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2009年10月10日 (土)

シューマン ピアノ四重奏曲変ホ長調op.47 名盤 ~ヴィオロンのためいき~ 

Schumann_3 シューマンの作品はピアノ曲と歌曲の数が圧倒的に多く、室内楽はそれほど多く有りません。その中でも良く知られた名作としてはピアノ四重奏曲と五重奏曲が有ります。作品の出来栄えとしては五重奏曲のほうが上だとは思いますが、四重奏曲には何といってもあの絶美の第3楽章アンダンテ・カンタービレが有ります。その美しさは到底言葉に表わせないほどなのですが、しいて言えばこんな感じです。

秋の日の ヴィオロンのためいきの 身にしみて うら悲し (ヴェルレーヌ/上田 敏) 

この美しいメロディを耳にして心に響かない人がもしもおられるとすれば、それはシューマンの音楽に縁が無い、というよりも音楽に縁が無い方だと思います。実は大学時代に某国の皇太子殿下が愛好するのと同じ弦楽器を弾いていた僕は、この曲をどうしても自分で弾いてみたくなり、楽譜を購入してメンバーを集めて演奏したことが有ります。それもこれもこの第3楽章の旋律に魅せられたからに他なりません。主旋律は最初チェロに、次にヴァイオリン、静かに沈滞する中間部を経てから再びヴィオラにと何度も現れます。僕はこのメロディほどにあのヴェルレーヌの詩のイメージにぴったりと感じる曲は無いような気がします。

この曲は第3楽章が余りに素晴らしいので他の楽章はやや聞き劣りがしますが、このアンダンテ・カンタービレが有るだけで、不滅の名作だと断言出来るのです。この作品はそれほど多くの愛聴盤は有りませんが、飛び切り素晴らしい演奏が有りますので是非ご紹介します。

410_2 バリリ弦楽四重奏団、イエルク・デムス(Pf)(1956年録音/MCAビクター盤) 有名なウエストミンスター録音の復刻の中でも特に価値の高い演奏の一つです。この演奏は昔LP盤で何度聴いたか分かりません。優秀なモノラル録音なので室内楽を楽しむには支障は全く有りません。元々それほどディスクの種類が多いとは言えないこの曲ですが、このバリリ盤がある為にそれを不満に感じた事も有りません。ややゆったりしたテンポですが、逆に落ち着いて聴くには最適です。デムスのピアノも同様です。それにしても第3楽章の美しさはどうでしょう。正にヴェルレーヌの詩をそのまま感じさせるような、ヴィオロンのためいきは白眉です。それ以外の言葉にはとてもなりません。 

Cci00026schu01 ゲヴァントハウス弦楽四重奏団、ペーター・レーゼル(Pf)(1984年録音/シャルプラッテン盤) 名ヴァイリニストのカール・ズスケは東独でゲヴァントハウスSQの2ndVnから、ベルリンSQ(途中からズスケSQと名称変更)の1stVnとなり、以後再びゲヴァントハウスSQの1stVnとなった人です。ドイツ音楽愛好家にはとても人気が有ります。この演奏は彼が1stVn時代の録音です。バリリQと比べればずっとスマートに聞こえます。けれども誠実でしなやかさも持ちあわせる表現は、正統的なドイツの演奏として素晴らしいと思います。バリリQの他にどうしてももう一つと望まれる方にはとてもお薦めできます。

唯一つ心残りなのは、かのブッシュ四重奏団の録音が無いことです。戦前のドイツロマン派の最後の生き残りである偉大なヴァイオリニスト、アドルフ・ブッシュの主催するカルテットの真髄はベートーヴェン、ブラームス、シューマンなので、絶対にこの曲を演奏したはずなのですが、録音が有りません。ブッシュの弾くアンダンテ・カンタービレこそはバリリをもってしても及び得ない、唯一無二のためいきの歌であっただろうことは想像がつきます。

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シューマン(室内楽)」カテゴリの記事

コメント

こんばんは~~~~。
はるりんの大好きなピアノ四重奏曲ですね。。。
シューマンがピアノ五重奏曲よりも美しい曲だと言っていたのですが、それはアンダンテ・カンタービレのことを言っているのでしょう。

> この美しいメロディを耳にして心に響かない人がもしもおられるとすれば、それはシューマンの音楽に縁が無い、というよりも音楽に縁が無い方だと思います。
そのと~~~りです。
わからない人がいたら座布団全部取り上げです!!!ヽ( )`ε´( )ノ

バリリがやはり最高ですね。
他にも何かないかな~とは思ってはいたのですが~、あのアンダンテ・カンタービレを聴いてしまうと、他のどの方の演奏を聴いてもダメとはいいませんけれど・・・
この世にバリリ以上に美しい演奏が存在するのか~~っ!!!ぜぇはぁっ!って感じがします!!!

