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2010年5月14日 (金)

ブルックナー 交響曲第9番ニ短調 名盤 ~もはや音楽ではない宇宙そのもの~

Bigban

ブルックナーは最後の交響曲である第9番を第3楽章まで書き上げましたが、完成をさせることが出来ずにこの世を去りました。終楽章には巨大なフーガ楽章を置こうと考えていたようです。けれども、この曲は未完成であるにもかかわらず、音楽のとてつもない深遠さによって圧倒的な存在感を与えています。幸いなのは第3楽章アダージョが、あたかも完成された曲の終結部のように感じられることです。この楽章までを聴き終わった後に少しも不自然さを感じずに済みます。むしろ、この楽章に続くのにふさわしい音楽が果たして存在し得るかどうか疑問に感じてしまいます。もしや未完成に終わったのは、ブルックナーの命の時間切れの為ではなく、人智では到底作曲が不可能だったからなのではないでしょうか。

それにしても、この第9交響曲はとんでもない曲です。これはもう音楽であって音楽でない、とてもこの世界のものとは思えない、宇宙そのもののような印象です。初めてこの曲を聴いた時には、遠い宇宙の果てに一瞬にしてワープさせられたような感覚に陥りました。音楽を聴いていて、そんな体験をしたのは、後にも先にもこの曲のみです。
第1楽章の導入部は真に圧倒的で、これほどまでに印象的なファンファーレはリヒャルト・シュトラウスの「ツアラトゥストラはかく語りき」ぐらいしか思いつきません。正にカオスの中に生れた宇宙のビッグバンです。そして宇宙の鳴動のような第2楽章を経て、第3楽章アダージョの終結部のカタルシスが過ぎ去ったあとに訪れる静寂は、天国的というよりも、全てが「無」に帰ってしまったかのごとき印象を与えられます。

この曲を鑑賞して「愉しむ」ことはなかなか難しいかと思います。余りに音楽が厳し過ぎるからです。けれども、この曲に真摯に向きあった時には、とてつもない感動が得られます。これほどの音楽に匹敵するのは、交響曲に限定すれば、マーラーの9番、ブルックナーの8番、ベートーヴェンの第九ぐらいではないでしょうか。

ところで、僕は大学生の時にこの曲を演奏した経験が有ります。ジュネス・コンサートで、指揮は山岡重信氏、会場はNHKホールでした。大学選抜のメンバーですが、もちろんアマチュアです。前の年にはマーラーの「復活」を演奏しましたが、ブルックナーのほうが音楽にするのが遙かに難しいと感じました。そのときに思ったことは、『アマチュアがブルックナーを演奏するのは考えものだ』ということです。

それはさておき、僕がこれまで接することができた生演奏のベストとしては、ギュンター・ヴァントが2000年に北ドイツ放送響と来日して行なったコンサートです。ヴァントの最後の日本ツアーでブルックナーの9番を聴けたことは本当に幸運でした。

愛聴盤については、昔からいろいろな録音を聴いてきましたが、それらを順にご紹介してみます。

Brucknerknapハンス・クナッパーツブッシュ指揮ベルリン・フィル(1950年録音/Music & arts盤) クナの所有盤はこのベルリン・フィル盤のみです。モノラルですし古いライブ録音で音質はお世辞にも良質とは言えません。演奏については随所がデフォルメされた相当にクナの体臭を強く感じるもので、ブルックナーの本質からは外れていると思っています。ロマンティシズムに溢れた濃厚な表情付けが面白いことは面白いのですが聴後にブルックナーを味わったという喜びは感じません。これは筋金入りのクナファンのみが満足できる演奏だと思います。

51ckzaa796l__sl500_aa300_ ヨゼフ・カイルベルト指揮ハンブルク国立フィル(1956年録音/テレフンケン盤) 僕がブルックナーを聴き始めた頃にLP盤で愛聴した演奏です。ハンブルク・フィルの古色蒼然とした音色は現在聴くととても魅力的です。ここからは失われたドイツの響きが聞こえてきます。カイルベルトも質実剛健な指揮ぶりで、1、3楽章ではオーストリアの楽団のしなやかな演奏とは異なる味わいを感じさせます。スケルツォは特に素晴らしく、厳格に刻むリズムには凄みすら感じさせます。録音はステレオで、60年代のものと比べても遜色有りません。

71jibntbfil_ac_sl1500_ ブルーノ・ワルター指揮コロムビア響(1959年録音/CBS SONY盤) 自慢することでは無いですが、持っているCDでアメリカの楽団の演奏はこれのみです。ワルターがステレオ録音で残したブルックナーは4,7,9番の3曲で、録音された当時であれば話題だったとは思いますが、60年代以降次々と出た演奏の中に有っては存在感が薄れるばかりでした。オーケストラの音は薄っぺらく、トランペットのノー天気な明るい音色には閉口します。それでも弦楽の歌い方は流石ワルターですし、演奏全体には不思議な魅力と味わいは有ります。

Buru9_schu カール・シューリヒト指揮ウィーン・フィル(1961年録音/EMI盤) 僕がブルックナーに目覚めた演奏です。初めはもちろんLP盤でした。冒頭の音から衝撃的でした。ことさらに大げさでは無いのに、完璧に溶け合った響きがどこまでも大きく広がります。表情はどこをとっても実に自然で流れるようです。特に1楽章が完璧といって良く、単に「音楽」を聴いているのでなく、宇宙を感じることのできる、最高のブルックナーです。2楽章も透徹し切った、真に厳しい演奏です。3楽章の美しさは比類が無いほどですが、スケールの大きさという点で幾らかの物足りなさを感じる方もいるかもしれません。

Sss0007 フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチッヒ放送響(1962年録音/WEITBLICK盤) ステレオ録音とありますがモノラルだと思います。コンヴィチュニーの無骨で豪快なスタイルは、手兵であったゲヴァントハウス管のときと変わりませんが、時折見せるロマンティックな表情と造形の乱れに古めかしさを感じます。この曲は本当に演奏が難しいので、一昔前の演奏には造形が崩れているものが多く、なかなか良いものが有りません。この演奏は限界ぎりぎりで、魅力と抵抗感が半々というところです。

1197111145 オイゲン・ヨッフム指揮ベルリン・フィル(1964年録音/グラモフォン盤) この演奏もLP盤でよく聴きました。ベルリンフィルがまだまだドイツ的な暗い音色を残しているのが嬉しいです。ハンブルク・フィルやライプチッヒ放送響と比べてもオケの上手さはずっと上ですし、ヨッフムの指揮は豪快で、細部にこだわるよりも大きな流れに乗ったような勢いを感じます。1楽章の終結部のたたみかけるような迫力や3楽章後半のカタルシスも壮絶です。後年のドレスデン盤も有りますが、この旧盤も忘れることはできません。

186 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル(1966年録音/グラモフォン盤) ヨッフム盤から僅か2年後に、グラモフォンは再びベルリン・フィルでこの曲を録音しました。今では考えられないような音楽産業全盛期の時代です。ベルリンフィルは70年代から急速に音が明るくなりますので、その前の貴重なドイツ的な音色を味わえます。スケルツォの重厚な低弦も惚れ惚れします。トゥッティではヨッフム以上にオケを鳴らしていますが、過ぎたるは及ばざるが如しで、ヨッフム盤のほうが美しさを感じます。

Buru9_krajan_wien ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィル(1967年録音/グラモフォン盤) ウィーン・フィル150周年シリーズの中の1枚は、カラヤンのライブ録音です。ライブという条件が今こうしてCDで聴いてしまうと必ずしも成功しているとは思えません。ティンパニーの強打は許せるとしても、金管がフォルテで力むあまりに響きが汚いのです。ウィーン・フィルとは思えないほどヒステリックに聞こえます。ベルリンPOとのスタジオ録音でも似た傾向でしたが、ライブではそれに輪をかけています。弦楽に関しては余り神秘性は出ていないものの、ロマンティックによく歌っていて悪くありません。

Bruckner-2 オイゲン・ヨッフム指揮ドレスデン国立歌劇場管(1978年録音/EMI盤) ヨッフムはベルリン・フィルとのグラモフィン盤が相当に豪快な演奏でしたが、ドレスデンとの再録音盤も、テンポや表現はよく似かよっています。但し荒々しさが過ぎて、美感を損ねている部分がしばしば有ります。トゥッティでの金管の音が、耳にうるさく感じられてしまいます。しばしば大胆なアッチェレランドを見せるのも、ヨッフムの壮年期までの特徴ですが、それが往々にしてスケール感を損うことがあります。ベルリン盤とは大きな差はありませんが、どちらかいうとベルリン盤を好むかもしれません。写真の全集盤(オランダ盤)は中低域の音が厚く、本来のドレスデンらしい音なので満足しています。

3202041015 ロブロ・フォン・マタチッチ指揮チェコ・フィル(1980年録音/スプラフォン盤) マタチッチ/チェコ・フィルのブルックナーといえば67年の7番、70年の5番という名盤を生んだにもかかわらず、録音がストップしてしまいました。唯一9番が10年後にライブ録音されました。ライブとは思えないほどの完成度の高さです。1、3楽章での少しもうるささを感じさせないオケの鳴らしぶりはさすがです。但しスケルツォは意外におとなしい印象です。84年にもウイーン響とのライブ盤が有りますが、僕はチェコ・フィル盤を好みます。

F299dcb27d9a8ae98c2e70c61778ad50cd264e2c ベルナルト・ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1981年録音/フィリップス盤) これは良い演奏です。その大きな理由はコンセルトへボウの美しく厚みの有る響きと優れた録音にあります。トウッティの音には惚れ惚れします。しかしハイティンクの貢献が無いわけでは無く、全体をスケール大きくまとめ上げているのは立派です。ただ、マイナスポイントは弦楽合奏の部分で、第1楽章や第3楽章の歌わせ方に物足りなさを感じます。神秘感にも不足します。この辺りが当時のハイティンクの限界です。

Buru9_litner972 フェルディナント・ライトナー指揮シュットゥットガルト放送響(1983年録音/ヘンスラー盤) ライトナーはかつてN響を振っていたので、日本のオールド・ファンには懐かしい名前でしょう。一方、録音は伴奏指揮がほとんどなので、若い世代の方には馴染みが薄いと思います。そんなこの人の大曲のライブ演奏です。スケールの大きさに驚きますが、むしろ印象的なのは遅い部分のゆったりとした自然な歌わせ方です。なんと美しいのでしょうか。欠点はトゥッティでの金管強奏がやはりうるさく耳につくことです。それ以外が見事なので非常に残念です。

Img_214390_34269880_0 オイゲン・ヨッフム指揮ミュンヘン・フィル(1983年録音/WEITBLICK盤) ヨッフムのブル9には、グラモフォン、EMIのスタジオ盤の他に78年のベルリン・フィルとのライブ盤も有りますが、それらの中で最も素晴らしいのがこのミュンヘンでのライブです。海賊盤では前から出ていましたが、3年前に正規音源が出た時にはとうとうシューリヒトに匹敵する名盤が登場したかと心が躍りました。ミュンヘン・フィルも絶好調ですが、特に1楽章の第1主題以降や3楽章の主題部での、大波が何度も何度も繰り返してくるような大きな歌には心の底から感動させられます。深みのあるオーケストラの響きも大変に魅力的です。

