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2009年8月14日 (金)

~JAZZの帝王~ 「カインド・オブ・ブルー」 マイルス・デイヴィス

アメリカという国はとても広大であり、そこには様々な人種や文化が存在していることは誰でも知っていますね。そんなこの国で最も「アメリカらしい」音楽とは何かと考えてみました。

008_3 僕は仕事で何度かアメリカへ行きましたが、南部の広大な台地のどこまでも一直線で続く道路を車で走り続ける時にはカントリー&ウエスタンが一番しっくりきました。カントリー・ミュージック専門のラジオステーションでは、一日中そればかりを流しているので何時でも聞けるのです。と言っても現代のC&Wはテンポがたいてい速くて、やはりハイウェイ・ドライブ向きです。古いC&Wの曲だとテンポがずっとゆっくりで、あたかも馬の背中に乗って歩いている風情なのです。やはり時代の変化ですねぇ。話は逸れましたが、田舎ならばカントリー&ウエスタンこそが最もアメリカらしい音楽だと思います。

0065_md_stand2 それでは都会ではどうでしょう?ニューヨークやシカゴでカントリー?ちょっと違いますね。ブルース?ゴスペル?ソウル?ロック?僕ならやはりジャズだと思います。白人と黒人が混在して暮らす都会。そんな都会の夜の音楽といえばジャズを置いて他に無いと思うのです。それでは古今のジャズミュージシャンの中で最も代表的なプレーヤーは誰でしょう?たぶんこの質問には100人中99人はマイルス・デイヴィスと答えるのではないでしょうか。この人は昔から「帝王」と呼ばれていますが、モダンジャズを自ら確立させて更に比類なく進化させた正に「キング・オブ・ジャズ」です。この人にジャズのエッセンスが有るのではなく、ジャズのエッセンスがこの人そのものなのです。随分偉そうなことを言いましたが、僕は実はジャズについてはほとんど素人です。そんな素人ですら自信を持って言えるほどマイルスは偉大なのですね。

41ym8bq03xl__ss500__2 さて僕はマイルスの膨大な作品群は代表的な作品しか聴いていません。理由は余りに多すぎるからです。ですがその中でも最も惹かれるアルバム作品であり、専門家に聞いても同様に評価が特に高いアルバムが「カインド・オブ・ブルー」なのです。即興演奏が命のジャズはどんなに名曲を演奏してもミュージシャンが良くなければ何の魅力も有りません。そこがクラシックとはだいぶ違います。その点で、このアルバムでマイルスが集めているミュージシャンは最高のメンバーです。「最高」というよりも「奇跡的な」メンバーですね。常に最高のメンバーを揃えたマイルスの作品の中でも特に素晴らしいメンバーと言えるでしょう。パーソネルをご紹介します。

マイルス・デイヴィス(トランペット)、ジョン・コルトレーン(テナーサックス)、ビル・エヴァンス(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、ジミー・コブ(ドラムス)ですが、一部の曲にキャノンボール・アダレイ(アルトサックス)とウイントン・ケリー(ピアノ)が入ります。

収録曲は全部で5曲。いずれも夜の都会のしじまに染み入るような音楽です。これほどまでに静けさと美しさを湛えた繊細なジャズの演奏って他に有るのでしょうか?それは決して神経質ということでは無く、優しくも孤独な大人の男の背中に滲み出るような雰囲気ですね。ブラームスの最良の室内楽演奏を聴いている感じでしょうか。マイルスのトランペットはもちろん無類の素晴らしさですが、ビル・エヴァンスのピアノがもう美しさの極みです。コルトレーンもさすがです。何より凄いのはメンバー全員の音が一体と成り切っていることです。それはやはりマイルスのリーダーシップなのでしょうね。

とにかく、夜聴くのにこれほど相応しい音楽は有りません。昼間にボサノヴァやカントリー&ウエスタンを楽しんだ後にも、夜更けになったら、ウイスキー・グラスを傾けながらマイルスを聴きましょう。あ~素晴らしいなぁ。うーんマイルス!

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音楽(ジャズ)」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。m(_ _)m
貴Blog参考に、オイストラフ&ロジェヴェン/チャイコVn協を購入。他で紹介されてナイのが不思議な位の愛聴盤デス。謝々。

元々Jazzで音楽に目醒めたので、ご挨拶の時が来たと・・・。(*^-^)

Miles先生自叙伝での、BlueとSpainの件は、Classicお好きな方には読み応えが在るかと。本盤より、愛聴曲Blue in Green全take聴ける、禁断のMaking of Kind of Blueに手が伸びてしまいマス。

投稿: source man | 2009年8月14日 (金) 17時39分

source manさん、はじめまして。
ブログにお越し下さいましてどうも有り難うございます。

オイストラフ/ロジェストヴェンスキーのチャイコV協は最高ですよね。そのようにおっしゃって頂けて誠に嬉しい限りです。

貴方の様な本格Jazzファンに記事を読まれるとお恥ずかしいのですが、クラシックファンの方に少しでも興味を持ってもらえればと記事をUPした次第です。
さすがにブートレグに到達するのはまだ先のことかと思っていますが機会有れば是非。

