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2009年7月

~愛~ ドヴォルザーク 交響曲全集

Naoekabuto ドヴォルザークは交響曲を全部で9曲書きました。後期の「7番」「8番」「9番新世界より」はファンに広く愛好されています。ところが「6番」以前の作品はどうかというと、一般的には余り聴かれていないと思います。確かに曲の出来栄えにはだいぶ落差が有ります。それでも後期の3曲や「チェロ協奏曲」「アメリカ」などを好むドヴォルザーク・ファンには出来れば全曲を是非聴いて頂きたいと思います。ここには作曲家の「愛」が満ち溢れているからです。

ドヴォルザークの交響曲は最初に「第6番」から出版されましたので、現在の6番が以前は「1番」でした。ちなみに現在の7番が「2番」、6番が「3番」、8番が「4番」、「新世界より」が「5番」と少々ややこしいのです。古い中古LPにはそのように記載されているものが多く有ります。

曲の出来栄えとしては「7番」「8番」「新世界より」に次いで「4番」「5番」「6番」がなかなか優れています。特に「6番」はディスクの種類も有る程度有りますし、単独で聴いてみても良い曲です。3楽章の過激なスラブ舞曲のフリアントも大変魅力的です。あと個人的には「4番」も好きです。曲想は美しく叙情的ですが、立体的な部分との対比も曲に変化を感じさせます。「1番」「2番」「3番」になるとさすがに音楽に未成熟さを感じてしまいます。とは言え僕は第1番「ズロ二ツェの鐘」が大好きなのです。ズロ二ツェというのはドヴォルザークが若い頃に住んでいた町で確かに鐘が有ったそうです。ここには「若書き」の未熟さはあっても、それ以上に若いときにしか書けないような青春の息吹や新鮮さを感じるからです。この1番は是非とも聴いて頂きたいと思います。

僕自身も全集盤は滅多に聴くことは有りませんが、1年に1度ぐらいは気が向いて順に聴くことが有ります。そして何か懐かしさを憶えて満足します。それで充分なのです。全集盤は種類も限られていますが、幾つかご紹介しておきます。

449 ラファエル・クーベリック指揮ベルリン・フィル(1970年代/グラモフォン盤) 学生の時に最初にアナログLP盤で買った演奏です。現在はもちろんCDで出ています。当時は後述のノイマン盤かこのクーベリック盤の選択でしたが、僕は当時好きだったクーベリックで迷いませんでした。ところが初めは良いと思っていたのですが、友人の購入したノイマン盤と聴き比べるうちにベルリンフィルの立派でぶ厚い響きにどうも違和感を感じるようになりました。「こりゃボヘミアの空気とは違うなぁ」という気がしたのです。やっぱりボヘミア音楽の演奏には素朴さを残して置いて欲しいと思うのです。

Cci00051b ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1970年代/スプラフォン盤) ノイマンの一回目の全集です。当時友人の家で耳にしたこの演奏はスプラフォンのあの幾分硬めで素朴さを感じる音質でチェコフィルの音を満喫出来ました。その印象はCD化されても変わらないのが嬉しいです。全体的に演奏に覇気があるのも素晴らしいですし、正にボヘミアをイメージさせてくれます。唯一問題が有るのは8番のみです。どういうわけだか演奏が少々「がさつ」なのです。8番以外の曲は最高なのですが。

Cci00052 ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1980年代/スプラフォン盤) ノイマンの二回目の全集です。デジタルで録音された音は一回目と随分違いを感じますが、こちらの方が実は本物に忠実な音色だと思います。というのは実際に生で聴いたノイマン/チェコフィルの音は非常にきめ細かく繊細な美音であり、それはこの録音の音に近いと記憶しているからです。演奏も全曲ともまとまりが良く失敗作が有りません。但しその分、個性がやや薄く感じられるのも事実です。もしもノイマンの新旧盤のどちらか一つ選ぶとすると、これは大変に難しい問題ですが、個人的には旧盤の方を上げるでしょうか。

これ以外に、今後入手したいと思っているのは廃盤ですがコシュラー指揮スロヴァキアフィルの70年代のOPUS録音、それと最近のヴァーレク指揮プラハ放送響の二つです。ヴァーレク盤を既にお聴きになられた方はご感想をお聞かせ下さると嬉しいです。

