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2009年5月 5日 (火)

ブラームス ヴァイオリン協奏曲 続・名盤 ~女神達の饗宴~ 

ブラームスの作品には、明らかにハンガリーのジプシー音楽の影響を受けていて、哀愁が漂う情緒的な曲が数多く見られます。そのなかでも代表的な作品としてまっ先に上げられるのがヴァイオリン協奏曲二長調でしょう。

この曲は、既に「ブラームス ヴァイオリン協奏曲 名盤」で記事にしていますが、その中で、巨匠ヴァイオリニスト達と比べても一段と強い輝きを放っていたのが情熱的な点で正に並ぶ者が無いジネット・ヌヴーのライブ演奏録音でした。この曲は不思議と昔から女性ヴァイオリニストの名演奏が多いのですね。それは恐らくこの曲は多くの男性奏者が得意とするような古典的な造形性よりも、ジプシー音楽の持つ情熱や情感が主体となっているからだと思います。女性奏者がそのような”命がけ”ともいえる情熱的な演奏をすると、男性奏者はとてもかなわないからです。そこで今回は特にジネット・ヌヴー以外の女性奏者による名演奏のCDをご紹介したいと思います。名づけまして「女神の饗宴」です。ほらほら美人に滅法弱いフーテンのハルくんがステージにくぎづけになっていますよ。(笑)

131 ジョコンダ・デ・ヴィート(Vn)、フリッチャイ指揮ベルリン放送響(1951年録音/Audite盤) この録音は2009年に初リリースされるまでは知られていませんでした。有名なフルトヴェングラーとのイタリア・ライブの1年前の演奏です。録音状態について言えばイタリア録音よりも格段に良好です。ヴァイオリンの音はとても美しく、重音の倍音までもが良く録れています。イタリア・ライブほど熱狂的ではありませんが、かえってブラームスの重圧さが良く出ていて僕は好きです。デ・ヴィートのブラームスの代表盤にすべきだと思います。

Cci00030 ジョコンダ・デ・ヴィート(Vn)、フルトヴェングラー指揮トリノRAI響(1952年録音/IDイタリア盤) イタリア生れのヴィートのスタジオ録音によるバイオリン・ソナタ集は随分と端正な印象でしたが、このライブ演奏はフルトヴェングラーの伴奏指揮に触発されたからでしょうか、ひとつひとつの音に込めた情念の深さが際立っています。それは少々しつこく感じるほどなのですが、こういう女性の艶かしさも悪くは有りません。でも毎日付き合ったら疲れてしまうかも、っていったい何の話だ?(笑) 但し、イタリアの放送録音で音質が酷いのでお勧めはしません。

尚、ヴィートには、もうひとつヨッフム指揮バイエルン放送響(1956年録音/En Larmes盤)という海賊CD-R盤が有るのですが、イタリアでの演奏会から2年後の録音ですが、伴奏指揮がヨッフムで堅牢な為か、ヴィートの独奏もずっと安定感を増しています。そのうえ艶かしい表情は相変わらずです。録音もずっと良いですし、もしも正規録音盤が発売されればこちらを代表盤にするべきです。

Cci00031 ヨハンナ・マルツィ(Vn)、クレツキ指揮フィルハーモニア管(1954年録音/EMI盤) ヨハンナ・マルツィはハンガリー生れ。ヌヴーやヴィートに比べると知名度で劣りますが、実に素晴らしいヴァイオリニストです。非常に情熱的でありながら高い技術と男性的な造形性や堅実性を併せ持っています。第2楽章の深い情感も第3楽章の堂々とした立派さなど見事です。恋人にするならヌヴーやヴィートがエキサイティングで楽しいのでしょうが、女房にするなら堅実賢母タイプのマルツィが理想的だと思いますね。

Cci00030b イダ・ヘンデル(Vn)、ミュラー=クレイ指揮シュトゥットガルト放送響(1955年録音/ヘンスラー盤) これは彼女がまだ若い頃の演奏です。しかし彼女のバイオリンにはどうも余り面白みを感じません。堅実といえば確かにそうなのですが、技術的にも特別上手いわけでも下手なわけでもありませんし、余りに感情をあらわにしないのが気に入らないのです。それは謂わば「三歩下がって夫の影を踏まず」とでもいう感じでしょうか。こういう女性は奥さんにすると良いかもしれません。まあ僕の場合は影どころか生身まで踏みつけられましたけど。(笑) 

