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2009年11月

2009年11月30日 (月)

ゲルギエフ/マリインスキー歌劇場管弦楽団 2009来日公演

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帝政ロシアの古都サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場が日本に訪れています。今回はコンサートとバレエ公演を兼ねた大規模なツアーです。マリインスキー劇場のバレエは3年前に「白鳥の湖」を観ましたが、世界一美しいと思えるコールドバレエは圧巻でした。ですのでバレエ公演にも大いに惹かれましたが、今回は財政的都合で「仕分け」となり(笑)、コンサートのほうに予算配分となりました。

ゲルギエフ/マリインスキーを聴くのはこれで3回目です。最初は10年前にストラヴィンスキーの「春の祭典」他、2度目がマーラーの「復活」でした。今回は東京ではサントリーホールで「オール・ロシアン・プログラム」として、ムソルグスキー、チャイコフスキー、ショスタコーヴィチ、ストラヴィンスキーという4人の大ロシア作曲家を一晩毎のコンサートで聞かせます。ストラヴィンスキーは一度聴いていますし、今回はチャイコフスキーが、序曲「1812年」、ピアノ協奏曲第1番、交響曲第4番という豪華プログラムでしたので、迷うことなくこれに決めました。

今日のチケットは随分前に完売していただけあって、サントリーホールの前には開場前から多くのお客が集まっていました。入場して席に着くと本当に満席でした。そして演奏開始を心待ちにしたのです。

オープニングの序曲「1812年」は非常に表情豊かな演奏でした。冒頭、弦が大きく歌うのにまず魅了されます。戦いのシーンの激しさも充分ですが、むしろ惹かれるのはロシアの民謡部分です。さすがは自国オケの演奏で雰囲気が満点でした。

続いて2曲目はピアノ協奏曲第1番です。独奏は中国の若手イケ面ピアニスト、ユンディ・リでしたが、彼は2000年のショパンコンクールの優勝者です。聴くのは初めてでしたが、非常に良いピアニストだと思いました。キーシンのように精密な訳でも無く、若きアルゲリッチのようにブリリアントな訳でもありません。ですが、とても陰影深く情緒に訴えかけるピアノを弾いてくれます。ゲルギエフのオケ伴奏と共に第1楽章の名旋律を遅いテンポでたっぷりと歌わせてくれたのには感動しました。また第3楽章の追い込みもなかなかのものでした。

メインの交響曲第4番は、マリインスキー劇場管で是非聴いてみたい曲でした。5番、6番はCDで聴くことが出来ますが(但し5番はHarvestの海賊盤)、4番はウイーンフィルとの録音だけだからです。その演奏は実に素晴らしかったです。こういうロシア風の曲想が多い曲はやはり自国のオケが最高だと感じるからです。ゲルギエフの指揮は非常にオーソドックスなもので、目新しさは有りませんが我々がこの曲に要求することを全て兼ね備えています。ですので聴き終わって「良いチャイコフスキーを聴いたなぁ」という満足感で一杯になりました。但しオーケストラの技量で言うと、今日のマリインスキーよりも昨年のサンクトペテルブルク・フィルのほうが上かなという印象でした。

アンコールは「眠りの森の美女」のワルツと「くるみ割り人形」からのトレパックの2曲です。これは楽しさという点で文句有りませんでした。

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2009年11月24日 (火)

ブルックナー 交響曲第1番ハ短調 名盤

335pxantonbruckner_2 アントン・ブルックナーはオーストリアのリンツにある聖フローリアン教会でオルガニストを勤めていました。敬虔なカトリック信者である彼は自らの作品を神様に捧げようとしたのです。このことだけでも彼が随分浮世離れした人物であったことが分ります。彼の作品の中心は交響曲と宗教曲ですが、一般に人気の有るのは何と言っても一連の交響曲作品です。よく彼の作品は「オルガン的」と言われますが、それは単に管弦楽の響きの方法論であって、決して音楽の本質では有りません。本質は、浮世(俗世間)を離れた、あたかも自然界や宇宙界、森羅万象の世界を想像させる、およそ他のいかなる作曲家とも異なる独自のものです。けれども、このような音楽というのは、自然や季節の移り変わりや"もののあはれ"を理解する日本人にとっては感覚的に案外受け入れ易いと思います。ですので日本には本国ドイツ、オーストリア以上にブルックナー・ファンが大勢居ます。数年前迄は朝比奈隆やギュンター・ヴァントというブルックナーを得意とする指揮者が現役でしたので、ブルックナー・ファン達も非常に賑やかでしたが、最近は少々沈静化してしまった感が有ります。巨匠の時代の終わりと共に、ブルックナー演奏の時代も区切りが付いてしまったとすれば大変残念な事です。