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ドヴォルザーク 交響曲第7番 ニ短調op.70 名盤

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ドヴォルザークの交響曲の中ではこの「第7番」が「新世界より」と「第8番」に次いで人気が有りますが、この後期の3曲の出来栄えは、それ以前の曲と比較してやはり群を抜いています。この7番はドヴォルザークが多分にブラームス交響曲第3番を意識して作曲したために非常に重厚な作風と響きになっています。もちろん他の曲のようにボヘミアの雰囲気を漂わせていることは変わらないのですが、最もドイツ的な要素が強いのはこの曲です。個人的には第2楽章の牧歌的なアダージョと第3楽章のスラブ舞曲風のスケルツォが好きです。

ところでこの第7番はイギリスのロンドンフィルハーモニー協会から依頼されて作曲を行い、ドヴォルザーク自身の指揮でロンドンで初演されました。ということは「イギリス」の副題を付けるにふさわしいのは8番よりもむしろ7番の方なのです。音楽界も案外いい加減なものですね。

それでは恒例の愛聴盤のご紹介に移りましょう。

418meqgepcl__ss500_ ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1978年録音/オルフェオ盤) 僕が最初に買ったこの曲のディスク(但しLP)はクーベリック/ウイーンフィル(DECCA盤)でした。これは非常に良い演奏で愛聴しましたが、その後ベルリンフィルとの全集(グラモフォンのLP盤)を買ったので、愛聴盤はそちらに変わりました。ベルリン盤はスケールの大きさで他を圧倒しているのと、7番以外の曲のように響きの違和感をそれほどは感じないので現在でも名盤と思っています。ですがやはりある程度ボヘミアの素朴さも求めるとなると、やはり手兵のバイエルン放送響のほうがベルリンフィルよりも適正を感じます。クーベリックの指揮で聴くとこの曲の格が一段上がったように感じるからさすがです。

Cci00051b ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1972年録音/スプラフォン盤) ノイマンはこの曲を1972年と1981年に新旧の2度の交響曲全集の為にスプラフォンに録音しています。しかし演奏の出来栄えにはほとんど差が有りません。強いて言えば演奏の覇気をより感じるのは旧盤、まとまりの良さでは新盤ですが、その違いは極めて小さいものですのでどちらを選んでも問題有りません。録音もアナログの旧盤とデジタルの新盤どちらも優秀なので単に好みの問題だと思います。ただし個人的には旧盤により惹かれています。

Cci00006 ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1991年録音/CANYON盤) ノイマン/チェコフィルの3度目の録音は東京芸術劇場でのライブ盤です。この時のライブの8番はスプラフォン盤に比べて劣っているように感じるのですが、7番については逆にスプラフォン盤以上に気に入っています。実に円熟した演奏でありながら、覇気とスケールの大きさを一層感じさせるからです。一般的にノイマンは個性の無い指揮者と見られることが有りますが、晩年の一連のマーラー作品の録音などと合わせてそれが大きな誤りであることを充分証明しています。

Cci00055 ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・ナショナル響(1994年録音/ビクター盤) コシュラーはこの曲の最初の録音を1964年にチェコフィルと行っています(スプラフォン盤)。2度目が70年代のスロヴァキアフィルとの全集盤です(OPUS盤)。従ってこのチェコ・ナショナル響との録音は彼自身3度目になります。ところが8番、9番と違って意外に魅力を感じないのです。叙情的な部分はさすがにコシュラーだけあり美しいのですが、どうも全体的に緊迫感を要求される部分にそれが欠けているのです。その点は3つの演奏に共通しています。この人は第7番を得意にしていなかったのかもしれません。

ということで僕が特に好きな演奏は、クーベリック(バイエルン放送盤とベルリンフィル盤)、ノイマン(72年盤と91年盤)です。この曲のスケール感とボヘミアの味わいを両立させている演奏は決して多くは無いと思います。

