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2010年2月28日 (日)

ショパン ピアノソナタ第2番変ロ短調op.35「葬送」 名盤 ~祝・生誕200年~ 

Chopin001 今年はピアノの詩人フレデリック・ショパンの生誕200年のアニバーサリーイヤーですね。そして明日3月1日が彼の誕生日です。僕ももちろんショパンは好きですが、それほど頻繁に聴いているわけではありません。彼の作品の中でよく聴く曲と言えば、小林麻美の「雨音はショパンの調べ」 あっ、これは違いました。(笑) いやいや、そうではなくて、ピアノ協奏曲、エチュード集、プレリュード集とかなのですが、最も好きな曲を上げろと言われれば、たぶんピアノ・ソナタ、それも第2番「葬送ソナタ」だと思います。この曲の特に第1楽章がたまらなく好きなのですね。ゆっくりとどこまでも高く魂が飛翔してゆくような中間部にさしかかると、ホントに逝ってしまいそうになります。(それじゃマズイですけれどね~)(笑) もちろん第3楽章の葬送行進曲も好きです。何度も何度も聴いているせいか、ことさらに葬式の音楽だとは感じないですが、この楽章にもやはり魂の飛翔を感じます。中間部の静かな叙情も素晴らしいですね。やはりこの曲は掛け値なしの名曲だと思います。

この曲には好きな演奏が幾つも有りますので、ご紹介しておきます。誕生日に葬送ソナタというのも何ですがまあいいでしょう。

41lnhodiz0l__ss500_ アルトゥール・ルービンシュタイン(1961年録音/RCA盤) 同じ祖国ポーランド出身の大巨匠ルービンシュタインのショパンは素晴らしいのですが、この人はスタジオ録音の場合にはどうもサロン的に軽く(気楽に)弾き過ぎる傾向が有ります。それでも構わない曲目も多く有りますが、ソナタのような重厚な曲はやはりもう少し気合を入れて弾いてもらいたかったです。これがもしもライブ演奏であれば、ずっと真剣勝負の演奏を聴くことが出来たことと思います。

41ecwmpllxl__ss400_ ウラディミール・ホロヴィッツ(1962年録音/CBS盤) 高校生の時に始めて買ったレコード(もちろんアナログLP)でした。これはホロヴィッツがステージ活動を一切行わなかった12年間の間の録音です。この人の音をいつも聴いて思うのは、本来の「ピアノ」の音を感じるのです。現代のピアノ録音がなんだか電子ピアノのような綺麗さを感じるのとはやはり違うのです。この演奏も精神の強靭さを感じる1楽章が大好きです。2楽章の機関銃のような弾きぶりは圧巻です。そして3楽章葬送行進曲での限りない精神の深さと中間部の静寂の美しさの対比は得も言われぬ見事さです。うーん、ホロヴィッツ!

51ukeut7bpl アルトゥーロ・べネディッティ・ミケランジェリ(1967年録音/DIAPASON盤) イタリアのフェレンツエ近郊の町プラトで行われたコンサートの記録です。録音状態は万全ではありませんが、ピアノの音に芯が有るので充分鑑賞できます。僕はこの人は好きです。何しろ名前が良いですよ。いかにも芸術家という名前じゃないですか。その上、顔つきもいかにもですし。実際のピアノも音色といい、テクニック、気品、全てにおいて最も「芸術家」という呼び方に相応しいと思います。それは「機械的に」上手い若手の遠く及ばない境地だと思います。

996 アルトゥーロ・べネディッティ・ミケランジェリ(1973年録音/TOKYO FM盤) ミケランジェリが日本に来て東京文化会館で行ったリサイタルの完全ライブ録音です。大学生のときにFM放送を録音して何度も聴いたものです。この人は葬送ソナタのスタジオ録音を行っていませんので、保存状態の良いライブ録音がこうして聴けるのは実に幸せです。よく言われるように、この人のピアノの音色は他の誰とも違う美しさです。力強く、輝きを放つ音そのものが独特の存在感を示しています。表現も余裕が有り、いつもながら高貴さを一杯に湛えて実に素晴らしいです。

51o5s6arc1l__ss500_マルタ・アルゲリッチ(1975年録音/グラモフォン盤) 個人的にはこの人の演奏は70年代が一番好きです。60年代は若さの勢いが魅力的ですが音楽が未消化気味。80年代以降はだんだん恣意的な演奏になって、こざかしさを感じてしまうからです。元々出来不出来にムラの多い人だとは思いますが、この葬送ソナタは70年代の彼女としては普通の出来だと思います。特に3楽章葬送行進曲がいまひとつ感銘度合いに欠けているのが残念です。

