« ~ハンガリーへの旅~ リスト 「ハンガリー狂詩曲」第2番 | トップページ | ドヴォルザーク 交響曲第9番ホ短調「新世界より」op.95 名盤 »

2009年7月 5日 (日)

スメタナ 連作交響詩「我が祖国」 名盤

7月になりました。梅雨時というのは毎日がじめじめと蒸し暑くて嫌なものですね。四季の変化を味わえる日本に生れて良かったとは思いますが、この時期だけは梅雨の無い国に移動したくなります。でも日本でも北海道のように梅雨の無い土地も有るのですよね。とっても羨ましい限りです。

Aug06czech08_2

実は僕が毎年この嫌な季節に無性に聴きたくなるのが「モルダウ」なのです。だってこの曲は本当に爽やかじゃありませんか。森の泉から湧き出た水の流れが徐々に川幅を増していって、いつしか大河の流れになる情景が実に見事です。それになんといってもあの主題は稀代の名旋律ですしね。「モルダウ」はチェコ国民楽派の開祖スメタナが書いた6曲の連作交響詩「我が祖国」の第2曲目です。6曲というのは順に1.「高い城」 2.「モルダウ」 3.「シャールカ」 4.「ボヘミアの森と草原より」 5.「ターボル」 6.「ブラニーク」です。

僕は第1曲の伝説上のチェコ建国の象徴であるヴィシェフラト城の栄光と没落を描いた「高い城」と、この「モルダウ」の2曲をよく聴きます。気が向いて「シャールカ」まで聴いてしまうと、大抵はそのまま全曲鑑賞になります。5、6曲目の「ターボル」「ブラニーク」は演奏によっては曲が単調に感じられることも有りますが、自国チェコの演奏家であればいずれも民族の共感に溢れていますので退屈することはまず有りません。僕はこういう曲はどうしてもチェコの演奏家で聴きたくなります。他の国の演奏家のものではどうも気分が落ち着かないのです。ですのでご紹介するCDはほとんどが本場物ということになりますが、どうかご容赦ください。

Cci00048 ヴァーツラフ・ターリッヒ指揮チェコ・フィル(1954年録音/スプラフォン盤) ターリッヒはチェコ・フィルを世界的な名楽団に育てた大指揮者ですし、実際に「新世界より」のようなベストの座を争うような名盤も存在します。この「わが祖国」の演奏も味わい深さという点では非常に優れているのですが、録音が古いのがマイナスになっています。個人的にはどうしてももっと録音の良い演奏を聴くことが多いです。

511ess67kxl__ss500_ カレル・アンチェル指揮チェコ・フィル(1963年録音/スプラフォン盤) 全盛期のチェコ・フィルの音を聴くことができる名盤だと思います。アンチェルとしても「新世界より」とこの「わが祖国」は代表盤と言って良いでしょう。ですので僕も昔からずっと愛聴してきました。但し比較的最近リリースされた後述の1968年の歴史的ライブ盤を聴いてしまってからは少々影が薄く感じてしまいます。後半の3曲などはもっと熱く演奏できたはずだと思うのです。まあ、スタジオ録音では仕方が無いのかもしれません。

Cci00049 カレル・アンチェル指揮チェコ・フィル(1968年録音/Radio Servis盤) アンチェルは1968年にアメリカへ演奏旅行中に祖国でプラハの春事件が起きた為に帰国を断念。亡命の道を選びました。その直前の「プラハの春音楽祭」でのライブ録音が残されています。これはスタジオ録音盤とは次元の全く異なる演奏です。アンチェルがライブでどんなに熱く凄い演奏をしていたかの証明でしょう。果たしてこの時に彼が祖国に起きる事件を予感していたかどうかは分かりませんが、第1曲からエネルギー全開で特に「シャールカ」以降は驚異的にテンションの高い熱演を果たしています。この演奏だけは色々な意味で何を置いても必聴です。