せっかくなので残りの6番までの曲についても次回に触れてみようかと思います。

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ドヴォルザーク 交響曲第8番 ト長調op.88 名盤

Dvorak1 通称「ドボ8」。と言ってもドロボー八っあんでは有りません。ドヴォルザークの交響曲第8番です。この曲は「新世界より」と並んでオーケストラコンサートの定番プログラムですね。とても親しみやすく変化に富んでいるので、これからクラシックの管弦楽を聴き始めようという人にお勧めする10曲に入れても良いのではないでしょうか。僕もかつては飽きるほど聴きました。最近はほとんど聴きませんが、なにしろ爽やかな曲なので湿度が高くジメジメした今頃の季節にはスメタナあたりと並んでとても聴きたくなります。

この曲は最初にロンドンの出版社から楽譜が出版されたのでよく「イギリス」と呼ばれますが、音楽そのものには何の関連性も有りません。むしろ曲想は極めてチェコ&スロヴァキアの自然を感じさせるので、「ボヘミア」と呼びたいぐらいです。曲は第1楽章や第4楽章の高揚する生命力も素晴らしいですが、第2楽章のボヘミアの草原を感じさせる牧歌的な美しさや、第3楽章の正にグラツィオーソで哀愁漂うスラブ風舞曲と、実に変化に富んでいて飽きさせません。でもひとつだけ第4楽章の中間部の転調後に土俗的なリズムに乗って♪タンタンターン、タタタタターン♪と繰り返される部分が何故か「コガネムシ~は金持ちだ~」に聞こえるのは僕だけでしょうか。その後更にフォルテシモでコガネムシの大合唱になってからは正に圧巻です。(笑) ちなみに黄金虫のメロディを聞いてみたい方は下記のリンクからどうぞ。http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/koganemu.html

さて、それでは恒例の愛聴盤コーナーです。

Cci00005 カレル・アンチェル指揮チェコ・フィル(1960年録音/PRAGA盤) アンチェルは8番のスタジオ録音を残しませんでした。これは本当に悔やまれることです。これはプラハでのライブ録音ですが、モノラルであり年代を考えると音質は標準レベル程度と言えます。ところが演奏は驚くほどの素晴らしさです。アンチェルはスタジオでは造形性を重視した比較的冷静な演奏を残しますが、ライブでは時に阿修羅のような演奏をします。この8番も弦は表情豊かに歌い、管楽器/打楽器は迫力一杯に鳴らし切ります。時に熱くなり過ぎて崩れることも多々ですが、この演奏はぎりぎりの所で踏み留まっているので感動は比類有りません。このCDは海外盤のみです。中古店ではよくカップリングのヴァイオリン協奏曲のコーナーに紛れていますのでご注意を。

410jypp5j2l__ss500_ ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1982年録音/スプラフォン盤) ノイマンにはこの曲には3種類の録音が有りますが、最も優れているのは断然この1982年の二度目の全集への録音です。最初の1972年の録音では楽器バランス、リズム、歌い方がいずれもいまひとつで感心しないこと、1991に日本でCANYONに残した録音には演奏に覇気が感じられないことからです。その点、この82年盤は、かつて自分が70年代に東京文化会館で聴けた覇気があり、かつ素晴らしく美しい音の生演奏を思い出させてくれます。

61hg1zds72l__ss500_ ジョージ・セル指揮クリーブランド管(1970年録音/EMI盤) よく言われることですが、スタジオ録音の場合にはどうも冷静過ぎて面白みの無い演奏が多いセルはライブになると相当に人が変わります。しかしこの晩年のEMIへの録音はスタジオ演奏にもかかわらず冷たさを余り感じません。むしろスケールの大きさとじわじわと高揚感の湧く素晴らしい演奏です。オケの上手さは比類ないのですがそれがかつてのように機械的には感じさせないのです。これに比べるとCBSの旧盤はやはり演奏が窮屈で面白く有りません。

418meqgepcl__ss500_ ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1976年録音/オルフェオ盤) クーベリックもこの曲を得意にしていて日本でもこのコンビで熱い演奏を聞かせてくれました。この本拠地ミュンヘンでの録音ではもう少しゆとりを持って演奏していますが、繰り返して聴くにはそれがプラスに感じます。9番と同様にベルリンフィルとの録音も有りますが、このバイエルン放送盤のほうが僕は好きです。むしろチェコ・フィルと晩年に録音を残してくれていれば良かったと思うのですが。

