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2009年8月23日 (日)

ヴェルディ 歌劇「アイーダ」全曲 続・名盤

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今年の夏から秋にかけては、ヴェルディの傑作オペラ「アイーダ」がどうも流行りそうです。もともとイタリアオペラの中でも「椿姫」「蝶々夫人」「ラ・ボエーム」「トゥーランドット」と並んで公演される回数の多い作品なのですが、今年はオペラだけでなくミュージカルでも色々と取り上げられるからです。

オペラでは9月に世界一のイタリアオペラハウスであるミラノ・スカラ座が来日して「ドン・カルロ」とこの「アイーダ」を公演します。同じ9月には梅田芸術劇場が東京と大阪でミュージカル「アイーダ」を公演します。これは数年前の宝塚のミュージカルがベースだそうです。もうひとつは劇団四季がディズニー製作のブロードウェイ作品を公演します。但し音楽はどちらもヴェルディとは関係無いようですし、ディズニー版の音楽はエルトン・ジョンですので、お得意のラブ・バラードが満載でしょう。昨年夏に歌舞伎座で公演された野田秀樹さんが演出した「野田版・愛蛇姫」は逆にヴェルディの音楽を和楽器にとても面白くアレンジしていたのでオペラファンとしてはとても楽しめました。それにしても、これだけ色々と形を変えて公演されるということはこの「アイーダ」がそれだけ人々にとって魅力有る作品だということでしょう。

以前、自分の愛聴盤としてリッカルド・ムーティのEMIスタジオ録音盤とバイエルン歌劇場でのライブ録音盤、それにクラウディオ・アバドがミラノ・スカラ座を率いたライブ盤2種類とグラモフォンのスタジオ録音盤について記事にしました。
ヴェルディ 歌劇「アイーダ」全曲 ムーティとアバドの名盤

もちろん、それらは不動のマイ・フェヴァリット盤であることに変わりは無いのですが、もちろんその他にも好きな演奏が有りますので、ぜひ「続編」としてご紹介したいと思います。

Cci00015アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC響(1949年録音/RCA盤) 20世紀最大の指揮者の一人トスカニーニにとって「アイーダ」は曰く付きのオペラです。すでに19歳でイタリアの歌劇場の首席チェリストであり合唱副指揮であった彼は、ブラジル演奏旅行の時に正指揮者が倒れた為に急遽本番を指揮することになりました。その時の演目が「アイーダ」であり、演奏会は大成功を収めたのです。このCDはモノラル録音ですし、歌手陣も弱い部分は有ります。しかしこの力強く圧倒的なエネルギーを持つ管弦楽の音はまぎれも無くトスカニーニです。想像を絶する迫力が有ります。これは単に歴史的な録音ということだけではなく是非とも聴いて頂きたい演奏だと思います。

Aida51wdiwn5del トゥリオ・セラフィン指揮ミラノ・スカラ座(1955年録音/EMI盤) 一般的にはカラスのアイーダ盤として認知されていますが、僕は元々歌手よりもむしろ管弦楽の演奏に耳が傾くので、ここではセラフィンの率いるスカラ座の素晴らしい演奏に魅了されます。ほどよく引締まっていてもイタリア的な解放感を感じさせる歌わせ方や音が最高です。一方声楽陣については、カラスの声はそれほど好まないのと他の歌手についても特筆するほどではありません。にもかかわらず聴いているうちにいつの間にか引き込まれてしまうのは、やはりセラフィンとスカラ座の魅力だと思います。

Aida81mlbutr4zl_sl1500_ ジョネル・ペルレア指揮ローマ歌劇場(1955年録音/RCA盤) これは今では余り話題になりませんが、当時アメリカではトスカニーニ盤と並んで良く売れたようです。ジンカ・ミラノフやヨッシ・ビョルリンクをはじめとするメトの人気歌手を揃えているのは大きな理由でしょう。指揮者のぺルレアはイタリア出身では無くルーマニア出身で余り知名度は高くないですが、オペラ界でそれなりに活躍しました。指揮にはイタリア的な解放感も感じさせますし、ローマの名歌劇場のオケが上手く後押して更に魅力を出しています。録音もモノラルながら鑑賞に支障はありません。これはこれで案外好きなディスクです。

Aida71mro4antml_sl1255_ ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウイーン国立歌劇場(1959年録音/DECCA盤) ステレオ録音時代に移ってからの大名盤であり、カラヤンが再録音を行ってからもこの旧盤のほうを支持する声は多いです。テバルディ、ベルゴンツィ、シミオナートらの歌手も最高ですし、カラヤンのスケールの大きな演奏を十全にとらえた立体的で優れた録音は古さを感じさせません。あえて指摘するとすれば、この演奏にはイタリア的な輝かしさや解放感は感じられず、あくまでゲルマン的な重いリズムの堂々とした演奏だということです。個人的にはイタリア的なヴェルディが好きなのですが、これはもう聴き手にお任せするしかありません。

