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2009年8月

2009年8月30日 (日)

~恋人に捧げるコンチェルト~ 「ラヴァーズ・コンチェルト」 サラ・ヴォーン

Cci00016 今日は天下分け目の総選挙。政権交代が決定的な情勢です。そんな日本列島には台風が近づいていて夕方からは大雨。正に嵐の一日でした。それにもう直ぐ夏も終わりを遂げようとしています。今日は何となくクラシックと言う気分では有りません。そこでお気に入りのCDを取り出しました。ジャズ・ヴォーカルの女王(と僕は思っている)サラ・ヴォーンのスタンダード曲のベストアルバムです。

実はこのアルバムの1曲目の「ラバーズ・コンチェルト」は僕の大好きな曲なのです。半分はこの曲が聞きたくてこのアルバムを買ったようなものです。原曲はJSバッハの「メヌエット」ですが、よもやこれがバッハとはとても思えないほどの名曲に化けています。恐らくはクラシック曲のアレンジとしてはベートーヴェンの「エリーゼのために」がザ・ピーナッツの「情熱の花」(あるいは後年の「キッスは目にして」)に化けたのと双璧では無いでしょうか。

このアルバムには名曲が目白押しです。順に紹介しますと、1.ラバーズ・コンチェルト 2.スターダスト 3.酒とバラの日々 4.ムーン・リバー 5.いそしぎ 6.セプテンバー・ソング 7.イエスタデイ 8.ミスティ 9.オール・オブ・ミー 10.マイ・ファニー・バレンタイン 11.煙が目にしみる 12.誰かが誰かを愛してる 13.イパネマの娘 14.シャレード 15.ラヴ 16.ミッシェル 17.ダニー・ボーイ 18.思い出のサンフランシスコ 以上です。

もちろんこれらが全て他の歌手の持ち歌よりも優れた歌唱であるなどと言うつもりは毛頭有りません。「イパネマの娘」なんかは、あのアストラッド・ジルベルトのポワ~ンとした歌い方がやはり最高ですし、「イエスタデイ」や「ミッシェル」はビートルズの方が断然好きです。ですが、実力派サラ・ヴォーンが余裕を持って歌うスタンダード曲をまとめて味わうのも本当に楽しいものです。

いやー、それにしてもジャズ・ボーカルはイイですね。こんな風に歌の上手な女性に近くで歌われたら最高でしょうね。きっと僕はイチコロです。

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2009年8月23日 (日)

ヴェルディ 歌劇「アイーダ」全曲 続・名盤

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今年の夏から秋にかけては、ヴェルディの傑作オペラ「アイーダ」がどうも流行りそうです。もともとイタリアオペラの中でも「椿姫」「蝶々夫人」「ラ・ボエーム」「トゥーランドット」と並んで公演される回数の多い作品なのですが、今年はオペラだけでなくミュージカルでも色々と取り上げられるからです。

オペラでは9月に世界一のイタリアオペラハウスであるミラノ・スカラ座が来日して「ドン・カルロ」とこの「アイーダ」を公演します。同じ9月には梅田芸術劇場が東京と大阪でミュージカル「アイーダ」を公演します。これは数年前の宝塚のミュージカルがベースだそうです。もうひとつは劇団四季がディズニー製作のブロードウェイ作品を公演します。但し音楽はどちらもヴェルディとは関係無いようですし、ディズニー版の音楽はエルトン・ジョンですので、お得意のラブ・バラードが満載でしょう。昨年夏に歌舞伎座で公演された野田秀樹さんが演出した「野田版・愛蛇姫」は逆にヴェルディの音楽を和楽器にとても面白くアレンジしていたのでオペラファンとしてはとても楽しめました。それにしても、これだけ色々と形を変えて公演されるということはこの「アイーダ」がそれだけ人々にとって魅力有る作品だということでしょう。

以前、自分のCD愛聴盤としてリッカルド・ムーティのEMIスタジオ録音盤とバイエルン歌劇場でのライブ録音盤の2種類、それにクラウディオ・アバドのミラノ・スカラ座でのライブ録音盤について記事にしました。
<旧記事>ヴェルディ 歌劇「アイーダ」全曲 名盤

もちろん、これらは不動のベスト・スリーである事に変わりは無いのですが、実は、他にも非常に魅力的な演奏が有りますので続編としてご紹介したいと思います。

Cci00015アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC響(1949年録音/RCA盤) 20世紀最大の指揮者の一人トスカニーニにとって「アイーダ」は曰く付きのオペラです。すでに19歳でイタリアの歌劇場の首席チェリストであり合唱副指揮であった彼は、ブラジル演奏旅行の時に正指揮者が倒れた為に急遽本番を指揮することになりました。その時の演目が「アイーダ」であり、演奏会は大成功を収めたのです。このCDはモノラル録音ですし、歌手陣も弱い部分は有ります。しかしこの力強く圧倒的なエネルギーを持つ管弦楽の音はまぎれも無くトスカニーニです。想像を絶する迫力が有ります。これは単に歴史的な録音ということだけではなく是非とも聴いて頂きたい演奏だと思います。

