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2010年4月17日 (土)

ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」op.24 名盤

Ecfdc52e_2東京では桜も散って、いよいよこれから春まっさかりかと思いきや、この寒さ。おまけにとうとう41年ぶりの遅い時期の雪まで降る始末です。いったい春ちゃんはどこへ行ってしまったのでしょうね。そこで春ちゃんを呼び戻すために、今週はブルックナーとマーラーはお休みして、冬を吹き飛ばすのにふさわしい曲を聴きましょう。

ということでベートーヴェンのおなじみのピアノとヴァイオリンの為のソナタから「スプリング・ソナタ」です。ベートーヴェンはこのジャンルで10曲を書きましたが、僕が好きなのは、やはりこの曲と「クロイツェル・ソナタ」の2曲です。

この曲はベートーヴェンくんの『不滅の恋人』の一人とされる伯爵令嬢のジュリエッタに恋をしていた時期に作曲されたものと言われています。どうりで明るく甘く、身も心もとろけるように美しいメロディですよね。やっぱり人間はいつでも恋をしていないといけません!

この曲は皆さんご存知の通り4楽章構成です。最も有名な第1楽章は最高に美しい旋律が魅力的ですが、僕は「春の夢」のような趣きの第2楽章も、心が本当に浮き浮きしてくるような喜びに溢れた第4楽章も大好きです。本当にいい曲ですよね。ハ~ルよ来い!!

僕の愛聴盤のご紹介です。但し、どうしても僕好みのドイツ・オーストリア系の地味な演奏家が中心になっています。

379 アドルフ・ブッシュ(Vn)、ルドルフ・ゼルキン(P)(1933年録音/NAXOS盤) ドイツ・ロマン派の伝統の最後の偉大な継承者アドルフ・ブッシュの残した戦前の録音です。速めのテンポですが、適度なポルタメントが古き良き時代の味わいを感じさせます。とても「懐かしさ」を感じさせる素晴らしい演奏です。若きゼルキンのピアノもとても上手く生命力に満ちて優れています。僕の所有しているのはNAXOSレーベルのSP盤からの板起し盤ですが、音質にはやはり限界が有ります。一般の鑑賞向けとはちょっと言えないのが残念です。

Betocci00015_2 ヴォルフガング・シュナイダーハン(Vn)、ヴィルヘルム・ケンプ(P)(1952年録音/グラモフォン盤) オーストリア出身の大ヴァイオリニストは案外少なくて、クライスラー以降にはこの人しか思い当たりません。僕はこの人が大好きで、昔からベートヴェンの協奏曲なんかを愛聴していました。カール・ゼーマンと組んだステレオ録音も有ってLP時代に愛聴しましたが、この曲に関してはケンプの優しい表情溢れるピアノの良さから、モノラル録音のほうを好んで聴いています。地味で派手さは少しも無いのに、得も言われぬ味わい深さが有ります。ああ、これぞオーストリアの味!

Beethoguryucci00015 アルトゥール・グリュミオー(Vn)、クララ・ハスキル(P)(1957年録音/フィリップス盤) モーツァルトのヴァイオリンソナタの名盤で余りに有名なアルトゥール青年とクララおばちゃまのコンビです。このベートーヴェンも、喜びと生命力に溢れた、とても素晴らしい演奏です。ベルギー派のグリュミオーのヴァイオリンはドイツ・オーストリア系の演奏家と比べるとやや小股の切れ上がった感じがしますが、この曲なんかではそれが魅力的に感じられます。これがアウアー派の豊潤さにまでなると行き過ぎに感じてしまいますけれども。モノラル末期の録音はヴァイオリンの音がとても美しく捉えられています。

636 ヘンリク・シェリング(Vn)、アルトゥール・ルービンシュタイン(P)(1958年録音/RCA盤) ベートーヴェンの曲でシェリングを外すわけには行きません。素晴らしい演奏です。但しこの曲には大ヴァイオリニストと大ピアニストのコンビは少々立派過ぎる感が無きにしもあらずです。ケチの付けようが無いのが不満と言ったら贅沢ですか?僕としてはもっと緩くてのんびりできる演奏がいいなぁと思うのです。そのあたりは奥さんと一緒ですね。あんまりきっちりし過ぎて口うるさいよりも、多少ユルい方が心安らぐのですよ。といってあまりユル過ぎても困りますが。(笑)

225ダヴィド・オイストラフ(Vn)、レフ・オボーリン(P)(1962年録音/フィリップス盤) よく音楽評論家には推薦されますし、オイストラフの歌いまわしが大きいですし、表情が温かいのもこの曲に向いていそうです。オボーリンの音はさほど評判は良くないようですが、派手さの無い音は悪くありません。「荒い」と言う人も居ますが、そんなに荒くもないと思います。オイストラフのドイツものの演奏は概して楽天的に過ぎて余り好まないのですが、この曲は例外的に気に入っています。やはり曲の性格でしょう。