ブルックナーの交響曲には第1番から未完成で終わった9番迄の作品の他にも、第0番、習作の第00番が有ります。近年は全集盤に0番と00番が入るものも増えています。ところで僕はブルックナーは大好きですが、全ての交響曲を万遍無く聴いている訳でも有りません。愛聴していると言えるのは後期の大曲である5番、7番、8番、9番ぐらいです。次いでは3番、4番でしょうか。1番、2番、6番ももちろん好きですが、普段はほとんど聴きません。ところが熱烈なブルックナーファンは初期の0、1、2番も愛好しますし、8番、9番あたりの曲は、あらゆる録音を全て聴くという人も決して珍しくは有りません。事実自分の友人にも存在します。そういう意味では自分は熱烈なブルックナーファンでも無いかもしれません。

交響曲第1番は1868年にブルックナー自身の指揮で初演されました。マーラーの第1番の初演が1889年ですので、先んじること21年です。規律正しくいかにも独欧系の音楽という風情で進行する第1楽章アレグロ、オーストリアの美しい自然を想わせる第2楽章アダージョ、野趣に溢れた第3楽章スケルツオ、激しく高揚する第4楽章フィナーレと、いずれも魅力的です。ブルックナーファンにとっては無条件で楽しめます。しかしファン以外が聴いて楽しめるかというと果たしてどうでしょうか。正直よく分かりません。これからブルックナーを聴かれるという方は、まず先に3、4、5、7、8、9番を聴かれた後からでも遅くないと思います。

この曲は普段聴く事が無いので所有するCDの種類もごく限られてはいますが、ご紹介しておきます。

41kqn94kz0l__ss500_ オイゲン・ヨッフム指揮ベルリン・フィル(1965年録音/グラモフォン盤) ヨッフムもブルックナーを得意にしていた名指揮者です。特に晩年の幾つかのライブ録音はいずれも最上のブルックナーでした。この1番はグラモフォンでの最初の交響曲全集の中の録音で、宇野功芳先生が昔から絶賛している演奏です。ベルリン・フィルがフルトヴェングラー時代のドイツ的な音色をかろうじて残している時期の録音なので幸運でした。元々パワフルなオケが音楽を踏み外さずに、力強く、かつ美しく響かせているのはやはりヨッフムの実力だと思います。終楽章などは実に見事です。アダージョの美感やスケルツオの切れの良いリズム感などにも惚れ惚れします。

2059c48ea678dc0cfe8109975a4bb3591 オイゲン・ヨッフム指揮ドレスデン国立歌劇場管(1978年録音/EMI盤) グラモフォン盤に続いて二度目の全集の中の録音です。完全無欠のベルリン・フィル盤に対して、ドレスデン盤はどこか集中力にスキが有るような気がします。それはオケの持つ性格も有るのかもしれません。宇野先生などは明らかにベルリン盤の方が上と言われています。ところが人の好みというのは面白いもので、僕はむしろドレスデン盤に惹かれます。聴きようによってはややメカニカルな音に聞こえるベルリン・フィルよりも、音に素朴さが有るドレスデンの方が聴いていて心地よいのです。とは言え、どちらか片方を選んでも問題は有りませんし、両方を聴かれればもちろん更に良いと思います。

ヨッフム以外であれば、たぶんヴァントかスクロヴァチェフスキー辺りが無難なところではないでしょうか。但し僕は聴いていません。

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2009年11月19日 (木)

マーラー 交響曲第1番ニ長調(「巨人」) 名盤

Mah26803 マーラーが完成させた交響曲は全部で10曲です。第1番から第9番までと、8番の後に書かれた番号の付いていない「大地の歌」が有ります。どの曲も本当に愛すべき傑作ばかりですが、聴く回数が多いという点では、1番、2番、5番、6番、9番、大地の歌、ですね。その基準は自分でも良く分かりませんが、音楽的な内容とは必ずしも関係が無いような気がします。ということで、ここはやはり若きマーラーの記念すべき交響曲第1番からスタートしたいと思います。

この曲は初めは2部構成、全5楽章の交響詩として書かれました。それが第1稿です。その後それを改訂したのが第2稿で、その時に副題として「巨人(タイタン)」が付けられました。ですが最終的な第3稿では全4楽章構成として「交響曲第1番」とされました。削除されたのは元の第2楽章「花の章」です。それと合わせて副題の「巨人」も削除されました。