Cci00015b ズビン・メータ指揮ローマ歌劇場(1967年録音/EMI盤) メータはオペラのレパートリーは決して多くは無いですが、得意な演目はなかなか素晴らしいのです。例えば「トゥーランドット」を十八番にしていて、フェレンツェ歌劇場の3年前の日本公演も素晴らしかったですし、DECCAへの録音盤も自分の愛聴盤です。この「アイーダ」はほとんど話題にならない演奏ですが、素晴らしいニルソンのアイーダ、コレッリのラダメスを聴くことが出来ますし、ローマ歌劇場管の音がとても地中海的に輝かしくて良いのです。特筆すべきは凱旋行進の場のトランペットが荒々しく勇壮で実にリアルです。軍隊ラッパはこうでなくてはいけません。まるで行進が目に浮かぶようです。いくらアイーダトランペットを使っても、綺麗で上手に吹かせて雰囲気が出ないのでは困ります。全体も熱くドラマティックで素晴らしいです。このような名演奏が世に埋もれているのはとても残念なことです。

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2009年8月21日 (金)

ザ・ローリング・ストーンズ 「レット・イット・ブリード」 ~キング・オブ・ロックバンド~

20050921ab4049ce キング・オブ・ロックと言えばビートルズ。キング・オブ・ハードロックならツェッペリン。キング・オブ・プログレッシヴロックならキング・クリムゾン。当然ですがジャンルによってキングは異なります。しかし、もしも”キング・オブ・ロックバンド”と言ったらどうでしょう?ビートルズ?うーん、ちょっと違うのですよねぇ。アーティストとしては最高なのですが、バンドとしてはまた別の話です。だったら何かって?そりゃあローリング・ストーンズを置いて他には居ませんよ!

彼らのバンド結成は1963年ですから、もう45年になります。最近では2006年にワールドコンサートツアーで日本にもやって来ました。隠れストーンズ・ファンである僕も東京ドームへ聴きに行きました。

2494_11661253905752 同じ2006年にブラジルのリオのコパカバーナ・ビーチで行われた無料コンサートでは何と200万人が集まりました。ウッドストックの聴衆が40万人ですから、その5倍!なんというスケールでしょう。こんな巨大な規模のコンサートを開けるバンドが他に有りますか?

彼らは60年代当時、ビートルズに並び称される唯一の人気バンドでした。しかしナンバーワンはいつでもビートルズ。彼らは2番目。ビートルズが優等生的なイメージなのに対して、ストーンズは不良のイメージ。メンバーの印象も音楽の印象も同じです。ところがビートルズは70年に僅か10年にも満たない活動期間で解散しましたが、ストーンズは一部メンバーを変えながらも、いまだに現役を続けています。今ではすっかり、ちょいワルオヤジバンドの雰囲気です。それにしても彼らの貫禄はさすがです。これほどの貫禄を持ったバンドはちょっと居ませんよね。やっぱり”キング・オブ・ロックバンド”の称号は彼らにこそ相応しいと思います。もう還暦を迎えるミック・ジャガーは若い頃と少しも変わらず元気一杯に動きながら歌います。但し、ロン・ウッドがギターに加わってからは、サウンドがすっかり明るいイメージに変ってしまいましたので、個人的にはそれ以前の時代のほうが好きなのです。

Cci00014 彼らのベストアルバムは何でしょう?「スティッキー・フィンガーズ」?ファンに非常に人気が有りますね。ですが僕は「レット・イット・ブリード(LET IT BLEED)」 を上げます。この安定感の有る巨大な音楽はどうでしょう。ハードロックもぶっ飛ぶ迫力の「ギミーシェルター」を初め、カントリー、スワンプ、ゴスペルのテイストを加えた正に大人のロックが繰り広げられます。メンバーは過渡期で、プールで溺死したブライアン・ジョーンズも一部に参加していますし、新メンバーのミック・テイラーも既に2曲に参加しています。それにもかかわらず、アルバム全体のまとまりは非常に良いのです。音楽は個性的なので誰でも気に入るかどうかは判りませんが、個人的にはこの傑作はロック史において10指、場合によると5指に入ると思っています。

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2009年8月19日 (水)

キング・クリムゾン 「クリムゾン・キングの宮殿」 ~キング・オブ・プログレッシヴ・ロック~

Cci00013_2 夏休みも終わったので、サマー特集はこれ位にしてクラシックに戻ろうかと思ったのですが延長です。1955年前後に誕生して驚くべき速さで進化してきたロックミュージックでしたが、1970年近くになると「ロック」の枠さえも飛び出して様々な新しい試みを目指した前衛的なロックが現れました。「プログレッシヴ・ロック」です。ピンクフロイド、ナイス~ELP、YESあたりが代表格に上げられますが、やはりキングの座はその名の通りキング・クリムゾンでしょう。1969年リリースのデヴューアルバム「クリムゾン・キングの宮殿」の衝撃はとてつもないものでした。彼らはメンバーを刻々と変えて多くのアルバムを生み出し、その中には多くの人が最高傑作に上げる「RED」も有りますが、歴史的観点から見たときにはこのデヴューアルバムこそが最も重要な作品です。これは間違いなくロック史の5指に数えられる名作でしょう。それにしても1969年にこれほどのアルバムが存在したとは正に驚きです。

曲目は順に、1.「21世紀の精神異常者」 2.「風に語りて」 3.「エピタフ(墓碑銘)」 4.「ムーンチャイルド」 5.「クリムゾン・キングの宮殿」

彼らが後に進むメタル・ヘヴィー・ロックの先駆けとなる作品は第1曲のみです。中間部は一転、激しくジャズもしくはフュージョン的になります。第2曲以降はある種の退廃的な雰囲気を漂わせた叙情的な名曲が続きます。とりわけ「エピタフ」の深々としたロマンの美しさは想像を絶しています。このアルバムでは後にEL&Pに参加するグレッグ・レイクがヴォーカルを取っているのも特徴的です。優秀なベーシストでいながら彼が甘い声でロマンティックに歌いあげると非常に音楽が優しく聞こえるようになります。