Beethocci00016 カール・ズスケ(Vn)、ワルター・オルベルツ(P)(1969年録音/シャルプラッテン盤) ドイツの名ヴァイオリニストで室内楽奏者のズスケは、かつてベルリン弦楽四重奏団(後にズスケSQに改名)の第1奏者時代に生で聴きました。僕がまだ20代の頃です。いかにも地味ですが美しい音でした。地味が滋味につながるとは正にこの事です。この録音も派手さの無いドイツ風の演奏ですが、それはかつてのブッシュ時代の古めかしい印象ではなくて、もっとずっとスタイリッシュです。良い演奏なのですが、ひとつだけ気になるのが、第1楽章でオルベルツのスフォルツァンドが強過ぎることです。これはマイナスポイントです。惜しい!

1198031330 ユーディ・メニューイン(Vn)、ヴィルヘルム・ケンプ(P)(1970年録音/グラモフォン盤) 実はメニューインという人は昔LPで聴いたフルトヴェングラーとのベートーヴェンの協奏曲がモノラルを擬似ステレオ化したもので、余りに音が酷かったので印象を悪くしてしまいました。それ以来ほとんど聴かなかったのですが、実は大変な名ヴァイオリニストだと気が付いたのが、この演奏でした。ゆったりとしたテンポで滋味深く奏でる演奏はかつて聴いたことの無いものです。この時メニューインは50代半ば、ケンプは70代ですが、まるで長年連れ添った仲睦まじい夫婦の見本のような雰囲気です。これは現実の夫婦では極めて稀なことなので憧れてしまいますよね~。(笑) 

ということで、僕が最も好きな演奏はメニューイン/ケンプ盤です。より若々しさを保った演奏としては、シュナイーダーハン/ケンプ盤(もしくはゼーマンとのステレオ再録音盤)とグリュミオー/ハスキル盤が良いですね。オイストラフも中々に良いです。

<補足>後からオイストラフ/オボーリン盤を追記しました。

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ベートーヴェン(室内楽)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、おはようございます。本当に天候不順な日が続きますね。こちらでは昨日は朝に雹(ひょう)が降りましたが、午後は快晴となりました。
さて、この曲に関しては、私は発売以来とても多くの人に聴かれて来たであろうオイストラフ、オボーリンのコンビによる演奏録音を最初に思い浮かべます。出だしからこの曲に相応しい春の息吹のような明るさを感じさせ、全く不安を覚えない安定感のある演奏に少し耳を傾けるだけで、希望、憂いといった心理描写が自然に聴きとれるように思います。ピアノがもう少し輝きのある音で録れていたら、と思わないではありませんが、ヴァイオリンの音はよく録れており、各フレーズをきちっと弾いている様子がよく分かり、録音にも恵まれた方だろうと思います。

投稿: HABABI | 2010年4月18日 (日) 07時01分

HABABIさん、おはようございます。

朝早くからのコメントをありがとうございます。
オイストラフ/オボーリン盤はシェリング/ルービンシュタイン盤と並ぶ昔からの定番でしょうね。今ならそれにクレーメル/アルゲリッチ盤あたりが加わるのでしょうか。
但し、オイストラフ/オボーリンは残念ながら持っていません。理由は特に無いのですが、協奏曲の演奏が好みに合わなかったからかもしれません。機会有れば是非聴いてみないとならないですね。ありがとうございます。

投稿: ハルくん | 2010年4月18日 (日) 07時27分

こんにちは。雪の夜、私も東京にいました。九州を発つときから予報は聞いていたのですが、真冬の寒さにはやっぱり驚きました。もう中旬ですのにね。

今回は(も?)昔懐かしいディスクをたくさん挙げてくださいましたね。自分で聴いていない盤を挙げるのはいけませんが、ツィンマーマン+ロンクィッヒなんかも聴いてみたくなりました。さぞかし良い演奏をしているのではないでしょうか?

この曲は「Violinオブリガート付きPfソナタ」と書かれているだけあって、ピアニストの色で演奏が左右されやすいような気もします。

投稿: かげっち | 2010年4月19日 (月) 12時28分

かげっちさん、こんばんは。

あの雪の夜は東京でしたか。それは大変でした。でもようやく春の気候が戻ってきて嬉しいです。もう冬は御免ですね。

ベートーヴェンは「ヴァイオリン・オブリガート付きピアノソナタ」と付けましたし、事実ピアノパートも重要ですが、個人的には『ピアノが主体』という意見には反対です。五分五分か、あるいはヴァイオリン主体が望ましいと感じます。

