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~アルプスへの旅~ ブルックナー 交響曲第4番「ロマンティック」 名盤

Alpsa002 さて、ライン地方の風景を満喫し毎日ビールを飲んだくれていたフーテンのハルくんでしたが、ようやく旅を続けてやってきたのはオーストリアはアルプス山脈の麓にあるリンツです。たいそう美しいこの街には有名な聖フローリアン教会が有るのですが、かつてこの教会のオルガニストを勤めたのがアントン・ブルックナーです。この人は一般的には決してポピュラーということは無いのですが、日本では本場ドイツオーストリア以上に人気が有ります。それほどファンの間には熱烈に支持されているのです。それは何故か?この人の音楽の本質をごく簡単に説明すると「悠久の大自然や宇宙を前にしたはかなさ」ということです。これは他の作曲家の音楽が感じさせるものとはだいぶ異なります。しいて言うと晩年のシベリウスが同じような特徴を持つぐらいです。要するに音楽に「人間臭さ」が全く感じられないのです。其処にあるのは、大アルプスの山々とのどかな森林やお花畑。晩年の作品に至っては、大自然の風景すら超越して、まるで大宇宙そのものと自然の摂理みたいな音楽です。いや音楽すら越えてしまっているかもしれません。

数年前にベストセラーになった藤原正彦さんの「国家の品格」の中に、日本人の持つ特徴として「自然に対する繊細な感受性が他の国民よりも格段に豊かであり、悠久の自然の儚い人生に美を感じる」とあります。僕はこの文章を読んだときにまるでブルックナーの音楽を言い表しているなぁ、と思いました。それゆえに多くの日本人がブルックナーの音楽の本質を理解し愛好するのでしょう。

ですが音楽を聴いて大宇宙や人間の存在の小ささをを感じるなんてつまらない、そんなのまっぴら御免だという方も居るでしょう。そんな方にはこの交響曲第4番は彼の作品の中では一番アルプスの山々や自然どまりの雰囲気なので聴きやすいと思います。終楽章の終結部は流石に宇宙を感じさせますがそれまでは馴染みやすいと言えます。その分、後期の一連の作品のような深みには欠けますけれど。でも曲の副題が「ロマンティック」というのはちょっといただけないですがね。いっそ「アルプスシンフォニー」にでもすればいいのにね。それは他にあるって?そうでしたね。さあ涼しい風を体いっぱいに感じながらアルプスの山々を眺めましょう。

343 カール・ベーム指揮ウイーンフィル(1973年録音/DECCA) アルプスの空気と言えばやはりウイーンフィルの澄み切った清純な音で聞きたいですね。しかもベームはオーストリアの山岳地帯グラーツの出身です。このコンビ位にイメージがピッタリの組み合わせはなかなか無いでしょう。弦も木管も実に美しいですが、音を割ったウインナホルンの威力がアルプスの威容をとことん感じさせてくれます。録音もアナログ全盛期のDECCAだけあって優秀です。

Ph06046 ギュンター・ヴァント指揮ミュンヘンフィル(2001年録音/Profil盤)リンツからドイツ側に下るとミュンヘンが有ります。だからか昔からミュンヘンのオーケストラはブルックナーを得意にしています。ヴァントもブルックナーを最も得意としていてこの曲を何度も録音していますが、特に優れたものの一つがこの演奏です。最晩年のヴァントは職人技を極めて人間国宝みたいな域に達していたと思います。

108 ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送響(2001年録音/RCA盤) ミュンヘン盤が2001年の9月録音、こちらは10月の録音です。そしてこのコンサートがヴァントの最後の演奏会になりました。ですのでこのコンビが直前の2000年に日本で9番を聴かせてくれたのは実に幸運でした。あの時の生の音は決して忘れることができません。そしてこの4番の演奏にはヴァントも団員もまるで最後を予感していたかのような特別な雰囲気が漂っています。枯れているといえばそうなのですが、そこが独特の魅力を湛えていて実に感慨深いものが有ります。

Cci00039_2 ルドルフ・ケンペ指揮ミュンヘンフィル(1972年録音/IMG盤) これはライブ録音であり、昔出ていたスタジオ録音とは違います。ケンペもブルックナーを得意としていて、同じミュンヘンフィルとは5番の超名演を残していますが、このライブの4番もそれに匹敵する素晴らしい出来栄えです。この名匠の腕による彫りの深い演奏はどちらかいうとアルプスの自然よりはミュンヘンの街のあのゴシック様式の巨大な聖母教会を想わせる様な立派さです。僕が生で聴くことができたその聖母教会のパイプオルガンの地響きを立てるような音はミュンヘンフィルの響きに通じていると感じます。