Cci00055 ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・ナショナル響(1994年録音/ビクター盤) この演奏では新生楽団がなかなか美しい音を聞かせています。アンチェルやクーベリックに代表される爆演型とは対照的に非常に落ち着きとゆとりのある演奏なのでなかなか気に入っています。熱狂でなく美しさに重点を置いた第4楽章などは誠にユニークだと思います。やはりコシュラーは只者では有りません。8番についてはスロヴァキアフィルとの旧盤よりもむしろこの新盤の方が良いように思います。

以上の中から更に絞リ込むとすれば、熱演代表としてアンチェルの60年ライブ盤、オーソドックスで何度聴いても飽きない名演としてノイマンの82年盤、というところです。

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ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」ホ短調op.95 愛聴盤諸々

Dvorak2 スメタナがチェコ国民楽派の開祖なら、ドヴォルザークはそれを集大成した偉大な音楽家です。昔から僕はこの人の作品が大好きなのですが、特に「新世界より」は自分が一番最初にハマったクラシック音楽でした。第1楽章の序奏が静かに始まり、徐々に高揚して主部に移るまでの展開は実に見事ですし、中間部の落ち着きから終結部に再び追い込む緊張感は素晴らしいですね。第2楽章は歌詞まで付けられて「家路」として有名ですが、望郷の念に溢れる曲想には胸を打たれます。特に中間部の孤独感溢れる部分は言葉にならないほどです。「こりゃ失恋した後にはね、涙無しにゃ聞けないよ。あんたわかるかい?」(フーテンの寅さん?ハルくん?談) 第3楽章のスラブ舞曲風のスケルツォも楽しいですし、第4楽章の勇壮な主題はもう最高です。これぞクラシック。オーケストラを聞く醍醐味と言えるでしょう。後半はやや展開が単調になりますが、これはご愛嬌ということころでしょう。

何度もお話していますが、僕はこの手の国民楽派は自国の演奏家以外にはどうも興味が湧かないのです。かつてはバーンスタイン、カラヤン、セルやケルテスといった指揮者でも聴きましたし、一般的にははケルテス盤などは非常に良い演奏だと思います。ですが最近は本当にボヘミア人がボヘミアの楽団を指揮した演奏以外はまず聴きません。それによって失うものよりも、逆に新たに見えてくるものがあると思っています。ということで僕の「新世界より」の愛聴盤をご紹介してゆきます。

Cci00050 ヴァーツラフ・ターリッヒ指揮チェコ・フィル(1949年録音/スプラフォン盤) チェコ・フィルを世界的な名楽団に育て上げたターリッヒの代表盤と言える名盤です。この時代にしては極上の音質なのも価値を失わない理由でしょう。現代の多くの演奏がいわば機械造りの陶器だとすれば、これは名人の手による逸品といった趣きです。造形の崩れは無いですが手造りならではの味わいに満ちています。多くのチェコの後輩指揮者が影響を受けた原点となる演奏と言えます。

Cci00050b ヴァーツラフ・ターリッヒ指揮チェコ・フィル(1954年録音/スプラフォン盤) 何故か前述の49年盤が何度も再発売されてきた影に隠れてしまった新録音盤なのです。音質は更に優れていますが、管楽器や打楽器が前に出て聞こえるのはむしろ49年盤。なので一聴すると49年盤のほうが迫力が有るように感じられます。けれども音楽の深さと言う点では54年盤のほうが更に数段優れています。現在はターリッヒ・エディションという海外盤のみしか出ていませんが、これは24Bitのマスタリングが高音強調で音質的に感心できません。中古店で根気よく旧盤を探されることをお薦めします。

Cci00051 カレル・アンチェル指揮チェコ・フィル(1961年録音/スプラフォン盤) これはステレオ時代の古典的名盤です。アンチェルは名指揮者であるにもかかわらず、歴史の荒波に押し流された人生を過ごしました。しかしこの「新世界より」の録音は正にこの曲のリファレンスといえる名盤です。この演奏を聴かずしてこの曲は絶対に語れません。全盛期のチェコ・フィルの音が聴けるという点で非常に価値が高いですが、実はCDによって随分音質が異なります。正直一番良いと感じるのはやはりアナログ盤です。以前記事にしたことが有りました。CDで選ぶとすればやはり最新リマスターのXrcd盤ということになるのでしょうが、価格が高いのがちょっと難です。案外アナログの柔らかい音に近くて良いのは旧リマスターで、日本コロムビアの国内盤、スプラフォンの海外盤のどちらもお薦めできます。最も気に入らないのは現在のDENONの24Bit盤です。高音が非常に強調されていてチェコフィルでは無くまるでアメリカのオケのように聞こえるからです。

