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2009年5月

~アルプスへの旅~ ブルックナー 交響曲第4番「ロマンティック」 名盤

Alpsa002 さて、ライン地方の風景を満喫し毎日ビールを飲んだくれていたフーテンのハルくんでしたが、ようやく旅を続けてやってきたのはオーストリアはアルプス山脈の麓にあるリンツです。たいそう美しいこの街には有名な聖フローリアン教会が有るのですが、かつてこの教会のオルガニストを勤めたのがアントン・ブルックナーです。この人は一般的には決してポピュラーということは無いのですが、日本では本場ドイツオーストリア以上に人気が有ります。それほどファンの間には熱烈に支持されているのです。それは何故か?この人の音楽の本質をごく簡単に説明すると「悠久の大自然や宇宙を前にしたはかなさ」ということです。これは他の作曲家の音楽が感じさせるものとはだいぶ異なります。しいて言うと晩年のシベリウスが同じような特徴を持つぐらいです。要するに音楽に「人間臭さ」が全く感じられないのです。其処にあるのは、大アルプスの山々とのどかな森林やお花畑。晩年の作品に至っては、大自然の風景すら超越して、まるで大宇宙そのものと自然の摂理みたいな音楽です。いや音楽すら越えてしまっているかもしれません。

数年前にベストセラーになった藤原正彦さんの「国家の品格」の中に、日本人の持つ特徴として「自然に対する繊細な感受性が他の国民よりも格段に豊かであり、悠久の自然の儚い人生に美を感じる」とあります。僕はこの文章を読んだときにまるでブルックナーの音楽を言い表しているなぁ、と思いました。それゆえに多くの日本人がブルックナーの音楽の本質を理解し愛好するのでしょう。

ですが音楽を聴いて大宇宙や人間の存在の小ささをを感じるなんてつまらない、そんなのまっぴら御免だという方も居るでしょう。そんな方にはこの交響曲第4番は彼の作品の中では一番アルプスの山々や自然どまりの雰囲気なので聴きやすいと思います。終楽章の終結部は流石に宇宙を感じさせますがそれまでは馴染みやすいと言えます。その分、後期の一連の作品のような深みには欠けますけれど。でも曲の副題が「ロマンティック」というのはちょっといただけないですがね。いっそ「アルプスシンフォニー」にでもすればいいのにね。それは他にあるって?そうでしたね。さあ涼しい風を体いっぱいに感じながらアルプスの山々を眺めましょう。

343 カール・ベーム指揮ウイーンフィル(1973年録音/DECCA) アルプスの空気と言えばやはりウイーンフィルの澄み切った清純な音で聞きたいですね。しかもベームはオーストリアの山岳地帯グラーツの出身です。このコンビ位にイメージがピッタリの組み合わせはなかなか無いでしょう。弦も木管も実に美しいですが、音を割ったウインナホルンの威力がアルプスの威容をとことん感じさせてくれます。録音もアナログ全盛期のDECCAだけあって優秀です。

Ph06046 ギュンター・ヴァント指揮ミュンヘンフィル(2001年録音/Profil盤)リンツからドイツ側に下るとミュンヘンが有ります。だからか昔からミュンヘンのオーケストラはブルックナーを得意にしています。ヴァントもブルックナーを最も得意としていてこの曲を何度も録音していますが、特に優れたものの一つがこの演奏です。最晩年のヴァントは職人技を極めて人間国宝みたいな域に達していたと思います。

108 ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送響(2001年録音/RCA盤) ミュンヘン盤が2001年の9月録音、こちらは10月の録音です。そしてこのコンサートがヴァントの最後の演奏会になりました。ですのでこのコンビが直前の2000年に日本で9番を聴かせてくれたのは実に幸運でした。あの時の生の音は決して忘れることができません。そしてこの4番の演奏にはヴァントも団員もまるで最後を予感していたかのような特別な雰囲気が漂っています。枯れているといえばそうなのですが、そこが独特の魅力を湛えていて実に感慨深いものが有ります。

