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2009年12月19日 (土)

ブルックナー 交響曲第2番ハ短調 名盤

200_2 曲の完成順で言えば、「第1番」、「第0番」、「第2番」の3曲がブルックナーの初期の交響曲です。後期の作品のあの深遠な世界に魅入られてファンになった(入信した?)人達にとっては初期の作品もまた大変味わい深い作品群です。これらを聴いて初めてブルックナー鑑賞の最終段階と言えるでしょう。ですが逆に初期作品から聴き始めると音楽の持つ魅力を理解する前に退屈してしまう恐れがあります。ですのでこれからブルックナーを聴いてみようかと思われる方には、中後期の「7番」辺りから聴き始めて「3番」「4番」「5番」「8番」「9番」と順に制覇して頂くことをお薦めします。

初期の3曲の中では、やはり最後の「第2番」の出来栄えが優れています。中には中期の「第3番」「第4番」よりも好む方もいらっしゃるのでは無いでしょうか。第1楽章モデラートは、さながら心を弾ませてアルプスの野山を散策しているような雰囲気です。遠くの雄大な山々を眺めてみたり、足元に咲く花々に目を留めたり、爽やかな空気を吸ったりと、大自然の美しさを満喫できます。第2楽章アンダンテも同様なのですが、もっとゆったりとした曲想でずっと瞑想的です。第3楽章スケルツオは、いかにも初期のブルックナー的な野趣に溢れたとても楽しい曲です。そして第4楽章フィナーレは非常に印象的な、心が沸き立つような曲です。この楽章だけは初めて聴く方でも即座に魅了されることでしょう。

それでは、僕の愛聴盤をご紹介します。後期の曲に比べると普段聴く回数がずっと少ないので所有するCDは限られています。

Bru_yoh02 オイゲン・ヨッフム指揮バイエルン放送響(1968年録音/グラモフォン盤) ヨッフムの一度目の全集はベルリン・フィルとバイエルン放送響とを曲によって振り分けていますが、音の傾向からするとバイエルン放送響のほうがブルックナーには適していると思います。オーストリアに最も近く、アルプス山脈の麓と言っても良いミュンヘンの楽団は昔からブルックナーが得意です。恐らくはドイツの国の中でもオーストリアと気質が似ているのと、素朴で明るい音が適しているのだと思います。この演奏はそんな特色が生かされた素晴らしい演奏です。曲の隅々までデリカシーに溢れて美しいですし、3、4楽章の切れの良さも最高です。現在は分売もされているので、これ1枚でこの曲を楽しむのにも何ら不足は有りません。

Bru_holst ホルスト・シュタイン指揮ウイーン・フィル(1973年録音/DECCA盤) シュタインはわが国のN響を何度も指揮しましたのでオールドファンには良く知られるドイツ正統派ですが、僕はこれまで特別感動した演奏を聴いたことが有りません。全て中の中レベルどまりでした。とは言え、この演奏はウイーン・フィルを指揮したブルックナーなので期待は高まります。ところが第1楽章は早めのテンポにどうも忙しなさを感じてしまいますし、響きも少々うるさい感じです。第2楽章はさすがにウイーン・フィルで美しいですが、第3、第4楽章になると切れの良い力演であるものの、やはり全体的にうるささを感じます。なお、この演奏はハース版ですが、ノヴァーク原典版の方が良いと思います。

Cci00007 オイゲン・ヨッフム指揮ドレスデン歌劇場管(1980年録音/EMI盤) ヨッフム二度目の全集への録音ですが、バイエルン放送盤の名演をも更に上回る最高の出来栄えです。基本的な表現は同じですし、どちらのオケも魅力的なので1、2楽章では甲乙が付け難いですが、3楽章は新盤の方が幾分遅いテンポでスケールの大きいことがプラスです。後期の曲的な演奏と言えるでしょう。逆に終楽章ではテンポを速めて緊迫感が増していて、思わず惹きこまれます。これはブルックナーの指定の"速く"を徹底した結果です。僕はこの演奏を第2番のベスト盤にしたいのですが、現在出ている海外EMI盤のBoxセットはArtリマスターであり、高音が強調されているためにドレスデンの音らしからぬ響きに聞こえます。そこで旧盤(オランダ盤)に買い換えたところ、中低域の音がずっと厚くなり、本来のドレスデンらしい音になって非常に満足しています。