またお立ち寄り下さるのを楽しみにしております。


投稿: ハルくん | 2009年8月14日 (金) 23時07分

私も、99人の中に入ります(笑)

とにかくマイルスは文句なし。
曲はいいし、カッコいいし。

ジャズがわからない、私のカミさんでさえ、
私がLPのおまけでもらったポスター、
ほんとにかっこいい写真だったんだけど、
パネルにして飾ってましたからね(笑)

ちなみに、私の持ってる雑誌によると、
去年のマイルスのアルバムランキング、
一位は「カインドオブブルー」でしたね。

投稿: 四季歩 | 2009年8月14日 (金) 23時53分

四季歩さん、おはようございます。

たとえば同じようにクラシックの指揮者を選んだらどうでしょう。フルトヴェングラー35人、カラヤン30人、クナッパーツブッシ10人、ワルター8人、バーンスタイン6人、ベーム4人、トスカニーニ4人・・・というようにきっと票が割れるでしょうね。

同じ「帝王」と呼ばれてもジャズ界でのマイルスの存在は圧倒的ですよね。
やはり「カインド・オブ・ブルー」がランキングナンバーワンでしたか。むしろ2位以下の順番に興味が有りますね。

投稿: ハルくん | 2009年8月15日 (土) 07時28分

彼はコード進行から自由になるために、アドリブにドリア旋法を使うことを思いついたといいます。私の考えでは、これは管楽器奏者からみれば必然の要求であり、それを実現して新しいモードジャズの時代を実際に拓いた彼の功績は大きいと思います。(コードって鍵盤楽器やギターの発想だと思うのです。)私にはとてもしっくりくる、都会の夜のジャズです。

投稿: かげっち | 2009年8月17日 (月) 15時28分

おおっ、かげっちさんもマイルス・ファンでしたか!
それにしても相変わらず管楽器奏者としての鋭い視点と分析には感服します。
ほんとうに都会の夜のジャズ、いいですよね~。

投稿: ハルくん | 2009年8月17日 (月) 22時36分

春ごろだったか、マイルスの軌跡をたどったNHK番組を再放送(?)していて、彼の背景を少しだけ知ったような気がしました。音楽はすべてそうでしょうが、ジャズもまた社会のあり方と深い関連をもって育ってきたジャンルです。その関連は音楽に陰影を与えると同時に、もっといろんなことをしたいアーティストにとっては束縛にもなります。「虐げられた貧しい黒人の音楽」というラベルを剥がして新しいラベルを貼ったのがマイルスかもしれません。
私は鍵盤楽器を習ったことが一度もありません。が、作曲やアレンジは多少いたします。ピアノを弾けないのが不便であることは言うまでもありません。結果として私が書いた曲は、古代旋法に基づくモノローグのような音楽や、線と線の絡み合いのような対位法的な音楽になってしまいます。それで、マイルスのモードジャズについて聞いたとき、ああそれか!と思ったのです。

投稿: かげっち | 2009年8月18日 (火) 12時44分

それでは
2位:ライブ・アットザ・モントルージャズフェスチバル
3位:ザ・コンプリート・オンザ・コーナー・セッションズ
4位:ビッチェス・ブリュー
5位:ラウンド・アバウト・ミッドナイト
6位:フォア&モア
7位:リラクシン
8位:クッキン
9位:マイ・ファニー・バレンタイン
10位:チュチュ

いかがでしたか?

投稿: 四季歩 | 2009年8月18日 (火) 20時01分

かげっちさん、こんばんは。

僕はそのマイルスの番組は見ていませんが、興味深い内容だったようですね。
マイルスの凄いなあと思うのは、彼のトランペットは楽器の音に聞こえないところです。人間の息づかいとかため息とか叫び声とか、何かそんな風に聞こえます。音の出し方が独特ですよね。しかも特に感心するのは弱音の繊細さです。

投稿: ハルくん | 2009年8月18日 (火) 23時32分

四季歩さん、こんばんは。

なかなか耳の肥えたファン向けの雑誌のようですね。まだ聴いたことの無いアルバムが随分ありますので是非参考にさせて頂きます。
ありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2009年8月18日 (火) 23時55分

こんにちは。

~Blueとは関係ナイですが、こちらに書き込みを。
5/16Hank Jones死去を今朝の新聞で

「Somethin' Else」は枯葉だけでなく、Love For Saleも史上ベスト。
10年程に起用されたパナソニックCM「ヤルモンダ~」の関係でしょうが、大阪のJazz喫茶やClubを氏が訪ねる番組で、店主が「Somethin~」を流した処、「おぉ~コレは私の演奏ではナイか。録音に使ったピアノは、1000台に1台と言われたもので、いま聴いても私の演奏とは思えナイ(笑)」と。

他の作品を聴いて、同じ人とは思えなかった謎が解けました。Milesの魔法と思ってたのが、実は楽器に秘密が在ったんです。

「Zoot at Ease」。嫌いなBonus Trackが無いMobile Fidelity盤を、何年も探して先日入手したばかり。ピアノは偶然にもHank Jones。巡り合わせを感じます