Cci00039_2 ルドルフ・ケンペ指揮ミュンヘンフィル(1972年録音/IMG盤) これはライブ録音であり、昔出ていたスタジオ録音とは違います。ケンペもブルックナーを得意としていて、同じミュンヘンフィルとは5番の超名演を残していますが、このライブの4番もそれに匹敵する素晴らしい出来栄えです。この名匠の腕による彫りの深い演奏はどちらかいうとアルプスの自然よりはミュンヘンの街のあのゴシック様式の巨大な聖母教会を想わせる様な立派さです。僕が生で聴くことができたその聖母教会のパイプオルガンの地響きを立てるような音はミュンヘンフィルの響きに通じていると感じます。

Cci00039b ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウイーンフィル(1955年録音/DECCA盤) クナ抜きにブルックナー演奏は語れません。但しこの演奏はスタジオ録音なので非常に柔らかい演奏であのクナの地響きを立てるような実演とはかけ離れています。ところがそれでも魅力が失われないのがクナの面目躍如です。何と美しい響き、表現の演奏なのでしょう。クナには最晩年1964年に同じウイーンフィルとのライブ録音が有り、それは正に空前絶後、恐らく最も素晴らしい4番の演奏なのですが、残念なことに音質の悪い非正規盤しか有りません。是非正規盤で聴きたいと思うのですが。

Cci00040 カール・シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送響(1955年録音/Archiphon盤) 最後にもう一人ブルックナーを得意としたシューリヒトのご紹介も。ウイーンフィルとの3、5、8、9番ほどの名演とは言い難いので、まあこんなのも有りますということで。軽い足取りはアルプスの野原をさっさと早足で散策しているかのようです。ドイツでビールを飲んだくれてお腹がポッコンのフーテンのハルくんにはこの速さに付いて行くのはちょっと辛いなぁ。

ブルックナーの他の曲、特に好きな5、7、8、9番などについてはそのうちにじっくり触れたいと思っています。

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~人生のカノン~ ヨハン・パッヘルベル 「カノン」二長調 

この曲はとっても親しまれている有名な曲ですね。皆さんもよくご存知のことと思います。実はハルくん、この曲が大好きなのですよ。

それにしてもなんと優雅で心優しいメロディなのでしょう。僅か5分程の短い曲なのですが、通奏低音が流れ始めたとたんに何か心が癒される気分になってしまいます。そして3本のヴァイオリンが静かに曲に入ってくるともうたまりません。心はうるうる状態です。曲はあっという間に進んで、通奏低音が歌い、その上をヴァイオリンが十六分音符で駆け回れば、優雅な落ち着きだけでなく非常に心を駆り立てられます。

この曲は街中の喧騒の中なんかでもBGMとしてよく流れていたりもしますが、僕はそんな時ですらハッと耳を奪われて思わず涙腺が緩んだりしてしまいます。この曲を聴いていると何だか、過去の人生や現在の人生、あるいは多くの友人との出会い、そして愛する人との出会いと別れ・・・。そういった様々な思いが次から次へと走馬灯のように心に懐かしく浮かんでは消えてゆくのです。それはまさに「人生のカノン」のように思えます。でもこの曲は決して感傷的では無く、ずっと肯定的な気分にさせてくれます。僕はそんな風に感じるのですが、皆さんはどうでしょう?

Cci00038 僕の好きなCDは、少し古いのですがフランスのジャン・フランソワ・パイヤール指揮パイヤール室内管弦楽団の演奏です。昔、NHKFMの朝の名曲の時間のテーマ音楽として使われていた演奏なのです。ですのでカノンというとこの演奏がすっかり身体に刷り込まれてしまったみたいです。現在のバロック演奏のスタイルとはかけ離れて、ゆったりと過剰なほどにロマンティックに演奏しています。時代遅れと言えばそれまででなのですけれど、だからこそ逆に良いのですよ。懐かしい気分たっぷりで疲れた心をとことん癒してくれるのです。このCDは名曲集なので他にも沢山曲が入っていますが、やはりカノンが白眉です。RCAの再録音盤も有りますが、僕の好きなのはこの懐かしいエラート録音の旧盤です。

Cci00038b 現在のバロック演奏ならば、古楽器派の名アンサンブル、ラインハルト・ゲーベルとムジカ・アンティカ・ケルンのCDが有ります。いつものように実にスピーディな演奏なのですが、3本のヴァイオリンの絡み合いはニュアンスとセンスに溢れた名人芸で最高です。さすがにMAK、独特の味わいが有ります。僕はこれも大好きなのです。でもカノンの後にジーグを付けても5分かからないというのは驚異。カノンだけで比較しても、パイヤールが7分10秒かかっているのにMAKは僅か3分5秒と倍以上の早さです。ちょっと早く終わりすぎるよね。人生をこんなに早く駆け抜けたくは無いなぁ。