それにしてもこのアルバムのジャケット絵も一度見たら忘れられません。名作の名ジャケットと言えます。

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2009年8月16日 (日)

レッド・ツェッペリン 「LED ZEPPELIN Ⅱ」 ~ハードロックの巨人~

ロック史上最も偉大なアーティストはビートルズ。ですが後世にバンドとしての影響を強く与えたのは彼らでは有りません。ロックフリーク、ギターフリークはもちろんヘヴィーメタル・ファンにさえ神格化された存在というとレッド・ツェッペリンを置いて他には無いと思います。もちろんクリーム、ディープ・パープル、キング・クリムゾン、ブラック・サバス、クイーンといった歴史に残るバンドが有りますが、後年のロックファンの憧れという点では何といってもレッド・ツェッペリンでしょう。僕も最初はビートルズ、ストーンズが好きでしたが、ツェッペリンがデビューしてプロモーションビデオをTVで見たとたんに大ファンになりました。

4439s_3 レッド・ツェッペリンは1971年に初来日してコンサートを開きました。それは1966年のビートルズ来日から僅か5年後。ロックミュージックの進化は恐ろしいほどに加速していたのです。東京の日本武道館で行われたZEP公演には既に高1になっていた自分も友人数人と一緒に行きました。当時の中高生としては結構おませだった気がします。ヴォーカルのロバート・プラント、ギターのジミー・ペイジ、ベースのジョン・ポール・ジョーンズ、ドラムスのジョン・ボーナムという4人編成です。もちろんプラントの声やボーナムの重厚なドラムスも大きな魅力なのですが、ZEPが他のどのバンドとも違い得たのはやはりジミー・ぺイジの存在の大きさです。ギターテクニックで比べれば当時のエリック・クラプトンやジェフ・べックの方が上ですし、他にも上手いプレーヤーは大勢居たと思います。しかし彼ほどカッコ良くセンスの有るリフ(曲の元になるパッセージ)を多く持った人は他に居なかったと思います。ですのでいかにも「ハードロック」という魅力的な曲が非常に多いのです。

41ugysbn4ol__ss500_ 「LED ZEPPELINⅡ」 ZEPファンによっては彼らの全ての時期の音楽を好むということでも無いと思います。かくいう自分も好きなZEPのアルバムはせいぜい4枚目まで。以降の作品はそれほど好みません。その中で僕がたった一つ選ぶとすればセカンドアルバムです。ブルースバンドとしてのベストはファーストアルバムでしょうし、人によっては名作「天国への階段」を含むフォースアルバムの方を好むでしょう。けれども彼らを最高のハードロックバンドとして考えると、やはりこのセカンドアルバムがベストだと思います。1曲目の「胸いっぱいの愛を(Whole lotta love)」から最後の「ブリング・イット・オン・ホーム」まで9曲の名曲が実にスリリングな演奏で息つく間もなく続きます。これこそはハードロック史上最大の傑作だと思います。

261546020ea0cc4c176e8110_l 「HOW THE WEST WAS WON」 彼らのライブをベストパフォーマンスで記録した3枚組みアルバムが結成35周年記念として2003年に発売されました。僕はこのCDセットを聴いて懐かしさで胸が一杯になりました。彼らは必ずしも生演奏がいつでも完成度が高かった訳では無かったですが、ここでは全盛期のベストの演奏が優秀な録音で楽しめます。昔彼らのファンであった方、現在ファンである方が当時のライブに接してみたいと思われればこのCDは最高の贈り物になることでしょう。いやぁー久々に聴いたのですがやっぱりいいわぁ~。

という訳でお盆休みも終わって明日からはまた仕事です。サマー特集も今日で最後となりました。気分もリフレッシュしましたのでまた元のクラシックに戻ります。でもこれからもジャズやロックや色々な音楽を気ままに記事にして行こうかと思います。

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2009年8月15日 (土)

ザ・ビートルズ 「サージェント・ペパーズ」&「アビーロード」 ~ロック史上不朽の名作~

当たり前のことですが、ロックミュージックの歴史はクラシックと比較すれば遙かに短いです。カントリー&ウエスタンとリズム&ブルースをベースに若者のパッションやエネルギーが注ぎこまれて生れたのがロックンロールミュージックでした。それは世界大戦が終わって約10年後の1955年前後のことです。すなわち現在50代前半の方はロックミュージックと一緒に人生を過ごしてこられたことになります。かくいう自分もそのうちの一人です。

Img0b0c4d4dlw88sg 自分も若い頃にはロックに本当にのめりこんだものですが、現在はクラシックを中心に聴いています。クラシックにはずっと長い歴史があり、その時を越えて現在も生き残っている音楽にはやはりそれだけの重みが有ると思います。ですがロックにも半世紀を越えた歴史の中で普遍的な生命を持った音楽が存在します。もしも「キング・オブ・ロック」を選ぶとすれば誰でしょうね。エルヴィス・プレスリー?確かに1950年代に限定すれば正解でしょう。けれども50年代はまだロックの黎明期。真に進化するのは60年代も後半になってからです。だとすればザ・ビートルズを置いて他には居ないでしょう。この偉大なロックバンドですが、活躍時期は驚くほど短いのです。EMIから正式デビューしたのが1962年、解散したのは1970年ですから、グループとしての活動期間は僅か8年間です。この事は例えれば早逝の天才モーツァルトの人生35年に匹敵すると思っています。そして彼らのデビュー曲「ラブ・ミー・ドゥ」のシンプルさと最後のレコーディングアルバム「アビー・ロード」の音楽的な内容の進化結果の隔たりは正に驚異的です。また存在自体が社会現象化したこともいくら当時の時代の潮流とは言え実に驚くべきことです。日本に来日した時には、彼らの音楽を聴いたことの無い大人たちまでもがテレビの前でコンサート中継に注目したものです。髪型やファッションまでが世の中の話題をさらいました。あんなことは後にも先にもビートルズだけですね。