Buru9_sawa ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮ウィーン・フィル(1983年録音/Altus盤) サヴァリッシュもまた、日本の音楽ファンに大変親しまれました。これはザルツブルク音楽祭でウイーン・フィルを指揮したのライブです。1楽章冒頭のトゥッティが力強く奏され、続く弦楽による主題は速めですが、歌いまわしが大きく、彫が深い印象です。後半は荒々しいほどに迫力が有り、壮絶な印象です。2楽章は快速で緊迫感があり、金管もティンパニも凄まじいです。3楽章も迫力充分で、感情一杯に歌わせますが、はかなさのような雰囲気は余り感じさせず、現世的な演奏かもしれません。終結部は壮大で聴きごたえ充分です。録音は明瞭です。(詳しくは下記の<関連記事>リンク参照)

Buru9_kube ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1985年録音/Orfeo盤) クーベリックのブルックナーは金管のうるささが気になることがよく有りますが、この演奏では全然感じません。けれども決して大人しいわけではなく、クーベリックらしく燃焼した演奏です。ようするにフォルテでの楽器の音量バランスが良いのです。スケールも大きいですし、適度にロマンティックな味わいや美しさも持ち合わせていて、大変に魅力的です。正規音源の録音も優れているので、自分のコレクションからは外せない1枚です。

478858e30ad04663a620ba93877f29bd カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウィーン・フィル(1988年録音/グラモフォン盤) 全体を通して相当遅いテンポで粘ってよく歌うので、悪く言えばしつこい演奏です。以前はこの演奏は嫌いでした。現在でも決して好きではないのですが、齢をとって許容の巾がユルくなったのか(笑)、それなりに愉しむことができます。カンタービレを過度に効かせたフレージングに音楽の「厳しさ」は薄れているかもしれません。ですがウィーン・フィルの美しい音を生かした演奏にゆったりと浸かるのも悪くはありません。終楽章のカタルシスは凄まじさの限りです。

Bruckner-8-9-ewughl_ac_ ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送響(1988年録音/RCA盤) ヴァントのブルックナーの録音は何種類も出ていますが、これはシュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭で手兵の北ドイツ放送響とリューベック大聖堂で演奏したライヴです。最晩年に入る少し前なので、テンポが僅かに速めに感じられますが、それでも充分に円熟が感じられます。最晩年の孤高の域に達するのにはあと一歩という印象ですが、もちろん凡百の指揮者の演奏よりは遥かに優れます。会場の長い残響も神々しい雰囲気を与えてくれています。ディスクは2枚組で、前年録音の8番とカップリングされています。

Bru9-51nfspodibl_ac_ レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィル(1990年録音/グラモフォン盤) バーンスタインが残したブルックナーの録音は9番のみで、ただし2回行っています。最初はニューヨーク・フィルと、そして2回目がこのウィーン・フィルとのものです。もちろんこの団体はブルックナーの音を自然に身に着けてはいますが、バーンスタインの指揮で時に荒々しいほどの大胆な表現と音を出しています。それが著しいのは第3楽章で、冒頭からマーラーのような粘った響きを出していて驚きます。全体を通して、決して神々しい雰囲気では有りませんが、さりとて人間的に過ぎるという程でもありません。フィナーレも壮大ですし、まずは水準以上の出来栄えだと思います。

Albrecht_bruckner_9_min ゲルト・アルブレヒト指揮チェコ・フィル(1994年録音/CANYON盤) アルブレヒトはかつて読売日響の常任をしていたので日本ではお馴染みの指揮者です。CANYONへは8番も録音していますが、それは腰の軽過ぎる演奏で好みませんでした。ところがこの9番は中々落ち着いて良い演奏です。全体的に凝縮された厳しさは全く無く、とても柔和な印象ですが、ニュアンスの変化が豊かで、しかもツボにはまっているので思わず惹かれます。チェコ・フィルも少しも機能的でなく素朴で、とても好感を覚えます。思わぬ掘り出し物の演奏です。 

1196090920 ヘルベルト・ブロムシュテット指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1995年録音/DECCA盤) ゲヴァントハウス管との全集の新録音を終えたブロムシュテットですが、これは9番としては旧録音になります。ドイツ的な武骨さを残したオーケストラの響きが魅力です。フォルテシモの豪放で分厚い音がとても素晴らしいですが、ところどころでティンパニの強打が少々うるさ過ぎです。ブロムシュテットの指揮はオーソドックスで目新しいものは有りませんし、部分的にはもう少し歌わせて欲しい気もしますが、その実直さがこの人の美徳です。聴き終わった後には中々に充実感が残ります。

Cheli_buru9 セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1995年録音/EMI盤) チェリビダッケ最晩年のライブですが、演奏はこの人のいつもの「勝利の方程式」通りです。2楽章、3楽章では呼吸が止まるぐらいに遅いテンポで、深淵長大な世界を創り上げます。熱烈なファンにはこたえられないでしょうが、残念ながら僕にとっては同じミュンヘン・フィルを指揮したヨッフムのような感動は得られません。それでも金管が強奏して騒々しく感じないのは、さすがにチェリビダッケです。

Bru9_juri123 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮シュットゥットガルト放送響(1996年録音/ヘンスラー盤) ウイーン・フィル盤から6年後の演奏ですが、ライブの為かテンポは多少速めです。フレージングに効かせるカンタービレもウイーン・フィルよりは薄めの印象です。ですので逆に音楽の「厳しさ」は増した気がします。このあたりの受止めかたは人によって変わると思います。トゥッティでの金管もこの演奏の方が抑制が効いていて美しさを感じます。ですので個人的には全体としてウイーン・フィル盤よりもこちらの演奏を好みます。録音も優秀です。

Ph06045 ギュンター・ヴァント指揮ミュンヘン・フィル(1998年録音/Profile盤) ミュンヘンでのライブ演奏です。当然同じ晩年のベルリン・フィルとのライブ盤との比較になるのですが、これまで何度か書いたとおり、ベルリン・フィルは上手くても音が華やか過ぎるので余り好みません。ミュンヘン・フィルの音も明るいのですが、野趣の趣を僅かに残しているので好きです。但し強奏部分では音がやや荒れてうるささを感じます。各主題は遅いテンポで歌われますが、フレーズのつながりにいまひとつ流れの悪さを感じます。ブルックナー指揮職人の人間国宝にしてはやや不満が残ります。

Burckner-9 ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送響(1998年録音/Profile盤) こちらはハンブルクでのライブ演奏です。当然、後述の東京でのライブと比較されることに成りますが、さすがに晩年のヴァントはどれも素晴らしく、決定的な差は無いと言えるでしょう。北ドイツ放送響の暗い音色は特にこの第9番にぴったりで「彼岸」を感じさせます。演奏の出来栄えもほとんど変わりません。それを承知であえて二者を比べれば、演奏の完成度、録音の明晰さ、そして神秘性の点でいずれも僅かながらも東京ライブを上位にしたいと思います。

Img_1023790_20551577_0 ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送響(2000年録音/RCA盤) 「ヴァントが街にやってきた」演奏です。街というのは東京の新宿初台のオペラシティですが、この時の演奏は本当に素晴らしかったです。北ドイツ放送響の音は色彩が暗くモノトーンのようなのですが、この曲に正にぴったりでした。この録音は実際の音をかなり忠実に捉えていると思います。金管の強奏では分厚く鳴り響いてもうるささを感じません。それにフレージングの流れの良さもミュンヘン・フィル盤よりも上だと思います。3楽章では神の光を見たような気さえしました。この演奏を生で聴けたことは一生の宝です。

Oc218 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ/ザール・ブリュッケン放送響(2001録音/OEHMS盤) 柔らかく音が溶け合った良い録音です。弦楽器は非常にしなやかで美しいですし、管がそれに上手く乗っかって、とても美しい響きを生み出しています。いたるところにハッとするアクセントや、音のバランスの変化、間合いが見られて飽きません。職人技を120%出し切った演奏ですが、聴いているうちにそれが段々としつこく感じてくるかもしれません。とは言え、この演奏はスクロヴァチェフスキ・ファンならずとも一聴の価値があると思います。

Bruckner-9-91ms6xpoxyl_ac_sl1500_ ワレリー・ゲルギエフ指揮ミュンヘン・フィル(2018年録音/ワーナークラシックス盤)ブルックナーの聖地リンツの聖フローリアン修道院で2017年から3年かけて交響曲の全曲演奏と録音が成し遂げられました。過去に層々たるブルックナー指揮者たちが指揮台へ上がったこの楽団にはブルックナーの響きが沁みついています。修道院の長い残響の美しさは有名です。全体はゆったりとしていてスケールが大きく、この曲に相応しいです。かと言ってバーンスタインやジュリーニのような余りに遅過ぎてもたれるようなこともありません。特に第3楽章は深々として極めて感動的です。全集盤も出ています。

Bru806-ssize クリスティアン・ティーレマン指揮ウィーン・フィル(2022年録音/SONY盤) ウィーン・フィルとの全曲録音の一つで、ザルツブルクでのライブです。最初はシューリヒトに似ている印象を受けました。1楽章を速めのテンポであっさりと進みます。しかしアンサンブル、ハーモニーはライブとしてはほぼ完璧です。2楽章スケルツォの前半はリズムに厳しさが足りませんが、後半は興が乗って来て聴き応えが増します。ユニークなのが3楽章で、弦楽に少しも力こぶが入らずに淡々と奏されます。ことさら仰々しく思いのたけをぶちまけるような演奏とは真逆です。弦楽が淡白に感じられますが、その裏に深い情感が秘められています。録音は優秀です。(詳しくは下記の<関連記事>リンク参照) 

この曲は不思議と上手いオーケストラが普通に演奏すると、どれも標準点に達します。意外と差が出にくいのです。けれども、自分が心底素晴らしいと思っている演奏を選ぶとすれば、迷うことなくシューリヒト/ウィーン・フィルのEMI盤とヨッフム/ミュンヘン・フィルのライブ盤の二つが双璧です。それに加えるとすれば、ヴァント/北ドイツ放送響の東京ライブ盤、ゲルギエフ/ミュンヘン・フィル盤です。

毎回、新しい記事を書くときには手持ちのCDを全部聴き直してみることにしているのですが、今回は疲れました。この曲はそう続けて聴けるものではありません。それほど集中力が要求されます。次回はマーラーの第9。またまたしんどそうです。

<補足>
ワルター/コロムビア響盤、ハイティンク/コンセルトへボウ管盤、ブロムシュテット/ゲヴァントハウス管盤、クナッパ―ツブッシュ/ベルリン・フィル盤、サヴァリッシュ/ウィーン・フィル盤、ヴァント/北ドイツ放送響(1998年)盤、バーンスタイン/ウィーン・フィル盤、ゲルギエフ/ミュンヘン・フィル盤、ティーレマン/ウィーン・フィル盤を追加しました。