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~ハルくんのラインへの旅~ シューマン 交響曲第3番「ライン」変ホ長調op.97

今回の旅行記は創作でなくて実話なのです。(写真はクリックしてもらうと大きくなります)

今から3年前のことですが、ハルくんはデュッセルドルフに長期赴任している日本人の旧友に会いに行きました。しかもその友人とはおよそ20年ぶりの再会だったのです。彼はそれは大歓迎してくれて、その晩は街のビアレストランで2人で祝杯を挙げました。ドイツの地ビールはそれは美味しかったです。

P1020050 翌日は友人の車で観光案内をしてもらうことになり、一路ケルンへ向かいました。約一時間程度で着いたケルンには名高い大聖堂が有ります。中世の巨大な建築物です。ロベルト・シューマンはデュッセルドルフに移ってまもなくケルン地方を中心に旅をしましたが、この大聖堂の威容には大変感銘を受けたそうです。旅から帰ってすぐに作曲したのが交響曲第3番「ライン」です。それにしてもこの大聖堂は実に巨大なのです。何でも一年中修復を続けているそうですよ。有る部分の修理が終わると、また別の部分が傷んでくるのでそれを永遠に繰り返すのだそうです。大きな修理工房が裏手に有りました。

P1000436 大聖堂は上の方まで延々と階段で歩いて登ることができるので、その日も結構な人数の観光客が一生懸命登っていました。ふうふういいながらやっとこさ展望階まで登ってみると眼下には街の真ん中を堂々と流れるライン川が見下ろせました。これは素晴らしい景色です。

P1000498 翌日はライン川を上流方面に走りました。川沿いの小高い丘の上に次々と中世のお城が見えてきます。大きな城も小さな城もみなその土地のかつての領主の居城だったのです。そしてライン川が悠然と流れる様を眺めていると頭に浮かんでくるのは「ライン」の第2楽章です。そして回りののどかな町並みと人々の静かな生活風景は第3楽章です。特に夕べの時間帯はイメージがぴったりだと思います。

P1000507 更に上流に上ると、だんだん川幅が狭くなり流れの勢いがどんどん増してきます。この辺は「ライン」の第1楽章のイメージですね。そして、ついにあの有名なローレライの岩に到着しました。土曜の昼間にもかかわらず他にはほとんど観光客が居ないので、友人と僕は岩の上に登ってゆっくりとライン川を眼下に眺められました。「岩」といってもそれは実は大きな丘なのです。なんとも雄大な景色を堪能できました。ローレライ伝説というのは「波の間から聞こえてくる美しい歌声に船の舵取りが気を取られてしまい座礁して沈没してしまう」という内容ですが、確かにこの岩の近くは急流で一番の難所のようです。昔から「美女の誘いには気をつけろ」というのが男性への教訓だったようですね。僕も一度で良いので美女に誘われて沈没してみたいものです。

デュッセルドルフに引き返す途中も頭の中ではずっとシューマンの「ライン」が流れっぱなし。それはそうですよね、シューマンはこの景色を見て曲を作ったのですからね。ハルくんはラインの旅を体験しながら感慨にひたるのでした。「うーん、ドイツ!」「ライン!」「シューマン!」「ビール!」「美人!」(は余り見かけなかったなぁ。残念。)

さて思い出深い交響曲「ライン」なのですが、僕はこの曲はどうしてもドイツの楽団の音で味わいたくなってしまうのです。愛聴盤をご紹介しますので、どうぞご一緒にラインの旅を味わいましょう。

P2_g3245420w ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮ドレスデン国立歌劇場管(1972年録音/EMI盤) 学生時代に最初に買ったのがこの全集。但し当時はLP盤でした。SKドレスデンの全盛期の音を聴ける素晴らしい演奏です。金属的な音が全くしない柔らかさと厚みの有る腰の強さを併せ持つ稀有な音だと思います。ザンデルリンクのブラームス全集とサヴァリッシュのこの演奏でSKドレスデンのとりこになったファンは非常に多いと思います。CDでも充分に素晴らしいのですが、初期のLP盤で聴く音は更に格別です。また4曲の中でもとりわけ3番の演奏が優れていると思います。