ビートルズのベスト曲をもしも投票したら、おそらく20曲位に票が割れることでしょう。僕もとても選べません。それぐらい名曲揃いなのですね。ですがアルバム単位で選ぶとすれば二つに絞ることは容易です。「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」と「アビーロード」です。但し問題となるのは最終選考です。

Splhcb 「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」 ロックミュージックの歴史的な意義という点では疑いも無く最高のアルバムです。それまでの1曲単位の寄せ集めであった構成を、アルバム単位のトータルコンセプトという構成に初めて変えました。このアルバムには他の全てのミュージシャンが影響を受けたことは間違い有りません。このアルバムからは特に傑出したシングルヒットは出ていないのです。あくまで全体としての完成度の凄さです。様々な音造りのアイディア満載ですが、現在のような進化したデジタル録音機材が有った訳でない当時を考えると驚異的です。ロック音楽史上不朽の名作と言えるでしょう。

060829_2_img_03 「アビーロード」 彼らの最後のレコーディングです。発売は「LET IT BE」が後になりましたが、録音はこのアルバムがラストです。ここには僅か数年前にビッグ・バンした巨星がもうじき消え去る直前に最後の大きな輝きを放つ姿が有ります。収録曲は全て名曲なのですが、単にビートルズの音楽のみでなくあらゆるポピュラー音楽のエッセンスとなっています。当時のアナログLP盤の場合にはA面、B面の表裏面が有りましたが、シングルヒットが並ぶA面もさることながら、B面の何曲もが切れ目無く千辺万化しながら流れる音楽は息つく間もなく、こんなポピュラー音楽は他では未だに聞いたことが有りません。

この二つはどちらもロック史における大傑作であり、あらゆるアルバムの中でも両方とも間違いなく5指に入ることでしょう。但し個人的にどちらか片方を選べと言われれば「アビーロード」を選びます。

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2009年8月14日 (金)

~JAZZの帝王~ 「カインド・オブ・ブルー」 マイルス・デイヴィス

アメリカという国はとても広大であり、そこには様々な人種や文化が存在していることは誰でも知っていますね。そんなこの国で最も「アメリカらしい」音楽とは何かと考えてみました。

008_3 僕は仕事で何度かアメリカへ行きましたが、南部の広大な台地のどこまでも一直線で続く道路を車で走り続ける時にはカントリー&ウエスタンが一番しっくりきました。カントリー・ミュージック専門のラジオステーションでは、一日中そればかりを流しているので何時でも聞けるのです。と言っても現代のC&Wはテンポがたいてい速くて、やはりハイウェイ・ドライブ向きです。古いC&Wの曲だとテンポがずっとゆっくりで、あたかも馬の背中に乗って歩いている風情なのです。やはり時代の変化ですねぇ。話は逸れましたが、田舎ならばカントリー&ウエスタンこそが最もアメリカらしい音楽だと思います。

0065_md_stand2 それでは都会ではどうでしょう?ニューヨークやシカゴでカントリー?ちょっと違いますね。ブルース?ゴスペル?ソウル?ロック?僕ならやはりジャズだと思います。白人と黒人が混在して暮らす都会。そんな都会の夜の音楽といえばジャズを置いて他に無いと思うのです。それでは古今のジャズミュージシャンの中で最も代表的なプレーヤーは誰でしょう?たぶんこの質問には100人中99人はマイルス・デイヴィスと答えるのではないでしょうか。この人は昔から「帝王」と呼ばれていますが、モダンジャズを自ら確立させて更に比類なく進化させた正に「キング・オブ・ジャズ」です。この人にジャズのエッセンスが有るのではなく、ジャズのエッセンスがこの人そのものなのです。随分偉そうなことを言いましたが、僕は実はジャズについてはほとんど素人です。そんな素人ですら自信を持って言えるほどマイルスは偉大なのですね。

41ym8bq03xl__ss500__2 さて僕はマイルスの膨大な作品群は代表的な作品しか聴いていません。理由は余りに多すぎるからです。ですがその中でも最も惹かれるアルバム作品であり、専門家に聞いても同様に評価が特に高いアルバムが「カインド・オブ・ブルー」なのです。即興演奏が命のジャズはどんなに名曲を演奏してもミュージシャンが良くなければ何の魅力も有りません。そこがクラシックとはだいぶ違います。その点で、このアルバムでマイルスが集めているミュージシャンは最高のメンバーです。「最高」というよりも「奇跡的な」メンバーですね。常に最高のメンバーを揃えたマイルスの作品の中でも特に素晴らしいメンバーと言えるでしょう。パーソネルをご紹介します。

マイルス・デイヴィス(トランペット)、ジョン・コルトレーン(テナーサックス)、ビル・エヴァンス(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、ジミー・コブ(ドラムス)ですが、一部の曲にキャノンボール・アダレイ(アルトサックス)とウイントン・ケリー(ピアノ)が入ります。