382 ウラディミール・アシュケナージ(1976年録音/DECCA盤) アシュケナージのピアノの音は実に美しいです。なんだか電子楽器のように聞こえます。まあそれは良いとしても、この演奏はまるで深刻さの無いあっけらかんとした演奏です。1楽章を飄々と快速に飛ばして行くところなどは、余りに脳天気に感じます。この曲をこんなに楽しく弾かれると唖然とします。2楽章もスピードを競うスポーツのような弾きぶりにまたも唖然。葬送行進曲は実に堂々とした演奏ですが、うーん、この曲をここまで立派に弾かれてもねえ・・・。こういう求道精神の無い弾き方をしていたら飽きてしまって指揮者に転向したくなるのはよく分かります。

Chopin61fpgvjzml_sx355_ イーヴォ・ポゴレリチ(1981年録音/グラモフォン盤) ショパンコンクールに出場したときの審査員アルゲリッチが賞賛したようにポゴレリチは正に天才です。緩徐部分でのでゆったりと沈みこむような情感の深さは独特ですし、急速な楽章についても決して速さで押切るようなことはせずに、じっくりと聴かせます。強音のタッチは武骨なほどですが乱暴にはならず、一転して弱音では極めて繊細な美しさを引き出します。他の誰とも違うこの人だけの演奏に一度ハマると抜け出せなくなります。

51qthr2xf0l__ss500_ マウリツィオ・ポリーニ(1984年録音/グラモフォン盤) ポリーニのエチュード集は衝撃的でした。サロン的な甘さを一切取り払って芸術性一本で勝負という気迫を感じたものです。また、それを支える最高のテクニックが凄かったです。何人たりとも近づけない孤高の境地だったと思います。その後もプレリュード、ポロネーズなど色々と録音していますが、あのエチュードはとうとうポリーニ自身でも二度と到達出来ない「世界最高得点」になってしまったのではないでしょうか。この葬送ソナタは甘さの一切無い演奏ということでは個性的です。やはり孤高の素晴らしい演奏だと思います。

Chopin_kissin エフゲニ・キーシン(1998年録音/RCA盤) 神童キーシンの27歳の時の演奏です。キーシンの最近発売のCD5枚セットに収められています。とにかく音が綺麗です。和音が本当に美しい。ショパンの不健康な香りはありませんが、決して脳天気ということでは無く、ニュアンスの変化も感じさせます。けれども本当の白眉は3楽章です。遅いテンポで重く引きずるような足取りは、まるで皆で棺を担いで歩いでいるかのようです。これこそは葬送行進曲ではありませんか。中間部の静かな詩情もとても美しいです。そして最後は葬列が少しづつ遠くへ去って行きます。非常にユニークな名演奏だと思います。

以上の中で僕のベスト3を選ぶとすれば、第1位ホロヴィッツ、第2位ミケランジェリ東京ライブ、第3位にはポゴレリチとポリーニ、それに次点にキーシン、というところです。さて皆さんのお気に入りは?

<後日記事>
ショパン ピアノソナタ第2番「葬送」 続・名盤
カティア・ブニアティシヴィリのショパンアルバム

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ショパン(器楽曲)」カテゴリの記事

コメント

すごいですね。
そうそうたるピアニストが並んでます。

どれも欲しくなっちゃいますね。

まだショパンにまで、手がまわりませんが、
やはりアニバーサリーイヤーで
騒がれると、気になって仕方ないです(笑)

投稿: 四季歩 | 2010年2月28日 (日) 20時26分

四季歩さん、こんにちは。

ショパンも作品の数が多いので、主要な曲を聴いてゆくのも結構時間がかかりますからね。例えばルービンシュタインなんかの格安の全集を手に入れて、曲を順に聴いてゆくのも良い方法だとは思います。まあ気長に楽しんで下さい。

