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2009年7月20日 (月)

ドヴォルザーク 交響曲第7番 ニ短調op.70 名盤

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ドヴォルザークの交響曲の中では、この「第7番」が「新世界より」「第8番」に次いで人気が高いです。それ以前の交響曲もどれもが佳曲と呼べますが、この3曲では音楽の充実度が明らかに増しています。第7番はドヴォルザークがブラームスの「交響曲第3番」を意識して作曲したと言われますが、確かにそれらしい曲想と重厚な響きを持つ作品になっています。もちろん、他の交響曲のようにボヘミアの雰囲気を漂わせていることには変わらないのですが、最もドイツ的な要素が強いのが第7番です。4楽章構成で、どの楽章も大変に魅力的ですが、個人的には第2楽章の牧歌的なアダージョと第3楽章の哀愁漂う名旋律のスラブ舞曲風スケルツォが大好きです。

ところで、この第7番はイギリスのロンドン・フィルハーモニー協会から依頼されて作曲をし、ドヴォルザーク自身の指揮でロンドンで初演されました。ということは「イギリス」の副題を付けるにふさわしいのは、第8番よりもむしろこちらの曲の方なのです。音楽業界も案外といい加減なものですね。

それでは恒例の愛聴盤のご紹介に移ります。

51stsqodil ジョージ・セル指揮クリーヴランド管(1960年録音/CBS盤) セルのスタジオ録音は大抵の場合で、演奏に冷静過ぎる印象が強く、余り好みません。この演奏はオーケストラのアンサンブルの切れの良さは最高ですし、非常に引き締まった音には凄みすら感じます。ボヘミアの情緒にも決して欠けるということでもありません。けれども、どうしても聴いていて息苦しさが感じられます。第8番のように晩年に再録音を残してくれていたら良かったのですが。

4125wgppchl ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・フィル(1964年録音/スプラフォン盤) コシュラーの録音としては最初期のものでとても貴重です。指揮解釈自体は極めて堅実なもので、少々地味過ぎるほどです。テンポは中庸、大袈裟に歌わせることは有りません。やや面白みには欠けますが、この演奏の最大のポイントは、アンチェル全盛時代のチェコ・フィルの厳しく引き締まった音で第7交響曲が聴けるという点です。これはチェコ・フィルのファンにとっては何物にも代え難いことです。

41mzerdas2lラファエル・クーベリック指揮ベルリン・フィル(1971年録音/グラモフォン盤) 僕が最初に買ったこの曲のディスク(ただしLP盤)はクーベリック指揮ウイーン・フィル(DECCA盤)でした。これは非常に良い演奏で愛聴しましたが、その後ベルリン・フィルとの全集(グラモフォンのLP盤)を買ってからは、愛聴盤はそちらに変わりました。ベルリン・フィルの演奏はスケールの大きさで他の演奏を圧倒しているのと、第7番以外の曲の場合のようにベルリン・フィルの近代的な響きが余り気にならないので好んでいます。

410jypp5j2l__ss500_ ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1972年録音/スプラフォン盤) ノイマンはこの曲を1972年と1981年の新旧2度の交響曲全集の為に録音を行っています。演奏の出来栄えとしては、ほとんど差が有りません。強いて言えば演奏の覇気を強く感じるのが旧盤で、まとまりの良さでは新盤というところです。けれどもその違いは極めて小さいものです。録音もアナログの旧盤とデジタルの新盤どちらも優秀ですので、これは音の好みの問題だと思います。個人的にはどちらかいうと旧盤の方に幾らか惹かれています。

418meqgepcl__ss500_ ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1978年録音/オルフェオ盤) ベルリン・フィル盤は非常に聴きごたえの有る素晴らしい演奏ですが、同時にボヘミアの素朴さも求めたくなると、ベルリン・フィルよりも手兵のバイエルン放送響のほうに適正を感じます。従って、この曲についてはその時の気分で聴き分けることにしています。それにしても、クーベリックの演奏で聴くと、この曲の風格が一段も二段も上がったように感じるのは流石です。

Dovocci00052_2 ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1982年録音/スプラフォン盤) ノイマンにはこの曲に3種類の録音が有りますが、どれも解釈は似かよっていますし優れた演奏です。ですので、どれを選んでも失敗は有りません。この二度目の録音は、演奏のまとまりの良さでは一番なのですが、逆に特徴が薄く感じられるかもしれません。個人的な好みを言えば、前述の通り旧録音盤と、晩年のライブ盤のほうを僅かに気に入っています。