51lj40glfml__ss500_ ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1975年録音/スプラフォン盤) ノイマンには東京でのライブ録音盤も有りますが、演奏はこのスタジオ盤のほうが優れていると思います。録音も含めてオーソドックスな名盤を選ぶとすればアンチェルのスタジオ盤に次いではこのノイマン盤が上げられるのではないでしょうか。ノイマン/チェコ・フィルはこの録音の頃に東京で生演奏を聴いていますが、それは本当に瑞々しく、ほれぼれする美しい音と演奏でした。

51rksbz3scl__ss500_ ヴァーツラフ・スメターチェク指揮チェコ・フィル(1980年録音/スプラフォン盤) スメターチェクもチェコが生んだ名指揮者です。派手な人気は有りませんが、この人にチェコのお国ものを演奏させたら、他の巨匠指揮者達に充分匹敵する演奏を成し遂げます。この「わが祖国」もとてもスケールが大きく血の共感を感じる名演です。チェコにはかつてシェイナとかグレゴルとかやはり同じような意味で非常に優れた指揮者が多く存在しました。

Smetana_044ラファエル・クーべリック指揮ボストン響(1971年録音/グラモフォン盤) クーベリックの「我が祖国」の録音は5~6種類有ったかと思いますが、恐らくは入念なセッション録音が行われたことが想像されるこの演奏はバランスが最も整っています。更に新しい録音と比べても楽器の分離が明確でスコアを見るには適しています。クーベリックの指揮にもセッション録音とは思えないほど熱が入っていて聴きごたえがあります。ボストン響は元々優秀ですが、柔らかいヨーロッパ的な響きと力強さの両方を持ち合わせていてチェコの楽団で無くても非常に魅力が有ります。

41tggf92p6l__ss500_ ラファエル・クーべリック指揮チェコ・フィル(1990年録音/スプラフォン盤) これは「プラハの春音楽祭」でチェコ・フィルと42年ぶりに共演した演奏です。同じコンビの日本でのライブ演奏もCD化されていますが、ホームでの歴史的な録音という点で個人的にはこの演奏を感慨に浸りながら楽しむことが多いです。この演奏には、その時の演奏家達の喜びが自然と滲み出ているからです。演奏には初めのうちは手探りさを感じますし、モルダウの冒頭のフルートも不揃いです。けれども徐々に高揚してゆく演奏がいかにもライブという趣で楽しめます。録音も聴き易いです。

Cci00048k ラファエル・クーべリック指揮バイエルン放送響(1984年録音/オルフェオ盤) クーベリックのこの曲の録音は多く、チェコ・フィル盤以外にもボストン交響楽団を指揮したグラモフォン盤や、手兵のバイエルン放送響盤を指揮したこの録音も非常に優れています。オーケストラの持つ音色ではチェコの楽団の魅力には及びませんが、クーベリックの表現力が最も強く出ていて、しかも堂に入っているのはこの演奏のように思います。録音は悪くは有りませんが、ホールトーン的に過ぎて細部がやや聞き取りにくいのはマイナスです。

これ以外にも、ズデニェック・コシュラー/スロヴァキア・フィルの非常に素晴らしい演奏とイルジー・ビエロフラーヴェク/チェコ・フィルの演奏を「続・名盤」として追加記事にしています。 
交響詩「わが祖国」 続・名盤

|

« ~ハンガリーへの旅~ リスト 「ハンガリー狂詩曲」第2番 | トップページ | ドヴォルザーク 交響曲第9番ホ短調「新世界より」op.95 名盤 »

スメタナ」カテゴリの記事

コメント

モモモモモルダウ!(焦っている)
実はぜひともお尋ねしたいことがあるのです! モルダウには本当は歌詞は無いのでしょうか。
BONI PUERI(チェコ少年合唱団)のCDにこの曲が入っているのですが、日本語の歌詞なのです。私たちが音楽の授業で習う「懐かしき川よ〜」です。チェコの合唱団がチェコの曲をなぜ日本語で!?とびっくりしました。