Cci00039b ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウイーンフィル(1955年録音/DECCA盤) クナ抜きにブルックナー演奏は語れません。但しこの演奏はスタジオ録音なので非常に柔らかい演奏であのクナの地響きを立てるような実演とはかけ離れています。ところがそれでも魅力が失われないのがクナの面目躍如です。何と美しい響き、表現の演奏なのでしょう。クナには最晩年1964年に同じウイーンフィルとのライブ録音が有り、それは正に空前絶後、恐らく最も素晴らしい4番の演奏なのですが、残念なことに音質の悪い非正規盤しか有りません。是非正規盤で聴きたいと思うのですが。

Cci00040 カール・シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送響(1955年録音/Archiphon盤) 最後にもう一人ブルックナーを得意としたシューリヒトのご紹介も。ウイーンフィルとの3、5、8、9番ほどの名演とは言い難いので、まあこんなのも有りますということで。軽い足取りはアルプスの野原をさっさと早足で散策しているかのようです。ドイツでビールを飲んだくれてお腹がポッコンのフーテンのハルくんにはこの速さに付いて行くのはちょっと辛いなぁ。

ブルックナーの他の曲、特に好きな5、7、8、9番などについてはそのうちにじっくり触れたいと思っています。

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ブルックナー」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさま こんにちは

今日はブルックナーの第4番ですね
この4番も、版が色々とあり、厄介ですよね〜。

4番は、私はオーマンディ盤、カラヤンのEMI盤などを割りと聴いている感じです。
ベーム盤は、3番、8番は聴いていますが、どういう訳か、4番はLPで聴いていたように思うのですが、CDは持っていません。

クナのデッカ盤、これも、LPの方が音が良かったように思いました。テスタメント盤でCDになっていますが〜。
ケンペ盤は知りませんでした〜。
まだまだ聴いていない名演が多数あります〜。

ミ(`w´彡)

投稿: rudolf2006 | 2009年5月30日 (土) 11時45分

rudolfさん、こんにちは。

ブルックナーの版は色々と有ってよく議論されますが、僕はあんまり気にしないのですよ。あくまでも演奏の良し悪しが第一。版の問題はその次です。
ベームの4番は改めて聴くとやはり良いと思いますよ。
クナ盤については僕もLPのほうが良かったように思います。テスタメント盤はやはり未聴なのですけれど。

投稿: ハルくん | 2009年5月30日 (土) 12時16分

ハルくんさん。こんばんは。
いつもいつも名盤のご紹介ありがとうございます。
先日のブルックナー8番ブームから9番→7番→6番と聴いて参りました。
明日は5番を聴くつもりでしたが
4番にしようかな~なんて思うはるりんです(o^-^o)
なるほど・・・・
ベームもオススメなのですね。ふむふむ。φ(・ω・ )メモメモ
タイムリーなブルックナー情報ありがとうございます。
私はカラヤン・ベルリンフィルしか持っていないのです。
ですのでこれが海のものとも山のものともつかずにおりデス。


投稿: はるりん | 2009年5月30日 (土) 22時41分

はるりんさん、おはようございます。

今日は4番ですか。記事にしておいてこう言うのもナンなのですが、曲として充実しているのは5番です。一般的なブルックナーファンの間では5,7,8,9番の4曲の人気が高いですね。でも他の曲も個々に愛好されている方が多いのもまた事実です。

ブルックナーファンは圧倒的に男性が多いのですが、未だにその理由がよく分かりません。一度分析してみたいと思っているので、はるりんさんにはモニターになって貰おうかなぁ。その際はぜひご協力を!

投稿: ハルくん | 2009年5月31日 (日) 07時26分

はるさん、こんにちは。

ブルックナーとはとても縁遠いジャカルタより書き込みさせて頂きますhappy01

私が最初にこの曲を聴いたのは、確か中学1年か2年位だったと思います。ベーム=ウィーン・フィルのCDでした。

ブルックナーの曲は、最初に7番を聴き、ある程度聴き込んだ後、この4番を聴いたのですが、「標題がある割りに親しみにくい」という程度の印象しか持ちませんでした。
「どこがロマンティックなんだろう」とcoldsweats01

もう経緯は忘れましたが、その後いつのまにか4番も違和感を持つことなく、聴けるようになり(ブルックナー慣れ?catface)、5番、7番、8番、9番に比べれば、そんなに聴く機会はありませんけど、何種類かのCDを持つようになりました。

そのCDの中で私の今のベストを挙げるとするならば、ヴァント=ミュンヒェン・フィルのライブでしょうか。
これはまさにヴァントの晩年の良さとブルックナー指揮者に代々鍛えられてきたオケとの融合がばっちり決まった演奏だと思います。

確かにウィーン・フィルのサウンドは望むべくもありませんが、それには代え難い、オケの音色が4番にピッタリです。巷で評判の良いベルリン・フィルとのCDより、オケのサウンドという点で上に評価します。