Aida51od8q77npl_sy355_ ゲオルク・ショルティ指揮ローマ歌劇場(1961年録音/DECCA盤) この録音当時、既にワーグナーの「リング」録音を始めていたショルティでしたが、カラヤン盤の僅か二年後に同じデッカが録音するとは、そういう有難い時代だったのでしょう。この演奏はいかにもショルティらしくローマの名門歌劇場のオケをぎゅうぎゅうと締め上げて、アメリカのオケのごとく整然としたアンサンブルをさせています。凄いです!まるでイタリアのオケでは無いようです(苦笑)。”暴力的”とは言い過ぎかもしれませんが、フォルテの音にはそれぐらい迫力を感じます。最初は面食らいましたが、聴き慣れるとクセになるというか、案外楽しく感じられます(笑)。プライス、ヴィッカースらの声楽陣も健闘しています。

Aida515gqgi8bl_sx355_ ズービン・メータ指揮ローマ歌劇場(1967年録音/EMI盤) メータはオペラのレパートリーは決して多くは無いですが、得意な演目はなかなか素晴らしいのです。例えば「トゥーランドット」を十八番にしていて、フェレンツェ歌劇場の3年前の日本公演も素晴らしかったですし、DECCAへの録音盤も自分の愛聴盤です。この「アイーダ」はほとんど話題にならない演奏ですが、素晴らしいニルソンのアイーダ、コレッリのラダメスを聴くことが出来ますし、ローマ歌劇場管の音がとても地中海的に輝かしくて良いのです。特筆すべきは凱旋行進の場のトランペットが荒々しく勇壮で実にリアルです。軍隊ラッパはこうでなくてはいけません。まるで行進が目に浮かぶようです。いくらアイーダトランペットを使っても、綺麗で上手に吹かせて雰囲気が出ないのでは困ります。全体も熱くドラマティックで素晴らしいです。このような名演奏が余り注目されないのはとても残念なことです。

<補足>後からセラフィン、ペルレア、カラヤン、ショルティ盤を追加しました。

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ヴェルディ(歌劇)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、saraiです。
はなはだ、コメントしづらいのですが、saraiはこのオペラはあまり好みではありません。
実のところ、生公演もフィレンツェ歌劇場の来日公演を1回聴いただけ。これもセット券を購入したために無理に聴いただけ。映像もマゼール指揮パヴァロッティ出演のLDだけ。CDもフレーニの歌が聴きたくて買ったカラヤン盤1枚だけという具合です。
もちろん、9月のスカラ座もドン・カルロは行きますが、アイーダは回避です。もっとも、スカラ座はフリットリが聴きたくて(saraiは女声好き!)、ドン・カルロに行くので、フリットリがアイーダに出るのなら、微妙なところでした。
妙なコメントでごめんなさい。それでも、トスカニーニ盤には興味をひかれましたよ。
では、また。

投稿: sarai | 2009年8月26日 (水) 13時27分

saraiさん、こんばんは。

コメントありがとうございます。
実はsaraiさんのようなコメントは凄く嬉しいのですよ。ブログだと確かに反対意見って書き難いですよね。でも友人と話をする時には「僕は嫌いだよ、それ。」なんて平気で言えますよね。本当はそんな忌憚の無い意見が聞きたいなぁといつも思っているのです。

で、「アイーダ」ですが、好みは誰しも有りますし「運命/未完成」だって嫌いな人は嫌いで当然だと思うのです。
ただ、このオペラはどうも凱旋行進の派手な場面が目立ち過ぎて非常に損をしていると思います。実はこの作品はそれまでの歌中心の「歌劇」と違って、明らかに音楽の流れ優先の「楽劇」になった非常に芸術性の高い傑作だと思っています。繊細な管弦楽の表現なんて最高だと僕は思うのですが。

投稿: ハルくん | 2009年8月26日 (水) 21時43分

ハルくんさん、saraiです。
失礼なコメントにもかかわらず、優しいお言葉、ありがとうございます。

別にヴェルディが嫌いなわけではなく、何せ膨大な傑作群があるために、その中ではあまり性に合わないといったところです。でも、同様にラ・トラヴィアータもリゴレットもあまり性に合わなかったのですが、今では好きな作品になりましたので、素晴らしいアイーダの公演に出会えば、がらっと変わるかも知れません。あまり聴いていないというのは、ある意味、新鮮さがあるということでもありますね。そのうちにまた、聴きなおしてみましょう。ポイントは管弦楽の繊細な表現ですね。
では、また。