Cci00032 ミシェル・オークレール(Vn)、オッテルロー指揮ウイーン響(1958年録音/PHILIPS盤) フランス生まれで生粋のパリジャンヌのオークレールも個性的な美人ヴァイオリニストです。フランス以外の欧米男性から見るとフランスの男は嫌われていますが、フランス女性はとても人気があるようです。まあフーテンのハルくんにはとても縁の無い話なのでしょうが。えっ、わからないって?それじゃ次はフランスに行くか!(笑) オークレールのバイオリンは軽く鼻にかかったフランス語の発音のような演奏です。重厚さとか情念の濃さというものは全然有りません。そこがとてもユニーク。パリジャンヌとデートでもしている気分になって聴いていると結構楽しいです。  

Cci00031b ヨハンナ・マルツィ(Vn)、ヴァント指揮シュトゥットガルト放送響(1964年録音/GreenHILL盤) マルツィは録音が非常に少ないのですが、彼女の全盛期に伴奏者にも恵まれて録音状態の良いライブ演奏が残されているのは大変貴重です。ハンガリー人らしい情熱と情感が溢れるばかりなのですが、音楽が崩れることなく素晴らしいバランスを保っています。それを支えているのが幼少の時から師事したフーバイに鍛えられた演奏技術です。後年の名匠ヴァント指揮のオケ伴奏も充実していて個人的に大好きな演奏です。
(追記:その後ヘンスラーから正規盤が出ました。高音域が強調されてヴァイオリンの艶は増しましたが、低域に厚みのあるGreenHill盤も捨て難いので、無理に買い換える必要はありません。)

144アンネ‐ゾフィー・ムター(Vn)、カラヤン指揮ベルリン・フィル(1981年録音/グラモフォン盤) 録音当時ムターはまだ弱冠16歳でしたが、ここで聴ける正に完成され切った演奏は一体何なのでしょう。単に技術的に上手く弾いているだけでなく、充分に気迫の込められた演奏には思わず引き込まれます。さすがに音楽の深みは今一つ感じられませんが、ベルリン・フィルを熱気一杯に鳴らしているカラヤンの指揮に少しも負けていません。ベルリン・フィルの音色がやや明る過ぎるのが好みではありませんが、演奏全体の素晴らしさに傷がつくほどではありません。

Cci00033 チョン・キョンファ(Vn)、プレヴィン指揮ケルン放送響(1996年録音/En Larmes盤) 韓国に生れた素晴らしいヴァイオリニストのキョンファはブラームスの正規CDをラトルの伴奏で録音しています。でもずっと世評の高いのはこの海賊CD-R盤の演奏のほうです。僕は最近ようやく友人から借りてこの演奏を聴くことができました。僕は韓国の女性もイイなぁと思うのですよ。何を隠そう女優のチョン・ジヒョンのファンなのです。可愛いじゃありませんか。でもやっぱり彼女は恋人タイプでしょうね、ってまた話が脱線しているな。(笑) ジヒョンじゃなくてキョンファはこの録音と同じ頃に東京でリサイタルを聴きに行きましたが、虚飾の無い素晴らしい演奏でした。このブラームスも同様です。深い情念と気迫を持ちながらも外面的に陥ることなく音楽の心そのものを音にします。タイプとしてはマルツィに似ています。

Cci00032b アンネ‐ゾフィー・ムター(Vn)、マズア指揮ニューヨーク・フィル(1997年録音/グラモフォン盤) ムターは10代の頃はぽっちゃりとふくよかで、演奏はストレートな表現でしたが、年齢を重ねるにつれてバディも音楽も段々とグラマラスになりました。ハルくんはグラマラスは余り好みではなくて、どちらかいうとスリムで端正なタイプが好みです。それはさておき、ここまで艶かしく弾かれると、やはりおじさん的にはたまりません。脂の乗り切った濃厚なテクニックにメロメロです。ここは身も心も任せて昇天してしまいましょう!もっとも、表現力が旧盤を上回る割には、必ずしも音楽の深みが増したようには思えません。マズアの指揮もいまひとつ気迫が足りないので、若い美女を囲う金持ちの爺さんパトロンというイメージです。

