新国立劇場 ビゼー 歌劇「カルメン」
新国立劇場で公演中の「カルメン」を観に行きました。なんといっても、このオペラは有名ですし、世界中で愛好されていますよね。「わたしの名前は~カルメンでっすっ!♪」といえば、子供(但し昔の?)も知ってるピンクレディーです。冗談はさておき、このオペラは日本での初演も古く、1922年にいわゆる浅草オペラで公演されました。このときの合唱団にはエノケンも加わっていたそうです。浅草オペラは1923年に起きた関東大震災で浅草が壊滅的になったために、僅か数年間で幕を閉じてしまいましたが、当時一大オペラ・ムーブメントを起こしました。その熱狂的なファン達の中には、宮沢賢治や川端康成、それに小林秀雄、サトウハチロー、東郷青児などのそうそうたる文化人が居たんだそうですね。彼らに「カルメン」は大受けだったそうですが、それもそのはず、まずストーリーが実にわかり易いです。軍隊のしがない伍長ドン・ホセが、喧嘩騒ぎで捉えられたジプシーの美女カルメンに色目を使われて逃がしてしまい、あげくに軍隊を脱走して恋するカルメンを追いかけますが、カルメンは花形闘牛士に惚れてしまいます。結局ホセは嫉妬のあまりにカルメンを刺し殺す、という話です。モテない男がふられてストーカーになってしまい、逆恨みをして事件を起こすなんていう話は、昔からどこの国でもあったのですね。女の人(には限りませんが)は、別れ話の時にはよくよく気をつけましょうね。それと、このオペラの人気は音楽にあります。何しろわかり易いメロディの宝庫なのです。前奏曲は、あの浅草オペラ時代に「チャンチャカチャカチャカ・チャンチャカチャカチャカ・チャンチャカチャカチャカ・エッヘッヘ♪」などという可笑しな歌詞をつけて歌われて親しまれたそうです。カルメンが歌う「ハバネラ」、闘牛士エスカミーリョが歌う「闘牛士の歌」も最高ですね。
さて、前置きが長くなりましたが、現代では「浅草オペラ」ならず「新宿オペラ」です。我が国唯一のナショナル・オペラ・シアターでの「カルメン」です。演出は話の舞台であるスペインの香りがプンプン漂うオーソドックスなものなので楽しめました。指揮はマウリツィオ・バルバチーニさん。イタリアのオペラ指揮者なので手堅かったですが、もう少しスペインの土臭い歌い回しが欲しかったかなぁ。歌手については、カルメン役のキルスティン・シャべスさんはとても良かったですよ。豊満な肉体と色気が正にカルメンです。ドン・ホセ役のトルステン・ケールさん、エスカミーリョ役のジョン・ヴェーグナーさんも良かったですが、むしろ浜田理恵さんのミカエラが情感一杯の歌唱で素晴らしかったです。歌手陣にはほとんど不満が無かったのですが、実はレレレと思ったのはオーケストラです。今回担当の東京フィルハーモニーは新国立歌劇場のオケ・ピットには常連ですが、今日の演奏は正直いただけなかったです。普段の定期演奏会で弾くメンバーがどれぐらい居たのかな、と首をかしげました。もちろん定期がベストメンバーで、それ以外の公演には準メンバーが出てくるのはわかっていますけれど、それにしても腕前が随分低かったなぁ。元々こういうオペラに管弦楽の出来栄えをうるさく言うお客さんは多くはないと思いますし、僕だって生の舞台と歌には、それだけで充分満足してしまうのですが、それにしてもあんまりオペラ観客をなめたような演奏をするのは、けしからんです。そうなるとやっぱり劇場専属のオーケストラが欲しくなりますよね。海外の歌劇場の専属オケは仮に技術的に完璧ではなくても、オペラやバレエの伴奏に慣れていて、表現が上手いのですよね。せめてそういう良さを持ってもらいたいと思うのです。せっかくのナショナル・オペラ・シアターにはこれからも多く通いたいと思っているので、オーケストラにももっと力を入れて欲しいなぁ。今は亡き若杉さんの後を次いで芸術監督に就任したオダチューさん、頑張ってくださいね。
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コメント
今晩は。ハルくん様々。満足と不満が入り混じった演奏会だった様ですね。あまりにも有名な歌劇なだけに耳が肥えている分、気になるでしょうね。
カルメン'77…懐かしいですね。高校生の頃、クラスメイトとミィちゃん役とケイちゃん役とに別れて踊ったな~。
オダチューさん、新国立劇場の音楽監督に就任したんですよね。この名前を出されたらコメントしないではいられないじゃあ~りませんか(古っ)
ガンバレ、チューさん。音楽ファンのために。広くなったオデコに汗が流れるくらい¨¨¨¨それから映画オーケストラ見ました~。素晴らしいチャイコのバイオリン協奏曲でした。美人だったし…でも、ちょっぴりドタバタが多すぎたかな?
投稿: From Seiko | 2010年6月21日 (月) 01時04分
Seikoさん、こんばんは。
チューさんにはホントに頑張ってほしいんです。オペラハウスはオーケストラ以上に運営資金が必要なので、下手すりゃ事業仕分けの対象でしょうが、そこを頑張って逆に質を上げて欲しいのですよ。フレーフレーチューさん!
映画良かったでしょう?チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は圧巻でしたね。あんまり彼女が美人過ぎて、ちょいとウソくさかったですけど。
投稿: ハルくん | 2010年6月21日 (月) 22時47分
こんばんは、ハルくん様。
さまざまなクラシック音楽の紹介をされていますが、普段、どういう環境で音楽を聴いているのでしょうか?
この夏、僕はオーディオを購入しようと検討しています。聴くメインは、やはりクラシック!!