Cci00034 フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1960年録音/BerlinClassics) ゲヴァントハウスの音もまた格別です。よくシューマンのオーケストレーションは鳴りが悪いと言われますが、カラヤンのようにピッチを上げて鳴りを良くしてしまっては全く違った音に変わってしまいます。管と弦が混じりあったくすんだ響きこそがシューマンの音なのですよ。この古色然としたオケの音を味わいましょう。コンヴィチュニーの指揮もゆったりしたテンポで貫禄充分です。 

Cci00034b ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1979年録音/SONY盤) クーベリックは60年代にもベルリンフィルと全集を録音しましたが、それは余り印象には残っていません。このバイエルンとの全集の方が格段に優れていると思います。響きは南ドイツ風にやや明るめですが、ふくよかで柔らかい音が魅力的ですし、この曲には適していると思います。スケールも大きくてとても良い演奏だと思います。

Cci00035 オットマール・スイトナー指揮ベルリン国立歌劇場管(1986年録音/DENON盤) スイトナーはモーツァルトのような古典派は早いテンポで颯爽とした演奏をするのですが、ロマン派の曲になると案外遅いテンポでスケール大きく演奏します。このシューマンもそのスタイルです。第1楽章は金管のバランスが強いので、柔らかさよりも力強さを感じます。好みで言えばもう少し弦とまろやかに一体化した方が好きですね。ですが逆にこの方が好きと言う人も多いのではないかと思います。終楽章は音がまろやかに溶け合って美しいです。

Cci00035b セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1988年録音/EMI盤) いつもながらの遅いテンポによるチェリビダッケらしい演奏です。響きの美しさは有りますが、素朴さに欠けるのでこの曲に向いているとは思えません。それに情熱の高まりが無いのが気に入りません。私の好きな第3楽章も遅すぎるので、すっかりもたれてしまいます。4楽章、終楽章も同様です。終楽章の最後になって突然壮大に鳴り出すのですが、これは何なのでしょう。やはりチェリビダッケは僕の感性からは大分遠い指揮者であると思います。  

Cci00036 クリストフ・エッシェンバッハ指揮北ドイツ放送響(1999年録音/RCA盤) 北ドイツ放送響は2000年にヴァントの指揮でブルックナーの9番の名演を聴きましたが、実に北ドイツ的な響きでした。厚みの有るほの暗い響きはシューマンの音楽に一層似合うと思います。エッシェンバッハは今どきの指揮者にしては珍しいくらいに暗い情念を持っている人なのでやはりシューマンに相応しいと思います。僕はこの演奏もとても好きです。

Cci00036b カール・シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送響(1962年録音/Scribendum) 音楽評論家の中にはこの演奏を推薦している方もいらっしゃるし、僕自身も人後に落ちぬシューリヒトファンなのですが、この演奏は正直余り好きはありません。軽快なテンポで颯爽と進む演奏からは、どうもシューマンの音楽の持つほの暗さが聞こえてこないからです。元々がコンサートホールという廉価レーベル録音なので音質が良くないせいも有るかもしれませんが、もう少し厚みの有るドイツ的な響きを聞かせて欲しいものです。

以上から、僕のベスト盤を一つ上げるとすれば、何の迷いも無くサヴァリッシュ/ドレスデン盤です。

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~女神の饗宴~ ブラームス ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.77

ブラームスの作品には、明らかにハンガリーのジプシー音楽の影響を受けた哀愁がいっぱいに漂う曲想が数多く見られます。そのなかでも代表的な作品としてはまっ先にヴァイオリン協奏曲二長調が挙げられるでしょうね。

この曲については以前にも一度記事にしています。http://harucla.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-2fed.html

その中で巨匠ヴァイオリニスト達に混じっても一段と精彩を放っていたのが情熱的な点でまさに比類の無いジネット・ヌヴーのライブ演奏録音でした。この曲は不思議と昔から女性ヴァイオリニストの名演奏が多いのですね。それはたぶんこの曲は多くの男性奏者が得意とするような古典的な造形性では無く、ジプシー音楽の持つ情熱や感情が主体となっているからだと思います。女性奏者がそういう命がけともいえる情熱的な演奏をすると、男性奏者はとてもかなわないからです。そこで今回は特にジネット・ヌヴー以外の女性奏者による名演奏の幾つかをご紹介したいと思います。名づけまして「女神の饗宴」です。ほらほら美人に滅法弱いフーテンのハルくんがステージにかじりついていますよ。ハルくん何か別のステージ??と勘違いしていないでしょうね。(笑)

