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2009年4月19日 (日)

シベリウス 交響曲第7番ハ長調op.105 名盤

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シベリウスの最後の交響曲であって、本当は最後では無い交響曲。シベリウスは途中まで書いた第8番の楽譜を自らの手で焼き捨てたと言われていますが、妻アイノの証言によれば実は既に完成していたという話のようです。しかし煙と灰になってしまった以上、我々が聴くことのできる最後の交響曲はこの第7番なのです。曲は通常20数分で演奏されて古典派以降の交響曲としては随分短い方です。シベリウスは曲のタイトルに「ファンタジア・シンフォニカ」とつけましたし、楽章の無い単一楽章構成になっていますので多分に交響詩的にも見受けられます。しかしこれはマーラーに代表される肥大化した交響曲とは全く逆におよそ無駄の無い極限にまで凝縮され尽くした交響曲なのです。

僕は第1楽章に相当するアダージョ部分が好きです。非常に哀しさを感じます。しかしそれは、あらゆる命が永遠に繰り返される輪廻そのもののような彼岸の雰囲気を感じます。もちろん続くスケルツォにあたる部分、更に刻々と移り変わる曲想の変化の妙も素晴らしく言葉を失うほどです。

この曲の演奏なのですが、曲の持つ雰囲気が近いこともあって第6番の演奏にどうしても重なってくるのは致し方ないところです。

51wgp741rql__ss400_ パーヴォ・ベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィル(1986年録音/EMI盤) やはりベルグルンドをリファレンスにしたいところです。どこまでも限りなく美しく、純粋にこの曲の素晴らしさを心底堪能出来る演奏です。全体に彼岸の雰囲気をいっぱいに漂わせていています。スケルツォ部分の上手さも見事です。相変わらず録音がオフ気味ですが、気になる程ではありません。ベルグルンドには新録音盤も有りますが、全くの個人的にはやはりこのヘルシンキ・フィル盤を好みます。

Si026 レイフ・セーゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィル(2002年録音/ONDINE盤) セーゲルスタムも同じヘルシンキ・フィルを指揮して、非常に素晴らしい演奏を多く残していますが、この曲は正直余り感銘を受けません。演奏には神々しい雰囲気というよりは純器楽的であり、どちらかいうと近現代音楽を聴いているような感じがします。この曲が果たしてそれで良いものか少々疑問に思います。ONDINEの録音は相変わらず優秀です。

Cci00023 渡邉暁雄指揮ヘルシンキ・フィル(1982年録音/TDK盤) ヘルシンキフィル初来日の時のライブ録音です。アケさんの実力はヘルシンキ・フィルのような優秀なシベリウス・オケを振ると見事に生かされます。どちらか言えば古い感覚の良く歌った演奏表現です。この曲の持つ彼岸の雰囲気はなかなか良く出ていますが、温かみがやや有り過ぎる点で評価の分かれるような気もします。ライブなので仕方有りませんがアンサンブルがほんの少し荒い気もします。TDKの録音はここでも優秀です。

36133027_1 ユッカ=ペッカ・サラステ指揮フィンランド放送響(1993年録音/FINLANDIA盤) これもサンクトべテルブルクでのライブ録音ですが、完成度に優れていて非常に美しい演奏です。スケルツォ部分のリズム感も歯切れが良く、素晴らしいです。但し、少々気になるのは幾らかせわしない面が有り、音楽に小ささを感じてしまう点です。あるいは空気の広がり感とでも言いましょうか、それが少しだけ不足している気がします。

Biscd864 オスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ響(1996年録音/BIS盤) ヴァンスカによく見られるピアニシモを多用する表現が、ここでもまた音楽を痩せて聞こえさせてしまう気がします。曲の持つ彼岸の雰囲気に決して不足しているわけでも無いのですが、何となくこの彼岸の曲にどっぷりと入っていけない感じが気になります。とは言え、これもやはり非常に美しい演奏であることには変わり有りません。