<関連記事>
ブルックナー 交響曲第9番 サヴァリッシュ/ウィーン・フィルのライブ盤
ブルックナー 交響曲第9番 ティーレマン/ウィーン・フィル盤

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ブルックナー(交響曲第7番~9番)」カテゴリの記事

コメント

おはようございます

ブルックナーの9番は最初に聴いた感覚では理解するのに一筋縄ではいかないなというイメージでした。確か朝比奈と都響の演奏だったと思いますが、正直よく分かりませんでした。難しい曲だと思います。今聴けば感動してしまうかもしれませんが。
そのうち推薦盤を聴いてみます^^

投稿: kurt2 | 2010年5月15日 (土) 08時54分

こんにちは

ブルックナーの9番は好きで、シューリヒトとフルトヴェングラーを聴いていますが、まだまだ全容を掴んだ気がしません。
シューリヒトの初期盤は買えるもんなら買ってみろっていうくらい高価なので、もっと聴き込んだ上&お金が貯まったら検討しようと思っています。

投稿: メタボパパ | 2010年5月16日 (日) 15時03分

kurt2さん、こんにちは。

9番はブルックナーでも究極の曲だと思います。
5、7、8番といずれも素晴らしいですが、こと「深遠さ」で言えば9番がやはり最高だと思っています。じっくりお聴きになられてみてはいかがでしょうか。

投稿: ハルくん | 2010年5月16日 (日) 23時45分

メタボパパさん、こんにちは。

フルトヴェングラーは余りにものものしい演奏ですので、この曲の極端な一面を表現し過ぎているように思います。普遍性を持つ演奏かというと、ちょっと疑問を感じています。

シューリヒトは自分のこの曲の原点みたいなものです。
でも、音楽の全容を極めるということでしたら、やはり色々な演奏で聴き込まれたほうが良いと思います。

投稿: ハルくん | 2010年5月16日 (日) 23時59分

9番は、ほんとに「宇宙」を感じさせてくれます。
深遠なるものを思わせて、とてもいいと思います。

それにしても、気になる人ばかり並んでいます。
一番欲しいのはヨッフムかな。

私は、朝比奈隆さんのものと、スクロヴァチェフスキのものを持っています。
スクロヴァさんのは、読響を指揮したTVの
DVDにしたものですね。

投稿: 四季歩 | 2010年5月17日 (月) 21時12分

四季歩さん、こんばんは。

朝比奈さんとスクロヴァチェフスキはタイプは正反対ですが、いずれも最高のブルックナー指揮者の一人だと思います。スクロヴァチェフスキは亡くならないうちに、もっと生演奏に接しておきたいですね。

ヨッフム盤、素晴らしいですよ。一押しはやはりミュンヘンフィル盤です。是非お聴きになられてみてください。

投稿: ハルくん | 2010年5月17日 (月) 22時46分

ハルくんさん、こんにちは。

シューリヒトの9番で ブルックナーに開眼し、1年半。今では その魅力にすっかり
はまってしまいました。このまま深い森に入っていきそうな感じです。

ある日突然、私の中に特別な音楽として入ってきたのがシューリヒトのブルックナー9番だったので 深く刷り込まれているのは確かなのですが、間口は広く…他の指揮者のブルックナー・ワールドにも触れてみたいなあ、と思っています。

ということで、ハルくんさんお薦めの録音のうち、まだ手元にないヨッフム/ミュンヘン・フィル1983年録音を聴いてみます。

投稿: ANNA | 2010年5月18日 (火) 11時08分

ANNAさん、こんにちは。

「ある日突然」に、シューリヒトのブル9がご自分の中に入ってこられたなんて、それは神様の啓示としか言いようが無いですね。でも、それは自分にとっても同じような経験でしたので、良く理解できます。

ヨッフム/ミュンヘンフィルも是非聴かれてみてください。僕はシューリヒトに肩を並べる唯一の演奏だと思っています。ご感想を楽しみにしていますね。


投稿: ハルくん | 2010年5月18日 (火) 23時48分

壮大で「手中に収める」ことが困難な曲ですね。どっぷり浸って幸せをかみしめるくらいが私のレベルにはちょうどいいような気がします。

投稿: かげっち | 2010年5月19日 (水) 13時13分

かげっちさん、こんばんは。

この曲は壮大ですが、決して難しいことは無いと思うのですが。幸せかどうかは別としても「どっぷり浸かる」気分で聴くのがブルックナーの鑑賞法だと思います。そうすると自然に心にどんどん入って来ますよ。シベリウスと似ている気がします。

投稿: ハルくん | 2010年5月19日 (水) 22時00分

ハルくんさん、こんにちは。

「手中に収めるのが難しい」とは、曲が難解という意味でなく、構成や構造を把握したり、仕掛けを見抜いたり、響かせ方を理解して、演奏に表すのが大変という意味です。だからこの曲は、あれこれ考えないで「ひととき浸かる」ことにしています。それでけっこう幸せです(笑)

投稿: かげっち | 2010年5月20日 (木) 12時49分

そうですね。かげっちさんですから演奏者の観点からと言うことなのですね。記事にも書きましたが、この曲は浸って聴いて楽しむのが一番だと思います。演奏はアンタッチャブルですよ。(笑)

投稿: ハルくん | 2010年5月21日 (金) 06時57分

ブルックナー9番…来たる7月10日東京交響楽団定期の演目なので、お勉強しなきゃだなと思っていたのですが、これまでCDを所持しておらず(何しろにわかファンもどきですので…)たまたま立ち寄った紀伊国屋書店で、クレンペラー/ニューフィルハーモニア盤に出会い3週間前からお付き合いを始めたのですが…
確かにハルくんのおっしゃる通り「宇宙」を思わせる様でもあり、もがき苦しむ人の感情の様でもあり、やはり難しく感じてしまうのです。
理解しようと追いかけても立ち止まってくれない、ひとり先を行ってしまう…何十年か前にハルくんが幾人かの女性にしてきたような…そんなお方。でも、付き合っていくうち、少しずつ近づいていけそうな気がしています。
蛇足ながら、CDジャケのクレンペラー氏の横顔…渋くて超ステキ!

投稿: From Seiko | 2010年5月21日 (金) 21時32分

Seikoさん、こんにちは。

7月の東響定期演目ですか。それは楽しみですね。指揮は誰なのでしょうね?
確かにこの曲は、「追いかけても立ち止まってくれない、ひとり先を行ってしまう」そうかもしれませんね。
でも、中文については「何十年か前にハルくんが幾人かの女性にされてしまったように」が正しいです。(笑)

クレンペラー氏の渋い横顔に魅入りながら曲をゆっくり愉しんでくださいね。

投稿: ハルくん | 2010年5月22日 (土) 06時52分

ハルくん、今晩は。東響の7月定期の指揮者はユベール・スダーン氏です。
書けなかった4楽章の代わりにテ・デウムを演奏するとの事。
以前、ハルくんにテ・デウムの良いCDはないか、たずねた際に教えていただいた盤ではありませんが、同じくオイゲン・ヨッフム指揮のベルリンフィル演奏、テ・デウム/モテット集を見つけ、こちらも只今勉強中…
ですが、あまり気張らずハルくんのおっしゃる通り音楽に漂い浸りたいと思っています。
当日のコンマス、大谷康子さんだと嬉しいな。
やっぱり彼女だと会場が盛り上がりますね。諏訪内、奥村には無い違う(熟女の)魅力があります。
女性50代まだまだイケますよ。自分もそうありたいと思っているのですが、果たして…???

投稿: From Seiko | 2010年5月23日 (日) 00時16分

Seikoさん、こんにちは。
お返事をありがとうございます。

指揮はスダーンさんなのですね。

「テ・デウム」を続けて演奏をして良い、とブルックナーは生前に言っていましたので、これは正統なプログラムです。但し続く調の関係から、不自然だという学者も居ます。ちなみに僕自身も余りピンとは来ないのです。まあ諸説有るわけですから、ご自身で自由に感じられれれば良いと思います。

大谷康子さん、素適ですよね。
彼女の誕生日も僕のひと月前なのです。キャンディーズのランちゃんと同じく、またまた「年し~たのおとこのこ~♪♪」です。(笑)
おっしゃる通り50代でもぜんぜんイケますよ。男性である自分自身も同じように、そうありたいと思っていますが、果たして??

投稿: ハルくん | 2010年5月23日 (日) 07時25分

はじめまして

 私はブルックナーの熱心なファンってわけではありませんが、第9だけは別格中の別格で、今まで聴いてきた交響曲の中ではマーラーのそれと並んで『人生変わるぐらいに凄い』と心底感じた数少ない曲です。

 よく第8と比べられますが、あちらが地上の現象にとどまるのに対して、ハルくんも仰るように、こちらの世界は地球の外に飛び出しちゃいますよね。『愛する神に捧げるつもりで書いた』という本人の言葉はダテじゃないです(個人的には第9の次には第5が好きなんです)。

 でも、単に高い世界に行ってしまうだけではなくて、全編通してにじみ出るような寂寥感がたまりません。あ、スケルツォだけは世界が少し違っていて、例えるなら悪魔の集会『サバト』でしょうかね。特にトリオ。

 ご多分にもれず、私の愛聴盤はシューリヒトですが、やはりアダージョがいくらなんでも早く感じますので(情感は素晴らしいのですが)、そこだけはジェダイマスター・ヨーダ、もといヴァント/BPOやヨッフム/シュターツカペレがよかったりします。

 ヨッフム/ミュンヘンフィルですか・・。考えてみたら、クナからこのかた、ミュンヘンフィルはブルックナーと相性がいいのですよね。今度あたってみます。 

投稿: michihiro | 2010年5月23日 (日) 12時51分

michihiroさん、はじめまして。
ようこそお立ち寄りくださいました。ありがとうございます。

『人生が変わるぐらいに凄いと感じられる曲』とおっしゃられるのは良く理解できます。本当に極々限られますが、自分にとってもこの曲は正にそれです。

この曲は、本当に地上界を離れて宇宙にまで行ってしまうような雰囲気です。おっしゃられる「寂寥感」についても、それは単なる「悲しみ」とかいう人間の矮小な感情ではなく、万物万象の無常からくるような雰囲気に感じます。
しかし悪魔の集会『サバト』というのは面白い表現ですね。初めてお聞きしました。

シューリヒトのアダージョは幾分の物足りなさを感じないでもありませんが、過ぎたる表現よりはずっと好ましいと思っています。ヨッフム/ミュンヘン盤ですが、お聴きになられた時には是非ご感想をお聞かせください。

投稿: ハルくん | 2010年5月23日 (日) 23時30分

お返事ありがとうございます。

私のブログは音楽のエントリが少ないのですが、ハルくんに触発されて、ブル5について駄文を書いてみました

http://michihiro206.blog.ocn.ne.jp/michihiro206/2010/05/post_adff.html

投稿: michihiro | 2010年5月25日 (火) 23時39分

michihiroさん、こんにちは。

ブログ記事読ませて頂きましたよ。
自分も5番は大好きですし、曲の印象についてもとても似かよっています。
愛聴盤に上げられたルドルフ・ケンペ/ミュンヘンPO盤ですが、正にわが意を得たりです。本当に素晴らしい音色と表情の演奏だと思います。
他の記事についてもゆっくりと読ませていただきますね。