Cci00030 ジョコンダ・デ・ヴィトー(Vn)、フルトヴェングラー指揮トリノRAI響(1952年録音/IDイタリア盤) イタリア生れの彼女のスタジオ録音によるヴァイオリンソナタ集などは随分と端正な印象でしたが、このライブ演奏はフルトヴェングラーの伴奏指揮に触発されたからでしょうか、ひとつひとつの音に込めた情念の深さが際立っています。それは少々しつこく感じるほどなのですが、こういう女性の艶かしさも悪くは有りません。でも毎日付き合ったら疲れてしまうかも、っていったい何の話だ?(笑) 但しこれはイタリアの放送録音なので音質はあまり良くありません。

そのヴィトーには、ヨッフム指揮バイエルン放送響(1956年録音/En Larmes盤)という海賊CD-R盤も有ります。イタリアでの演奏会から2年後の録音ですが、伴奏指揮がヨッフムでしっかりしているせいか独奏ヴァイオリンもずっと安定感を増しています。そのうえ艶かしい表情は相変わらずです。録音もずっと良いので、正規録音盤が発売されればこちらを代表盤にしてもおかしくありません。

Cci00031 ヨハンナ・マルツィ(Vn)、クレツキ指揮フィルハーモニア管(1954年録音/EMI盤) ヨハンナ・マルツィはハンガリー生れ。ヌヴーやヴィトーに比べると知名度で劣りますが、実に素晴らしいヴァイオリニストです。非常に情熱的でありながら高い技術と男性的な造形性や堅実性を併せ持っています。第2楽章の深い情感も第3楽章の堂々とした立派さなど見事です。恋人にするならヌヴーやヴィトーがエキサイティングで楽しいのでしょうが、女房にするなら堅実賢母タイプのマルツィが理想的だと思いますね。 

Cci00031b ヨハンナ・マルツィ(Vn)、ヴァント指揮シュトゥットガルト放送響(1964年録音/GreenHILL盤) マルツィは録音が非常に少ないのですが、彼女の全盛期に伴奏者にも恵まれて録音状態の良いライブ演奏が残されているのは大変貴重です。ハンガリー人らしい情熱と情感が溢れるばかりなのですが、音楽が崩れることなく素晴らしいバランスを保っています。それを支えているのが幼少の時から師事したフーバイに鍛えられた演奏技術です。後年の名匠ヴァント指揮のオケ伴奏も充実していて個人的に大好きな演奏です。

Cci00030b イダ・ヘンデル(Vn)、ミュラー=クレイ指揮シュトゥットガルト放送響(1955年録音/ヘンスラー盤) これは彼女がまだ若い頃の演奏です。しかし彼女のヴァイオリンにはどうも余り面白みを感じません。堅実といえば確かにそうなのですが、技術的にも特別上手いわけでも下手なわけでもありませんし、余りに感情をあらわにしないのが気に入らないのです。それは謂わば「三歩下がって夫の影を踏まず」とでもいう感じでしょうか。こういう女性は奥さんにすると良いかもしれません。まあ私の場合は影どころか生身まで踏みつけられましたけど。(笑) 

Cci00032 ミシェル・オークレール(Vn)、オッテルロー指揮ウイーン響(1958年録音/PHILIPS盤) フランス生まれで生粋のパリジャンヌのオークレールも個性的な美人ヴァイオリニストです。フランス以外の欧米男性から見るとフランスの男は嫌われていますが、フランス女性はとても人気があるようです。まあフーテンのハルくんにはとても縁の無い話なのでしょうが。えっ、わからないって?それじゃ次はフランスに行くか!(笑) オークレールのヴァイオンは軽く鼻にかかったフランス語の発音のような演奏です。重厚さとか情念の濃さというものは全然有りません。そこがとてもユニーク。パリジャンヌとデートでもしている気分になって聴いていると結構楽しいです。 