4140bnz4zhl__ss500_ パーヴォ・ベルグルンド指揮ヨーロッパ室内管(1995年録音/FINLANDIA盤) ベルグルンドのヨーロッパ室内管との新盤も秀逸です。ヘルシンキ・フィル盤よりも高く評価する人が居るのも充分に理解できます。完全に統率されたアンサンブル、ニュアンスの豊かさはひとつの演奏表現の極地だと思います。そうなると後は神秘性でヘルシンキ・フィル盤とどちらが上かということになるのですが、その点ではやはりヘルシン・フィルのように思います。全体の魅力としては中々に甲乙が付けがたいところです。

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シベリウス(交響曲)」カテゴリの記事

コメント

ついに来た7番!学生としては最後の定期で演奏しましたが(いい死に場所を見つけた果報者と言われた)実に難曲で見事に討死にしたのでありました。当時は上記のうち暁雄さんのCDしか出ていませんでしたから、他に何を聴いて勉強したのだったか?

とにかくDvorakやTschikovskyのようなカタルシス場面が出てこないので、強靱な精神的持久力で真ん中辺のTromboneのソロまでじわじわと持っていくまでが大変だし、後半から終盤の速い部分はアンサンブルの難度が高くて崩壊せずに終わるだけでも大変でした。団員皆に技術と愛着がなければ名演は望めませんね。

投稿: かげっち | 2009年4月20日 (月) 13時00分

以下、個人的・技術的な回想です-この曲Timpaniで始まるのですよね、これが鍵と思います。冒頭Fl(Cl)の旋律は語り部の主題と思って聴くと最後に再会した時感慨深いです。その後は広大な氷原か巨大な氷河を前にしたような思いで、呼吸を深く保ちながら全身にSibeliusの(Finlandの)気を充実させたいものです。ここの前半はHornの醸し出す和声に注目、後半はFl,Cl,Trb,Timpaniの軸に注目したいです(楽器配列はオケによって違いますが縦一直線に並ぶ可能性もあり面白い)。
スケルツォ風の部分は弦と管の掛け合いが面白くも難しいので、各オケの技量の差が出ます。Oboeが猛烈に上手くなければぶち壊しになります。終楽章風の少し明るい主題はフィンランド語のイントネーションに似ているような?大好きなのでもう少し長く続けて演奏したいのですけどね。ここも意外な箇所で旋律がTimpaniに現れると知ると驚きます。最初の語り部の主題を導出した音階が再びHornに現れると終結は間近。
実は、序盤や終盤の和声進行を見ると係留音や経過音が大量に混在していて、さながらトリスタンの前奏曲のように、調性が判然としません。ここを最適のバランスで決然と演奏しないと「宇宙」が完成しないという曲です。長い長いワンセンテンスで書かれた小説みたいな印象の曲です。

投稿: かげっち | 2009年4月20日 (月) 13時03分

かげっちさん、こんばんは。

さすがはシベリウスの熱烈なファンのかげっちさんらしい、とても熱いコメントをどうも有り難うございます。
7番はやっぱり良いですものね~。っておまえは5番、6番のほうが好きだと言っただろうって?ハイ確かに言いましたが、7番聴いている時は7番が最高なのですよ。まあファンなんてそんなものではないでしょうか。(笑)

かげっちさんは7番の演奏経験が有るのですね。実に細かく解説されてます。私はこの曲は演奏していないのでここまで細部の把握はできません。わかるのは何しろ演奏の難しい曲だということだけです。

投稿: ハルくん | 2009年4月21日 (火) 23時37分

つい興奮して長広舌になりお恥ずかしいです(どうどうどう・・ヽ(´▽`)/)

でも冷静に聴くと、万人向きの曲じゃないですよ、やっぱり。旋律や構成に安定感がなく、さりとてシューベルトの即興曲やシューマンの幻想曲のような「たゆたう楽興の魅力」でもない、凝縮しすぎていて落ち着かないというか、安心できない感があります。4番ほどじゃないけど、シベリウス初心者には奨めにくいですね。