この交響曲は、併行して書かれていた歌曲「さすらう若人の歌」ととても密接な関係に有ります。第1楽章には歌曲の第2曲「朝の野辺を行けば」が使われています。心が浮き浮きするような実に爽やかなメロディです。何年か前にミュンヘンに行った時、早朝にイングリッシュガーデン(市の中心部に有るだだっ広い自然公園)を散歩したのですが、緑の草っ原や小川の脇を歩いていると、頭の中にこのメロディが流れっぱなしになりました。この楽章の中では、ある時は美しく、ある時は力強く壮大に鳴り響きます。僕は歌曲と共に大好きです。
第2楽章はスケルツォに相当しますが、ゆったりとしたとても楽しい楽章です。
第3楽章はコントラバスの独奏でユニークに始まる葬送行進曲です。ですが余り暗さはなく、懐かしい哀愁が漂っています。中間部にはやはり歌曲の第4曲「愛する人の青い2つの瞳が」が使われていますが、震えるほどに美しい音楽です。
第4楽章は「嵐のように」と指示が有り、激しく壮大な曲です。音楽が少々派手に過ぎて、こけおどし的にも感じられますが、何か若者の止むに止まれぬ情熱を耳にしているようなので許せてしまいます。終結部の前の静かなロマンも大変に魅力的です。なお、最近は「花の章」を2楽章に入れる録音が多く見受けられますが、僕はやはりマーラーの意図を尊重して除外すべきだと思っています。

ところで、もしも史上最高の「交響曲第1番」を選ぶとすれば誰の曲だと思いますか?ブラームス?やはり最有力でしょう。他にはブルックナー、シューマン、シベリウス、チャイコフスキーと秀作が色々と有りますが、僕はブラームスとマーラーが双璧だと思っています。番外としては番号無しのベルリオーズの「幻想交響曲」が有りますけれど。

それでは愛聴盤をご紹介させて頂きます。

Marcci00002 ブルーノ・ワルター指揮コロンビア響(1961年録音/CBS盤) 「巨人」(と敢えて呼びます)と言えばワルターと言われるほど有名な演奏です。ゆったりとしたテンポで旋律をたっぷりと歌い切っていて、心の底からこの曲を堪能させてくれます。かといって音楽がもたれるような事も決してありません。若い時代にマーラーから指揮者としての才能を高く評価されていたワルターの素晴らしさを改めて認識します。コロンビア響の実力は最上とは言いがたいのですが、実際に聞こえてくる物理的な音からはかけ離れた実に感動的な音楽が響きます。そういう点で、この演奏はワルターが同じオケで録音した「田園」のように正に神業としか言いようがありません。

105 レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル(1966年録音/CBS盤) バーンスタインは恐らく史上最高のマーラー指揮者でしょう。その彼が若い頃にCBSに録音した旧盤です。この曲の持つ「若い情熱のほとばしり」を最も端的に表現し切った演奏です。全楽章に渡ってテンポの緩急は大きく自由自在です。テンポアップする箇所では、なだれ込むような迫力を見せてバーンスタインの独壇場です。よく言われるように、オケのアンサンブルに甘い部分は有りますが、音楽の勢いの前には余り気にはなりません。バーンスタインは後年にもコンセルトへボウ管とこの曲を再録音しましたが、自分はニューヨーク・フィルとの旧盤のほうを好んでいます。

Mahcci00045 イーゴリ・マルケヴィッチ指揮フランス国立管(1967年録音/PECO盤) パリのシャンゼリゼ劇場でのライブ録音です。ストラヴィンスキーなどの近代音楽も得意にしていたマルケヴィッチのマーラー演奏を興味深く聴くことが出来ます。第1楽章はテンポがかなり早めで、もう少し歌って欲しい気がします。第2楽章も同様でせかせかし過ぎています。第3楽章では哀愁漂う鄙びた曲の雰囲気がよく出ています。第4楽章はマルケヴィッチに向いているのか、とても緊迫感の有る演奏です。録音は残響が少なめなのでオケの粗さが聞き取れてしまいますが、当時の標準には達しています。

Cd233 小澤征爾指揮ボストン響(1977年録音/グラモフォン盤) 小澤がまだ40代の初め、ボストン響の常任指揮者に就任した直後の録音です。当時はLPで購入して随分と愛聴しました。現在聴いても、若々しさに溢れて瑞々しく中々に良い演奏だと思います。終楽章のオケの壮麗な鳴りっぷりも実に見事です。ひたすら健康的な音楽であるのがいかにも小澤らしいですが、マーラーでも、この曲の場合にはさほどマイナスには成りません。CD化されてLPの時にはカットされていた「花の章」も追加されました。

Marcci00002bクラウス・テンシュテット指揮北ドイツ放送響(1977年録音/First Classic盤) 海賊盤ですが、マニアの間では同じ北ドイツ放送との「復活」と並んで有名な演奏です。衝撃度では「復活」に適いませんが、第1番の演奏としてはやはり群を抜いています。テンシュテットは疑いなく最も偉大なマーラー指揮者の一人ですが、どんなにスケールが大きくても晩年のバーンスタインほどには重く粘りません。その為に演奏に自然に引き込まれていき、最後には感動と共感で一杯に満たされます。北ドイツ放送はやや地味な音色ですが、テンシュテットに叩き込まれた細部にまで徹底的にこだわった表現を忠実に再現しています。第2、第3楽章もとても美しいですが、終楽章の壮大な盛り上がりとスケールの大きさは最高です。海賊盤ですが録音も大変優秀です。