投稿: source man | 2010年5月19日 (水) 10時05分

source manさん、こんばんは。

ええ、ハンク・ジョーンズさんが亡くなりましたね。「Somethin' Else」のピアノは素敵でしたね。あのコロコロって感じがたまりません。昔のピアニストの音は金属的な硬い音がしませんから心が癒されます。クラシックでもたとえば50年代のクララ・ハスキルとかディヌ・リパッティとかのピアノの音は本当に優しさを感じる良い音だと思います。大ホール向きの楽器開発(調整)には疑問を感じます。
って、なんだか話がそれてしまいましたね。(苦笑)

投稿: ハルくん | 2010年5月19日 (水) 21時53分

こんにちは。

>なんだか話がそれてしまいましたね。
返信し辛い書き込みに返して下さっただけで嬉しいです

訃報で知ったのですが、M.モンローがJ.F.K誕生日で歌った際の伴奏者だったんですね。w(゚o゚)w

Somethin'~の呪縛で【他にも名演が何処かにー】と探したものの、そりゃ見つけられない訳です。本人が「自分とは思えない」と言ってるのだから。「Zoot at Ease」で解放されました。Zoot Simsとしてもベストです。

投稿: source man | 2010年5月20日 (木) 13時30分

source manさん、こんにちは。

あのモンローの伴奏を弾いていたのですか。
なるほど、本人が自分の演奏と思わないのでは、それに匹敵する演奏に中々出会えないのもうなずけますよね。(笑)

投稿: ハルくん | 2010年5月21日 (金) 07時06分

こんにちは。

チェリビダッケの件、何だか恐縮です

昨日、Kind of Blueの初期米国盤(品番:CK 40579)を見つけ、¥500に釣られました。裏ジャケに、Digital Remix Producer:Teo Maceroと明記されてたからです。マックルーア盤のJazz.verたり得るのかと

音は確かに柔らかい。でも、肝心のBlue in GreenはEvansの叙情ピアノが遠い...。続けて聴いたDSDリマスター盤はより聞こえます。通してMilesやsaxは耳あたりが良く、~Green以外は旧盤が自分には

まさかJazzで旧盤に手を出す時が来るなんて
西独盤・初期盤シンドロームの副作用。比較は楽しいですケド。

投稿: source man | 2010年5月23日 (日) 11時20分

source manさん、こんにちは。

JazzもRockもclassicもリマスターによる音の違いは明確ですよね。新リマスターよりも旧盤のほうが良い場合も多々有りますし。ただし音の評価は各自の好みによるところも多いので一概には言えませんね。
好きなアルバムの音の比較は確かに楽しいです。

投稿: ハルくん | 2010年5月23日 (日) 12時13分

Kind of Blue ですか。買った時、アマゾンで売り上げの10位以内にいました。全ジャンルでです。半世紀前の盤なのに。

この盤、共演者のビルエバンスが、墨絵のような静けさと述べてますが、納得です。マイルスは(特に50年代は)静けさやリリシズムを中心にしてましてね。後になるほど騒がしくなるけど。マラソンセッションやバグスグルーブもいいですよ。(もちろん後のネフェルティティもアガルタもいいです。)

ただおれはJAZZというと、セロニアスモンク。モンクのたたきだす不協和音と狂ったリズムは、月に憑かれたピエロや中国の不思議な役人風の表現主義の、あるいはダリウスミヨーの再来かと思ってしまいます。

モンクとマイルスがやった例の「ケンカセッション」もいいですよ。

投稿: gkrsnama | 2013年6月 1日 (土) 00時45分

gkrsnamaさん、こちらへもコメントを頂きましてありがとうございます。

僕はJazzは好きですが、それほど聴いているわけではありません。マイルスの場合は1950年代の終わりから1960年代の頃が一番しっくり来ますね。

モンクは「Brilliant corners」だけは持っていますが、他のアルバムを聴きたくなるほどは好んでいません。よく判らないというのが正直なところです。あれだけの世評の高さですから、そのうち(っていつの事かは判りませんが)気が変わるかもしれないですけれども。
モンクとマイルスの「ケンカセッション」というのは聴いてみたいですね。ありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2013年6月 1日 (土) 12時51分

お久しぶりです。マイルスと言えば……彼が熱愛したクラシックの盤をご存知でしょうか。
ミケランジェリの「ラフマニノフ4番/ラヴェルト長調」
有名な盤ですが、ビル・エヴァンスがミケランジェリの崇拝者で、58年頃入団した頃、ちょうど発売されたこの盤をボスに推薦。マイルスが熱中したことが、あの分厚い自伝に何度も出てきます。
「オレは一時このレコードばかり聴いていたから、演奏に影響が出ていたと思う」なんて、あのプライド高いマイルスが言っています。

投稿: ういぐる | 2019年10月26日 (土) 21時39分

ういぐるさん、こんにちは。

天才音楽家は天才を理解するということですね。
確かにミケランジェリはある意味で唯一無二の演奏家だと思います。

投稿: ハルくん | 2019年10月28日 (月) 14時21分

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