投稿: ハルくん | 2010年5月26日 (水) 01時46分

ハルくんさん、こんばんは。

ヨッフム/ミュンヘン・フィル盤、聴いてみました。「こ、これは…この音は…」「!!」というのが 現在の私の素直な感想です。

実演であれ、録音であれ、後に自分にとって忘れられない かけがえのない演奏と出会ったときの私は いつもこんな感じで その感動をすぐには言葉で捉えることができないのです。

言葉で捉えるより先に、音楽がワーッと心の中に入ってきて、たちまち心を掴んでしまうからでしょうか?ヨッフム/ミュンヘン・フィルの録音も、言葉を超えて、心の中にまっすぐに入ってきました。私にとって かけがえのない演奏になりそうです。

シューリヒトのブル9に肩を並べる演奏というハルくんさんのお言葉、納得です。
ご紹介下さって、ほんとうにありがとうございました。

投稿: ANNA | 2010年5月26日 (水) 17時16分

ANNAさん、こんばんは。

ヨッフム/ミュンヘン盤、早くもお聴きになられましたか!さすがはANNAさんです。(笑) でも御礼などは不要です。自分の好きな演奏を同じように気に入って貰えれば嬉しいかぎりですから。

この演奏は僕は最初に海賊盤を店頭で試聴したのですが、余りの凄さに体が震えました。それが正規盤により音質が向上してからは、記事に書いたとおりです。
文春新書の「クラシックCDの名盤」でもこの演奏については、宇野功芳さんと中野雄さんが口をそろえて絶賛していました。
金管の分厚いハーモニーも素晴らしいですが、大きく歌う弦楽も例えは悪いですが、まるで大津波に流されて誰も止められないような凄みが有りますね。

またまたブルックナーの森へ深入りされましたでしょうか。よかったですね!(笑)

投稿: ハルくん | 2010年5月26日 (水) 20時20分

初めてコメントします。いつもハルくんのブログを楽しく拝見しています。
さて最近どうしても気になっていることがあります。
トラックバックの「朝比奈隆のブルックナー」で何故第9番だけが欠けているのでしょうか?
気になってしかたがありません。
1番から9番まで揃って欲しいです。

投稿: 気になる人 | 2010年8月17日 (火) 23時10分

気になる人さん、はじめまして。
コメントを頂戴してありがとうございます。

ご指摘の点ですが、確かにそうですよね。9番が抜けては片手落ちですね。オペラファンさんに是非お願いしましょう。
一応、リンクは下記ですので、ご覧になってください。http://blog.goo.ne.jp/0612-0523/e/eaeaea82caf3d74e1cf6e08908f68dcf

これからもよろしくお願いします。コメントお待ちしていますね!

投稿: ハルくん | 2010年8月17日 (火) 23時29分

謹賀新年 m(_ _)m

昨年末ヨッフム/MPO/Weitblick入手。新年聴き始め盤と決めてました。

曲自体そうなのでしょうが、コノ演奏は他では聴けない(特に3楽章)崇高さが。終演後と拍手に異様な"間"が在るコトからも、拍手を忘れる程"無"にさせられたのでは。最初、コノ"間"がホントの拍手マナー?と思ったのですが、続くトリスタンでは普通に拍手が起こるので...。

投稿: source man | 2011年1月 1日 (土) 19時52分

source manさん、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

聴き初めはブルックナーの9番でしたか。しかもヨッフム/ミュンヘン・フィル盤で!
ヨッフムはこの曲の録音を何種類か残していますが、この演奏は特別なものだと思います。
ミュンヘンの耳の越えた聴衆にも相当の感動を与えたに違いないでしょうね。

投稿: ハルくん | 2011年1月 2日 (日) 11時28分

続けてごめんなさい。
この曲は、尾高忠明/札響によるものを演奏会で聴き、知りました。後日CDが欲しくなり
店で迷いましたが、朝比奈さんの最後の録音のものを購入しました。日本人のブルックナーばかり聴いていては叱られそうですが、何でしょう、このCDは、愛聴盤になりました。
この作品の、他のCDも聴いてみたくなります。
駄文お許しください。失礼しました。

投稿: sasa yo | 2011年1月12日 (水) 19時05分

sasa yoさん、こちらにもコメントをありがとうございます。

何も日本人のブルックナーが悪いわけではありませんし、僕も朝比奈さんの生前のコンサートへは何度か足を運びました。そして感動もしました。
ですがCDで聴き比べた場合には、ほとんどの場合に日本のオーケストラは聴き劣りしてしまいます。
もちろん好みの問題は有りますが、色々な指揮者やオーケストラを聴き比べてみるのはとても楽しいと思いますよ。

投稿: ハルくん | 2011年1月12日 (水) 22時51分

こんばんは、またすいません。
数年前にテレビより録画した、ヴァント/ベルリンフィルのDVDが、棚の中から見つかり、オーディオに繋ぎ聴いてみました。おっしゃる通り上手な演奏だと思いました。しかし、ブルックナーの音楽の表現は、技術だけでなく、精神性?、宗教性?何かもっと深いものを僕はつい要求してしまいます。ある意味、マーラーより難しい部分もあるのでは、そう感じます。そういう意味で9番の、僕にとっての決定盤にまだ出会っておりません。シューリヒト、ヨッフム等、次に聴くならどの盤にしようか、迷っております。
長々とすいませんでした。

投稿: sasa yo | 2011年2月 1日 (火) 19時04分

sasa yoさん、こんばんは。
古い記事へのコメントをありがとうございます。

ブルックナーの音楽表現に技術だけではなく精神性や宗教性のような、もっと深いものを要求するというのは、自分も全く同じです。自らの作品を神様に捧げようとしたブルックナーの音楽を、そういうものを抜きにはとても考えられません。
楽団員がtoo much internationalのベルリン・フィルはその点でブルックナーを理解し切れているとは感じられないのです。チェリビダッケも確かそんなようなことを言っていた記憶があります。

シューリヒト/ウイーンフィルとヨッフム/ミュンヘンフィルはどちらからでも後悔されないと思いますし、どちらもお聴きになられることをお勧めします。

投稿: ハルくん | 2011年2月 1日 (火) 22時42分

こんにちわ。初めまして。

ブルックナーは好きで良く聴きますが、9番は別格。よくまぁ、こんな音楽が書けたものだと感心します。これ、冬山で遭難して幻影を見る話ですよね^^;;;。何だか眠いんだ。でも眠っちゃ駄目だ!みたいな。

シューリヒトは好きな演奏の一つなんで、紹介されているCDやDVDも聴いてみたいです。

今度大フィルの定期演奏会で9番が取り上げられるので、これも楽しみ。生演奏は違った意味で感動があります。

投稿: nicolin | 2011年2月11日 (金) 11時43分

nicolinさん、はじめまして。
コメントを頂きましてありがとうございます。

記事にも書きましたが、本当にこの曲は音楽とも、この世のものとも思えないほどです。とんでもない作品です。

大フィルは朝比奈さん時代にブルックナーを数えきれないぐらい演奏しましたから楽しみですね。あとでご感想を教えて頂ければ嬉しいです。

どうぞまたお気軽にコメントください。楽しみにしています。

投稿: ハルくん | 2011年2月11日 (金) 12時55分

大フィルの第446回定期演奏会行って来ました。曲はショスタコーヴィッチ9番とブルックナー9番。もちろんブルックナーがメインかと。

指揮者は常任の大植英次さん。
大フィルと言えば、あの歴史的名演と言われる聖フリーリアン教会の7番を思い出します。菅が安定していれば完璧だったのですが。

日本のオケで聴くブルックナーは菅が厳しいんだけど、この日の大フィルはそれでも結構がんばったと思います。だいぶ進歩しました。オープニングの第一主題の提示ですでに大興奮だったよ。テンポはちょいと速めでシューリヒトっぽかった。ブルックナー休止はちょいと長め。やはり生で聴くオケは良いです。スケルツォが元気いっぱいだったのと、エンディングが盛り上がったのが今回の演奏。全体的に若々しい元気一杯の演奏との印象が強かったです。

菅がへろへろに成りながらでもようやく辿り着いた終曲。演奏が終わってから長い静寂とその後の盛大な拍手がありました。行って良かったと思います。

投稿: nicolin | 2011年2月20日 (日) 16時34分

>大フィルの第446回定期演奏会
すいません。445回の間違いです。
同じ内容で東京でも演奏があったみたいですね。

投稿: nicolin | 2011年2月20日 (日) 16時56分

nicolinさん、こんにちは。

大植さん/大フィルの定期演奏会は良かったようですね。ブル9は何しろベルリンフィルでも中々完璧には行きません。ホルン8本がピタリと合うのは至難の業だそうです。
やはり朝比奈さん時代に鍛えられた経験が生きているのでしょう。そういう伝統は絶やさないでほしいですね。

投稿: ハルくん | 2011年2月20日 (日) 17時10分

ハルさん、お久しぶりでございます。
シューリヒト盤手に入れました。
演奏が始まったところから、聴いていて作品の世界にのみ込まれてしまう、そう感じました。今まで聴いた他のCD等では届いていない世界だと思います。ウイーン・フィルの演奏も美しいです。余談ですが、昔、このブル9を振ったある日本人指揮者が、終演後「ブルックナーは天国へ行けてよかったな」と言って涙したというエピソードがあるそうです。
これからも他の演奏もぜひ聴いてみたいです。

投稿: sasa yo | 2011年2月21日 (月) 10時07分

はるクンさん、こんにちは。

また、みなさんのこの曲へのコメントが増えてきましたね。やはり、名曲ですね。

さて、ヴァントのベルリン・フィルとケルン放送交響楽団のCDを聴いてみました。いずれも素晴らしい演奏で満足です。感動というより、美しい演奏にうっとりといった感じで、それもいいかなと思いました。
以前、NHKのハイビジョンで期待して聴いたベルリン・フィルとの演奏は肩透かしでしたが、CDのベルリン・フィルはとても素晴らしい演奏。24ビットサンプリングの効果も大きいようです。
しばらくはこのヴァント+ベルリン・フィルで楽しめそうです。
ベルリン・フィルの8番も24ビットサンプリングでリマスターするとよくなるかも知れませんね。

投稿: sarai | 2011年2月21日 (月) 11時06分

sasa yoさん、こんばんは。

シューリヒト盤をお聴きになられたのですね。
ここでのウイーンフィルは、まるで「オーケストラの音」では無いように聞こえます。最新録音では無いにもかかわらず、音の凄さを感じますね。
他に是非とも聴いていただきたいのは、繰り返してしまいますがヨッフムのミュンヘンフィルLIVEです。これはシューリヒトに匹敵する、とてつもない名演だと思っています。

投稿: ハルくん | 2011年2月21日 (月) 23時01分

saraiさん、こんばんは。

本当に最近この曲へのコメントを多く頂いています。やはりそれだけ皆さんのこだわりの曲なのでしょう。大変な名曲ですね。

僕は個人的にはヴァントの場合はミュンヘン・フィルか北ドイツ放送響が好きなので、ベルリン・フィルはその次になってしまいますが、もちろん上手く大変に美しいです。これはもう好みとしか言いようがありません。なんとも贅沢な聴き比べです。

投稿: ハルくん | 2011年2月21日 (月) 23時10分

ハルくんさん、こんばんは。

今夜は、ブル9についてですが、この曲はブルックナーの最高傑作であり、私の一番好きな曲でもあります。

このブル9をFMで最初に聞いた夜には、私の今までの価値観・思想・人生のすべてが、一瞬にして崩れ去るのが分かりました。ハルくんの仰るように、音楽であって音楽ではない。とても人間業とは思えない、壮大な音の建造物!若しくは音の怪物! そして、僕の人生行路の軌道修正を強いて来るかのような、神様のお告げか審判を聞いたかのような~… そんな衝撃的な一夜でした。

あれから、三十有余年の月日はあっというまに過ぎ、今や50代前半~。いやはや年取ったもんですねぇ~。ちなみに、この曲の愛聴盤は私も、シューリヒト/ウィーンフィル盤です。そして、衝撃の一夜の演奏者は未だに謎のまま~、幻の指揮者と幻のオーケストラでしたねぇ~。出来ることなら、タイムスリップして確認したいよぉ~!