Bru_scro02 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー指揮ザールブリュッケン放送響(1999年録音/ARTE NOVA盤) スクロヴァチェフスキーの演奏も非常に魅力的です。この人のブルックナーの中でも特に優れた1枚ではないでしょうか。スタイルとしてはヨッフムの旧盤に似ています。1、2楽章はとても美しいですし、スケルツォや終楽章の切れの良さもヨッフムに比べても遜色が有りません。ザールブリュッケン放送響も中々に優れたオケですし、音色に素朴さを失わないのがプラスです。これは廉価盤ですが録音も優秀ですし、このCDだけでも曲の魅力を充分に味わうことが出来ると思います。

<記事追記>

Bru034 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウイーン響(1974年録音/TESTAMENT盤) ブログお友達のたろうさんの愛聴盤ということでとても興味が有り、たまたま中古店で見つけたので購入してみました。後年のジュリーニの遅いテンポで粘りつくような演奏とはだいぶ異なります。非常に良く歌う演奏ですが、もたれることは有りません。ウイーン響の音もとても美しく、トゥッティでうるさくならないのも良いです。流麗なカンタービレは正にジュリーニ調ですが、明るい表情がややイタリア的?に感じられる気もします。3、4楽章はスケールは非常に大きいですが、音楽の厳しさという点ではやはりヨッフムのほうが優る印象です。全体的にとても美しく良い演奏だと思いますが、僕の好みでいえばやはりヨッフム/ドレスデン盤がベストです。

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ブルックナー(交響曲第0番~3番)」カテゴリの記事

コメント

今日、ブルックナーの交響曲7番を買いました。

最近発売された、カルロ・マリア・ジュリーニ/ベルリンフィルのものです。

ブルックナー交響曲はロマンティックから入ったのですが、7番のほうが今のところ好きです。冬になると、ブルックナー、一層胸にしみるような気がします。

投稿: tkhs | 2009年12月20日 (日) 22時57分

tkhsさま、こんにちは。
コメントありがとうございました。

ジュリーニ/ベルリンフィルの新盤とはライヴの演奏ですよね。僕は未だ聴いていません。

「7番」は僕もとても好きな曲です。やはり「ロマンティック」よりも聴き応えはずっと増していると思います。仰られる通り、ブルックナーでも後期の曲は秋冬にふさわしいかもしれませんね。

投稿: ハルくん | 2009年12月20日 (日) 23時41分

「2番」は、初期交響曲群の中でも一番好きな曲で、初めてこの曲と出会ったCDが好きな演奏の1つです。

そのCDとは、ジュリーニ指揮ウィーン交響楽団(EMI)です。ジュリーニ指揮のブルックナーの演奏は、全て好きなわけではないのですが、この曲では彼の特徴が良い方向に活かされていると思います。

何といっても第1楽章の冒頭の主題の歌わせ方から曲にマッチしていて、途端にブルックナーの世界へ導いてくれます。このCDに出会わなかったら、この曲を頻繁に聴く機会はあまりなかったかもしれません。

他には、ハルさんも挙げられているヨッフム指揮シュターツカペレ・ドレスデンが素敵な演奏ですね。

それとティントナー指揮アイルランド国立響によるキャラガン校訂1872年版も版への興味もあって、なかなか良い演奏です。

ヴァント指揮ケルン放送響は、きっちりした演奏で、立派かもしれませんが、素朴さに欠けてあまり楽しめません。

私はやはりジュリーニ指揮ウィーン響がベストCDです。

投稿: たろう | 2009年12月23日 (水) 12時42分

たろうさん、こんばんは。

「2番」にはジュリーニ/ウィーン響って有りましたね。ノーマークで未聴でした。
ジュリーニはおっしゃられる通り時々アッと驚く良い演奏をしますよね。それが結構想定外なものなのでCDを買い難いのですが、これは機会有れば是非聴いてみたいです。ご紹介有り難うございました。

投稿: ハルくん | 2009年12月24日 (木) 00時00分

私が第2番の魅力を知ったのはオイゲン・ヨッフム指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団の録音でした。また、このドレスデンのオケの多くの録音の中でも最上位の演奏だと思います。
しかし一つだけ不満があるとしたら、この録音での演奏がノヴァーク版だという点です。
私はやはり第2楽章の最後はハース版のホルンで聴きたかった。ノヴァーク版でのクラリネットは何か物足りなさを感じてしまいます。ペーター・ダムのホルンで聴いてみたかったものです。あくまでも、これは個人の好みですが・・・
その中でスクロヴァチェフスキーの録音は1877年ブルックナー自身が改訂した第2稿による演奏で、ハース版は、この1877年版を基にしているだけに第2楽章の最後でホルンの音色を聴いた時、本当に嬉しく思ったものです。