収録曲は全部で5曲。いずれも夜の都会のしじまに染み入るような音楽です。これほどまでに静けさと美しさを湛えた繊細なジャズの演奏って他に有るのでしょうか?それは決して神経質ということでは無く、優しくも孤独な大人の男の背中に滲み出るような雰囲気ですね。ブラームスの最良の室内楽演奏を聴いている感じでしょうか。マイルスのトランペットはもちろん無類の素晴らしさですが、ビル・エヴァンスのピアノがもう美しさの極みです。コルトレーンもさすがです。何より凄いのはメンバー全員の音が一体と成り切っていることです。それはやはりマイルスのリーダーシップなのでしょうね。

とにかく、夜聴くのにこれほど相応しい音楽は有りません。昼間にボサノヴァやカントリー&ウエスタンを楽しんだ後にも、夜更けになったら、ウイスキー・グラスを傾けながらマイルスを聴きましょう。あ~素晴らしいなぁ。うーんマイルス!

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2009年8月13日 (木)

クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング 「デジャ・ヴ」 ~時代の生んだカントリーロックの傑作~

Cci00011_3 「小さな恋のメロディ」「いちご白書」「ウッドストック」 この3本の映画を1970年代の公開当時に劇場でご覧になった方は私と同世代です。しかもかなりのロック・グルーヴィでおられた方。けれども、いずれも大ヒットしたので後からでも再公開やDVDでご覧になった方も多いと思います。ところで何故この3本を並べたかと言いますと共通点が有るのです。3作品に非常に効果的に使われている曲が収録されている「デジャ・ヴ」というロック・アルバムが有りました。これは70年代に流行ったカントリーロックというカントリーやフォークミュージックをロックに取り入れた非常に優しく素朴で美しいサウンドで一世を風靡したクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングという4人組のグループの作品です。このグループは日本のミュージシャンへ与えた影響も非常に大きく、例えば「学生街の喫茶店」で有名なガロも美しいヴォーカルハーモニーや通常のギターチューニングと異なるオープンチューニングを彼らから取り入れました。

ところで「デジャ・ヴ」というのはフランス語で「既視感」という意味です。「今まで体験した事が無いのにどこかで見たことが有るような気がする感覚」のことです。そんな意味深のタイトルがついたこのアルバムですが内容は実に親しみやすい作品です。しかも何度聴いても飽きない名曲揃い。それが見事にアルバムとしてまとまっています。僕なら70年代のロックミュージックのアルバム10指の一つに数えたいと思っています。

曲目は1.キャリーオン 2.ティーチ・ユア・チルドレン 2.カット・マイ・ヘアー 4.ヘルプレス 5.ウッドストック 6.デジャ・ヴ 7.アウアー・ハウス 8.4+20 9.カントリー・ガール 10.エブリボディ・アイ・ラヴ・ユー 以上の10曲です。

このうち2曲目の「ティーチ・ユア・チルドレン」が「小さな恋のメロディ」で最後に子供の恋人2人がトロッコに乗って逃げるシーンで使われています。

4曲目「ヘルプレス」と7曲目「アウアー・ハウス」が「いちご白書」に使われています。特に「ヘルプレス」は学生達が大学を占拠して一夜を明かす時に夜空に浮かぶ月のシーンに流れるのが非常に印象的でした。余談ですが、この映画を題材に日本のフォークソング「いちご白書をもう一度」が作られたことは言うまでも有りません。

5曲目「ウッドストック」はタイトル通り、音楽ドキュメンタリ映画「ウッドストック」のエンディングタイトルで流れる曲です。このウッドストックというのは1969年にニューヨーク郊外の田舎町で開かれた巨大な無料コンサートでしたが、それ自体が当時の世界的社会現象となった「ラヴ&ピース」の反戦と平和を求める運動の象徴のようなイベントになったのです。映画を見ると当時のロックミュージックとミュージシャン達がどれほどパワーが有って、ヤングジェネレーションのヒーローでありカリスマであったかが理解できます。

以上3本の映画との結びつきをお話しましたが、時代と共に映画は古さを感じるようになった面も正直言って有ります。ある時代の記録として見るべきでしょう。ですがこれらの音楽をオリジナルアルバムとして聞く分には、それとはまったく関係なく古臭さをこれっぽっちも感じない普遍的な音楽として楽しむことが出来るのです。映画に使用されていない残りの曲もみな名作ですし、アコースティックばかりでなくエレキ楽器でロック調の曲も有りますが、決して騒々しいということは無いと思います。

グループの名前はメンバーの4人の名前を順に並べただけです。彼らは結成前から既に他のバンドで活躍していた実力者ばかりですが、解散後に一番活躍したのは最後の「ヤング」ことニール・ヤングでした。「孤独の旅路(Heart of Gold)」というヒット曲が有ります。4人とバックミュージシャン達が昔のアメリカの開拓時代の衣装を着て古ぼけた写真に写っているジャケットも傑作です。どうぞクリック拡大してご覧下さい。

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2009年8月12日 (水)

真夏のボサノヴァ・ジャズ 「スタン・ゲッツ/ジョアン・ジルベルト」 ~イパネマの娘~

Dscn4726今週は、世の中すっかり夏休みモードですね。お休みにならないサービス関係などでお仕事をされている方には大変申し訳なく思いますが、一般サラリーマンである小生は今日から夏休みに入ります。今週は、台風やら地震やらで日本列島も落ち着きませんでしたが、お盆ぐらいは帰省される皆さんが故郷で落ち着いてゆっくりくつろげることを祈ります。