投稿: ハルくん | 2010年2月28日 (日) 22時36分

昨日のお返事あるかなと開いたら、お返事プラスショパン…止めてあのショパン~と、思わず歌いたくなってしまいました(実はカラオケ十八番)小林麻美…田辺昭知の奥様。エチケットライオンの歯磨きのCMが可愛かった。ドラマデビューは美人はいかが?主人公のライバル役…これじゃまるでTV探偵団ですね。でも彼女の事はよく覚えているんですよ。綺麗なお姉さんだったから。
横道に逸れてしまいました。ショパンソナタ2番はマレイ・ペライア演奏のものを持っているんですが、実はコンチェルト2番と間違えて買ってしまったんです。マレイ・ペライアという名前も、それまで知らず、何とかコンクールにアメリカ人で初めて優勝。指揮者でもある…なら、そこそこの演奏だろうし\1500ならリーズナブルなどと深い考えもなしに購入した訳です。聞いてありゃ~間違えたと思いつつ、意外に良いじゃないの!以後、何回聞いたかな?多分両手に余るくらいですかねショパンの名手と呼ばれる人があまたいる中、とにかく凄いと思ったのは中村紘子さん。演奏も素敵だったけど美貌にうっとりしたのは仲道郁代さん。ブーニン様にはそれほど感激しなかったのは何故だろう。日本海側の田舎にわざわざお越し下さったのに。勿論、素晴らしい演奏だったのですよ。 ただ、この人は特別だわ!と言う感じはなかったです。どうも私は美しい女性の方がいってしまう(目が)みたいです。佐藤しのぶさんのリサイタルの時も、しのぶさんの歌声の他に、美しさと胸の谷間にクラクラ来ましたから。脈絡ない戯れ言、今宵はこの辺で失礼しますm(_ _)m

投稿: From Seiko | 2010年2月28日 (日) 22時51分

Seikoさん、こんばんは。
いつもコメントありがとうございます。

小林麻美は高校の友人で彼女のファンが居ました。その後に「~ショパン」がヒットして驚いたものです。

ペライアさんはとっても綺麗な音のピアノを弾きますね。残念ながらショパンは聴いたことがありませんけれど。
中村紘子さんを見直したのはロシアの交響楽団の伴奏で弾いたチャイコフスキーとラフマニノフの協奏曲のCDです。以前ブログで愛聴盤として紹介したことが有ります。
仲道郁代さん、美人ですよね。妹の裕子さんもやはり美人ですし。いや僕なんぞは当然、美しさと胸の谷間にクラクラしたらとても演奏をまともに聴いていられないと思います。(笑)

投稿: ハルくん | 2010年2月28日 (日) 23時23分

◇ハルくんさん
ショパンとシューマンが同年生まれというのは、少し意外でした。ピアノピアノした曲はあまり聴かないのでショパンも進んで聴くことは稀ですが、誰にも真似できない叙情性はすごいです。

◇Seikoさん
ペライアが若い頃に、ボストン響のクラの首席(ハロルド・ライト)とヴィオラの首席(ボリス・クロイト)に共演したライブレコードがあります(今では入手困難か?)。この編成の曲はMozart、Schuman、Bruchくらいしかないので、当然そういうプログラムでした。これを学生時代に聴いて、室内楽伴奏のピアノのお手本だと思いました。

投稿: かげっち | 2010年3月 1日 (月) 12時50分

↑訂正追加
クロイトはブダペストSQでした。レコードはこれです。
http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Entry/354/

投稿: かげっち | 2010年3月 1日 (月) 12時55分

こんばんは。ショパンの「葬送」ここに挙がっているミケランジェリ2種以外は手元にあります。後、カツァリス、マガロフなんかがショパンの特性を生かした垢抜けたサウンドですね。カツァリスは切れたサウンドでマガロフは抒情たっぷり。日本ではヤマハ、カワイが一般的ですが、レコーディング、コンサート用ではスタインウェイが使われることが多い。ピアノの音がよく響きますからね。一番古い録音がコルトー。モノラルですが、ハートフルで味わいのあるスタイルとなっています。

投稿: eyes_1975 | 2010年3月 1日 (月) 19時54分

かげっちさん、たくさんコメントありがとうございます。

ショパンの曲はピアノピアノした曲ばかりでは無いですね。一つの曲でもそういう部分と叙情性に溢れた部分が実に上手く入り組んでいます。これはやはり天才以外の何者でない所業だと思います。

投稿: ハルくん | 2010年3月 1日 (月) 23時07分

eyes_1975さん、こんにちは。

ニキタ・マガロフは好きなピアニストです。ソナタは未聴ですが、エチュード集は中々のものでした。
コルトーもソナタは聴いていませんが、LPで(SPではありません!)聴いていたワルツ集が絶品で大好きでした。

