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2009年7月17日 (金)

ドヴォルザーク 交響曲第8番 ト長調op.88 名盤

Dvorak1 通称「ドボ8」。と言いましても、ドロボーの八っあんでは有りません。ドヴォルザークの交響曲第8番です。この曲は「新世界より」と並んでオーケストラ・コンサートの定番プログラムですね。とても親しみやすく、変化に富んでいるので、これからクラシックの管弦楽を聴き始めようという人にお勧めする10曲に入れても良いのではないでしょうか。僕も、かつては飽きるほど聴きました。最近はそれほどは聴きませんが、なにしろ爽やかな曲なので湿度が高くジメジメした今頃の季節にはスメタナあたりと並んでとても聴きたくなります。

この曲は最初にロンドンの出版社から楽譜が出版されたので、よく「イギリス」と呼ばれますが、音楽そのものには何の関連性も有りません。むしろ曲想は極めてチェコとスロヴァキアの自然を感じさせるので、「ボヘミア」と呼びたいぐらいです。曲は第1楽章や第4楽章の高揚する生命力も素晴らしいですが、第2楽章のボヘミアの草原を感じさせる牧歌的な美しさや、第3楽章の正にグラツィオーソで哀愁漂うスラブ風舞曲と、実に変化に富んでいて飽きさせません。でもひとつだけ第4楽章の中間部の転調後に土俗的なリズムに乗って♪タンタンターン、タタタタターン♪と繰り返される部分が何故か「コガネムシ~は金持ちだ~」に聞こえるのは僕だけでしょうか。その後更にフォルテシモでコガネムシの大合唱になってからは正に圧巻です。(笑) ちなみに黄金虫のメロディを聴いてみたい方は下記のリンクからどうぞ。
「黄金虫(こがねむし)」

さて、「黄金虫」を聴いて笑って頂いたところで、恒例の愛聴盤コーナーです。

Cci00005 カレル・アンチェル指揮チェコ・フィル(1960年録音/PRAGA盤) アンチェルはこの曲のスタジオ録音を残しませんでした。これは本当に悔やまれることです。この演奏はプラハでのライブです。録音はモノラルですが、年代を考えると音質は標準レベル程度です。ところが演奏に関しては驚くほどの素晴らしさです。アンチェルはスタジオでは造形性を重視した比較的冷静な演奏を残しますが、ライブでは時に阿修羅のような演奏をします。この8番も弦は表情豊かに歌い、管楽器/打楽器は迫力一杯に鳴らし切ります。時に熱くなり過ぎて崩れることも多々ですが、この演奏ではぎりぎりの所で踏み留まっているので、その感動は比類が有りません。このCDは海外盤のみですが、中古店ではよくカップリングされたドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲の棚に紛れていますのでご注意を。

61hg1zds72l__ss500_ジョージ・セル指揮クリーブランド管(1970年録音/EMI盤) よく言われることですが、スタジオ録音の場合にはどうも冷静過ぎて面白みの無い演奏が多いセルはライブになると相当に人が変わります。しかしこの晩年のEMIへの録音はスタジオ演奏にもかかわらず冷たさを余り感じません。むしろスケールの大きさとじわじわと高揚感の湧く素晴らしい演奏です。オケの上手さは比類ないのですがそれがかつてのように機械的には感じさせないのです。これに比べるとCBSの旧盤はやはり演奏が窮屈で面白く有りません。

Cci00051b ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1972年録音/スプラフォン盤) ノイマンの一回目の全集盤に収められていますが、現在単売はされていないかもしれません。2度目の録音に比べると、強い表現意欲を感じます。テンポやダイナミクスの振幅が大きいのです。但しそれが多少流れの悪さにもつながり、必ずしもプラスとも思えません。この辺りは聴き手の好みだと思います。録音は優秀なアナログなので、音の柔らかさを感じます。アナログ好きな人には非常に良いと思います。

418meqgepcl__ss500_ ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1976年録音/オルフェオ盤) クーベリックもこの曲を得意にしていて日本でもこのコンビで燃え上がるように熱い演奏を聞かせてくれました。この本拠地ミュンヘンでのライブではもう少しゆとりを持って演奏していますが、繰り返して聴くにはそれがプラスに感じます。「新世界より」と同様にベルリン・フィルとの録音も有りますが、僕はバイエルン放送響の音のほうがずっと好きです。あとはチェコ・フィルと晩年に録音を残してくれていれば良かったとは思うのですが。