アンチェル/チェコ・フィルのコンビのライブ録音は自分の知る限り2種類有ります。ひとつは1963年ザルツブルクのライブ(オルフェオ盤)です。演奏そのものはスタジオ盤以上に素晴らしいのですが、モノラル録音で音がパリッとしないのでどうもチェコフィルの音に聞こえません。ですので一般的にはお薦めしません。もうひとつは1958年アスコーナでのライブ(aura盤)です。これは非常に激しい演奏ですが演奏と録音の楽器バランスが崩れていて抵抗感が有ります。面白い演奏とは思いますが繰り返し聴くには向かないと思います。

Cci00051b ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1972年録音/スプラフォン盤) ノイマンは70年代と80年代にドヴォルザークの交響曲全集を二度録音しました。これは最初の全集からの演奏です。当時はノイマンは前任のターリッヒ、アンチェルと比べると個性に乏しく演奏も生ぬるいように感じましたが、イメージを一新させたのは東京で聴いた実演です。その時は8番を聴いたのですが、非常に瑞々しく美しい音の名演奏でした。この9番もアナログ録音らしく柔らかく良い音を味わえます。欠点はティンパニーの音がこもっていることですが、全体としては非常に素晴らしい出来です。

Cci00052 ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1981年録音/スプラフォン盤) ノイマン二度目のデジタル録音盤です。72年盤と比べた場合、バランスの良さと造形感では優れますが、演奏の覇気はやや劣る印象です。どちらもオーソドックスな名演なのでなかなか優劣は付け難く、結局は聴き手の好み次第だと思います。実際に僕も以前は新盤が良いと思っていましたが、今回聴き直すとオケの音色の点で旧盤のほうにより惹かれました。

Cci00052b ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1995年録音/CANYON盤) ノイマンはこの2年前の93年にもやはりライブ録音を残していますが、個人的には最後の95年録音を好んでいます。最晩年のかなり枯れた演奏なのですが、力みの一切無いところが逆に何とも言えない風情を醸し出しています。まさか「新世界より」でこんな”白鳥の歌”のような演奏が実現可能だとは思いもしませんでした。但し一般的に、特に若い世代のファンに受け入れられるかはちょっと分かりません。

Cci00054 ズデニェック・コシュラー指揮スロヴァキア・フィル(1973年録音/オーパス盤) コシュラーは日本で都響に度々客演しましたので馴染み深いですが、この人は実に素晴らしい名指揮者でした。この演奏を初めて耳にした当時はアンチェル、ノイマン以上に気に入っていましたが、LP盤を手放してからは長い間聴いていませんでした。ところが最近CDを手に入れてみて余りの素晴らしさにかつての感動が甦りました。第2楽章のどこまでも沈み込んでいくような深さも底知れません。それにスロヴァキア・フィルはチェコ・フィルとは違って完全にローカルカラーの音色なのが何とも魅力的です。唯一の欠点は海外盤だけあって3楽章の冒頭の音が欠落していることです。

Cci00054b ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・フィル(1979年録音/Panton盤) コシュラーが最も魅力的な演奏をするのはどうもスロヴァキア・フィルとのコンビのように思います。チェコ・フィルとのライブともあれば大いに期待したいところでしたが、どうも今ひとつ自分の表現をし尽していないのです。名門オケへの遠慮があったのかどうかは判りませんが、ともかくスロヴァキア・フィル盤のような個性と深みが出ていません。むろん悪い演奏とは思いませんが別の指揮者が振ったのと余り変わらない気がします。