4d7eda94486dc5df5d8531552ea8e633 ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1979年録音/audite盤) ミュンヘンのヘラクレスザールでのライブ録音です。クーベリックはグラモフォンにスタジオ録音の全集を残していますが、この人が本領を発揮するのはやはりライブですので、auditeがミュンヘンでのライブをCD化してくれたのはとても大きな喜びです。第1楽章は案外と落ち着いて進みますが、終結部の爆発力はさすがにクーベリックです。第2楽章はゆったりとしていてとても味が有ります。第3楽章は少々ピアニシモが弱過ぎて味が薄くなってしまいましたが、クーベリックの本領発揮は終楽章です。後半の壮大な盛り上がりが実に見事で感動的です。

Mahcci00045b ロリン・マゼール指揮ウイーン・フィル(1985年録音/CBS盤) 後期ロマン派の音楽を演奏した時のウイーン・フィルの魅力は絶大です。1950年代までのあの甘く柔らかい音は失われてしまいましたが、依然として魅力的な音なのには変わり有りません。第1楽章は弱音に傾き過ぎて幾らか旋律線が弱くなっています。けれどもゆったりとした第2楽章では本領発揮です。ところが第3楽章はまたしても弱音に傾き過ぎて楽しめません。終楽章ではようやくウイーン・フィルが全開ですが、決して冷静さを失うことは有りません。マゼールの表現は長短相半ばですが、ウイーン・フィルの美しい音は欠点を全てかき消してくれます。

894レナード・バーンスタイン指揮コンセルトへボウ管(1986年録音/グラモフォン盤) バーンスタインのCBS時代の旧盤は「若々しい情熱のほとばしり」を表現し切った名演でした。それから20年後のこの再録音ではスケールは巨大ですが、テンポが遅く、リズムも粘って重ったるく、表情がかなりくどくなり、およそ若者のイメージとはかけ離れてしまいました。しかしコンセルトへボウの上手さ、音の美しさ、響きの厚さは申し分ありませんし、このカロリーの高い演奏を日常的に聴くのはしんどいですが、気分が乗った時に心して聴くのには良いと思います。

4109010847 クラウス・テンシュテット指揮シカゴ響(1990年録音/EMI盤) テンシュテットがシカゴ響に客演した際のライブ演奏です。彼は手兵のロンドン・フィルを振ってマーラーの交響曲全集やライブ録音を数多く残していますが、北ドイツ放送やこの演奏を聴いてしまうと、やはりロンドン・フィルには非力さを感じずにはいられません。その点、これはオーケストラ・ビルダーのライナー、ショルティに鍛え上げられたシカゴ響がテンシュテットの要求に120%応えている凄い演奏です。全楽章を通じて音の彫りが非常に深く、終楽章の壮大さも驚異的です。但し、やはりドイツ・オケの北ドイツ放送響のほうが音そのものに含蓄の深さを感じます。

Marcci00001 小林研一郎指揮ハンガリー国立響(1992年録音/CANYON盤) これは小林研一郎(通称コバケン)が音楽監督の時代に来日してサントリーホールで行ったライブ演奏です。このコンビのマーラーは何年か前に「復活」の実演を聴きましたが、素晴らしいオーケストラでした。マジャール民族の熱い血とコバケンの熱い血が組み合わさった最高のコンビだったと思います。その後オケの名称もハンガリー国立フィルハーモニーに変わりましたが、このコンビはもっと長く聴いていたかったです。この録音も曲の若々しさ、清清しさを充分に湛えて、尚且つ激しさと振幅の大きさを備えた素晴らしい演奏です。ところで余談ですが、コバケンが某アマチュアオケを指揮してこの曲を演奏するのを聴いたことが有ります。それは凄まじい演奏でした。この人はアマオケを振るとリミッターを取り払った情熱200%の演奏をするので、感動の度合いはむしろプロ以上になります。コバケンが指揮するアマオケのマーラー、チャイコフスキーは必聴です。

Marcci00001b 小林研一郎指揮チェコ・フィル(1998年録音/CANYON盤) コバケンの活動の中心はハンガリーからチェコに移りました。個人的にはボヘミアン(チェコ)よりもマジャール(ハンガリー)の方がコバケンの良さが最大限発揮されると思っています。とは言えチェコ・フィルは世界的にも優秀な楽団ですので、そこで長期間活躍出来るというのは彼の実力に違い有りません。この演奏は非常に美しく、デリカシーを一杯にたたえた表情に溢れています。ボヘミアの自然を爽やかに感じさせながらも壮大なスケールを併せ持っている素晴らしい演奏です。もしかしたら、この曲のイメージに最も近いのかもしれません。