現段階ではすべてonkyoで考えています。スピーカーはD-212ex、アンプA-973、プレーヤーC-773、合計で約12万円です。
もし、この合計金額に近いもので、「これがいいよ」というものがあれば、ぜひ教えていただきたいとおもいます♪
突然で、しかも「カルメン」の欄に強引に、申し訳ありません。ステキな音楽紹介ブログを書かれていて、相談してみたいと思いました。。。
お時間があるようでしたら、お返事お願いいたします。
投稿: まさ | 2010年6月23日 (水) 02時48分
カルメンは楽しいですよね。
私はカラヤン制作のDVDを持ってるので、
演奏は素晴らしいと思います。
が、カルメンが美女なのを欲しい
(笑)
ので、なにがいいかなと物色しています。
投稿: 四季歩 | 2010年6月23日 (水) 20時55分
まささん、はじめまして。
ようこそお立ち寄りくださいました。
記事に直接関係の無いコメントでも大歓迎ですよ。おまけに拙ブログをお褒め頂いて大変光栄です。
さて、オーディオの環境ということですが、僕は特別のマニアではありません。スピーカーは古いヤマハNS1000M、アンプはDENONのPMA1500AE、CDプレーヤーは古いSONYのCDP-XE700です。CDプレーヤーは近いうちに買い換えたいと思っています。
お選びの組み合わせですが、ONKYOは単品コンポの充実した数少ないメーカーですし、個人的な印象としては、バランスの良い、予算範囲でのベストの選択という気がします。メーカーを揃えるかどうかは好みの問題ですが、統一したほうがデザイン、使い勝手はやはり良いでしょうね。
購入が楽しみですね。購入されたら是非ご感想を!
投稿: ハルくん | 2010年6月23日 (水) 22時38分
四季歩さん、こんばんは。
カラヤンのDVDはカルメンはバンブリーでしたっけ?
「カルメン」は演奏、演出、歌唱、カルメンが美女、とくると全てに満足できるものはまず無いしょうね。
美女といっても好みが有りますので、四季歩さんのお好みのものが見つかると良いですね。
投稿: ハルくん | 2010年6月23日 (水) 22時44分
ハルくんさん こんばんは
カルメンはバルツァ盤(LD)を持っていますが、アップは
ちょっと厳しいものがあります。
引いた映像で固定してくれればいいのにって思います。
レコードではベタですがやっぱりカラスが大好きです。
投稿: メタボパパ | 2010年6月24日 (木) 00時38分
ハルくん さま
ご返事ありがとうございます!
スピーカーのヤマハNS1000Mは、お気に入りの画廊に置いてあり、憧れていました。
ステキなクラシックを、ゆったり、いい環境できく。とても贅沢ですが、少しずつ実現させたいと思います。購入したら、感想を書き込ませていただきます♪
投稿: まさ | 2010年6月24日 (木) 02時51分
メタボパパさん、こんばんは。
バルツァはカラヤンのCDで持っていて、歌は本当に素晴らしいと思っています。
歌唱とアップに耐える美顔の両立というのは非常に少ないですね。たぶんゲオルギューとネトレプコが双璧ではないでしょうか。ストラータスも歌はやや落ちますが美人でした。カラスの若い頃の映像がDVDであれば良いのですけどね。
投稿: ハルくん | 2010年6月24日 (木) 23時35分
現在、書店で販売されている「DVDオペラ・コレクション」の創刊号はC・クライバーが指揮した1978年のウィーン国立歌劇場での「カルメン」のライブ映像でした。まだ書店に残っているならば絶対「買い」です。私は初回発売の時に飛びついて5040円で購入しましたが・・・
エレーナ・オブラスツォワのカルメンはスラブ風が気になりますが鬼気迫るドミンゴのホセには圧倒されます。
そしてクライバーの指揮とゼッフィレッリの演出も最高です。
投稿: 敷居が高いアサヒナファン改めオペラファン | 2010年6月25日 (金) 00時53分
オペラファンさん、こんにちは。
クライバーのウイーンでの「カルメン」は、昔NHKのTV放送をVTRで録画して見ていましたが、DVDは書店で¥1980で出たところで購入しました。この演奏は海賊CD盤でも出ましたが、音がむしろDVDのほうが良い気がしますし、公演記録自体が大変に貴重ですからね。
投稿: ハルくん | 2010年6月25日 (金) 06時17分
ハルさん、こんにちは。
新国立劇場の『カルメン』は数年前に聴きました。プレミエではなかったのですが、沼尻竜典指揮の同じく東フィルの演奏でした。
その時は、特にオケの演奏には不満はありませんでしたが、エスカミーリョ役の歌手がアメリカ人(歌手名は失念しました)で声に張りがなくガックリした覚えがあります。
オペラは俗に総合芸術と言われるだけあって歌手・オケ・演出の全てに満足できることは少ないのでしょうね。
音楽評論家の東条碩夫もハルさんと同日同公演を聴いていたようで、ブログに鑑賞した感想を書いていますが、彼もあまり良い評価をしていませんね。
http://concertdiary.blog118.fc2.com/
投稿: たろう | 2010年7月 3日 (土) 16時20分
たろうさん、こんにちは。
オペラは、歌手・オケ・演出の全てに満足できるなんてことは、まず無いと思います。なので聴き手の「ここだけは押さえたい」というキーポイントしだいで演奏の評価が変わってくるでしょう。
それにしても東条氏の評価は辛口ですね。あくまでご自身のブログですから構いませんが、そこまで悪いとは思いませんでした。むしろコメントを書かれた方の意見のほうに賛同したいと思います。
投稿: ハルくん | 2010年7月 4日 (日) 08時21分