Cci00006 ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1991年録音/CANYON盤) ノイマン/チェコ・フィルの3度目の録音は東京芸術劇場でのライブ盤です。この時のライブの第8番はスプラフォン盤に比べると劣っているように感じるのですが、第7番については逆にスプラフォン盤以上に気に入っています。円熟した演奏でありながら、覇気とスケールの大きさを一層感じさせるからです。一般的にノイマンは個性の無い指揮者と見られがちですが、晩年の一連のマーラー作品の録音などと合わせてそれが大きな誤りであることを充分証明する演奏です。

Cci00055 ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・ナショナル響(1994年録音/ビクター盤) コシュラーは1964年のチェコ・フィルとの録音のあとに、1970年代にはスロヴァキア・フィルと二度目の録音を行なっています。従ってこのチェコ・ナショナル響との録音は3度目になります。ところが8番、9番と違って意外に魅力を感じません。叙情的な部分ではさすがにコシュラーだけあって美しいのですが、緊迫感を要求される部分にそれが欠けている印象です。

ということで、僕が特に好きな演奏は、クーベリックのベルリン・フィル盤とバイエルン放送響盤の2種類、それにノイマン/チェコ・フィルの72年盤と91年盤の2種類です。この曲の持つスケール感とボヘミアの味わいを両立させている演奏は決して多くは無いと思います。

せっかくですので、次回は第1番から第6番までの曲についてを「全集盤」として触れてみようかと思います。

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コメント

こんばんは。残業の合間に逃避したくなると来てしまう所です(爆)
日本では8,9番に比べ有名ではありませんが、私は3曲とも甲乙つけがたいように感じます。適度の野趣、色彩感、弦の厚みと懐かしさ・・特に7番で気に入っているのは1,2楽章でしょうか。4楽章は少し風通しが悪いかも。
そういえば5~9番を1~5番と記した古い譜面を見たことがあります。ブラームスに認められて大手出版社から交響曲を出せるようになったのが6番以降だからなんですね。7~9番が甲乙つけがたいのに比べ、4番から7番にかけては1曲ごとに心境著しいように思うのは、私だけでしょうか?

投稿: かげっち | 2009年7月21日 (火) 20時36分

かげっちさん、こんばんは。

仕事の合い間の気分転換にしてもらえれば嬉しい限りです。でも余り休んでばかりいないでね~。(爆)

僕もこの曲は1,2,3楽章が好きですね。
それと4番以降で1曲ごとに進化していくのは事実だと思います。ただ僕はどれも好きなのですけど。

投稿: ハルくん | 2009年7月22日 (水) 00時37分

ハルくんさん、こんにちは。

私は「隙がない」作品が好きなのです。つまり「ああ、この部分はちょっとゆるんでいる、平凡だな」と感じる部分が少ないほど傑作だと感じるのです。そういう意味での「音楽の密度」から評価すると、4~7番の間では1曲ごとにスリリングになっているように思えます。

でも音楽によっては、または趣味によっては、「この音楽が末永く永遠に続いてくれたらなあ」と願いたくなるのも、わかる気がしますけど。シューベルトの大交響曲など、この辺で評価が分かれるのではないでしょうか。

投稿: かげっち | 2009年7月22日 (水) 12時48分

かげっちさん、こんばんは。

私はですねー、「隙が無い」女性は苦手なのですよ。ちょっとゆるんでいて、平凡だなと思えるような人が好きなのです。でないと気疲れしてしまうでしょう?って何の話かって?(笑)
でもですね、音楽も同じです。決して完璧ではなくても愛すべき作品は多く存在します。
シューベルトのハ長調の大交響曲もそうですし、ドヴォルザークの7番以前の交響曲も皆そうです。結局は好みの問題なのでしょうね。やっぱり女性と一緒です!(爆)

投稿: ハルくん | 2009年7月22日 (水) 19時05分

ハルくんさん、こんにちは。

「男の音楽観は女性観と平行する」ことが多いのでしょうか?でも私の場合、音楽は隙がないものを好みますが、女性は「隙がないように見える女性が一瞬見せる隙」が好きなのです(何のこっちゃ?)

ただシューベルトの天国的な長さは素敵です。

ドヴォルザークは「ブラームスの弟子」であり、本人も交響曲では隙がない高密度の音楽を目指していたように思いますが、しかし彼自身のスタイルで自由に書いた曲にも全く別の魅力があります。「アメリカ」とか「ドゥムキー」とか。7番の4楽章や8番のコガネムシは、一瞬そっちに走ってしまったという感じなのかしら?