第1稿の演奏では、インバルやティントナー、ヤング等のCDがありますが、この中ではティントナーが一番ですね。彼の演奏は、「第1稿だから!」という変な気負いを感じさせないので、好きですshine

投稿: たろう | 2009年5月31日 (日) 11時06分

たろうさん、こんにちは。
お久しぶりです。

ジャカルタからブルックナーとはなかなか粋ですねぇ。(笑)

本当にヴァント/ミュンヘン盤は素晴らしいですよね。北ドイツ放送盤も非常に好きではありますが。
ゲオルグ・ティントナーの4番も良かったですね。良いオケに恵まれていればこの人の自然体で素朴なブルックナーはもっともっと注目されたでしょうにね。日本で演奏会を行う前に亡くなったのがとても残念でした。

投稿: ハルくん | 2009年5月31日 (日) 11時49分

ハルくんさん、お久しぶりです。

前にも書いたようにブルックナーがそれほど好きでないのでよく知らないので、教えていただければと思ったことがあります。

「ロマン主義風」という題名をつけた割にこの曲は「すぐれて描写的」でもないし、他の交響曲と形式が大きくちがうわけでもない(割とコンパクトですかね?)。彼にとって「ロマン主義」とはどういうことだったのでしょう?

思えば、ベートーヴェンやブラームスにとって重要なジャンルだった交響曲と決別することは、ロマン派音楽家とくにリストやワグナーにとって重要だったはずですが、その仲にあってブルックナーにとっては、交響曲を書くとはどういうことだったのでしょう?彼の心象風景を(標題なしに)描き続けることが、symphonyだったのでしょうか。

投稿: かげっち | 2009年5月31日 (日) 19時16分

かげっちさん、こんばんは。

ブルックナーはロマン派をことさらに意識したとは思いません。マーラーが古典的な交響形式を徹底的に破壊/革新したのに比べて、あくまでも古典的な形式を曲全体の骨組みとして忠実に残しているからです。もちろん新しい要素も多く取り入れました。和声法と対位法の導入もそうですし、特徴的なのは弦のトレモロによる曲の開始、全休止、繰り返す2+3のリズム(タン・タン・タタタ)などなどです。
しかしそれらも彼の音楽の本質「悠久の大自然や宇宙を前にしたはかなさ」を抜きには何の意味もなさなくなってしまうでしょう。なにしろ彼は自分の交響曲を「神様に捧げるために」書いたのですよ。

投稿: ハルくん | 2009年5月31日 (日) 21時15分

ハルくんさん、こんにちは。

確かに彼が宗教的な人であったことは忘れてならないでしょう(テ・デウムなんかもいいですよね)。

時間を超越した書法とも言えるわけで、交響曲という名前は付けたけれども、交響曲という器より中身のほうが大切だったのでしょうか。その意味では、音楽的には異なる方向だけれども、シューベルトの交響曲で器より中身が重要だというのと、現象としては似ているかもしれません。その共通点こそロマン派の共通点?

投稿: かげっち | 2009年6月 1日 (月) 12時24分

かげっちさん、こんばんは。

彼が敬虔で宗教的な人物であったのは確かですが、その割りには生涯に何人もの若い女性に求愛したそうです。全部失敗したようですけどね。満たされない欲求がまた創作活動へのエネルギー源になった可能性がありますねぇ。フーテンのハルくんの場合はいつでも傷心してしまいますが。(苦笑)

投稿: ハルくん | 2009年6月 2日 (火) 23時17分

ハルくんさん、こんにちは。

敬虔で宗教的な人が恋をしていけないということはないでしょう(不倫はともかく)。それにリストみたいな人でも宗教曲を書きますし。惚れっぽい男って親近感あります(あれ?)

投稿: かげっち | 2009年6月 3日 (水) 12時45分

かげっちさん、こんばんは。

そうですよね。「恋」は必ずしもエロスだけではなく時に敬虔で神聖なものですよね。自己犠牲を伴う恋こそは究極の愛、「パルシファル」の世界です。でもやっぱり「トリスタンとイゾルデ」にも憧れるなぁ~。(笑)

投稿: ハルくん | 2009年6月 3日 (水) 22時22分

ブルックナーの4番の録音、出るべきものが出て口を挟む余地が無いのですが、面白い演奏を一つ。
宇野功芳指揮新星日本交響楽団との1988年のライブ録音。やりたい放題のたいへん面白い演奏です。

投稿: オペラファン | 2009年6月 6日 (土) 12時25分

オペラファンさん、こんにちは。

宇野さんの演奏会は一度同じ新星日響を指揮したベートーヴェンの7番を聴いたことがあります。デフォルメの極地で途中ワグナーのよううに鳴り響いた箇所もありました。
面白いといえば面白いのですが、完全に「遊び」という印象が強かったです。

投稿: ハルくん | 2009年6月 6日 (土) 14時22分

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