Dovocci00052_2 ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1982年録音/スプラフォン盤) ノイマンにはこの曲には3種類の録音が有りますが、最も優れているのは断然この二度目の全集への録音です。最初の1972年の録音では楽器バランス、リズム、歌い方の流れがいまひとつなのと、1991に日本でCANYONに残した録音はどうも演奏に覇気が感じられないからです。その点、この1982年盤は音楽の自然な流れの良さが抜群で、かつて自分が70年代に東京文化会館で聴けた、覇気があり素晴らしく美しい音のチェコ・フィルの生演奏を思い出させてくれます。この曲の理想的な演奏だと思います。

Cci00006 ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1991年録音/CANYON盤) ノイマン/チェコ・フィルの3度目の録音はオーチャードホールでのライブ盤です。この時のライブの7番についてはスプラフォン盤以上に気に入っていますが、8番はどうも演奏に覇気と切れの良さが不足するように感じられます。凡百の演奏に比べれば遥かに素晴らしいですが、ノイマンの8番を聴くなら、やはりスプラフォンの新旧盤のほうを聴いた方が良いと思います。

Cci00055 ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・ナショナル響(1994年録音/ビクター盤) この演奏では新生楽団がなかなか美しい音を聞かせています。アンチェルやクーベリックに代表される爆演型とは対照的に非常に落ち着きとゆとりのある演奏なのでなかなか気に入っています。熱狂でなく美しさに重点を置いた第4楽章などは誠にユニークだと思います。やはりコシュラーは只者では有りません。第8番については、スロヴァキア・フィルとの旧盤は長いこと聴いていませんが、むしろこの新盤の方が良いような気がします。

以上の中から更に絞リ込むとすれば、モノラル盤ながらもアンチェル/チェコ・フィルの1960年ライブ盤が最高です。ステレオ録音の中では、オーソドックスで何度聴いても飽きない名演としてノイマン/チェコ・フィルの1982年盤、というところです。

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コメント

こんにちは。8番もいい曲ですよね。新世界に渡って書いた9番よりも、いっそうボヘミア的に感じます。

特に3楽章の美しい旋律を聴くとぞくぞくします。北の街の郊外、畑や丘が続くあたりでの、青春の甘酸っぱい思い出、ほろ苦い思い出・・・

2楽章は北国の夏の日の夕暮れ、汗も引いて涼しい風が吹き始める頃、鳥の声が彼方から・・・

1楽章の序奏が回帰してくるあたりもよいですが、変奏曲形式の4楽章も愛すべき音楽です。最後まで不満のかけらもない、満ち足りた音楽です。

投稿: かげっち | 2009年7月19日 (日) 13時06分

かげっちさん、こんにちは。

まったくこの曲は「ボヘミア」と戒名してほしいです。(笑)
チェコ、スロヴァキアは緯度的には北海道ぐらい。ですのであの爽やかな空気感が共通しているのでしょうね。
非常に親しみ易く良い曲なので聴き過ぎてしまい飽きる時も有りますが、間をおいてまた聴くとやっぱり名曲です。

投稿: ハルくん | 2009年7月19日 (日) 13時42分

でもしいていえば「こがねむし」の部分は、爽やかとは言いがたいですね(笑)それに続く半音ずつ下降してゆくあたりもかなり土臭いし。ただ9番に比べると曲の終わり方がいさぎよいというか、しつこくないところがよいとも思います。

投稿: かげっち | 2009年7月19日 (日) 17時16分

かげっちさん、そりゃ黄金虫は爽やかとは言えないでしょう。見た目はゴキブリみたいですし。でも金持ちでも子供に優しいようですから案外と良い虫さんだったのかもしれません。
それにしてもこのメロディはやっぱり「ドボ8」ですよ~。下記のリンクで聞いてみてください。
http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/koganemu.html

ちなみに黄金虫を何度も聞いているとドヴォルザークの旋律が思い出せなくなります。(笑)

投稿: ハルくん | 2009年7月19日 (日) 17時57分

こんばんは。

ノイマン/チェコ'82年盤を入手。同曲3枚目。
"哀愁ロマン"な演奏confidentとても気に入りました。

1枚目は音も演奏も?ですぐ売却bearing。アンチェル/チェコのスタジオ盤と記憶も、記事を拝読すると遺してナイのですよね...。スプラフォン輸入盤だったコトは間違いナイのですが...。