投稿: オペラファン | 2009年12月24日 (木) 11時03分

オペラファンさん、こんばんは。
トラックバックも頂きありがとうございます。

さすがにお好きなブルックナーにはこだわりをお持ちですね。
僕は大まかな性格からか、版は余り気にならないのです。全体の響きやテンポ、フレージングが良ければそれでOKという感じです。
ご指摘の部分は確かにホルンが吹いた方がベターだと思いますが、ハース版は余計な部分が多いように感じるので、全体としてはノヴァーク版のほうを好んでいます。
ですが、スクロヴァチェフスキー盤のホルンは聴き応え有りますね。Hシュタイン盤もハース版なのでウイーンフィルの美しいホルンを聴くことが出来ます。

投稿: ハルくん | 2009年12月24日 (木) 22時40分

こんにちは。

続けてコメントさせていただきます。

2番は基本はジュリーニです。確かに歌い過ぎてブルックナーにしては厳しさが足りない気はしますが、あの美しさは比類なきものがあります。続いてヨッフム両盤、ヴァントですかね。シュタインは6番よりは好きですが、呼吸が浅いのが残念です。でもウィーンフィルのブルックナーが聴きたくなったら、この盤を聴きます。

投稿: dokuoh | 2010年1月 9日 (土) 11時53分

dokuohさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

ジュリーニ盤については記事に書いたとおり、流麗さに傾き過ぎているように感じます。個人的にはやはりヨッフム、特にドレスデン盤の厳しさに大いに惹かれます。しかしこれは全く好みの問題ですね。

シュタイン盤は呼吸が浅いのに加えて金管にうるささを感じてしまいます。せっかくウイーンフィルを指揮しているのにこれはとても残念なことです。

投稿: ハルくん | 2010年1月 9日 (土) 23時43分

ハルくん様
シュタイン&VPOの第2,6番、Deccaが自社の目玉オケによりブルックナーの交響曲全集を揃えるにあたり、大家やスター指揮者が手掛けるのを渋りがちなこの作品の指揮を、カタログの穴埋め的に、任されてしまったのでしょうか。いわば頼まれ仕事的にですね。それで、あまり気乗りのしない演奏ぶりに、なってしまったとか…?

投稿: リゴレットさん | 2018年4月 2日 (月) 15時03分

リゴレットさん

Hシュタインは手堅い仕事が多いのですがホームランってのが無い人ですね。しいて言えばFグルダのベートーヴェンのピアノ協奏曲全集あたりでの指揮は中々良いと思います。

投稿: ハルくん | 2018年4月 3日 (火) 15時04分

ハルくん様
'89年頃に、バンベルク交響楽団を振ってEurodiscに、ベートーヴェンの英雄、ブルックナーの第4、シューベルト交響曲全集がリリースされていたのですが、聞きそびれて、残念に思っております。
不幸にして、シュタインさんも録音にその良さが入りにくいカテゴリーの音楽家かも知れませんし、実力に比してレコーディング運に恵まれなかった嫌いが、確かにございました。ワーグナー管弦楽曲集も、東芝がやっていたイースト・ワールドなるレーベルに、NHK交響楽団を振って入れていらっしゃったくらいですから(笑)。
その他VPOのDecca盤、先程申し上げたバンベルク交響楽団とのEurodisc盤が、市場に出ましたが…。

投稿: リゴレットさん | 2018年4月 4日 (水) 11時20分

リゴレットさん

シュタインさんなど、現在生きていれば大巨匠なのでしょうが、当時の層々たる指揮者の中に有っては流石にレコーディングへの出番は限られてしまったのでしょうね。

投稿: ハルくん | 2018年4月 6日 (金) 11時07分

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ブルックナー 交響曲第2番 ハ短調 第1楽章 かなり急速に 第2楽章 アダージョ 第3楽章 スケルツォ 第4楽章 フィナーレ ブルックナーの作品の中で最高傑作は?と聞かれたら迷わず8番と答えると思いますが、一番好きな作品は?と聞かれたら2番と答えるでしょう。初期のブルックナーの魅力満載である。この作品の魅力を知ったのはヨッフム指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団のレコードからである。(全集でなくこの曲のみのCDを発売して欲しいものである) 第1楽章、弦のさざなみに乗ってチェロが演奏する第1主題を聞く... [続きを読む]

受信: 2009年12月24日 (木) 10時42分

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