Cci00055 ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・ナショナル響(1994年録音/ビクター盤) コシュラーが初代音楽監督になった新生オーケストラとの演奏です。コシュラーは若い時から天才的な演奏をしたかと思うと、個性の無い演奏をしたりと出来不出来の多い指揮者だというのが僕のイメージです。この円熟期の演奏も決して悪くは無いのですが、オケがまだ熟成したわけでもなく、かといってローカル色が強いわけでもなく、少々魅力の乏しさを感じてしまいます。やはり僕としてはスロヴァキア・フィルと再録音を行って欲しかったというのが正直なところです。

Cci00053 イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィル(1989年録音/スプラフォン盤) ビエロフラーヴェクは僕がまだ大学生の頃に日フィルに客演した実演を聴いた記憶があります。でも演奏は全然憶えていません。なので全く興味の有る指揮者では無かったのですが、この演奏はなかなか良いのです。実にオーソドックスで安定感が有ります。天才の閃きは感じませんが、常にゆとりが有るので安心して曲を味わうことが出来ます。有る意味ノイマン以上にリファレンス的かもしれません。

Cci00053b オンドレイ・レナルト指揮ブラティスラヴァ放送響(1987年録音/Amadis盤) レナルトもかつての新星日響に客演していたので日本では馴染みが有るかと思います。でも大変地味な存在ですね。このCDは海外盤ですが日本で何枚販売されたのでしょう。相当少ないでしょうね。ところがこの演奏は実に素晴らしいのです。派手さとは無縁の地味な指揮者の滋味溢れる演奏ですが、終楽章は充分な迫力も見せます。録音も良いですし、オケの響きがスロヴァキアフィル以上に田舎臭いのがとても魅力です。

ここまでは全てチェコ&スロヴァキアの指揮者とオーケストラの演奏です。他にもまだまだ有りますがとても全部は聴いていません。最後に番外編として一つだけ純血でない演奏もご紹介します。

Cci00055b ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1980年録音/オルフェオ盤) クーベリックはもちろんチェコ出身ですしチェコ・フィルとの演奏も有りますが意外に期待外れです。またベルリン・フィルとの演奏にいたってはカラヤン全盛時代のオケが派手な音で鳴り響き過ぎて全然良くありません。その点、手兵のバイエルン放送盤は充実した演奏となっていますが決して過剰なところが有りません。純血の組み合わせ以外では僕が一番好きな演奏です。

以上、「新世界より」の愛聴盤でした。この中から現在特に気に入っているのは、ターリッヒの1954年盤、アンチェルの1961年盤、コシュラー/スロヴァキア1973年盤がベスト3。次点としてレナルト盤です。

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スメタナ 連作交響詩「我が祖国」 名盤

7月になりました。梅雨時というのは毎日がじめじめと蒸し暑くて嫌なものですね。四季の変化を味わえる日本に生れて良かったとは思いますが、この時期だけは梅雨の無い国に移動したくなります。でも日本でも北海道のように梅雨の無い土地も有るのですよね。とっても羨ましい限りです。

Aug06czech08 実は僕が毎年この嫌な季節に無性に聴きたくなるのが「モルダウ」なのです。だってこの曲は本当に爽やかじゃありませんか。森の泉から湧き出た水の流れが徐々に川幅を増していって、いつしか大河の流れになる情景が実に見事です。それになんといってもあの主題は稀代の名旋律ですしね。「モルダウ」はチェコ国民楽派の開祖スメタナが書いた6曲の連作交響詩「我が祖国」の第2曲目です。6曲というのは順に1.「高い城」 2.「モルダウ」 3.「シャールカ」 4.「ボヘミアの森と草原より」 5.「ターボル」 6.「ブラニーク」です。

僕は第1曲の伝説上のチェコ建国の象徴であるヴィシェフラト城の栄光と没落を描いた「高い城」と、この「モルダウ」の2曲をよく聴きます。気が向いて「シャールカ」まで聴いてしまうと、大抵はそのまま全曲鑑賞になります。5、6曲目の「ターボル」「ブラニーク」は演奏によっては曲が単調に感じられることも有りますが、自国チェコの演奏家であればいずれも民族の共感に溢れていますので退屈することはまず有りません。僕はこういう曲はどうしてもチェコの演奏家で聴きたくなります。他の国の演奏家のものではどうも気分が落ち着かないのです。ですのでご紹介するCDはほとんどが本場物ということになりますが、どうかご容赦ください。