以上の中で特に好きなのは、ワルター/コロムビア響盤、バーンスタイン/ニューヨークPO盤、テンシュテットの北ドイツ放送響盤およびシカゴ響盤、それにコバケン/チェコPO盤です。

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2009年11月12日 (木)

後期ロマン派交響曲作曲家の巨人 マーラーとブルックナー

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ブログを初めてから1年3ヶ月が過ぎましたが、これまで一度も記事を書いていない作曲家が居ます。グスタフ・マーラーです。その理由は決して興味が無いからでは無くて、大好きだからなのです。どうしても気軽には書けないのです。アントン・ブルックナーについてもやはり同じです。第4番「ロマンティック」だけは記事にしましたが、それはむしろ気楽に書けるからであって、4番より好きな曲は他に幾つも有ります。それが正直なところです。ベートーヴェンやモーツァルトもほとんど記事にしていませんが、それは名作が余りに多過ぎる為に、一体どこから手をつけて良いのか見当がつかないからなのですね。

ともかくは、マーラーとブルックナーの記事をしばらく続けようと思っています。2人は同じ後期ロマン派の交響曲作曲家として並び立つ存在ですが、作風はまるで正反対です。教会のオルガニストであり、俗世間を超越して森羅万象を音にしたような作品を神様に捧げようとしたブルックナー。それに対して、コンサート・オーケストラの指揮者であり精神分裂的と思えるほどに人間の喜びや悲しみ、あるいは厭世感を音楽にしたマーラー。しかし両者はどちらも掛け値なしの大作曲家です。

なにせ自分は多忙のサラリーマンの身ですので、これまでの「名曲名盤案内もどき」のスタイルでは、記事を書くのに結構時間がかかってしまい、週一回のペースではとても更新が出来ないかもしれません。そこはどうぞ気長にお付き合い頂ければと思います。そして気軽にコメントを頂けることを楽しみにしていますので、どうぞ宜しくお願いします。

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2009年11月 7日 (土)

ブラームス ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ短調op.102 名盤

いよいよ秋が深まってきました。いやでも「もののあはれ」を感じる季節です。

秋は夕暮。夕日のさして、山の端はいと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などのつらねたるがいと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音などはたいふべきにあらず。
(「枕草子」清少納言)

B0087557_20323156 この季節にはやはりブラームスの音楽が一番心にしみわたります。昨年の秋は「ブラームス特集」として主要な曲をご紹介しましたが、今秋は一曲も取り上げていません。そこで、未だ触れていなかった「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲」を取り上げてみます。

この曲には2人のソリストが登場します。ヴァイオリン協奏曲が「独身の曲」だとすれば、この二重協奏曲は「夫婦の曲」をイメージできるかもしれません。事実、ブラームスはこの曲に「夫婦」の意味を込めて書いたとも言われています。しかしこの曲の2人のソリストは時に寄り添い、時に激しくぶつかり合い、と正に実際の夫婦の縮図(!)のようです。

何はともあれ、とにかくこの曲は大変充実して書かれています。この曲は初めは交響曲となるはずでしたが、作曲の途中で協奏曲に変更されました。ブラームスの協奏曲は管弦楽パートが極めて充実しているので、どの曲も「独奏付き交響曲」という雰囲気なのですが、この曲では管弦楽をバックにバイオリンとチェロがぴたりと寄り添ったり対峙したりする様が絶妙です。これはやはり室内楽作品を得意とするブラームスならではでしょう。

第1楽章の展開部に入る前の2つの楽器の重奏には圧倒されます。そして全体の曲想は大変に魅力的です。第1楽章の主題のカッコ良さにも惚れ惚れしますが、第2楽章の昔を懐かしく回想するようなしんみりとした趣きはたまりません。第3楽章も充実しています。僕は、この曲がヴァイオリン協奏曲に負けず劣らず大好きです。

それでは僕の愛聴盤のご紹介です。

Cci00052 アドルフ・ブッシュ(Vn)、ヘルマン・ブッシュ(Vc)、クレツキ指揮フランス国立放送管(1949年録音/Music&Arts盤) 戦後、ヨーロッパのフランスでのライブ録音です。もちろんモノラルです。戦前のドイツロマン派の最後の大家アドルフ・ブッシュは四重奏団の活動が多かった為に、コンチェルトの録音はブラームスやベートーヴェンといった僅かのものに限られています。ですので二重協奏曲の録音が聴けるのは貴重です。この演奏は正にドイツ浪漫の何物でもありません。第2楽章の主題にボルタメントをかけて大きく歌うあたり、懐かしくもロマンティックな表現に圧倒されることでしょう。他の演奏とは全く次元が異なります。ただ、第1、第3楽章は録音が古い分聴き応えが半減するのが残念です。この録音は他レーベルでも出ていますが、1楽章冒頭の音消えが有りますのでご注意ください。Music&Arts盤は大丈夫です。