投稿: kazuma | 2011年9月12日 (月) 21時48分

さて、ハルくんさん。僕なりの喩えを聞いて下さい。

ブルックナーの交響曲はよく、山に喩えられますが~、この第9番は他の山々に抜きん出て聳え立つ、別格本山であり~音楽の修道士ブルックナーは、ついに人生の最晩年に於いてこの本山に登ることが許され、頂に建造された奥の院に封印されている秘曲中の秘曲を~、天使より授けられた。しかしながら、秘曲の終結部分を見ること叶わず、その場所に息をひきとった。と~… 

何か陳腐な喩えではありますが~… ちなみに僕は、このブル9の演奏では特に、インテンポを守る指揮者でないと、聞いていられません!フルトヴェングラーは勿論のこと、ヨッフム/ベルリンフィルもテンポの変化があって、この曲を堪能出来ません。なので、ヨッフム/ミュンヘンフィルのライブ盤も、未だに聞いていないのです。

投稿: kazuma | 2011年9月12日 (月) 22時57分

kazumaさん、こんばんは。
こちらへもコメントを頂きまして誠にありがとうございます。

ブルックナーの曲はよく山に例えられますね。まったくそういうイメージなのですが、この9番だけは、僕はどうしても地球上では無く、宇宙そのものに思えてしまうのです。未完成の9番よりも完成した8番をブルックナーのベストと考える方も多いようですが、僕は「深遠さ」の点で、やはり9番が究極だと思っています。

イン・テンポというよりも、効果を狙ったテンポの変化、とくに急激なアッチェレランドが不向きということでしょう。いっぺんにブルックナーの音楽から乖離してしまいますね。余りに厳格すぎるイン・テンポは時に窮屈さを感じますので、むしろ気付かないくらいのテンポの流動性は好ましい気がします。

ヨッフムはベルリンPOやドレスデン盤を聴いた時には、いま一つに思いましたが、ミュンヘンPO盤だけは違いました。30年間シューリヒト盤一筋だった自分が、とうとうそれに対抗できる演奏に出会ったのです。是非一度お聴きになられてみてはいかがでしょう。

投稿: ハルくん | 2011年9月13日 (火) 21時47分

ハルくんさん、こんばんは。

そうですか~、30年間愛聴しておられたシューリヒト/ウィーン・フィル盤に、匹敵するんですか~… それじゃあ、ヨッフム/ミュンヘン・フィル盤入手して、聞いてみましょう! 

さて、話は変わりますが~、私You Tube動画でもクラシックをいろいろ視聴しておるんですが、つい最近ブル9の毛並みの違った?掘り出し物を発見!何とそれは、ラジオ・フランスオケ~。指揮がチョン・ミョンフン!

ん~、これって何かミス・マッチ~?と最初は思いましたが、どうしてどうして~、聞き進むうちに、その優美で意味深く荘重な演奏に、次第に魅了されてしまいました。

いやあ、ブルックナーに対しては、冷めた見方しかしていないのでは?と思っていたフランスのオケが、こんなにも素晴らしいブル9を聞かせてくれるとは~!正直信じられなかったし、驚きです。

ここまで、ラジオ・フランスオケを纏め上げ、素晴らしいブル9の演奏を紡ぎ出したチョン・ミョンフンさんにも脱帽~。そして感謝・感激~!それから余談ですが、フランスの女性って何てお洒落でステキなんでしょう! 

投稿: kazuma | 2011年9月14日 (水) 20時46分

kazumaさん、こんばんは。

チョン・ミュンフンは才能ある指揮者だと思いますし、ラジオフランスも優れたオケだと思います。ただ、その組み合わせでブルックナーというのは、まったくノーマークでしたね。
想定外X想定外=想定外の名演奏、だったのかもしれませんね。

以前、知り合いのイギリス人が言った言葉ですが、「フランスの女は最高。フランスの男は最低。」というのがいまだに耳に残っています。
憧れてしまいますね~、フランスの女性に!

投稿: ハルくん | 2011年9月14日 (水) 21時29分

ハルくん こんにちは。ブル9つながりということで、こちらに おじゃまします。私のブルックナー初体験も 幸か不幸か、シューリヒト VPOの「第9番」でした。このレコードを毎日、毎日、狂ったように聴いてました。(笑) おかげで 当時、まだマイナーなブルックナーを知ることができて良かったです。でも最初に「これ」を聴いてしまったら、他の演奏が物足りなくなってしまいます。私がこの呪縛から解放されたのは ヴァントの最後の日本ライブ盤でした。(あ~ ハルくんが羨ましいです・・・笑) ところが今年 東芝EMIから シューリヒト盤のSACDが発売され、即購入(笑)。まるで最新録音?という音質で ただ ただ唖然です・・・。私の中では シューリヒト盤が 永久に不滅です!(笑)

投稿: ヨシツグカ | 2012年2月18日 (土) 17時14分

ヨシツグカさん、こんにちは。

我が家ではSACDプレーヤーが有りませんのでもちろん聴いていませんが、そんなに音質が良かったですか。通常のCDでも、シューリヒト/ウイーンPO盤が永遠に価値を失うことが無いのは間違いありませんね。

ヴァントの日本ライブは素晴らしかったですが、ヨッフム/ミュンへンPOのライブ盤がシューリヒト盤と双璧だと思っています。もし機会が有りましたら是非。

投稿: ハルくん | 2012年2月19日 (日) 18時41分

ハルくんさん、こんにちは。GW いかがお過ごしでしょうか? 私は連休を 購入したCDの聴き込みに使っています。(笑) ヨッフム ミュンヘン・フィルのブル9も、やっと ちゃんと聴く事が出来ました。正直、ここまで凄い演奏だとは! シューリヒトやヴァントの宇宙を仰ぎ見るような演奏に対して ヨッフムは宇宙に包み込まれるような 深い、大きな、表現ですね。素晴らしいです!私も シューリヒト盤と並ぶ 究極の名盤だと思いました。CDのご紹介、本当にありがとうございました。

投稿: ヨシツグカ | 2012年5月 1日 (火) 16時01分

ヨシツグカさん、こんにちは。

GW前半、CD聴き込んでいますよ~。たぶん後半もですが。(笑)

ヨッフム/ミュンヘン盤お聴きになられましたか。とても、お気に入られたようで嬉しいです。これは本当に30年ぶりに出会えた、シューリヒト/ウイーンPO盤に匹敵する演奏だと思っています。両者に共通して言えるのは、何度聴いても、ただただ素晴らしさに圧倒されてしまうのですね。

投稿: ハルくん | 2012年5月 1日 (火) 17時14分

最近、ラトル・ベルリンフィルの9番4楽章付きが発売されました。友人に勧められたこともあって聴いてみましたが、結論からすれば、3楽章までで十分。4楽章はモーツァルトのレクイエムやマーラーの10番と同様、作曲者の魂や霊感といったものに著しく欠けていると思いました。またこの演奏の1楽章から3楽章にかけては、ベルリンフィルのうまさはわかるものの、無機質的でこの曲に求められる深遠さだとか神への祈りのようなものが希薄に感じました。
この曲は演奏する方も聴く側も、それなりに覚悟が必要なのかもしれませんね。
私のこの曲との出会いはワルター・コロンビア、フルトヴェングラー・ベルリンです(古い!)
いろいろ聴いてきましたが、ベストはやはりシューリヒト・ウィーンかな・・。

投稿: hot | 2012年7月12日 (木) 22時06分

hotさん、こんばんは。
コメントを頂きましてありがとうございました。

僕も以前、別の演奏で4楽章を耳にして違和感を覚えてからは、この曲は3楽章までで良いと思っています。
それもあるのと、ラトルは余り好きとは言えない指揮者ですので、その演奏は聴いていません。

シューリヒト/ウイーンPOは僕にとってもいまだベストですね。本当に神々しいほど素晴らしいと思います。
ただ、近年ヨッフム/ミュンヘンPOが同格で並びました。あれも物凄い演奏だと思っています。

投稿: ハルくん | 2012年7月12日 (木) 23時03分

小生も最近シューリヒトのSACDハイブリッド盤(8番とカップリング)買いましたよ。SACDプレイヤーは持ってなくCD層で聴くことになりますが。熱心なブルックナーのリスナーじゃないですけど、LP時代にジュリーニ・CSO盤で第9を初めて聴いた時の感動は忘れられません。当時はジュリーニ・CSOの第9交響曲シリーズが評判でしたよね。クラシックを聴き始めて間もなかったこともあって今だにジュリーニ・CSOには愛着があります。貴殿のブログに取り上げられないのが残念で寂しい気もしますが、シカゴの金管がうるさくて好みじゃないのでしょうね(笑)。その後シューリヒト・VPO、ヨッフム・DSK,ショルティ・CSO、ヴァント・BPO等オーケストラ優先で聴きました。曲がいいからどの演奏も楽しめます。最近はやはり第9が聴きたい時はジュリーニ・CSOのリマスター・セット盤に手が伸びますね。失礼しました。

投稿: シーバード | 2012年7月13日 (金) 09時15分

シーバードさん、こんばんは。

僕もSACDプレイヤーは持っていません。ディスクが高価ですからね。まだまだ沢山聴きたいので通常のCDで構わないと思っています。

ブル9は上手いオケが演奏すると結構どれも楽しめますね。但し、そのうちの半分ぐらいはフォルテシモで金管が騒々しく感じてしまいます。強奏しても綺麗に聞こえるものは聞こえると思います。