投稿: かげっち | 2009年4月23日 (木) 12時19分

遂に第7番に到達して、たいへんご苦労様でした。私も昨年、朝比奈隆のブルックナーの録音を0番から9番までたどって行きましたがブルックナーの作品が大きく前に立ちはだかっているようで9番に行き着いた時は感無量でした。
第7番(第4番も)は私は若い頃はさっぱりわかりませんでしたが今は無くてはならぬ作品となりました。全てを凝縮したシベリウスの行き着いた音楽と言ってよいでしょう。まさに傑作だと思います。
シベリウスの録音にベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィルの録音があるというのは本当に幸せです。この録音が無かったら私はシベリウスの作品を通り過ぎていたかも知れません。
時間があれば私も「クレルヴォ交響曲」から第7番まで順を追って聴きなおしていきたいものです。

投稿: オペラファン | 2009年4月23日 (木) 16時28分

かげっちさん、こんばんは。

7番は最初はとりとめがない感じがしますよね。一番馴染むのに時間がかかったのは4番です。やはり馴染みやすさでは1番、2番。続いて3番、5番、6番ではないでしょうか。4番、7番は魅力に気がついてさえしまえば、何度聴いても全く飽きのこない傑作と言えます。

投稿: ハルくん | 2009年4月23日 (木) 23時08分

オペラファンさん、こんばんは。

クレルヴォを含めた全曲は本当に傑作揃いだと思います。その上、ベルグルンド/ヘルシンキ盤のような超名演があるのでシベリウスファンにとってはほとほとこたえられません。
でもさんざん記事の中でも書きましたが、多くの自国演奏家の録音もどれもが一聴に値する名演奏だと思いますよ。

投稿: ハルくん | 2009年4月23日 (木) 23時13分

演奏が難しい曲だとわかる、ということは、中途半端な演奏ではボロが出ているということですね。上にあげられた盤ではそのようなことはないですけれども。

7番は確かに名曲ですが「名曲なんだ」と皆が言うから賛同しなきゃいけないような雰囲気ができてしまっている、とも思います。正直に私の気持ちを言うと、もう少し生理的快感を味わいたいのです。具体的には、後半のアレグロの旋律にもっと安定感がほしい(転調しないで続けてほしい)とか、語り部の主題に回帰した後をもう少し盛り上げたい(またはそのまま消えたい)とかいうことです。

完璧主義のシベリウスが推敲に推敲を重ねて密度の濃い音楽に仕立てたのはわかりますが、考えすぎというか濃すぎると感じる部分があって、広く共感を呼びにくいのだと思います。とっても好きな曲なんですけどね。

投稿: かげっち | 2009年4月25日 (土) 21時44分

こんばんは。

今日はアマ・オケでこの曲を聴いたのですが
CDではさっぱり分からなかったこの曲の魅力に気付きました。

ゆっくりめのテンポ(と私は感じました)で
淡々とした演奏でしたが
「浮遊感」「漂流感」ともいうべき「心地よさ」を覚えました。
「劇的な興奮」ではなく「身をゆだねる快感」でした。

とにかくどの部分も美しく無駄な瞬間がありません。
なんという素晴らしい曲か!!と思いました。

CDと実演を比べる愚かしさを差し引いても
シベリウスの交響曲は先入観を捨てて聴かねばと思った次第です。


投稿: 影の王子 | 2016年5月22日 (日) 21時14分

影の王子さん、こんにちは。

それまでCDで聴いて余りピンとこなかった曲を、生演奏でピンと来た経験は私も有りますね。
演奏の完成度はともかく音楽が伝わりやすいですし、聴かれた演奏も良かったのでしょうね。

改めてCDを聴かれると、以前とはずいぶん違った印象で耳に聞こえてくるかもしれませんよ。7番は6番や4番と並んで非常に奥深い名曲だと思います。

投稿: ハルくん | 2016年5月25日 (水) 12時53分

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