投稿: かげっち | 2009年7月23日 (木) 12時11分

かげっちさん、こんばんは。

うーむ「隙がないように見える女性が一瞬見せる隙が好き」ですかぁ。一瞬の隙を見逃さないのですね。なるほど確かにそれは魅力かもしれないですね。さすが、かげっちさんはかなりの達人とお見受けしました。(爆)

ドヴォルザークは古典的な枠組みの中に民族的な要素をふんだんに取り入れて融合させた点では最高峰ではないでしょうか。どれも解り易くて親しみやすい素適な音楽だと思います。

投稿: ハルくん | 2009年7月23日 (木) 22時57分

実はこのごろ、先日TVで聴いたメンデルスゾーンの3番(ゲヴァントハウス)と、ドヴォルザークの8番が、頭の中で鳴り止まないのですよ(笑)半分はハルくんさんのせいです。

投稿: かげっち | 2009年7月24日 (金) 12時28分

かげっちさん、こんにちは。
うーん、スコットランドとイギリスですか。語呂はいいですよねぇ。ですが万一ドボ8のメロディが黄金虫になってしまうとスコットランドとはちょっと合わないですね。(笑)

投稿: ハルくん | 2009年7月24日 (金) 12時54分

私が初めて購入した7番の録音はノイマン指揮チェコフィルのスプラフォンでの2度目の録音のレコードでした。レコードのジャケットの写真でのノイマンの指揮する表情に引きつけられるものを感じました。
演奏では特に第3楽章のスケルツオを聴いて、まさにチェコの音楽家でなければ出ない音色だと感じました。
さて恥ずかしいのですがドヴォルザークの交響曲全集は大好きな指揮者の一人のスウィトナー指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団の録音しか持っていません。いろいろ聴いてみると演奏は良いのですがドヴォルザークを聴くというよりもスウィトナーを聴く演奏のように感じています。今はちょっと無理ですが余裕が出たら2つ目の全集を購入したいと思っています。やはりノイマン指揮チェコフィルの録音が本命だと思いますがスプラフォンでの1回目の録音と2回目の録音の、どちらにすべきか思案中です。

投稿: オペラファン | 2009年7月24日 (金) 22時58分

ハルさん、こんばんは。

久しぶりに書き込みさせて頂きます。

私が初めて購入したドボルジャークの『第7』のCDは、チェコの指揮者であるリボール・ペシェクとロイヤル・リバプールフィルの演奏でした。確かコンサートで同曲を聴く予定があったので予習を兼ねてこのCDを購入したのだと記憶しています。

演奏というよりも曲の内容の方が印象に残っていて、コンサートで聴いた印象もあって『第7』という曲がとても好きになりました。

クラシックを聴き始めた頃は、寝ても覚めても『新世界より』を聴き、その後『第8』も本当によく聴きました。あまりにも聴き過ぎたせいか少し飽きてしまっていた時期に『第7』を聴いて新鮮に感じたのでしょうね。

今はノイマン=チェコ・フィルのCDを聴く機会が多いですが、ペシェクの優等生的な(良い意味で・・・)演奏も嫌いではないです。

投稿: たろう | 2009年7月24日 (金) 23時56分

オペラファンさん、こんにちは。

スイトナーさんは僕も好きな指揮者ですが、おっしゃられる通り真正ドヴォルザークとはちょっと違うかもしれませんね。
ノイマンの2つの全集なのですが、演奏に気迫の有る1度目とまとまりよく円熟さを感じる2度目とは全く甲乙が付けがたいと思います。録音についても、かつてのスプラフォンのアナログ録音の良さを感じる1度目とデジタル録音で実はチェコフィルの原音に忠実な2度目と、やはり甲乙が付けがたいと思います。
ですので、どちらを選んでも真正ドヴォルザークを味わえることには間違い無いと思いますよ。

投稿: ハルくん | 2009年7月25日 (土) 06時45分

たろうさん、お久しぶりです。
海外へのご出張の多いお仕事が相変わらずお忙しそうですね。どうか体調など崩されませぬように。

リボール・ペシェクはスロヴァキアフィルを指揮した「新世界より」を持っています。コシュラー/スロヴァキア、レナルト/ブラティスラヴァと比べて落ちるので触れませんでしたが、このような自国の地味な演奏家の録音には思わぬ掘り出し物があり、それらを見つけるのも音楽鑑賞の醍醐味です。
出来ればロイヤル・リバプールでは無くスロヴァキアフィルと全集を録音してほしかったですね。

投稿: ハルくん | 2009年7月25日 (土) 06時59分

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