残念ながらジュリーニのCSO盤は聴いていません。ウイーンPO盤でもうるさく感じてしまいましたが、こちらはどうなのでしょうね。

投稿: ハルくん | 2012年7月13日 (金) 23時36分

皆様信じてくださらないかも知れませんが、私のベストは、スヴェトラーノフとスウェーデン放送交響楽団のライヴです。
これまで、さまざまなブルックナーの第9番を聴いてきたのですが、どれを聴いてもいまひとつぴんとこなかったのですが、この演奏を聴いて、初めてこの曲に感動を覚えました。
スヴェトラーノフといえば、爆走暴走の演奏だけど、この演奏は違います。
確かにスヴェトラーノフ特有の轟音が随所に聴かれますが、その中にも不思議な静けさが感じられて、作曲家、演奏家双方の最晩年の作風、芸風が聴かれます。
同じスヴェトラーノフのブルックナー第8番を聴いて拒否反応を起こした人にもお奨めです。
どうか、皆様、だまされたと思って聴いてみることをお奨めします。

投稿: 壁ちょろ | 2013年7月25日 (木) 12時28分

壁ちょろさん、初めまして。

コメントを頂きましてありがとうございます。貴ブログの記事も大変興味深く拝読しました。

確かにスヴェトラーノフのブルックナーというと、聴く前からロシア風の豪快ブルックナーだろうと決めつけていました。どうせムラヴィンスキーやロジェストヴェンスキーのブルックナーと大差無いのだろうと。
これは一聴の価値が有りそうですね。是非聴いてみたいと思います。
貴重な情報をどうもありがとうございました。

どうぞまたお気軽にコメント下さい。
今後とも宜しくお願い致します。

投稿: ハルくん | 2013年7月25日 (木) 23時01分

ハルくんさん、ご無沙汰しておりました。こちらへも久しぶりにコメントさせて頂きます。

さて、壁ちょろさんのコメントとブログを拝見しまして~スヴェトラーノフ&スウェーデン放送交響楽団の演奏に、大いに食指を動かされた次第です。

ただ、旧ソ連やロシア系の指揮者の演奏するブルックナーというと、やはりムラビンスキーやロジェストベンスキーの、金管の強奏の多いチャイコフスキー風のブルックナーを連想しますので、どうも二の足を踏んでしまうのですよねぇ~。

投稿: kazuma | 2013年7月28日 (日) 21時42分

kazumaさん、こちらへもコメントをありがとうございます。

ロシアのオケが演奏するブルックナーだと想像通りだったかもしれませんね。
ただ、チェリビダッケが何度も客演したスウェーデン放送響であれば、まともなブルックナーの響きを出しても不思議は無いのかもしれません。実際に聴いてみたいですね。

投稿: ハルくん | 2013年7月28日 (日) 23時06分

ハルくんさん、こんばんは。

今日はアマ・オケでこの曲の第4楽章付きの演奏を聴きました。
90分を超える長大な演奏でした。
クタクタになりました…

この補筆の第4楽章には賛否両論ありますが
僕はたまには4楽章付で聴くべきと思います。
やはり壮大なフィナーレは感動的でした。

もっとも聴き通すには体力がいりますので
通常は第3楽章までですね。

投稿: 影の王子 | 2014年2月23日 (日) 20時24分

影の王子さん、こんばんは。

アマオケでこの曲とは凄いですね。まして4楽章付きとは。僕も昔弾いたことがありましたが、二度とやろうとは思いません。それぐらい音楽にするのが難しい曲です。

4楽章については当然聴き手の自由ですが、他人の手を借りた作品に果たしてどれだけ意味が有るのかなというのが正直なところです。
自分は少なくとも一度聴いたらもういいかなという感じです。

投稿: ハルくん | 2014年2月23日 (日) 22時33分

ハイ、ハルくんさま~。ご無沙汰しております。お元気でいらっしゃいますか?

ここしばらく~、ブルックナーの第9番は聞かずじまいだったのですが、最近になって~ハルくんご推奨の、ヨッフム指揮ミュンヘンフィル演奏のブル9が、ネット動画にアップロードされていましたので、全曲を通して試聴してみました。

冒頭を聞くや否や~、これは凄い!とのめり込むように、聞き入ってしまいました。ベルリンフィルとの最初の録音とは違って、テンポの揺れも少なく、スケールも大きく~ブルックナーの大宇宙そのもの、まるで大河に身を任せるような、忘我恍惚の時間を過ごしました!

人生の最晩年に至って、ブルックナー演奏に身も心も捧げて来たヨッフムが、最後に到達し得た至高の境地とでも言うのでしょうか!とにかく、このブル9の演奏は~おっしゃる通り、シューリヒト指揮ウィーンフィルの演奏と並ぶ、ブル9のベスト録音と言うことに何ら異論はありませんね!

早速にでも、ヨッフム&ミュンヘンフィルのCDを取り寄せて、じっくりと聞き込みたいと思います。ハルくんさん、ご紹介本当にありがとうございました。

投稿: kazuma | 2015年4月19日 (日) 08時45分

kazumaさん、お久しぶりです。
おかげさまで元気ですよ。kazumaさんもお元気そうで何よりです。

>まるで大河に身を任せるような、忘我恍惚の時間を過ごしました!

同感です。ここまで我が身が飲み込まれるような感覚の演奏は中々無いですね。やはりシューリヒト/ウイーンPOと双璧だと思います。是非CDでじっくりとお聴きになられてください。
大変嬉しいコメントを頂きましてどうもありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2015年4月20日 (月) 00時45分

ハルさん、こんばんは。

今年に入って、なぜかこの曲が急に好きになりました。多分、偶然YouTubeで聴いたアバド/BPOの演奏が気に入ったからだと思います。

それから、YouTubeで何通りかの演奏を聴いています。

家にあったCDはインバル/フランクフルトでした。高くてなかなかCDは買えないのですが、なんとか買ってみようと思います(応援してください笑)。

投稿: くま | 2015年4月20日 (月) 23時55分

くまさん、こんにちは。

この曲は交響曲のジャンルでは1番か2番目に好きな曲ですね。他のジャンルを入れても五指には入りそうです。

色々なCDで演奏を聴き比べてみると益々この曲が好きになられること間違いなしですね。
応援していますので!(笑)

投稿: ハルくん | 2015年4月21日 (火) 12時50分

ハルさん、こんばんは。

あれから、ワルター/コロンビア響、
カラヤン/BPO(60年代のスタジオ録音)、
カラヤン/BPO(70年代のスタジオ録音)と
全て安い紙ジャケットのCDで(笑)購入しました。

自分の中ではワルターは振り急いでいる感じがして、「ないな」と思いましたが、カラヤンの2種はそれなりに楽しめました。

シューリヒトはYouTubeで聴きましたが、演奏の素晴らしさの前に、時折、アンサンブルが乱れているところがあって、少し気になりました。昔は、この程度は修正しなかったのだな・・・と思いました。

なので、シューリヒトを買おうかどうしようか迷っています。500円くらいならすぐ買うんですけどね(笑)。

投稿: くま | 2015年5月10日 (日) 02時57分

くまさん、こんにちは。

ブルックナーは案外と縦の線を合わせるのは難しい音楽ですね。この人の音楽には、それよりもむしろ美しい響きの元となる音程のほうが重要な要素なのだと思います。なので、アンサンブルにはあまり神経質にならない方が良いような気がします。

シューリヒトのCDがワンコインランチ相当の価値しかなく、¥1000定食の価値が無いとは思いませんので、一度CDでじっくり聴かれてみてはいかがでしょうか。 

投稿: ハルくん | 2015年5月10日 (日) 10時05分

ハルさん、こんばんは。

あれから図書館に行き、シューリヒトをCDでちゃんと聴いてみました。聴いてみてよかったです。名盤と言われるのが分かるような気がしました。
現在、出ている盤はロゴがワーナーになってしまっているのが気に食わないのですが、お金を貯めて買おうと思います。
ありがとうございました。

投稿: くま | 2015年5月22日 (金) 00時31分

くまさん、こんにちは。

もちろん最新録音ではありませんし、好みは人それぞれですが、このシューリヒト盤を支持するブルファンは非常に多いです。
ライブラリーの一つにしておいて損は絶対に無いと思います。
EMI国内盤のリマスターもありますが、私のドイツ盤は悪くないですよ。CDジャケットはあまりイケてはいませんけど。
中古でも安いはずです。一応ご参考までに。

投稿: ハルくん | 2015年5月22日 (金) 11時16分

ハルくんさん

いつも楽しく拝読しております。

さて、ブルックナーの交響曲の中でも最も好きな9番は結構なCDを持っておりますが、新たにヨッフム・ミュンヘンを購入しました。ヨッフム・DSKは余りピンと来なかったのですが、ご指摘のとおり、これは名演ですね。私の中では、シューリヒトVPOは別格として、ジュリーニCSOと並ぶ愛聴盤になりそうです。
有難うございました。

投稿: Leikon | 2015年5月22日 (金) 12時23分

Leikonさん、こんにちは。
いつもありがとうございます。

ブル9のヨッフムの録音の中でもミュンヘンPO盤はシューリヒト/ウイーンPO盤と並び立つ存在で、本当にどちらも甲乙つけがたく思っています。

残念ながらジュリーニはウイーンPO盤しか聴いていません。機会あれば聴いてみたいですね。

投稿: ハルくん | 2015年5月22日 (金) 14時46分

キタラの横2階席で聞いてきました。ライブは2回目、前回はシンフォニーホールで朝比奈さんの演奏です。今回は尾高さん。楽譜には終楽章があるそうですが「神様がもう十分といった」とかで演奏しませんでした。

これは僕の青春の音楽で、高校大学と毎日のように効いてました。正直、冒頭のところはちょっと耳タコって感じがしたんですが、あっという間に取り込まれて。

音楽がものすごくて、演奏がどうだとか考えている余裕ありませんねえ。もういろんな音楽が聞こえました。シューベルトが痙攣するようにバラバラに叩きつけたアイデアを、きちんとひろいあげて大大系にして提出してるってのもそれです。ワグナーの楽劇もなってましたねえ(アダージョにはトリスタン和声が出てくるんですよ)あとオッケゲムやマショーも、シェーンベルクもちょっと顔を出してました。

今回、よくわかったのはアダージョ。矛盾する各主題が持っている統合感が、組み合わされ展開されることで壊れていく。まるで滅びや解体に向かって進んでいくようです。(朝比奈さんが、この楽章はドンドン響きが薄くなっていって、作曲者の健康状態がそうさせたんだろうが、演奏していてつらいとおっしゃっておらっれました)

で、最後にあの圧倒的で輝かしい恍惚の表情を見せる(しかしそれを鳴らすと音の構造上、諦念に満ちた暗い第2主題を呼び出さざるを得ない)第一主題が帰還する寸前で打ち切られ、調的な安定に達し完全な満足の上に終わるのです。