Bura005 ヴォルフガング・シュナイダーハン(Vn)、ヤーノシュ・シュタルケル(Vc)、フリッチャイ指揮ベルリン放送響(1962年録音/グラモフォン盤) 決して派手ではないですが、聴いていて自然に心に染み入るような演奏です。ウイーンの名手シュナイダーハンのバイオリンは非常に心のこもった美しい演奏ですし、シュタルケルの男気の有るチェロはブラームスにぴったりだと思います。またフリッチャイの伴奏指揮もとても素晴らしいです。彼らはブッシュ達ほど表現が濃厚では有りませんが、何度でも聴きたくなるような、実に味わいが有って魅力的なブラームスを聞かせてくれます。個人的にはとても気に入っている演奏です。録音は二人のソロの音は綺麗ですが、オケの音が幾らか古く感じられます。 

41rvqx5595l__ss500_ ダヴィド・オイストラフ(Vn)、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(Vc)、セル指揮クリーヴランド管(1969年録音/EMI盤) 僕がこの曲を初めて聴いた演奏です。非常に豪華な顔合わせなので、当時は決定盤の名を欲しいがままにしていました。現在よくよく聴いてみると、オイストラフもロストロポーヴィチも元々余り深刻な演奏はしないために、ブラームスにはいま一つ共感不足を感じます。もっともそれは僕の個人的な感想ですし、余り暗くならないブラームスの方が良いと言う人には丁度良い演奏かもしれません。二人とも力強く豪快ですし、技術的には当然優れていますが、掛け合いの部分なんかは2人が競うように弾いているので聴き手の好みが分かれるところだと思います。録音も余りパリッとしません。

Bura006 エーリッヒ・レーン(Vn)、アルトゥール・トレスター(Vc)、シュミット=イッセルシュテット指揮北ドイツ放送響(1970年録音/米JOY盤) これは海賊盤CD-Rですが、北ドイツ放送響創設25周年記念演奏会の貴重なライブ演奏です。レーンは1940年代のベルリン・フィルのコンサート・マスターですし、トレスターもやはり首席チェリストでしたので、フルトヴェングラーの演奏でもソロを務めています。何といってもイッセルシュテットが手兵の北ドイツ放送を指揮して、いかにもドイツ的な堅牢で、ズシリとした手ごたえの演奏をしているのが聴きものです。レーンは既に腕が衰えてしまっているのか怪しい部分が有りますし、チェロとの重奏部分でもピタリとは合っていません。けれども第2楽章の深々とした雰囲気あたりを聴いていると、やはりドイツの魂を感じさせてくれる気がします。海賊盤ながらステレオ録音ですし音質も非常に優れています。

Bura007ヘンリク・ シェリング(Vn)、ヤーノシュ・シュタルケル(Vc)、ハイティンク指揮コンセルトへボウ管(1971年録音/フィリップス盤) シェリングは僕の大好きなヴァイオリニストですし、シュタルケルも相変わらずブラームスに相応しい男っぽい演奏です。両者の息のピタリと合ったアンサンブルの素晴らしさも申し分が有りません。ハイティンクの指揮は派手さは有りませんが、コンセルトへボウのいぶし銀の響きを生かしていて不満は有りません。以前は地味過ぎる演奏のように感じていましたが、現在は控え目な美しさに満足です。不満を強いて言えば第2楽章が少々すっきりし過ぎなことぐらいです。アナログによる録音も美しく優れていますし、トータルでは現在最も気に入っています。

511kp95dojl__ss500_ ギドン・クレーメル(Vn)、ミッシャ・マイスキー(Vc)、バーンスタイン指揮ウイーン・フィル(1982年録音/グラモフォン盤) バーンスタインの粘って引きずるようなリズムはドイツ風とは違いますが、重量感が有って悪くありません。また、ブラームスではとかく透明感の有り過ぎる響きとなるウイーン・フィルも厚味の有る音を聞かせています。クレーメルとマイスキーのソロは幾らか軽めですが、テクニック、アンサンブルは優秀ですし、独特の繊細な叙情性も持ち合わせていて魅力的です。クレーメルはその後、アーノンクールの伴奏で再録音しましたが、バーンスタインとの旧盤のほうがずっと良いと思います。

Bura008 アイザック・スターン(Vn)、ヨーヨー・マ(Vc)、アバド指揮シカゴ響(1987年録音/SONY盤) ドイツ系のプレーヤーが誰も居ない演奏であるせいか、いわゆるドイツ風のブラームスからは程遠い、非常に爽やかなブラームスです。アバド/シカゴ響の演奏は常に腰が浮いた感じで重圧感が感じられません。ヨーヨー・マのチェロもテクニックは上手いのですがブラームスらしい含蓄が無く、えらくお気楽な感じがしてしまいます。スターンは晩年の録音の割には腕と音色の衰えを感じさせません。全体としては大変まとまりが良いのですが、全く北ドイツ風でない点が僕の好みからは外れます。