そこで、クラシック音楽を聴くのも何となくいまひとつの気分になる暑苦しい時期ですので、たまには「サマースペシャル」ということで、クラシック以外の記事にしてみようかと思います。

さて「真夏に聴くベストミュージックは何か?」と質問されたとしたら、サザンとかチューブとかあるいはワイルドワンズ(古い!)とか色々挙げられるでしょう。ですが僕が挙げるとすればやはりブラジル音楽のボサノヴァです。そして、なかでも1曲選ぶとすればやっぱり「イパネマの娘」です。この曲のあの、けだるい雰囲気は何とも言えません。体の力が全部抜け切って、すっかりだらしなくなってしまいます。

Cci00010 かつてのボサノヴァ音楽の中心的存在であったジョアン・ジルベルトが、ジャズの人気サクソフォンプレーヤーであるスタン・ゲッツと共演して録音したアルバムが「スタン・ゲッツ/ジョアン・ジルベルト」です。「イパネマの娘」はこのアルバムに収録されています。話は少々逸れますが、最近「1Q84」が大変なベストセラーとなって話題の村上春樹さんが以前に書いた著書「意味が無ければスイングは無い」の中でスタン・ゲッツのことを取り上げていました。村上さんは無類の音楽好きなのですが、愛好するジャンルの巾の広さは驚くほどです。実はかくいう自分もクラシックに限らず広いジャンルの音楽が好きなのでとても興味深かったです。

このアルバムは、発売された1963年当時のグラミー賞も受賞しましたし、「イパネマの娘」の世界的大ヒットもあり大変なベストセラーとなりました。その音楽はは50年近く経った現在耳にしてもとても新鮮に響きます。ところが録音の時のエピソードを知ると、「イパネマの娘」であのなんとも魅力的なヴォイスを聞かせる女性アストラッド・ジルベルトは当初は参加予定が無く、たまたま旦那さんのジョアン・ジルベルトに付き合って飛び入り参加しただけだったそうなのです。ですのでスタン・ゲッツはジョアン・ジルベルトに「あんたの奥さんのギャラは要らないだろ」とか言ったとか。その真偽の程はともかく、このアルバムは売れに売れたので参加者全員がハッピーな思いをしたことでしょう。なんでもジョアン・ジルベルトはスタン・ゲッツの演奏がボサノヴァのリズムとは違うと文句たらたらだったそうですが、そんな事はどうでも良いぐらいにボサノヴァとジャズが見事に融合していると思います。

真夏のけだるくなるような暑い午後、冷房のきいた室内でも、クソ暑い屋外でも、ひとたびこの音楽を聴くと幸せな気分になります。そんな音楽が他に有るでしょうか。

<パーソネル> スタン・ゲッツ(テナーサックス)、ジョアン・ジルベルト(ギター/ボーカル)、アストラッド・ジルベルト(ボーカル)、アントニオ・カルロス・ジョビン(ピアノ)、トミー・ウイリアムス(ベース)、ミルトン・バナナ(パーカッション)

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2009年8月 7日 (金)

ロドリーゴ 「アランフェス協奏曲」 名盤 ~太陽と情熱の国スペイン~ 

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今年の夏はどうやら冷夏のようですね。それでも日中に陽が射せば、やっぱり随分と暑くなります。そこで夏らしく「太陽と情熱の国」スペインへ行ってみましょう。この国の音楽といえばフラメンコ。ギターの伴奏に合わせて情熱的に踊るスペイン女性。いいですね~。情熱的な女性に弱いフーテンのハルくんは一発で参ってしまいます。

スペインのホアキン・ロドリーゴが20世紀で最も有名なギターの名曲を作曲しました。あの「アランフェス協奏曲」です。ロドリーゴは幼い頃に失明して盲目となりました。実は彼はギターという楽器を弾けなかったそうですが、ギターの魅力を熟知していたのでこの史上最高のギター名曲を生んだのです。

クラシック音楽は真夏の暑苦しい季節感にはなんとなくそぐわない気がしないでもないですが、そんな時でも僕がよく聴きたくなるのが「アランフェス協奏曲」です。フラメンコ調のギターの軽快なリズムで始まる第1楽章アレグロからして素晴らしいです。なんという爽やかな曲なのでしょう。スペインの乾燥した赤土の上を風が吹き抜けて行くような風情なのですね。スペイン民謡をイメージしたメロディが至るところに現れるのも魅力的です。

第2楽章アダージョは有名な「アランフェス」のテーマです。この楽章はアランフェスに古くから有る宮殿に結び付けられてみたり、あるいはロドリーゴ自身の心境が影響したように言われています。でも僕の個人的なイメージでは、昼間の灼熱の太陽で焼けた赤土の大地が夕暮れとともにだんだんに冷めてゆく雰囲気を感じるのです。ですので僕は真夏の夕暮れにこの曲を聴くのが好きなのです。その時にはエアコンは付けません。下着1枚になっても我慢して聴きます。そうして外の気温がだんだんに下がってゆくのを肌で感じるのが良いのです。

第3楽章アレグロも軽快で楽しい曲です。1、2楽章の閃きに比べるとやや平凡ですがやはり良い曲です。

それでは僕の愛聴盤をご紹介しましょう。この曲は、もちろん独奏ギターが重要なのですが、スペインの溢れる雰囲気を表わすには管弦楽の音色も非常に大事です。余り上手すぎて流麗な楽団だとかえって雰囲気が失われてしまいます。下手でも乾いた音で情熱的に演奏される方がスペインの雰囲気が出て良いのです。

