと「新世界より」を残してくれました。デジタル録音でこのオケの音を味わえるのはとても有りがたいです。全集盤ではオケがロイヤル・リヴァプールPOでしたので、個人的には引いてしまいます。ただし、この演奏は速めのテンポで、実にあっさりとしていますので、アメリカ風やドイツ風の演奏スタイルに慣れたファンの耳にはたぶん物足りなく聞こえると思います。

Cci00008ズデニェック・コシュラー指揮/ドヴォルザーク「スラブ舞曲集」(ナクソス盤) コシュラーは「スラブ舞曲集」をスプラフォンレーベルにもチェコ・フィルと録音を残しましたが、それを上回る素晴らしい演奏です。やはりコシュラーはスロヴァキア・フィルと最も相性が良かったと思います。全曲ともローカルな味わいに溢れていて、いかにも農民達の踊りを感じさせてくれますし、作品72-2のドゥムカの情感の美しさは他にちょっとありません。個人的にはノイマン盤よりも好んでいます。録音も優秀ですし、入手もしやすいので絶対のお薦めです。

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ドヴォルザーク(交響曲)」カテゴリの記事

コメント

作曲家と同じ民族の楽団と言うのは、
やはりベースになりますよね。

そういえばと、見てみると、
私が持ってる「新世界より」は
ウィーンフィルとベルリンフィルでした。
うーーーん、欲しい。
スロヴァキアフィルの。

投稿: 四季歩 | 2010年6月13日 (日) 17時36分

四季歩さん、こんにちは。

ドヴォルザークはチェコ人ですから、母国チェコ・フィルの演奏なら幾らでも聴くことが出来ますよ。僕はアンチェル、ノイマン盤あたりは同じように好きです。
スロヴァキアのオーケストラで穴馬の名馬(いえ名盤!)なのは、オンドレイ・レナルト指揮ブラティスラバ放送響のCDです。http://harucla.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/post-8520.html

投稿: ハルくん | 2010年6月13日 (日) 18時01分

ハルくんさん こんばんは

コシュラーは、私の初期盤の師匠が好きでよく話題にのぼった思い出深い指揮者です。
当時はノイマンを聴いていたのですが、コシュラーの土臭い演奏もいいよ。と仰っていたのを懐かしく思いました。
おそらくチェコフィルとの演奏だと思いますが。

投稿: メタボパパ | 2010年6月14日 (月) 23時25分

メタボパパさん、こんばんは。

初期盤の師匠さんもコシュラーがお好きなのですね。どうしてもチェコの指揮者というと、ターリッヒ―アンチェル―ノイマンという系図が有名なのですが、その他にも沢山の素晴らしい人達が居ると思います。コシュラーは日本にもしばしば客演してくれましたから、もっと人気が有って良いと思うのですけれどね。

投稿: ハルくん | 2010年6月15日 (火) 01時44分

コシュラーもスロヴァキアフィルも、好きです!前にも書きましたがチェコフィルの木管には少し好きになれない点があるのに比べ、こちらのほうが私には合ってるかも。

投稿: かげっち | 2010年6月15日 (火) 12時22分

かげっちさん、こんにちは。

かげっちさんもコシュラーがお好きでしたか。素晴らしい指揮者ですからね。でもこれからは現役のレオシュ・スワロフスキーさんにも頑張ってほしいところです。CD録音しないのかなぁ・・・。

そうですね、管楽器のくせは確かにチェコフィルよりもずっと少ないですね。好みの問題だとは思いますが。

投稿: ハルくん | 2010年6月15日 (火) 23時17分

ハルくんさん、こんにちは。うろ覚えですがコシュラーがよく来日していたのは都響のためだったでしょうか?

私は楽器柄どうしてもクラが気になってしまうのですが、チェコフィルはビブラートたっぷりで、どう聴いてもフランスで教育を受けた感じがするのです。リード・マウスピースを、ドイツ風の野太い音が鳴るようにではなく、繊細な音が鳴るようにアレンジしているから、ビブラートがよくかけられるのです。スロヴァキアでは、そういう傾向は目立ちません。オケごとに、パートごとに伝統があるほうが、コスモポリタンなオケよりも好感を持つのは、あくまで私の趣味ですが。

投稿: かげっち | 2010年6月16日 (水) 12時21分

かげっちさん、こんにちは。

コシュラーが多く客演したのは都響でしたね。

チェコフィルは伝統的にビブラートを大きくかけますね。木管以上に、ホルンやトランペットの金管も派手にかけます。前にもお話したかもしれませんが、ジョークに「チェコフィルの入団テストにはどれだけ大きくビブラートがかけられるかの項目がある」というのが有ります。信じてしまいそうですね。(笑)

投稿: ハルくん | 2010年6月17日 (木) 00時00分

たいへんな大昔。
都響の定期演奏会でコシュラー指揮によるドヴォルザークの「スターバト・マーテル」を聴いたことがあります。独唱はオール・チェコ勢、合唱はプラハ・フィルハーモニー合唱団でした。
この作品の全容を知るには最高の演奏だったのではと今も思っています。
あれだけの演奏を聴かせたコシュラーが今では忘れられた存在になったのは寂しい限りです。

投稿: 敷居が高いアサヒナファン | 2010年6月20日 (日) 23時52分

アサヒナファンさん、こんばんは。

「スターバト・マーテル」はスメターチェク/チェコフィルのCDで聴いていますが、こういう曲は滅多に生では聴けないので貴重なコンサートを体験されましたね。
コシュラーに再び注目が集まるようなことは、たぶんこの先無いのかと思うと、本当に寂しい思いです。

投稿: ハルくん | 2010年6月21日 (月) 00時31分

わが街相模大野グリーンホールにもおいでいただきました。父が涙涙でかえってきました~。アンコール(サントリーホ~ル)スラブ舞曲集だったとは・・・まさにフルコースですね。

投稿: Yuka Sato | 2010年7月13日 (火) 18時38分

Yuka Satoさん、こんにちは。
コメントを頂きましてありがとうございます。

お父さんが聴かれたのですね。素晴らしいオーケストラで最高のプログラムでしたので涙涙も当然です。僕も随分じーんと来ましたもの。
グリーンホールの公演は確かサントリーの翌日でした。コンサートホールが有る相模大野は素敵な街ですね。

投稿: ハルくん | 2010年7月13日 (火) 23時56分

こんばんは、ハルくん様。つばめちゃん達が無事で本当に良かった。もうすぐ旅立ちの時でしょうか… 今日は三ッ橋敬子さん指揮によるスロヴァキア・フィルのコンサートだったのです。スメタナ「わが祖国」から“モルダウ”チャイコフスキー「ピアノ協奏曲1番」ドヴォルザーク「交響曲9番・新世界より」まぁ、どれもこれも名曲ばかりのかなりベタなプログラムでございました。
ハルくんも2年前に聞いておられたんですね。中でも特に「新世界より」が良かったですねー!三ツ橋敬子さんとの呼吸も合った熱演でした。ハルくんの言う通りの素晴らしいオーケストラですね。大満足で帰って来ましたよ!

投稿: from Seiko | 2012年6月23日 (土) 01時10分

Seikoさん、こんにちは。
ツバメ一家が無事で良かったです。いよいよ巣立ちのカウントダウンでしょう。

素晴らしいコンサートに行かれましたね。このオーケストラの素朴な音は僕は本当に好きですよ。プログラムも最高でしたね。

投稿: ハルくん | 2012年6月23日 (土) 10時32分

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