ということで、完全に「これは」と思えるのは無いものの、シェリング/シュタルケル/ハイティンク盤を最上位とします。次に来るのがシュナイダーハン/シュタルケル/フリッチャイ盤とレーン/トレスター/イッセルシュテット盤です。オイストラフ/ロストロポーヴィチ盤ではソリストの2人が、またクレーメル/マイスキー盤ではバーンスタインの指揮が、どちらも「牛刀をもって鶏を割く」という大げさな雰囲気なので余り好んでいません。但し、これはあくまで好みの問題です。

<注記> 以前はシュナイダーハン/シュタルケル/フリッチャイ盤をトップに挙げていましたが、現在はシェリング/シュタルケル/ハイティンク盤を好んでいます。そこで内容を一部書き替えました。

<関連記事>
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2009年11月 1日 (日)

シューマン 交響曲第4番ニ短調op.120 名盤 ~浪漫と幻想~ 

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シューマンは生涯に交響曲を4曲書きました。僕はそのうち第1番「春」や第2番もとても好きですが、第3番と第4番を特に好んでいます。第3番「ライン」については以前、j自分自身のドイツ・ライン地方への旅行記としてご紹介したことが有りました。
<旧記事>
シューマン 交響曲第3番「ライン」 ~ハルくんのラインへの旅~

そこで今回は第4番について書きます。この曲は最もシューマンらしいシンフォニーだと思います。シューマンの最大の特徴である「ロマン的で、幻想的」な要素が一番よく出ています。正にシューマネスクな作品です。この曲には「幻想的交響曲」とでも副題を付けたいところですが、ベルリオーズに先を越されてしまいましたからね。

それにしても、この曲は1楽章の導入部から、なんとも幻想的です。ほの暗いロマンの香りが濃密に漂います。「生き生きと」と指示のある主部に入っても、危うい香りがそのまま続いて行きます。音楽の屈折した雰囲気は正にシューマンの本領発揮です。

第2楽章「ロマンス」は、タイトルどおりロマンの極みです。孤独感いっぱいに沈滞します。オーボエとチェロのユニゾンによる主題も美しいですが、中間部のロマンティックなヴァイオリン独奏もこたえられません。

第3楽章スケルツォにも「生き生きと」と指示が有りますが、まるで楽しい雰囲気にはほど遠い印象です。何か運命的な重みを感じずにはいられません。しかしこの楽章も極めて魅力的です。

第4楽章の遅い序奏部を終えると「生き生きと」と指示された主部が始まります。この楽章でようやく明るさを取り戻します。途中から始まる、付点付きリズムは「交響的練習曲」の終曲に代表されるシューマンのお得意のリズムです。

さて、僕の愛聴盤ですが、この曲にはフルトヴェングラーの歴史的名盤が有りますので、それを中心にご紹介したいと思います。

41zjc1rtd0l__ss500__2 ウイルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1953年録音/グラモフォン盤) フルトヴェングラーが亡くなる前の年の演奏です。「シューマンの4番と言えばフルトヴェングラー」と言われるぐらい有名な録音です。比類無いほどにロマン的で情熱的な演奏ですが、とにかく凄いのはオーケストラがまるで生き物のように自由自在。楽器の音が全くせずに音楽そのものしか感じさせません。この曲の第1楽章は中間部がとても鳴りにくく、しばしば演奏に失望することが多いですが、フルトヴェングラーの場合は情熱が迸るように立派に鳴り渡ります。第2楽章のロマンも最高。当時のベルリンフィルのコンサートマスター、ジークフリート・ボリスの奏でるヴァイオリン・ソロは甘いポルタメントを効かせて耳がとろけるようです。過去最高の演奏と言えるでしょう。第4楽章も極めてドラマティックであり、中間部の付点リズムの生命力も他の指揮者とは次元が異なります。既に50年以上も昔の録音ですが、いまだに最高の演奏であり続けています。モノラル録音ですが、フルトヴェングラーの録音の中でも最も音質の良い一つなので鑑賞には全く差支え有りません。

Cci00034 フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1960年録音/BerlinClassics) ゲヴァントハウスの音が魅力的です。管楽器と弦楽器とが美しく一体にブレンドされたくすんだ響きは伝統的なドイツの音です。ここまで古風な音は現在ではちょっと聞けないと思います。コンヴィチュニーの指揮も同様にオーソドックスで良いです。けれども、この曲にしては少々落ち着き過ぎている気はします。第2楽章はもっと強いロマンの香りが欲しいですし、第3、4楽章は更に情熱の高ぶりを見せたほうが魅力が増したと思います。