Cci00009 レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサ(独奏)、アルフテル指揮マニュエル・デ・ファリャ管(1962年録音/RCA盤) デ・ラ・マーサはこの曲の初演者です。その人の演奏がタワーレコードからRCAのライセンスで発売されています。このCDは実は興味半分で聴いてみたのですが、今では非常に気に入っています。冒頭のギターから、ゆったりとおおらかで温かみのある演奏に惹きこまれます。但しテクニックはまるで乏しく、速い部分などでは、指が完全にもつれてヨレヨレです。けれども情感の豊かさは比類が無いので、聴けば聴くほどに味わいが深まる不思議な演奏と言えます。オケ伴奏がド演歌のように濃厚に歌うのもご愛嬌ですが、これが良いのです。

P1_j2000108w ナルシソ・イエペス(独奏)、アルヘンタ指揮スペイン国立管(セヴンシーズ盤) 母国スペインの生んだ有名なギタリスト、イエペスはこの曲を何度も録音しましたが、これは最初の録音です。伴奏指揮もスペインの生んだ天才指揮者アルヘンタ。昔からこの曲の代表的な名演奏に上げられている名盤です。若き30代のイエペスが若々しくインスピレーションに溢れるギターを弾いていますが、それはアルヘンタの素晴らしい伴奏指揮に触発されたのかもしれません。但したった一つだけ問題が有ります。2楽章のコールアングレの有名なメロディの音量が小さ過ぎるのです。これは録音バランス上の問題なのですが、何しろ肝心な部分なので非常に残念です。

Cci00009k ナルシソ・イエペス(独奏)、アロンソ指揮スペイン放送響(1969年録音/グラモフォン盤) この演奏は管弦楽の録音がすこぶるデッドでエコーが少ないのです。ですので元々上手くないであろうオケが余計に下手に聞こえます。ところがこの乾いた音色が良いのですよ。これこそが焼けた赤土のイメージにぴったりだと思うのです。2楽章のコールアングレの音量もとてもバランスが良く情感も不足しません。こういう雰囲気はやっぱり自国の楽団ならではです。イエペスは端正に何気なくギターを弾きますが、それでいて味わいが深いのですね。旧盤と比べてもずっとゆっくりと弾いています。僕は個人的にはこちらの演奏を好んでいます。

さて、アランフェスはクラシック以外でも色々とアレンジを変えて演奏されますが、その中でも特に好きなものをご紹介します。

41766dsdopl__ss500_ マイルス・デイヴィス(トランペット)(1959年録音/CBS盤) ジャズ界の帝王マイルスもこの曲を演奏しました。「スケッチ・オブ・スペイン」というアルバムに収められています。実際にはプロデューサーの企画で製作されたものですが、マイルスはアメリカ生れの黒人ですのでスペインの風土うんぬんというよりは、自分のブルースとしてこの曲を演奏しています。ところがさすがに一流が演奏すると実にサマになるのです。深夜に一人静かにグラスでも傾けて聴くにはむしろ一番かもしれません。「う~むマイルス!」 ジャズファンなら誰でも知っているこのアルバムですが、クラシックファンの方でもたまにはこういうのも面白いのではないでしょうか。

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2009年8月 3日 (月)

~1周年記念御礼~

Huku0006a 今日はこのブログをスタートしてから丁度一周年記念なのです。それ以前は他の人のブログを読んでいるだけだったのですが、一度自分でも始めてみたいと思ってスタートしました。それが、このような名曲名盤ガイドもどきの自己満足ブログにいつも沢山の方に訪れてもらえるようになって本当に有り難いものだと感謝しています。今日から2年目に入りますが、これからも多くの方にごくごく簡単なコメントで構いませんので書き込みを頂ければ本当に嬉しい限りです。みなさま今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

ハルくん  2009年8月3日

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2009年8月 1日 (土)

ドヴォルザーク 「スラヴ舞曲集」作品46&72 名盤

Pos_kati_4 ドヴォルザークの作品の中でも、非常に人気の高い珠玉の名曲集と言って良いでしょう。僕自身も大好きです。この舞曲集は、とても変化に富んで飽きさせませんが、それはこれが「スラヴ舞曲集」だからでしょう。というのも、「スラヴ」とは非常に大きな民族のカテゴリーで、現在のロシア、ウクライナからポーランド、チェコ、スロヴァキア、セルビア、クロアチア、ブルガリアまで含まれます。ですので、単に狭いボヘミア地方の舞曲集では無いのです。とは言っても作品46は大半がボヘミア舞曲ですので、チェコ&スロヴァキアの音楽と考えても悪いことは有りません。それに対して作品72は完全に「スラブ舞曲集」です。元々はブラームスの「ハンガリー舞曲集」に続く「柳の下の二匹目のどじょう」を狙ってピアノ連弾用に書かれましたが、ドヴォルザーク自身が管弦楽に編曲したこともあり素晴らしい作品となりました。第1集と第2集それぞれが8曲づつの合計16曲です。

「スラヴ舞曲第1集 作品46」

第1番「フリアント」は急速なテンポで激しいボヘミア舞曲です。ドヴォルザークは交響曲でも第6番のようにスケルツォ楽章にこのフリアントを取り入れている場合があり、非常に特徴的です。それもそのはず語源は「目立ちたがり屋」なのですね。きっと村の祭りで派手な連中がこの踊りを踊ったのでしょう。

第2番「ドゥムカ」は哀愁漂うスローな曲です。これは実はウクライナの舞曲なのですね。但し中間部は速いモラヴィア舞曲になっています。

第3番「ポルカ」はボヘミアの楽しい曲です。そういえば昔「老人と子供達のポルカ」なんて曲が流行りましたが、あれもポルカなのですかねぇ?