投稿: ハルくん | 2010年4月19日 (月) 22時46分

ハルくんさん、こんにちは。

「ヴァイオリン・オブリガート付きピアノソナタ」という表題は出版の都合上つけたのでしょうか?実体は、Vnは添え物どころではないのですけどね。

「ピアニストの色で演奏が左右されやすい」と書いてしまいましたが、音楽上の重みのことではありませんでした。あいかわらず説明不十分なかげっちです。

ヴァイオリニストがこの曲を弾く時には、むろん自分の思いがあって選ぶ曲なのでしょうが、ピアニストが喜びをもってつきあってくれるとは限りません。こういうシンプルなパートを無造作に弾くと演奏全体がヴァイオリニストの意図とちがったものになってしまうこともあります。ライブで聴く時にときどき、このピアニストは何を考えているのかな?と疑問に思うことがあります。「伴奏者の発言」という本を書いた人もいましたね。

投稿: かげっち | 2010年4月20日 (火) 12時32分

かげっちさん、こんにちは。

テクニカルな面はさて置き、共演者同士の解釈とか演奏スタイルのバランスは難しいですよね。スタイルは同じでも演奏に緊張感が欠けてつまらない場合も有りますし、違うスタイル同士が競り合って逆に面白い場合も有ります。だからこそ演奏は面白いのでしょう。
「男」と「女」の間と一緒ですよ。(笑)

投稿: ハルくん | 2010年4月20日 (火) 16時54分

↑う~む、最後に含蓄のある一言が・・・その「間」が難しいことだけはわかりますが、まだハルくんさんのように面白さを味わう域にはtyphoon

投稿: かげっち | 2010年4月21日 (水) 12時33分

今日は、とても暖かくて良い日でした。
この曲のおかげでしょうか(笑)

ハルくんさんの解説のおかげで、
この曲ぜひとも聴きたくなりました。

そして、数々の名盤が並んでます。
どれも欲しい(笑)

とりあえずメモして、在ったのから
買ってきましょう。

投稿: 四季歩 | 2010年4月21日 (水) 19時40分

四季歩さん、こんにちは。

いやー昨日は春を通り越して、まるで初夏のような気候でしたね。と思ったら今日はまた寒そうですし。いったいどうなってるのでしょうねぇ。

「スプリング・ソナタ」は本当に良い曲ですので、どの演奏からでも是非お聴きになられてみてください!

投稿: ハルくん | 2010年4月22日 (木) 07時21分

お久しぶりでございます。
今年は春のようで春でない本当に春らしくない春ですがーーー、また、今日も寒いです。
ここで少し復活しましたです。。。

今現在の時点の話ですが、
私はやっぱりグリュミオー・ハスキルが好きですかね。
オイストラフ・オボーリンはしつこく聴き過ぎたせいか、少々食傷気味です。
クレーメル・アルゲリッチはなんつーか、この間ちょっと聴いてゲゲゲの女房って意味不明ですが。。。(笑)
なんかクレメールがどーのこーのというより、私はホントにアルゲリッチと合わないんだと思います。この盤を再聴した際にはっきりそれがわかりました。
どーしてここでペダルを踏むかなーーー。
と弾けもしないくせにエラそうなはるりんですがね。


投稿: はるりん | 2010年4月22日 (木) 08時53分

はるりんさん、こんにちは。
今日もまた冬のように寒い天候ですね。
早く本当の春らしくなってほしいものです。

グリュミオー&ハスキルは本当に美しい演奏でいいですよね。
クレーメル&アルゲリッチは「クロイツェル」のCDが余り気に入らずに手放してしまったこともあり、この曲は聴いていません。僕も同じようにアルゲリッチのピアノが好みと合わなかったです。シューマンやショパンはいい演奏が結構有るのですがね。もしかしたら彼女はベートーヴェンを弾くには『煩悩』(よく言えば有り余る表現意欲?)が有り過ぎるのかもしれません。

投稿: ハルくん | 2010年4月23日 (金) 07時08分

オイストラフのベートーヴェン、クリュイタンスとの協奏曲、オボーリンとのクロイツェル&春、共にLPで所持しています。
曲想故か、この人の暖かい音色と節回しで、曲の魅力を漫喫できます。御指摘の通り、クロイツェルは切迫感が乏しいうらみがございますが…。
この人のドイツ物では、クレンペラーとのブラームスも協奏曲の醍醐味を味わえる異色の顔合わせとして、好んでおります。これは、モーツァルトのVn&Vlaの為の協奏交響曲を併録の、EMI・studioplusシリーズのCDですね。

投稿: リゴレットさん | 2018年3月26日 (月) 09時54分

リゴレットさん

オイストラフはもちろん大変素晴らしいヴァイオリニストなのですが、ことドイツものを弾くと楽天的な傾向が表に出て、曲や演奏を選んでしまいます。
ブラームスの協奏曲もむしろセルとのEMI盤の方が好きです。

投稿: ハルくん | 2018年3月26日 (月) 11時17分

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