投稿: ハルくん | 2010年3月 1日 (月) 23時15分

こんにちは。

昨日、ホロヴィッツ初期盤を探しに中古屋へ行くと新入荷棚の先頭に!。ツキ過ぎてて怖い位でした。

大漁の予感どおり他店もパトロールして貴Blog紹介モノを多数入手。

>現代のピアノ録音がなんだか電子ピアノのような綺麗さを感じるのとはやはり違う

全く同感です。
「葬送」以外も、苦手な打鍵の強い演奏でナイし、夜の愛聴盤に。

投稿: source man | 2010年3月28日 (日) 18時30分

source manさん、こんばんは。

ホロヴィッツ初期盤をGETされましたか。ラッキーでしたね。本当に素晴らしい音と演奏だと思います。

拙ブログでご紹介したものを多数購入されたとのこと。大変光栄な限りです。きっとsource manさんの演奏と音の好みが自分と似通っているのでしょうね。是非それぞれのご感想をお聞かせください。

投稿: ハルくん | 2010年3月28日 (日) 21時53分

はじめまして。
ショパン生誕200年のお話をなさってらしたので、コメントさせて頂きました。

ショパン生誕200年を記念し、恵比寿ガーデンプレイス内の東京都写真美術館において、ショパンの半生を描いた映画「別れの曲」が上映されることとなりました。
この映画は、エチュード第3番が「別れの曲」と呼ばれる由来となった伝説の名画です。

ご興味ございましたら、公式ホームページがございますので、ご覧頂ければと思います。
http://www.tk-telefilm.co.jp/chopin

期間 2010年4月29日(木・祝)~5月16日(日) ※5月10日(月)は休映

お問合せ先:東京都写真美術館 Tel:03-3280-0099

投稿: T&Kテレフィルム | 2010年4月15日 (木) 10時47分

T&Kテレフィルム殿

映画宣伝の為のコメントとお見受けしましたが、音楽ファンにとっては有意義な情報と考えますのでこのまま公開を続けておきます。

投稿: ハルくん | 2010年4月16日 (金) 02時30分

ハルさんこんにちは。
ここを開いて見ていなかったので今更になってすいません。似たようなことを以前にも書いてしまいましたが、ポリーニ(しつこくすいません)のショパン・エチュードについてはハルさんのおっしゃる通りです。家内は、大学受験にの時、このレコード聴いて「私はにはこうは弾けない(比べるのが無謀)」と思ったとか。カミサンの中では、ポリーニが、一種ピアノの神様になってしまったそうです。いろいろな個性を持った素晴らしいピアニストは世の中にたくさんおります。その中で、ポリーニもその一人ではないかと私は思っています。
お邪魔してすいませんでした。

投稿: sasa yo | 2011年1月11日 (火) 11時31分

sasa yoさん、こんばんは。

大学時代にピアノを弾く友人が居ましたが、ポリーニのエチュードには大絶賛でした。
当時の透徹ともいえるポリーニの演奏と曲集の性格が見事にマッチしたからこそ、この名演が生まれたのだと思います。ですので他の演奏家は全く別のアプローチを行うしか有りませんよね。もっともポリーニ本人でも今はこんな演奏は出来ないんじゃないでしょうか。

投稿: ハルくん | 2011年1月11日 (火) 22時22分

私は、サンソン・フランソワの演奏が好き!

投稿: unknown | 2013年1月29日 (火) 22時12分

unknownさん、

フランソワも素晴らしいピアニストですよね。
特にドビュッシーとかラヴェルのようなフランスものが大好きです。

投稿: ハルくん | 2013年1月29日 (火) 22時28分

こんばんは。

辛い事が続き、オーケストラ曲を聴く気になれず
本当に久しぶりにこの曲を聴きました。
シプリアン・カツァリスのソニー盤です。
全体的にかなりテンポの緩急が激しいですが
第3楽章はしっとりと歌いあげていて胸を打たれました。
中間部の夢見るような儚さがたまりません。

ショパンは辛い時に聴くべきなのかもしれません。

投稿: 影の王子 | 2016年2月11日 (木) 19時59分

影の王子さん、こんにちは。

ショパンもやはり良いですよね。
音楽に常に顔を出す陰りと情緒にとても惹きつけられます。確かにつらい時に傍らに寄り添ってくれるような優しさを感じますね。
葬送ソナタは大好きな曲ですが、カツァリスのCDは持っていません。彼はNHKで放送されたレクチャー番組が懐かしいですね。
CDも改めて聴いてみたくなりました。どうもありがとうございます。

投稿: ハルくん | 2016年2月12日 (金) 12時57分

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