第4番「ソウセツカー」は収穫祭の後の踊りでボヘミアのワルツです。スローで哀愁と喜びの気分が交錯しますが、とても好きな曲です。

第5番「スコチナー」は早いテンポのボヘミア舞曲です。心が躍ります。

第6番「ソウセツカー」もやはり哀愁と喜びの気分が現れている曲で好きです。

第7番「スコチナー」はモラヴィア地方の民謡を題材にしているそうです。スケールも大きく魅力的で、この曲は非常に好きなのです。

第8番「フリアント」やはり第1集の絞めはフリアントです。初曲と終曲にもってくるだけあってやはりボヘミアの代表的な舞曲なのでしょう。チェコのオケのコンサートのアンコールにもよく使われます。

「スラヴ舞曲第2集 作品72」

第1番「オドゼメック」も急速なテンポのボヘミア舞曲ですが、中間部ではテンポをぐっと落として叙情的になり非常に魅力的です。

第2番「ドゥムカ」こそはこの曲集の白眉であり、単独でも広く愛されている名曲中の名曲です。なんという哀愁漂う絶美のメロディなのでしょうか。ヴァイオリン独奏にも編曲されていますが、そういえばこの曲は弾いたことが有りませんでした。そのうちに弾いてみたいです。

第3番「スコチナー」、第4番「ドゥムカ」、第5番「シュパチールカ」、「ポロネーズ」と続きますが、中では第5番シュパチールカが魅力的なボヘミア舞曲であり、途中からチャルダーシュのように盛り上がるのも楽しく、シンフォニックなアレンジがまた最高です。

第7番「コロ」はセルヴィアの大勢で輪になって踊る輪舞曲です。フリアントのように激しく楽しい曲なので大好きです。この曲もアンコールでよく演奏されます。

第8番「ソウセツカー」 第2集の終曲はゆったりとした曲が選ばれました。やはり第1集で大成功したので第2集では気分に余裕が生れたのでしょうね。

ということで僕の愛聴盤のご紹介をします。

Dvo_tah ヴァーツラフ・ターリッヒ指揮チェコ・フィル(1950年録音/スプラフォン盤) 少々古い録音ですが、この演奏は一度は聴くべきです。なぜなら「ターリッヒを聴かずしてチェコの演奏を語ること無かれ」だからです。後輩の指揮者達と比べると随分おらかな印象ですし、テンポも遅めです。けれどもこのゆったりと素朴な音にチェコの演奏の原点を聞く気がします。録音は良好ですが、24bitリマスターの最新盤は高音が固いので好みません。出来れば旧盤をお勧めします。

Cci00007m カレル・シェイナ指揮チェコ・フィル(1959年録音/スプラフォン盤) ターリッヒ、アンチェル時代のチェコ・フィルの副指揮者だったカレル・シェイナは余り知られた存在ではありません。けれども、やはり同国人ならではの血の通った指揮ぶりにはとても安心させられます。アンチェルやノイマンと比べるとずっと素朴で豪快な印象を強く受けるので、この曲集の場合にはそれがむしろプラスに感じられます。

Cci00007 ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・フィル(1979年録音/スプラフォン盤) コシュラーの旧録音です。この人は必ずしも晩年の演奏が優れている訳でもないですし、若いころから天才的な表現力を持っているかと思うと、案外平凡な演奏をしたりと実に不思議な指揮者でした。この録音はチェコ・フィルの美音を生かしている点では後述のノイマン盤に引けを取らない名演奏ですが、素晴らしい新盤が有るので存在価値はいま一つです。

Tulqa_354773_l ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1985年録音/スプラフォン盤) 何といってもオーソドックスな名演奏であり、一番安心して聴くことが出来る名盤だと思います。リズムの切れ、楽器バランスの良さ、職人的な上手さには文句が有りません。実はこれは大変なことなのです。チェコ・フィルの美音を忠実に捉えた録音も優れています。ノイマン/チェコ・フィルの来日コンサートのアンコールで聴いた生の音を思い起こさせます。

Cci00008 ズデニェック・コシュラー指揮スロヴァキア・フィル(1987年録音/ナクソス盤) 前述のチェコ・フィルとのスプラフォン盤の影が薄くなるほどの驚くべき名演奏です。私見ではコシュラーはスロヴァキア・フィルと最も相性が良く、「新世界より」や「我が祖国」に曲のベストを争う名盤を残しています。彼らはお互いに心から信頼し切った、謂わば最高の夫婦関係にあったのでしょう。羨ましい限りです・・・(?)。スロヴァキア・フィルは技術的にも優れていますが音色はローカルの味わいを持ち、決して「宮廷舞踏」では無い、農民達の素朴な踊りを感じさせてくれます。また作品72-2の「ドゥムカ」が最も美しいのもこの演奏です。録音も優秀ですし、これは廉価ナクソスレーベルの中でも飛びぬけて価値の高い名盤ですので絶対のお薦めです。

他ではセル/クリーヴランド管(CBS盤)やクーベリック/バイエルン放送響(グラモフォン盤)も悪くは有りませんが、僕はやはり本場の純血の演奏を好みます。中でもコシュラー/スロヴァキア・フィル盤とノイマン/チェコ・フィル盤の二つには充分過ぎるほど満足しています。

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