4543638002245 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウイーン・フィル(1962年録音/Altus盤) クナッパーツブッシュ/ウイーン・フィルのライブ盤はどうしても外せません。評論家の福嶋章恭さんが最高の演奏と述べておられる演奏です。確かに余りのスケールの大きさに度肝を抜かれますし、これはフルトヴェングラーに対抗し得る唯一の演奏だと思います。但し、クナ特有の大きな間の取り方や、時に最強奏する金管がまるでワーグナーを感じさせてしまい、シューマネスクな演奏という点ではやはりフルトヴェングラーのほうが上かなと感じるのです。これまでは海賊盤でしか聴くことができませんでしたが、Altusから正規録音盤がリリースされました。モノラルですが音質は極上の素晴らしさで、演奏の凄さが改めて認識されます。

976 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1969年録音/オルフェオ盤) ベームには約10年後のグラモフォン盤も有りますが、これはザルツブルグでのライブ録音です。音質は年代相応ですが、幾らか高音に硬さを感じます。60年代のベームにしては意外に解放感があり堅苦しさを感じません。ウイーン・フィルのしなやかな美しさも魅力です。シューマンの音楽に本来ベームの資質は合わないような気もしますが、ウイーン・フィルの音が中和させているように思います。終楽章の序奏で管のピッチが合わないのはご愛嬌ですが、続く主部のシューマン・リズムの味わいが忘れさせてくれます。

P2_g3245420wウォルフガング・サヴァリッシュ指揮ドレスデン国立歌劇場管(1972年録音/EMI盤) 3番「ライン」でも書きましたが、シュターツカペレ・ドレスデンの全盛期の音を聴くことが出来る素晴らしい録音です。柔らかくも厚みが有り、正に「いぶし銀」としか表現のしようの無い素晴らしい音です。ゲヴァントハウスを「野武士」の響きとすれば、ドレスデンはさしずめ「大納言」の響きでしょう。その響きを忠実に捉えた名録音でもあります。サヴァリッシュは早めのテンポで若々しく新鮮な指揮ぶりで、ドレスデンの響きと融合して魅力的です。但しその反面、余りに健康的過ぎるので、彼らの全集の中では1番や3番のほうが曲想に適していると思います。 

Cci00034b ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1979年録音/SONY盤) クーベリックは60年代にベルリンフィルとこの曲を録音しましたが、それは緊張感の無い演奏で好きではありませんでした。このバイエルンとの新盤の方が優れていると思います。管と弦とが柔らかく混じり合った響きも魅力的です。第1楽章はゆったりし過ぎていて情熱の高まりに不足を感じますが、第2楽章や第3楽章のほの暗いロマンの香りは良く出ています。終楽章も付点リズムの処理にシューマネスクな味が良く出ていますし、徐々に高まっていく情熱が見事です。

Cci00035b セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1988年録音/EMI盤) 遅いテンポによるいかにもチェリビダッケらしい演奏です。第1楽章は柔らかい響きでスケールが大きいのは悪くないのですが、情熱の高まりが感じられないのが気に入りません。第2楽章の深々としたロマンの香りは魅力的です。ヴァイオリン・ソロも味わい深いです。第3楽章は遅いテンポで暗くロマンティックな雰囲気に満ちていて良いと思います。極端に遅い第4楽章冒頭のブリッジ部分はユニークですが違和感を感じます。主部も遅いテンポで聴いていて段々もたれてくるのも事実です。但し、最後は普通にアッチェレランドして終わります。一貫性の無さを感じないでもありません。

Schuman_vonk_654 ハンス・フォンク指揮ケルン放送響(1992年録音/EMI盤) オランダの名匠フォンクが、ケルンの街のオーケストラを指揮した演奏です。フォンクは難病を乗り越えて苦労して活動をしている人ですが、苦悩と浪漫を感じさせるこの曲には向いています。ケルン放送の音はくすんだ北ドイツ的な響きで曲に適しています。1、2楽章は暗いロマンの味わいが有って中々に素晴らしいです。3楽章もリズムに重みが有ります。終楽章はテンポが速めで活力が有ります。全体的に地味な印象が残りますが、この演奏はそこが良いのです。

Cci00036 クリストフ・エッシェンバッハ指揮北ドイツ放送響(1999年録音/RCA盤) ハンブルグを本拠地とする北ドイツ放送響は今では数少ない古風でドイツ的な音を持つオーケストラです。柔らかく混じり合ったほの暗い響きはシューマンの音楽に適しています。エッシェンバッハも暗くロマンティックな演奏を得意としているので、やはりシューマンに向いています。第1楽章は中間部の爆発力はフルトヴェングラーには及びませんが、全体としては優れています。第2楽章は深々というよりも早めのテンポで軽いながらも優しい雰囲気が独特です。第3楽章も早めですが暗い情熱を感じて悪く有りません。終楽章の情熱の高まりも大変素晴らしいです。

<追記>クナッパーツブッシュのウイーン・フィル盤を正規盤に書き替えました。 

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