Cci00033 チョン・キョンファ(Vn)、プレヴィン指揮ケルン放送響(1996年録音/En Larmes盤) 韓国に生れた素晴らしいヴァイオリニストのキョンファはブラームスの正規CDをラトルの伴奏で録音しています。でもずっと世評の高いのはこの海賊CD-R盤の演奏のほうです。私は最近ようやく友人から借りてこの演奏を聴くことができました。私は韓国の女性もイイなぁと思うのですよ。何を隠そう女優のチョン・ジヒョンのファンなのです。可愛いじゃありませんか。でもやっぱり彼女は恋人タイプでしょうね、ってまた話が脱線しているな。(笑) ジヒョンじゃなくてキョンファはこの録音と同じ頃に東京でリサイタルを聴きに行きましたが、虚飾の無い素晴らしい演奏でした。このブラームスも同様です。深い情念と気迫を持ちながらも外面的に陥ることなく音楽の心そのものを音にします。タイプとしてはマルツィに似ています。

Cci00032b アンネ‐ゾフィー・ムター(Vn)、マズア指揮ニューヨークフィル(1997年録音/グラモフォン盤) さて最後に登場するのはグラマラス美人の代表ムターです。彼女は10代の若い頃はぽっちゃりふくよかでも演奏はストレートな表現でしたが、年齢を重ねるにつれてボディも音楽も段々グラマラスになりました。フーテンのハルくんはグラマラスは元々余り好みではなくて、どちらかいうとスリムで端正なタイプが好みなのです。でもここまで艶かしく弾かれると、やはりおじさん的にはたまらないのです。ヴァイオリンの上手さも半端でありません。これがジプシー的かどうかはもうどうでもよく、脂の乗り切った濃厚なテクニックにメロメロです。ここは身も心も任せて昇天してしまいましょう!ただしマズアの指揮はいまひとつ元気が無いので、若い美女を囲う金持ちの爺さんパトロンというイメージです。

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~ぶらりドイツの旅~ ブラームス「ハンガリア舞曲集」

20060921_225639 フーテンのハルくんはノルウェーに別れを告げてからスカンジナビア半島の南端からドイツへと海を渡り、ひとり旅を続けました。船で行き着いた港はハンブルグです。この北ドイツの港町はブラームスが生れた町として有名ですね。父親がコントラバス奏者という余り裕福でない家庭に育ったブラームスは、家計を助ける為にレストランや居酒屋で小さい頃から得意のピアノを弾いて稼いでいました。そういう店には港からアメリカへ移住するハンガリーからの避難民が多く来て居たので、小さい頃から異国的なハンガリー音楽に親しんでいたそうです。さらにはハンガリー出身のヴァイオリニストのレメーニやヨアヒムと交友を持ったことが、益々彼をハンガリー音楽に近づけさせました。ブラームスの音楽の特徴の一つの哀愁漂う歌謡調のメロディは明らかにハンガリー音楽の影響です。

そんなハンガリー風音楽の代表作品といえばご存知「ハンガリア舞曲集」です。元々はピアノ連弾用に作られましたが、余りの人気の高さにブラームス自身や他の作曲家の手で管弦楽用に編曲されたので現在も観賞用として大変親しまれています。私も大好きなので珈琲などを飲みながらよく聴いています。

Cci00029 ブラームスの故郷ハンブルクには北ドイツ放送交響楽団という素晴らしい楽団が有ります。このオーケストラは戦後直ぐに創設されたのですが、ハンス・シュミット=イッセルシュテットやカール・シューリヒトという大指揮者の手によって育てられた為に急速に優秀な楽団に成りました。ブラームス作品はこの楽団の主要レパートリーの一つです。その初代常任指揮者であるイッセルシュテットが指揮をした「ハンガリア舞曲集」の素晴らしい演奏が有ります(1962年録音/ユニヴァーサルミュージック・フランス盤) やや古めかしい録音ですが、リマスタリングが良いので聴きにくいことは有りません。それよりもイッセルシュテットの指揮が大変に素晴らしいのです。リズムの良さと哀愁漂う歌い回しが最高です。全21曲が収められているのも嬉しい限りです。

さて、ハンブルグの港町でフーテンのハルくんは果たして憧れのマドンナとの出会いを果たすことが出来るのでしょうか。案外色っぽいジプシーの娘といい仲になってしまうのかも知れませんね。

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