それにしても、ヴェルレーヌの詩を引っ張り出してくるあたり、この間も申し上げましたが、や・は・り・・・・ハルくんさんは相当なロマンチストですね!!!

メンバー集めて~~~やりましょうよ~~~。
私、一生懸命ピアノの練習をしますから・・・・

投稿: はるりん | 2009年10月10日 (土) 23時05分

はるりんさん、こんにちは。

はい、このアンダンテカンタービレの美しさをお分かりにならない人は布団でぐるぐると簀巻きにしたいと思います!(笑)

>この世にバリリ以上に美しい演奏が存在するのか
絶対に無いと思います。記事にブッシュ云々とは書きましたが、現実的に無いものは無いのですから。

ヴェルレーヌはなかなか合ってるでしょう?
曲を聴いていて、ふと脳裏に「ヴィオロンのためいき」という言葉が浮かんだのです。やっぱり僕は生粋のロマンティストなのですかね~。(笑)

本当にいつか演奏したいものですね。ピアノの練習頑張ってくださいね!

投稿: ハルくん | 2009年10月11日 (日) 11時02分

ハルくんさん。こんにちは。
きゃっほ~~~。この間、吉祥寺のディスクユニオンのセールで、ゲヴァントハウス弦楽四重奏団、ペーター・レーゼル(Pf)(1984年録音/シャルプラッテン盤)を540円で購入しましたです!!!
誰だよ~~~。吉祥寺のディスクユニオンがツブレタとか私にガセネタを吹き込んだヤツは~~~!!!
ヴィオロンのためいき度はバリリには一歩及ばないにしても、でもドイツ的美を充分に堪能できました。。。ありがとうございます。

あぁ、この世にこんなに美しい曲が存在するだなんて・・・
ロベルトもハルはるコンビも・・・生粋のロマンチストなんですね!!!

投稿: はるりん | 2009年10月15日 (木) 11時12分

こんにちは。

わたしが好きな中也も、このヴェルレーヌの詩を意識しています。ドイツ的な音楽というより、ロマン派的な音楽ですね。そして、まとまった形がない・・・

幻想曲と呼ばれるスタイルが、シューマンにはもっとも合っていたのじゃないかと思います。

もっとも、晩年に管楽器のために書いたいくつかの曲は、わたしにとって大きな課題ですけれど・・自分が音を出そうとすると、どうにも陳腐な響きになってしまうのです。

投稿: かげっち | 2009年10月15日 (木) 13時07分

はるりんさん、こんばんは。

はるりんさんから「吉祥寺のディスクユニオンが無くなった」というガセネタのガセネタ(笑)を聞いていたので最近は行っていませんでした。なーんだ、ですねぇ。でも良かったです。

ゲヴァントハウスSQの演奏もなかなか良いでしょう?繰り返して聴いていると、自然食品のような味わいにじわじわと馴染まされてゆくのですよ。

はい、ロマンティストのシューマニアーナーには本当にたまらない曲ですよねー。

投稿: ハルくん | 2009年10月15日 (木) 21時08分

かげっちさん、こんばんは。

ええ、シューマンの音楽は全くもって構成や不協和音などが独特です。あらゆる点で気まぐれと言えますね。それはシューマン自信の精神構造と深く結びついていたのではないでしょうか。だからこそ"ファンタジー"なのですね。
僕自身も音楽の構成感よりは感性で聴く人間ですので、シューマンには非常に強く惹かれてしまうのです。

投稿: ハルくん | 2009年10月15日 (木) 21時23分

ジュリアード/グールドなんですけれど、四重奏曲のことなので、コメントはこっちにお引っ越しデス。
ハルくんさんがお感じになった違和感というか、なんとなくですがわかるような気がします。
巧いことは巧いし、グールドのピアノもいいです。テンポも軽快ではるりん好みですし。別にケチをつける要素はないんですが、ただ~~~
この微妙な違和感はなんなんだ~~!!!というか、
なんか気に入らね~~~(わっ!!はっきり言うな!!!)というか、
なんというか、とにかく弦というかアンサンブルが硬いなという印象がありました。要はヴィオロンのため息ってものが感じられないってことなのかなって思います。
これは聴き手の好みに関係してくるので、一概にどうだのこうだのとは言えないのですが・・・
ただ、グールド唯一のシューマンですからね!!!そういうことです。。。

投稿: はるりん | 2009年10月18日 (日) 08時24分

はるりんさん、ありがとうございます。

そうですねぇ、僕の遠い記憶に残っているジュリアードSQ/グールドの印象はそんな感じでした。もう一度聴いてみればイイのでしょうけど、どうかなぁ。自分の好みからはやはり遠い気がしますね。