投稿: sarai | 2009年8月27日 (木) 12時10分

saraiさん、こんばんは。

確かに好みは時と共に変化することは有りますね。そこがまたクラシックの醍醐味ですね。

僕の場合にはヴェルディ、プッチーニにやや退屈に感じる作品が無いわけでもないですが、性に合わないと思ったことは有りません。

投稿: ハルくん | 2009年8月27日 (木) 23時00分

ハルくんさん、お久しぶりです。

アイーダをサッカー応援で歌うようになったのは、いつ頃からでしょうね。他の国でも歌うのでしょうか。

投稿: かげっち | 2009年8月31日 (月) 11時58分

かげっちさん、こんにちは。

あれは中田英寿がイタリア・セリエAのパルマに所属していた時にクラブで歌われていたのを気に入って、日本代表チームがバスで移動する最中に勇気づけに歌ったのが始まりだそうですよ。それを知ったサポーターが歌い広げたのですね。

ちなみにヴェルディの生まれ故郷はパルマなので地元では大変尊敬されているそうです。

投稿: ハルくん | 2009年8月31日 (月) 12時42分

ふむふむ、勉強になりました。パルマのファンが歌うなら仕方ないですね。エジプトチームと対戦しても歌うのかしら?(笑)

別の応援歌は(Ore!Ore,ore!)、チャウシェスク政権打倒のデモで市民が歌っていたのと同じですし、いろんな曲が替え歌として使われているんですね。

野球でもバッター毎の応援歌の中に大学祝典序曲を聞いたことがあります。(学生歌「ぼくらはりっぱな校舎を建てた」)

日本人がクラシック呼ばわりしている音楽を、もっと身近に感じる必要があるんですよね。ヴェルディなんざ、パルマ市民の演歌みたいなものなのかしら。

投稿: かげっち | 2009年9月 1日 (火) 12時24分

かげっちさん、こんばんは。

演歌みたいなものなのかどうかは良く分かりませんが、イタリア人が歌好きでオペラ好きなのは確かなようです。
たまたま会社に来たイタリア人に「オペラを聴くの?」って質問したら、「自分は聴かないけど好きな人はとても多い」という答えが帰ってきました。
ですので、オラが町のオペラ大作曲家じゃ、それはみんなに愛されるのでしょうね。

投稿: ハルくん | 2009年9月 1日 (火) 23時25分

ハルくんさん こんにちは

イタリアでは大人の十人に一人が歌の師匠の資格を持っているとか聞いたことがあります。おおげさなような気もするけど、感覚はわかります。イタリア語自体が歌ってるような言葉ですよね。

高知の人が坂本龍馬を、鹿児島の人が西郷隆盛を敬うのと同じような感じなのかしら。とにかく日本人がクラシックと思っているものの相当部分が日常と化しているようです。

投稿: かげっち | 2009年9月 2日 (水) 12時11分

かげっちさん、こんばんは。

浅利慶太さんがドイツのソプラノ歌手エリカ・ケートさんと対談した際に彼女が語った言葉を自著に書き留めています。

彼女曰く、イタリア語は「歌に向く言葉」、フランス語は「愛を語る言葉」、ドイツ語は「詩を作る言葉」だったそうです。そこで、浅利さんが日本語について問うと彼女の答えは「人を敬う言葉」だったそうです。

なるほどザ・ワールド!ですね~。

投稿: ハルくん | 2009年9月 2日 (水) 21時21分

イタリア語とフランス語については聞いたことがありましたが、ドイツ語はそうなんですか。ドイツ語の子音の響きなしには、バッハのカンタータもシューベルトのリートもなかったことは確かです。

投稿: かげっち | 2009年9月 4日 (金) 12時18分

かげっちさん、こんにちは。

あの文切り型発音のドイツ語はじつに詩に似合いますよね。
ドイツリートは古くは吟遊詩人に歴史をさかのぼりますし、最初に「詩」がありきで、それにメロディをつけるということですね。その後の様々な歌曲集にも大抵は「だれそれの詩による歌曲集」というタイトルが付いています。多くの文学家が競って優れた詩を作ったわけです。

投稿: ハルくん | 2009年9月 5日 (土) 07時57分

ミラノ座の「アイーダ」は、去年も
来日しましたね。
去年は、バレンボイム指揮、アイーダは
ウルマーナでした。
今年は違う人が来るのでしょうか。

ミラノ座のセットは絢爛豪華で
規模もすごく大きくて見ごたえが
ありました。

ああいう本格的なものを、やはり見たいです。

投稿: 四季歩 | 2010年4月 5日 (月) 19時03分

四季歩さん、こんばんは。

「アイーダ」を生で観るなら、やっぱり豪華絢爛がいいですよ。昔、代々木体育館で本物の象の行進まで出た公演が有りましたっけ。

ゼフェレッリ演出のミラノスカラ座を観たいですが、残念ながら観たことがありません。同じゼフェレッリ演出の新国立劇場公演は観ましたけれど。それでも豪華な舞台を充分に楽しめました。

投稿: ハルくん | 2010年4月 5日 (月) 20時32分

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