今までアダージョだけは苦手でした。人間、長い間生きていると、わかることもあるんですね。

投稿: Nagai@Yezo | 2015年10月31日 (土) 02時45分

Nagaiさん、コメントありがとうございます。

最近はこの曲は滅多に聴かないので、たまに聴けばどの演奏でも感動すると思います。そもそもこの音楽の前で演奏のどこが良いの悪いのと語ること自体に矮小さを感じてしまいます。(と、言いながらも実際には語っていますが)(苦笑)

ブルックナーの命が仮にもっと長くて、この曲を完成させる可能性が有ったのか、それでもやはり無かったのか誰にもわからないことですが、仰られている通りアダージョまでを聴き終えて100%満足感に浸れることだけは確かです。この事実だけで充分なのではないでしょうか。
素晴らしい曲分析をどうもありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2015年11月 1日 (日) 16時39分

こんばんは。

ジュリーニ指揮シュットゥットガルト放送響盤
程よい緊張感を保ちつつ、ジュリーニの艶っぽさが適度で
明快な録音により、大変聴きごたえがあります。
オケがウィーン・フィルではなく、馴染みがないのが幸いしたと思います。
しかしながら、このオケの魅力もかなりのもので
やはりブルックナーはドイツ・オーストリアのオケで聴きたいものですね。

投稿: 影の王子 | 2016年11月23日 (水) 17時22分

影の王子さん、こんにちは。

ブルックナーは音色、共感度の点でドイツ・オーストリアのオケの演奏が理想的ですね。ウイーンフィルはその筆頭格になりますが、それ以外のオケでも素晴らしい演奏は沢山あります。
概して南ドイツに位置するミュンヘンやシュットゥットガルトのオケはオーストリアに近いこともあり良い演奏が多いです。

投稿: ハルくん | 2016年11月24日 (木) 12時46分

こんばんは。

エア・チェックしたブルーレイを観ようとしたら
2013年の東京交響楽団の演奏会で
「第9」+「テ・デウム」があり、連続して観ました。
結果・・・
交響曲と宗教曲では完全に水と油・・・
「第9」の演奏自体がとても良かっただけに
そこで再生を停めておくべきだったと後悔しました。
やはり未完成ながら「第9」の音楽としての「密度」は凄いです。
逆説的にそのことに気づかされました。

投稿: 影の王子 | 2017年5月31日 (水) 23時53分

影の王子さん、こんにちは。

作曲者が第三楽章に続いて「テ・デウム」を演奏して良いと言ったのかどうか知りませんが、仮に言ったとしてもそれが100%本意であったとは到底思えません。なのでこの曲はあくまで未完成作品として第三楽章までに鑑賞を留めたいです。
少なくとも自分はシューベルトの「未完成」やマーラーの第10番の場合と同じですね。

投稿: ハルくん | 2017年6月 1日 (木) 10時23分

ハルくん様
実は私のこの曲の初購入盤は、クレンペラー&ニュー・フィルハーモニアOの、東芝音工EAC77401でした。'71年収録のこの老匠最後の活動期の物です。ただ、音の取り方にやや不思議な面があり、存分に咆哮する筈の金管パートが何故か聴こえて来ない、そう言う盤でした。演奏は第1楽章の進行とクライマックスに、やや弛緩が見受けられたものの、第3楽章の絶唱には心をひかれました。
2枚目がワルター&コロンビア交響楽団、西ドイツLP4枚組でこの大家が晩年のステレオ録音した第4,7,9番を集成した、セットです。これはCBS技術陣もバランスよく収録して下さり、音楽面では美しく老いた品格と迫力をバランス良く保った演奏を、堪能させて戴きました。
以上2点が愚生のブルックナー第9の、原点ディスクです(笑)。

投稿: リゴレットさん | 2018年2月25日 (日) 09時32分

リゴレットさん、こんにちは。

実はクレンペラー、ワルターのブルックナーは他の曲を含めて1枚も紹介していません。唯一の例外はクレンペラーがウイーンフィルを振ったライブ録音ぐらいです。

一番の理由はオーケストラですね。ブルックナーの本来の響きを出せるオケというとヨーロッパの超一流オケというのが持論です。
ですので両者は大好きな指揮者でありながら申し訳なく思っています。

投稿: ハルくん | 2018年2月26日 (月) 11時41分

ハルくんこんばんは。
膨大な書き込みに圧倒されるばかりです。私もブクッルナーの9番をクラシック名曲・名演・名盤の真髄に投稿しました。ハルくんの記載にかなり近い結果となりました。私の個人的好みはさておき、私の上記の投稿ではヨッフム、シューリヒト、フルトヴェングラー、サヴァリッシュともそれぞれ解釈に独自の特徴があり、この点を詳しく書いています。それぞれの特徴を理解すればすべてが素晴らしい演奏として心に響きます。

投稿: tkdclassic1 | 2018年8月 2日 (木) 18時12分

tkdclassic1さん、こんにちは。

ヨッフム、シューリヒト、フルトヴェングラー、サヴァリッシュ、みな素晴らしい演奏ですね。そう言いながらフルトヴェングラーやクナッパーツブッシュ盤は上げていませんでしたが。
それぞれの演奏の特徴を理解し受け入れて楽しめれば素晴らしいです。そのうえで好みを語れれば音楽鑑賞術を極めたようなものですね。
それは頂きの中腹まで来た愛好家にとってはまだまだ簡単に到達出来ない境地だと思います。私を含めて。

投稿: ハルくん | 2018年8月 3日 (金) 13時21分

ハルくんこんにちは。
フルトヴェングラーは詳細に記載しています。クナッパーツブッシュも解析表情数が多く、迷った記憶があります。しかし、記載から除外した理由を思い出すのは難しいです。多くの解析の中で、記載にあげるか否か迷う演奏において、最後に記載から外した理由は、否定的内容となるため残していません。したがって、現段階で未記載の理由を思い出すのは難しいです。ハルくんもクナはとり上げていませんが、ハルくんがとり上げなかった理由がわかればうれしいです。

投稿: tkdclassic1 | 2018年8月 7日 (火) 10時28分

tkdclassic1さん、こんにちは。

クナ盤ですか。
現在所有は1950年のベルリンフィル盤のみですが、一番の理由はモノラルですしライブ録音のハンディで音質はお世辞にも良質とは言えないからです。
演奏についてはデフォルメとも呼べるかなりクナの体臭を強く感じるもので、ブルックナーの本質からは外れていると思っています。
面白いことは面白いのですがブルックナーを味わったという喜びは感じません。筋金入りのクナファンのみが満足できる演奏だというのが二番目の理由です。
ただ、記事に乗せても別に構わないと思いますのでこの際UPしましょうか。
1958年盤は一度ぐらい聴いたかどうか記憶が有りません。

投稿: ハルくん | 2018年8月 8日 (水) 19時04分

第一楽章を聞いてると、魂が地球から旅立ち宇宙を浮遊して行き最後にブラックホールに超光速で吸い込まれていくように感じます。
普通の人は肉体が滅びてから魂が宇宙に旅立つのですが、ブルックナーは肉体が滅びる前に魂が宇宙に旅立ってしまったのではないか?と思います。

投稿: pp | 2018年8月10日 (金) 07時32分

ppさん、こんにちは。

正におっしゃる通りブルックナーの魂は生きているとき既に神や宇宙を見ていましたね。ちょっと他には類例が無い途方もない音楽を創り出したものですね。

投稿: ハルくん | 2018年8月11日 (土) 17時29分

すみません、とおりすがりの者です。昨年発売だったのでしょうか、佐渡裕さん指揮のウィーントンキュンストラの演奏もよかったです。現代風、モダンな演奏かもしれませんが、トンキュンストラの程よい田舎らしい音色がいい感じだと思いました。武満徹の曲とのカップリングです。
あと、一緒に入手したショスタコの5番と同じくショスタコの管弦楽曲(今手元にないので名前がわかりませんが)もよかったです。とくに管弦楽曲の方は遊園地みたいでとても楽しい気分になれます。
音楽の聖地での日本人の活躍、うれしいですね。

投稿: とおりすがり | 2018年8月15日 (水) 06時12分

とおりすがりさん、こんにちは。

佐渡さんのCDは聴いていませんが、良さそうですね。
小澤征爾さん以降、あれほどの人は中々出てきませんが、そんな人もいつか現れると良いですね。

投稿: ハルくん | 2018年8月16日 (木) 12時51分

コメントを書かせてもらってからおよそ1ヶ月。そういえばと思って先日、少し棚を整理して調べてみたらシューリヒト/ウィーンフィルのドイツ盤のCDとドイツ盤の初期ステレオ(白金)LP、フランス盤初期モノラル(青銀)LPが出てきたので聞き比べてみました。こちらはCDとLPの違いとか、プレスがどうの、というサイトではないので詳細は省きますが印象はかなり違いました。CDは上手にまとまっていて、ドイツ盤は荒削り、フランス盤は余韻の残るような音で意外にもフランス盤が気に入りました。どなたかがコメントされていましたが英EMIの初期盤はとんでもない値段なので入手できませんが、原体験が何だったかで印象が大きく変わるように思いました。特にアナログ時代の音が頭に残っていると。私はCDは詳しくないのでわかりませんが、CDでもやはり盤によって音が違うんでしょうか。
合わせて発掘されたブル9でワルター/コロンビア響なのですが、カナダプレスの初期ステレオ盤で、これがビックリするほど素晴らしかったです。以前からずっと思っていたのですが、アメリカコロンビアの音源(だけでなくRCAなどでも)はカナダプレスのLPのほうがずっと音楽的で感動します。このワルターのブル9もこれまでのワルターの(特に晩年の)イメージを覆す傑出したできだと思います。おそらくワルターが晩年にステレオで残した遺産はカナダプレスで聴くべきだと思います。

投稿: とおりすがり | 2018年9月21日 (金) 06時24分

とおりすがりさん、こんにちは。

LP盤とCDとどちらの音が良いかという議論がしばしば成されますし、それぞれの主張には一理あると思います。
LP盤と同様にCDでもマスタリングにより違いは驚くほど大きいです。その上どちらも再生装置との組み合わせが有りますのでそう単純な話ではないと思います。装置にかかる費用面も決して無視して良いとは思いません。

ただ、ひとつ言えるのは元々アナログ録音された音源はアナログ再生がベストだとうことです。
もう一つ古くからのファンに支持の高いアナログ録音ですが、柔らかい音が耳に心地よいのは確かですが、必ずしも生演奏の音とは限りません。聴き手にとって「良い音」とは結局のところ「好みの音」だと思っています。

投稿: ハルくん | 2018年9月21日 (金) 12時42分

ハルくんさん、こんばんは。

ブルックナーの交響曲は傑作揃いですが、この9番は中でも別格の存在ですよね。それはあたかも神が降りてきたかのような深さ・厳しさ・神々しさで、聴き手をこれほど圧倒させる作品は他に中々見当たりません。

それだけに、作品に見合うだけの演奏も多くはないようで、大抵はその凄さを十分惹き出せずに終わってしまっているようです。

そんな中でも私が素晴らしいと思うのは、やはりシューリヒト/VPO.です。もう語りつくされた感のある鉄板中の鉄板の盤ですが、何度聴いても飽きが来ず、厳しくも美しい演奏は他にありません。VPO.の演奏では一時期ジュリーニの演奏にハマりましたが、結局はやはりシューリヒトに戻ってきてしまいました。CDやSACD、そしてアナログ盤を何度買い替えたかもうわかりません(苦笑)。