投稿: ハルくん | 2009年10月18日 (日) 13時24分

レーゼル盤があったとは知りませんでした。四重奏も五重奏も録音していたのですね。ぜひ聴いてみたいです。レーゼルはブラームスの独奏曲では草分け的存在で、あまり知名度の高くないピアノ曲の録音は意義深いと思うのですが、演奏も性格も地味で堅実な感じなので日本ではあまり人気がないようですね。

グールド盤、私は好きですよ。グールドはロマン派嫌いで通っていますが、コテコテの甘い演奏も好きだったようで、器用に芸風を使い分けていたように思われます。(いい意味で)協調性がなさそうなのでアンサンブルには向かないという意見もありそうですが。

投稿: NY | 2012年10月 7日 (日) 05時03分

NYさん、こんにちは。

ペーター・レーゼルお好きなのですね。この人のブラームスの独奏曲は聴いていませんが、曲が何せ地味ですからシューマン以上に良いかもしれませんね。
確かに本人自体が地味な存在ですが、この人はピアノを弾かれる方には特に好まれるのかもしれませんね。

グールドのシューマンは長らく聴いていませんが、あの演奏ではジュリアードに合わせていたのかな。ブラームスの五重奏をカナダのカルテットと演奏していましたが、それは中々激しい演奏で良かったです。
強調性はまぁ無いでしょうね。数々のエピソードから明らかです。そういう演奏家は優等生よりもずっと楽しいのですがね。

投稿: ハルくん | 2012年10月 7日 (日) 11時53分

レーゼルは評価が遅れましたね。カッチェン以降、ブラームスでこの人の右に出る人はそうそういないと思います。ソツがない感じで地味ですが、ドイツ正統派というか格調が高い人なので昔から好きでした。間違いなく第一級のピアニストだと思います。

シューマンのピアノ四重奏は第三楽章なくして語れませんね。まさにヴィオロンのためいきです。うーむ、上田敏ですか。私の好きな永井荷風の先輩です。ヴァイオリンソナタ2番の第三楽章もそうなのですが、長調で泣ける曲は本物ですよねえ(しみじみ)。

投稿: NY | 2012年10月12日 (金) 22時15分

NYさん、こんにちは。

カッチェンは良いブラームスを弾きましたね。
録音時、若かったのでベテランが弾くような枯れたブラームスでは無いのですが、男っぽい青年ブラームスの印象でした。

シューマンのこの四重奏よりも、全体としては五重奏の方が出来が良いとは思いますが、三楽章の存在がこの曲の価値をグンと高めています。仰られる通り、ヴァイオリンソナタ2番の第3楽章と並んで最もシューマンの良さが出ています。(しみじみ)

投稿: ハルくん | 2012年10月13日 (土) 09時51分

ハルくん様
実はグールド&ジュリアードSQ団員の録音、オランダCBSのMP39126なる番号のLPを、持っていましたので貴ブログに触発されまして、本日聞き直してみました。
確かに第3楽章アンダンテ・カンタービレが、この作品の核心である事には、異論と疑問の余地はございません。何か、ブルックナーの第8交響曲をすら、思い起こさせる感もございました。また、グールドのように、滅多に室内楽を手掛けないピアニストの貴重な遺産でも、ございます。

投稿: リゴレットさん | 2018年6月20日 (水) 21時25分

リゴレットさん

それは良かったです!
グールドの室内楽のレコーディングは少ないですが、他にブラームスのピアノ五重奏曲なんてのも有りました。地元カナダの団体との共演で案外良い演奏でした。いずれも貴重な演奏記録ですね。

投稿: ハルくん | 2018年6月21日 (木) 12時31分

ハルくんさま
確かに室内楽のピアノ・パートをまず手掛けない著名奏者の方、おいでですよね。
ベネデッティ・ミケランジェリの室内楽録音というのは、正規録音の記憶がございませんし、ポッリーニも解散間際のイタリアSQとやった、ブラームスの五重奏曲ヘ短調が、唯一のアルバムでは?
御自身の資質を冷静に分析された上で、避けておいでなのでしょうか。それとも合わせものは煩わしいと、お思いなだけなのかは判りませんが…。

投稿: リゴレットさん | 2018年6月22日 (金) 11時38分

ミケランジェリやポリーニ、それにホロヴィッツクラスになると合わせ物を聴くのは勿体無く感じられなくもありません。ご本人も聴衆もそんな感じだったのではないでしょうか。
しかしリヒテルは室内楽が好きでしたね。素晴らしい録音が沢山残っています。ただし共演する奏者がかなり限定的だったことから相手を選んで好きでやっていたということなのでしょう。

投稿: ハルくん | 2018年6月22日 (金) 12時45分

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