2枚目は、ブロムシュテット/ドレスデン盤。コレも冒頭からconfident。ノイマンを聴いた後で再聴とするとどう感じるのか...後で聴いてみます。

後は、アンチェル/Praga盤。気長に探してます。

投稿: source man | 2010年8月16日 (月) 19時00分

度々の書き込み御免なさい。

思い出しました!
売却したのは...ノイマン'82年盤です。

切手みたいなジャケットの輸入盤、アレ音ワル過ぎですcrying

勇気を出してsweat01国内盤を買い直して大正解でしたcoldsweats01

投稿: source man | 2010年8月16日 (月) 20時45分

source manさん、こんばんは。

ノイマン/チェコPOの1982年盤は僕も最初は海外盤でした。確かに国内盤のほうが良いような気もしますが、デジタル録音なので盤の違いは余り無いと思います。もしかしたら演奏に対する感じ方が変化したのかもしれないですよ。
でも僕も大好きな演奏です。
アンチェル、セル盤も機会ありましたら是非!

投稿: ハルくん | 2010年8月16日 (月) 22時47分

こんばんは。

アンチェル/Praga旧盤ついに入手!
レーベル全般に言えますが、ジャケットlovely。演奏は爆発させないのがgood。実演でなくCDなので、強奏で"ブワっ"と音が割れて録音されてるとかなりdownbearing。音質も、Pragaは傾向がありますが好きデス。

カップリングのオイストラフとの協奏曲も聴かないとsweat01

投稿: source man | 2010年9月20日 (月) 22時40分

source manさん、こんばんは。

アンチェル/チェコ・フィルPRAGA盤はステレオ録音で無いのが非常に残念です。でも良く聴くと細部のニュアンスなどはやっぱり素晴らしいですよ。録音も含めればノイマン盤が上だと思いますが、演奏だけならアンチェルかもしれません。

投稿: ハルくん | 2010年9月20日 (月) 23時01分

この曲はチェコの音(ノイマン/コシュラー)で聞くのと磨き抜かれた音(ケルテス・カラヤンVPO(1961盤)で聴くのとではかなりイメージが異なると思います。セル(EMI)が原体験ですが、ノイマン・コシュラーを聞いて別の魅力を発見しました。又、ワルターコロンビアの演奏が意外と聞けます。響きが室内楽的な所にまた別の魅力を感じます…

投稿: k | 2014年9月25日 (木) 06時33分

Kさん

セル/クリーヴランドは好きな演奏ですが、チェコPOとのライブが出てからはもっぱらそちらを愛聴しています。
今ではドヴォルザークをチェコの音以外で聴くのは中々辛いところです。

投稿: ハルくん | 2014年9月25日 (木) 23時10分

ご無沙汰しております。
最近はこの曲を聞き込んでいまして、ハルくんの評を大いに参考にさせて頂いています。
ハルくんのチェコ、スロバキア地元オケへの愛着はよくわかるのですが、それとは別に気に入っておられるSKDはどうなのでしょうか。
ブロムシュテット/SKDは最高の美音が聴ける名演だと思うのですが、ハルくんの感想を聞いてみたいのです。
ノイマンの82年盤は72年盤よりバランスが良いとは思いますが、やはり終楽章が遅くて違う曲に聞こえるのと、チェコフィルの音色が室内楽的で厚みに欠けるのが今ひとつのように感じました(録音のせいでしょうか)。72年盤の方が良い音に聞こえます。

投稿: まっこい | 2014年10月11日 (土) 22時57分

まっこいさん、こんにちは。
ご無沙汰しましたがお元気そうで何よりです。

SKDはもちろん大好きな楽団なのですが、ドイツ/オーストリア音楽以外にはそれほど食指を動かされません。ブロムシュテット盤も聴いていませんが、機会あれば聴いてみたいですね。

ノイマンの72年盤と82年盤は完全に好みの問題だと思います。アナログ的な音の72年、デジタル的な82年と、どちらが良いとは言えないです。けれども当時も最近もチェコフィルを生で聴いた音に近いと感じるのは82年盤のほうなのですけれど。

もっともドヴォ8の現在のマイベスト盤は記事にもしたセル/チェコフィル盤です。

投稿: ハルくん | 2014年10月12日 (日) 15時58分

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