(補足)
その後にディスクを入手したバティアシュヴィリの新盤は古今の数々の名盤をも凌駕する最高の演奏でした。記事は下記のリンクからご覧ください。

<関連記事>
ブラームス ヴァイオリン協奏曲 続々・名盤(男祭り)
ブラームス ヴァァイオリン協奏曲 バティアシュヴィリの新盤

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コメント

ありがとうございます。
とても参考になりました。

私はグラマラスな熟女の情熱にはまったく縁のないタイプなので、
だからと言って決して痩せているというわけでもなくweep
今更遅いかもしれませんが見習うべくムターを聴いてみることにします。マズアは金持ちパトロン爺なんですね(笑)

ところで私としてはブラームスのVn協はあからさまに濃い表現よりも、時折り見え隠れするような情熱っていうのが好みなんですが・・・
なにかおススメがあればお願いします。

投稿: はるりん | 2009年5月 5日 (火) 10時40分

はるりんさん、こんにちは。

うーん、時折見え隠れする情熱ですか。
元々あからさまな曲なので難しいですねぇ。
シェリング/ハイティンク盤なんかは近いですかね。オーケストラが盛り上がりに欠けますが、それでも構わないとおっしゃられれば。
クレーメルの新盤(アーノンクール伴奏)も良いかもしれません。旧盤はバーンスタインが濃すぎるので避けたほうが良さそうです。

投稿: ハルくん | 2009年5月 5日 (火) 11時23分

チョン・キョンファの海賊盤をお聴きになったとのことで誠におめでとうございます。私の持っている物と同じジャケットです。
ラトル指揮とのEMIでの正規盤と音楽の覇気が全く違うと思います。
さてかなり以前、私が東京で チョン・キョンファのリサイタルを聴いたあと楽屋口で彼女のサインを頂きました。たいへん小柄な方で驚きました。どこから、あの凄い音楽がどこから出てくるのか!思ったものです。
なおサインをしている時の笑顔は本当にチャーミングでした。

投稿: オペラファン | 2009年5月 7日 (木) 00時09分

オペラファンさんと私がチョン・キョンファの素晴らしいコンサートを聴いたのはほぼ同じ頃なのですよね。このブラームスのCDーRの録音も同時期ですね。彼女が非常に充実していた時代なのでしょう。
まだまだ老け込む年齢ではないから、また日本でコンサートをぜひとも開いてもらいたいものです。

投稿: ハルくん | 2009年5月 7日 (木) 22時41分

再びこんばんは。

マルツィ/ヴァント/Green Hill盤を入手。Vnは勿論、シェリング/orfeoのクーベリックとは違い、マルツィに優しく寄り添うかのヴァントの伴奏もconfident

同レーベルにしては結構な値段でしたので、やはり世評も高いのでしょうね。当盤を強く推してくれて多謝。

投稿: source man | 2010年10月10日 (日) 18時33分

source manさん、こちらにもコメントありがとうございます。

マルツィ/ヴァントの演奏いいでしょう!
僕はシェリング/クーベリックの次ぐらいに好きですよ。気に入られてとても嬉しいです。

投稿: ハルくん | 2010年10月11日 (月) 15時06分

こんばんは。

ムター&カラヤン
とにかく音楽が芳醇の一言に尽きますね。
ムターの表現力は大きいです。
やはり名曲だとあらためて感じました。
なお、これは1981年の録音です。

投稿: 影の王子 | 2016年8月 5日 (金) 20時04分

影の王子さん、こんにちは。

ムター/カラヤン盤は宇野先生も長く推薦していましたね。
本当に音楽が芳醇です。個人的にはもう少し味の濃さが控えめでいて充実し切ったシェリングやバティアシュヴィりを好みますが、一つのスタイルとして極めていると思います。

やはり色々な演奏で聴きたくなる素晴らしい名曲ですね!

記述誤りをさっそく訂正しました。ご指摘ありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2016年8月 6日 (土) 11時51分

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