どこかでモルダウの話題が出たら質問しようと待ち構えて早何年(笑)。ハルくん様ならきっとご存知なはずと期待しています。わくわく。

投稿: すい | 2009年7月 5日 (日) 14時01分

>すいさま
嗚呼、そういう歌詞もあるのですね。私が中学生の頃は「ボヘミアの川よモルダウよ」という歌詞で、合唱祭の課題曲でした。確か、日本人の作詞者が明記してありました。交響詩「我が祖国」には本来、歌詞がない(合唱パートはない)と思います。ただし、元歌があったんじゃないかとか、後から誰かがチェコ語の歌詞を付けていないかとかいう話まではわかりませんが。

投稿: かげっち | 2009年7月 5日 (日) 18時32分

>ハルくんさま
わたしは1990年のクーベリック盤を愛聴しています。歴史的に記念すべき演奏で、その後のクーベリックの失意も聞いているからです。しかも例のメロディの歌わせ方が独特です~メロディ3小節目の二つの付点四分音符(私が知っている歌詞だとモルとダウ)には、箇所によってテヌートが書いてありますが、「あ!こんなふうに奏くのか!」と得心しました。

他の5曲もみんな魅力的な曲ですよね。「ビシェフラード」というのは実は地名だそうですが、私が住む街にも高城(たかじょう)という地名があるので、笑ってしまいました。あの出だしのハープ、「ボヘミアの森と草原から」の流れるような旋律、「ブラニーク」のフィナーレで一曲目の冒頭と同じ旋律が戻ってきた時の感慨…

ところでチェコの方々はドイツ占領時代のモルダウというドイツ語読みを好まない(チェコ語だとヴルタヴァ)と聞きましたが、日本の業界やNHKは改めないのでしょうかね。

投稿: かげっち | 2009年7月 5日 (日) 18時41分

すいさん、こんばんは。

クラシックの名曲に歌詞を付けるのはどうやら日本人の特技のようですね。
「モルダウ」には何人もの人が歌詞を作っているようですよ。中では混声合唱用の「懐かしき河よモルダウよ~♪♪」が最も有名なようですね。でも僕は思うに、これほどの名旋律にはどんな歌詞がついても感動してしまうのではないでしょうか。
そういえば「新世界より」の第2楽章も「遠き山に日は落ちて~♪♪」の「家路」で有名ですが、こちらはアメリカでも「Going home, going home, I'm going home~」という歌詞が付けられているそうです。

まあ名曲が広く歌われて、誰にでも愛好されるようになるのは良いことですよね。

投稿: ハルくん | 2009年7月 5日 (日) 21時11分

かげっちさん、こんばんは。

確かにクーベリックほどに「モルとダウ」の部分の音符をテヌートさせる指揮者は居ませんね。記憶では古いボストン響盤が一番極端だったような気がします。音符に念押しするように重みを与えるのが実にユニークです。

僕は「ビシェフラド城はプラハに有る」という話も聞いているのですが、真実はどちらなのでしょう?行って自分で確かめるしかないですかね。運が良ければチェコ美人に出会えるかもしれないですしね。(ってコレばかり。しつこいね!)(笑) 「高城」も笑えますね。

日本では「モルダウ」が余りに有名ですからねぇ。原語でない言葉は他にも多くあるでしょうから仕方が無いのかもしれませんね。

投稿: ハルくん | 2009年7月 5日 (日) 21時22分

まずはこの場をお借りして。
かげっち様、はじめまして。(ぺこり) 私の変な質問の相手までしてくださって、ありがとうございます!
「ボヘミアの川よ」ですか? それは初めて聞きました。別の歌詞もあったなんて! どちらがメジャーなんだろうと思ったら......

ハルくん様、ありがとうございます。「懐かしき」ですか。........勝った!(違う!) 何人も歌詞を付けているだなんて愛されている曲なのですね。このお話をしたせいで昨日からずっと頭の中でモルダウが流れています。

『Going Home』の方は知っていますよ〜。Liberaが歌いましたので。でも私は『家路』というタイトルを長い間知らなくて、ずっとキャンプファイヤーのための歌だと思っていました。

投稿: すい | 2009年7月 6日 (月) 08時48分

すいさん、こんにちは。

ええ、僕も昨日から頭の中に「わが祖国」がずっと流れてますよ。フーテンならぬ「ボヘミアンのハルくん」状態です。(笑)
Liberaは「Going Home」を歌ったのですか。それはとっても素敵ですね!