他ではカイルベルト盤も気に入っております。何の飾り気もない朴訥とした演奏ですが、聴けば聴くほど味わいの増す名演ですね。第1楽章にもうちょっとコクのある音が欲しいですが、第2・3楽章はシューリヒトにも決して引けを取らないと思います。

それにしても、ヴァントのライブを実際にお聴きになられているのは本当に羨ましい限りです。

投稿: げるねお | 2020年3月29日 (日) 22時37分

げるねおさん

この曲は本当に宇宙的な神々しさでは比類が有りませんね。「音楽」の域を超えています。こんな曲はちょっと他に有りませんね。
シューリヒト/ウイーンフィルの演奏については正に同感ですが、唯一ヨッフム/ミュンヘンフィルに限っては同格だと思っています。
ヴァントの来日公演、あれを聴けたことは幸運でした。録音でも充分素晴らしいのですが。

投稿: ハルくん | 2020年3月30日 (月) 09時03分

私もジュリーニ指揮シュトゥットガルト放送響盤を最も愛聴しています。
ブルックナーを50年以上聴き続けて来て最近、思うのです。
ブルックナーの音響はオルガンでなければならないのではないだろうか?!と。
ご承知のとおり、彼は教会でオルガニストを勤めていました。
第5交響曲の第1楽章冒頭、ピツィカート後の金管楽器の響きはオルガンそのものです。同じように第9交響曲の第1楽章第1テーマも私にはオルガンの響きに聴こえます。金管楽器がトゥッティで響く時、それはオルガンなのではないだろうか。
これはオルガンの音色を模倣したのではなく「そういうイメージで響かせる」という意味です。
ティーレマンがウィーン・フィルを指揮した第8をソニーがリリースしましたね。
ハルくん様もこれについて言及されていますが、この演奏を聴いて私の耳に最初に入ってきたのは、よくブレンドされた音響でした。マルチマイクで録音されたように個々の楽器が集まった結果としての音響ではなく「ウィーン・フィル」という一つの楽器としての響き。これはオルガントーンに通じるものがあります。
この観点に気づかせてくれたのはクルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団による第9でした。
これは殆んど積極的に評価されることはありませんが「オルガントーン」という視点(聴点)からするとなかなか示唆に富んだ演奏だと私は思っています。
一見(聴)かなり大人しく地味に聴こえるかも知れません。人を驚かせるような表現とは無縁。御託を並べず淡々とひたひたと音楽を進める姿勢には大人の風格があります。分からなければそれでも構わない、という孤高の演奏かも知れません。
でも、ここが肝心なのですが、響きがオルガンなのです。弦楽器と管楽器が常にバランスを保ってブレンドされていて、このバランスが決して崩れないのです。まあ、この辺が好みを分けるのでしょうね。冷静沈着。客観的。喚かない。紳士的。
マズア/ゲヴァントハウス管のブルックナーは全集を買いました。1番から9番までスタンスは統一されています(それだけでも凄いこと!)。
第9以外も再評価中です。

投稿: 未入力 | 2020年12月 8日 (火) 12時54分

ハルくん様
貴ブログのローカルルールをろくに理解しないまま、手当たり次第投稿しまくってしまいました。何卒お許しください。
以後、投稿を慎み、拝見させて頂くつもりです。
投稿されていた他の皆様にもこの場をお借りしてお詫び申し上げます。

投稿: クラシックフェチ | 2020年12月18日 (金) 13時17分

クラシックフェチさん

いえいえご理解下さりありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。
またコメントを楽しみにお待ちいたしますので!

投稿: ハルくん | 2020年12月26日 (土) 12時01分

私は一つ一つの名盤が、一つの楽譜から無数に分岐したパラレルワールドというか、時空を超えた別個の宇宙だと考えるようにしています。私達一人一人の脳も別個の宇宙。いろんな宇宙や宇宙人を想像するのは楽しいですが、観測不可能な部分が多く、個別に言及するには限界もあります。

録音時期、録音場所、それをリスナーが聴いた時期(年齢、季節等含む)、聴いた場所・・・、全て時空を超えていますので、統一した価値観に纏め上げるのは難しいですよね。お互いの宇宙自身もどんどん膨張しつつ変化していきますしね。10年以上前の価値観で書かれた文章に、現在の、より恵まれた基準であれこれ言われてもね、っていうところもあるでしょうし・・・。

投稿: 犍陀多 | 2021年3月31日 (水) 12時57分

犍陀多さん

正に仰られる通りで、10年はおろか数年前の嗜好すら変ることが有ります。
ですので、余りにも大きく嗜好が変わった場合は過去の記事を修正することにしています。
といって膨大な記事を随時修正するということは不可能ですので悩ましい所です。

過去の記事はそういう点を理解して読んで頂けると助かりますね。
ありがとうございます。

投稿: ハルくん | 2021年4月 5日 (月) 22時52分

ハル君へ

ご無沙汰しました。当方私生活にいろいろあって音楽鑑賞どころではない状態が続いていました。
折からお彼岸、ならばこの曲など時節柄ピッタリかと思われます。貴方が書かれているように、確かに水準以上だとスコア自体がうまく響いて堪能できる曲に仕上がるという意見には賛同します。
やはりベスト盤はシューリヒト指揮ウィーンフィルかと思いますが、小生のもう一枚としては、

バーンスタイン指揮ニューヨークフィル

であります。ブルックナーを逸脱した血生臭い表現ですが、聴いていると熱くなってきます。ハル君には”危険球”かもしれませんがお試しいただく価値は十分あると思ってます。是非お聴きいただき感想などお聞かせ願えればと思います。

投稿: ふうさん | 2021年9月22日 (水) 20時02分

ふうさん

世の中大変な状況が続き、音楽どころでない方も多くおいででは無いでしょうか。

バーンスタインの9番は考えたらウィーン・フィル盤を友人宅で聴いたものの、それっきりでした。危険球とまではいかなくても見逃し四球でした。
自慢でも何でもありませんが、アメリカのオケのディスクは1枚も有りません(と言いながらワルターのCDが未アップ状態で有ります)。なのでNYP盤は申告敬遠の状態です。ふうさんはウイーン・フィル盤よりもお好きなのですか?

投稿: ハルくん | 2021年9月23日 (木) 02時35分

お返事ありがとうございます。
そうです。
ウィーンフィル盤より表現が引き締まっていると感じます。アメリカのオケでブルックナー、「ウーン、どうかなあ」と先入観を持ってしまいます。確かに荒っぽいです。しかし表現として徹底していると思います。第一楽章の第二テーマなどもう旋律にしがみついていくような濃厚さがありますし、第二楽章も金管群は力一杯、それが妙に真実として伝わる気がします。こんな表現もアリと思いました。ウィーンフィル盤は最晩年の録音ですね、壮大な響きですが、コントロールを失っているような場面もあるかなと。この盤にももちろん愛着はありますが。

投稿: ふうさん | 2021年9月23日 (木) 05時56分

ふうさん

ありがとうございます。
ともかく聴いてみないとわかりませんね。
ウイーンPO盤も随分前に聴いただけで敬遠しましたから、改めて聴いてみたい気がします。

投稿: ハルくん | 2021年9月26日 (日) 14時21分

ハルくんさん、こんばんは。

この作品の原典版の初演者であります、ジークムント・フォン・ハウゼッガーの録音をSP盤で聴きまして、その演奏の素晴らしさに非常に驚かされました。

この時代の演奏らしく、基本的なテンポは少々速めですが、その気宇の大きさとここぞという所での心の込め方がまず好ましく思えました。オケにミュンヘン・フィルが起用されているのも大いに効いていて、ブルックナーの法悦の響きが聴けるのがまた嬉しいです。ポルタメントも控えめで、古臭さはほとんど感じさせずむしろモダンです。この演奏の解釈はカイルベルトやシューリヒトの偉大なる先駆けであると思います。

音質も1938年録音としては非常に優秀で、かなり細かな音まで聴こえますし、ダイナミックレンジも結構広く感じます(SP盤の場合。CDは未聴)。

某著名評論家に、雑な演奏とぞんざいな扱いを受けておりますが(確かに第2楽章はアンサンブルより勢いを優先したためと思われる乱れあり)、その一言で切り捨ててしまうにはあまりにも惜しい名演だと思います。逆に、当時既にこのレベルの演奏が行えていたことに驚嘆いたします。

投稿: げるねお | 2022年1月17日 (月) 19時22分

げるねおさん、こんにちは。

ジークムント・フォン・ハウゼッガーのSP盤ですか。原典版の初演者なんですね。
ブルックナーの録音はクナッパ―ツブッシュやフルトヴェングラーの1950年代のものより古いものは基本的に聴きませんが、これは興味深いですね。ただCD化すると音質は厳しいかもしれませんね。
ご紹介ありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2022年1月19日 (水) 18時34分

こんばんわ

ブラームスの2番を書こうと思いましたが、
こちらを先にしました。

シューリヒト/ウィーン・フィルを初めて聴いたのが40年ぐらい前で、いい曲だなぁ~と思いましたが、あまり聴くことがありませんでした。
この2年の間に、約10種類のCDを買いましたが、本当にブルックナー9番を好きになったキッカケは、カラヤン/ウィーン・フィルのdvdです。
特に3楽章の冒頭のサウンド(あまりいい表現じゃないかもしれませんが)同じウィーン・フィルのジュリーニ、バーンスタイン版より痺れる響なのです。
カラヤンをキッカケに、8番よりも聴く機会が増えました。
クーベリック、ヴァントの東京ライブ、ゲルギエフ、ブロムシュテット/ゲヴァントハウスの全集は、たいへん気に入っています。
あまり話題に上がらないものでは、
ホーネック/ピッツバーグが私にとっては特別な(好きな)演奏です。
理由は、あえて言うなら、スケールの大きさと、コントラバスパートが声部として明瞭に聴こえるところです。
アマゾンのレビューは、海外の人たちのものばかりですが、かなり評価が高いですね。
これは買って良かったです。
もう1枚あげるなら、アーノンクール/ウィーン・フィルです。
これは2枚組で、1枚は4楽章のブルックナーが書き残した楽譜のみ演奏している(補筆ナシ)の録音です。
興味のある方は、聴いてみる価値は絶対あります。

それでは、また〜

追伸:ホーネックは、YouTubeにありますね。

投稿: くまお | 2024年9月 4日 (水) 01時41分

くまおさん

9番て、しっかり演奏されれば、みな魅力的に聴こえるんですよね。それだけ凄い曲だということなのかな。

ホーネックもアーノンクールも聴いたことがありませんので機会あれば!

投稿: ハルくん | 2024年9月 4日 (水) 14時09分

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受信: 2010年8月20日 (金) 00時25分

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受信: 2015年5月29日 (金) 23時05分

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