Cci00048 ヴァーツラフ・ターリッヒ指揮チェコ・フィル(1954年録音/スプラフォン盤) ターリッヒはチェコ・フィルを世界的な名楽団に育てた大指揮者ですし、実際に「新世界より」のようなベストの座を争うような名盤も存在します。この「我が祖国」の演奏も味わい深さという点では非常に優れているのですが、録音が古いのがマイナスになっています。個人的にはどうしてももっと録音の良い演奏を聴くことが多いです。

511ess67kxl__ss500_ カレル・アンチェル指揮チェコ・フィル(1963年録音/スプラフォン盤) 全盛期のチェコ・フィルの音を聴くことができる名盤だと思います。アンチェルとしても「新世界より」とこの「我が祖国」は代表盤と言って良いでしょう。ですので僕も昔からずっと愛聴してきました。但し比較的最近リリースされた後述の1968年の歴史的ライブ盤を聴いてしまってからは少々影が薄く感じてしまいます。後半の3曲などはもっと熱く演奏できたはずだと思うのです。まあ、スタジオ録音では仕方が無いのかもしれません。

Cci00049 カレル・アンチェル指揮チェコ・フィル(1968年録音/Radio Servis盤) アンチェルは1968年にアメリカへ演奏旅行中に祖国でプラハの春事件が起きた為に帰国を断念。亡命の道を選びました。その直前の「プラハの春音楽祭」でのライブ録音が残されています。これはスタジオ録音盤とは次元の全く異なる演奏です。アンチェルがライブでどんなに熱く凄い演奏をしていたかの証明でしょう。果たしてこの時に彼が祖国に起きる事件を予感していたかどうかは分かりませんが、第1曲からエネルギー全開で特に「シャールカ」以降は驚異的にテンションの高い熱演を果たしています。この演奏だけは色々な意味で何を置いても必聴です。

51lj40glfml__ss500_ ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1975年録音/スプラフォン盤) ノイマンには東京でのライブ録音盤も有りますが、演奏はこのスタジオ盤のほうが優れていると思います。録音も含めてオーソドックスな名盤を選ぶとすればアンチェルのスタジオ盤に次いではこのノイマン盤が上げられるのではないでしょうか。ノイマン/チェコ・フィルはこの録音の頃に東京で生演奏を聴いていますが、それは本当に瑞々しく美しい音でした。

51rksbz3scl__ss500_ ヴァーツラフ・スメターチェク指揮チェコ・フィル(1980年録音/スプラフォン盤) スメターチェクもチェコが生んだ名指揮者です。派手な人気は有りませんが、この人にチェコのお国ものを演奏させたら、他の巨匠指揮者達に充分匹敵する演奏を成し遂げます。この「我が祖国」もとてもスケールが大きく血の共感を感じる名演です。チェコにはかつてシェイナとかグレゴルとかやはり同じような意味で非常に優れた指揮者が多く存在しました。

41tggf92p6l__ss500_ ラファエル・クーべリック指揮チェコ・フィル(1990年録音/スプラフォン盤) クーベリックの「我が祖国」の録音は5~6種類有ったかと思いますが、これは「プラハの春音楽祭」でチェコ・フィルと42年ぶりに共演した演奏です。同じコンビの日本でのライブ演奏もCD化されていますが、歴史的な録音という点で個人的にはこの演奏を感慨に浸りながら楽しむことが多いです。実際にこの演奏には演奏家達の感動が滲み出ていると思います。

Cci00048k ラファエル・クーべリック指揮バイエルン放送響(1984年録音/オルフェオ盤) クーベリックのこの曲の録音は多く、中ではボストン交響楽団を指揮したグラモフォン盤も評価が高いですが、チェコ・フィル盤以外に上げるとすればやはり手兵のバイエルン放送響盤ではないでしょうか。オーケストラの持つ音色ではチェコの楽団の魅力には及びませんが、演奏そのものはやはり優れていると思います。

この他にはCDでは無くアナログLP盤ですが、日本にも度々訪れた名指揮者ズデニェック・コシュラーとスロヴァキア・フィルの素晴らしい演奏が外せません。これは以前に一度記事にしたことが有ります。http://harucla.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_f106.html

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