しかし中にはゴスペルの「グローリーアレルヤ」が何と「おーたまじゃくしは蛙の子~♪♪」になってしまう珍訳詩も有ります。これには「神を冒涜してるぞ~」なんてクレームは付かなかったのでしょうかねえ?

投稿: ハルくん | 2009年7月 6日 (月) 12時37分

こんばんは。。。
私もモルダウ。。。歌いました。。。
中2のときの合唱祭だったかな。
頑張ったのですが、隣のクラスに負けました。
懐かしい思い出というより、悔しい思い出です。
つ~かさ・・・負けた理由は分かっているのさ。
自由曲の選択ミス。課題曲のモルダウが悪いわけじゃない。
ウチのクラスはポップスで、隣のクラスはグノーのアヴェ・マリア。
ほら~~。うちのガッコはカトリックだからさ~~。
合唱委員の選択ミスだよね。
ぜんぜん関係ない話ですみません。

投稿: はるりん | 2009年7月 7日 (火) 21時42分

はるりんさん、こんばんは。
げんきですか~!(笑)

カトリックの学校で「アベアリア」にポップスで対抗するのはちょっと厳しかったよね。
「マタイ伝による受難曲」でも歌えば優勝間違い無かっただろうにね。えっ、難しすぎてダメだ?その時はやっぱり「グローリーアレルヤ」だな。

投稿: ハルくん | 2009年7月 8日 (水) 01時47分

>すいさん
はじめまして!モルダウには皆さんいろいろな思い出がおありのようで(笑)これは歌としても良い曲だと思いますよ。でもあのメロディ以外の部分だって名曲ですけどね。
>ハルくんさん
まさに合唱祭でこれを練習しているとき、隣の教室に無伴奏フィンランディアを指揮する美しい先輩がいたのですよ。こうなるとスメタナかシベリウスかという問題ではないのですが・・
そういえば「たんたん狸の・・」も元は讃美歌ですよ。
>はるりんさん
それは作戦負けですね。プロテスタント系なら最近はゴスペルとか選ぶ作戦もありそうです。

投稿: かげっち | 2009年7月 8日 (水) 12時30分

追伸です。ビシェフラドは、かつて川べりにあった城の固有名詞ですが、いまは城跡しかなく(日本語で言う城址公園みたいな感じでしょうか)その全体をビシェフラドと言っているらしいです。
チェコ語のことはさっぱりわかりませんが、「ビシェフラド城」と言うと二重表現になっちゃうんでしょうかね。

投稿: かげっち | 2009年7月 8日 (水) 12時37分

かげっちさん、こんばんは。

なるほど現在では「ビシェフラド城」は二重表現になるのかもしれませんが、昔はそれで良かったのですね。
まあ地名なんて結構いい加減に付いていますからねぇ。

投稿: ハルくん | 2009年7月 8日 (水) 23時00分

ネット検索では確かなことがわかりませんがどうも「ラド」が城という意味の単語のように思われます。

投稿: かげっち | 2009年7月10日 (金) 09時12分

かげっちさん、こんにちは。

「ラト」は確かにチェコ語で「城」みたいですね。ということは「ビシェフラト」は「ビシェフ城」でしょうか。
外国語はムズかしいですね~。(苦笑)

投稿: ハルくん | 2009年7月10日 (金) 23時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1080200/30400199

この記事へのトラックバック一覧です: スメタナ 連作交響詩「我が祖国」 名盤:

« ~ハンガリーへの旅~ リスト 「ハンガリー狂詩曲」第2番 | トップページ | ドヴォルザーク 交響曲第9番ホ短調「新世界より」op.95 名盤 »