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2009年3月 7日 (土)

シベリウス 交響曲全集 名盤 ~シベリウスの音楽に思うこと~

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フィンランドの生んだ大作曲家ヤン・シベリウスは、交響曲第5番の楽譜に自ら「自然の神秘と生の憂愁」と書き記しました。けれどもそれは、シベリウスのほとんどの作品について当てはまります。特に後期の作品になると、心象風景やあるいはもっと大きな「宇宙の摂理」といったものさえを感じさせるのです。そういう意味では、曲想こそ異なるとは言えアントン・ブルックナーの音楽と共通している面が有ると思います。両者の音楽は同じように外面的な演奏を著しく嫌います。もしも演奏に演出効果を狙ったりすると音楽の持つ意味が全く感じられなくなってしまうのです。ひたすら真摯に音楽に帰依する演奏家のみが彼らの曲を演奏する資格を得られます。言うなれば「音楽を真に演奏できるのは、音楽に選ばれたる者のみ」ということなのです。

シベリウスの完成された交響曲は全部で7曲です。音楽に選ばれた指揮者が演奏をする場合には例外なく全てが名演になります。逆にそうでない指揮者が演奏をすると、およそ全く魅力を感じさせません。その意味では、シベリウスの曲のCDを選ぶときにはなるべく単独で選ばずに全集単位で購入するのがベストだと思います。また、そのほうが其々の曲を理解し易くなる利点が有るとも思います。

僕がこれまで聴いてきたシベリウスの交響曲全集の中で、愛聴盤をご紹介します。

Cci00010b パーヴォ・ベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィルハーモニー(EMI盤) シベリウスファンに絶賛された素晴らしい演奏です。シベリウス演奏を知り尽くし極め尽くしたヘルシンキ・フィルが名匠ベルグルンドの下で繰り広げる演奏は正にリファレンスと言っても差し支えないでしょう。合計3回の全集録音をしたベルグルンドの、これは2度目のものです。3度目のヨーロッパ室内管のもの高い評価を受けていますが、オーケストラの音の質の点でヘルシンキ・フィル盤のほうが優れていると思っています。

949 レイフ・セーゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィルハーモニー(ONDINE盤) 同じヘルシンキ・フィルを指揮してもベルグルンドよりずっとスケールの大きさが有ります。適度の荒々しさと美しさの両立が実に魅力的でとても好きな全集です。セーゲルスタムには、以前デンマーク国立放送響を指揮した全集が有るのですが、そちらは少々荒々しさが過ぎている気がします。このセットには、ヴァイオリン協奏曲をフィンランド生まれの名手ペッカ・クーシストが弾く最高の演奏が含まれているのも大変嬉しいです。

Si34v オスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団(BIS盤) ヴァンスカはラハティ響をヘルシンキ・フィルと並ぶ優秀なオーケストラに育て上げてました。かつて東京のトリフォニーホールで全曲演奏会を行ったのですが、僕は残念ながら聴き逃しています。それが本当に悔やまれるほど、これは素晴らしい演奏です。この全集はシベリウス・ファンには既に良く知られた名盤ですが、第5番は初稿と通常版との両方の録音が収録されているのが非常に貴重です。

Saraste ユッカ=ペッカ・サラステ指揮フィンランド放送響(FINLANDIA盤) これはサラステがロシアのサンクトペテルブルクで全曲演奏会を行ったときのライブ録音です。演奏の完成度が非常に高いので、恐らくはリハーサル時の録音との編集だと推測します。オーケストラも優秀ですがサラステの造る音楽はとても優れています。サラステは2008年8月にヴァンスカの後任としてラハティ響の音楽監督に就任しましたので、交響曲全集の新録音に大いに期待したいところです。

Sicci00019 オッコ・カム&渡邉暁雄指揮ヘルシンキ・フィルハーモニー(TDK盤) これは1982年に日本の各地でコンサートツアーが行われた時に収録されたものです。1、4、7番を渡邉が指揮して、2、3、5、6番をカムが指揮していますが、二人のロマンティックな指揮ぶりがとても似通っているので、これを全集として聞いても何ら違和感が有りません。残念ながらセットものでは売られていませんが、5枚の単売CD全てを絶対に揃えるべきです。それぐらい素晴らしい記念碑的な演奏記録です。

Si44wata渡邉暁雄指揮日本フィルハーモニー(日本コロムビア盤) 渡邉暁雄は母方がフィンランド人ですので、シベリウスと同じ血をひいています。当然シベリウスの音楽にはこだわりが有り、全集も2度録音しました。これは2度目の方ですが、日本人指揮者の優れた演奏としては朝比奈隆のブルックナーと並ぶものと考えます。残念なのは朝比奈と同様にオーケストラの実力が海外の一流オケと比べて聞き劣りすることです。従ってこれは番外扱いにしたいと思います。

パーヴォ・ベルグルンド指揮ヨーロッパ室内管(FINLANDIA盤)も素晴らしいのですが、ヘルシンキ・フィルと比べるとどうしても準愛聴盤扱いに成ってしまいます。
それ以外に過去入手した全集としては、ネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ響(BIS盤)、サカリ・オラモ指揮バーミンガム市響(ワーナー盤)、シクステン・エールリンク指揮ストックホルム・フィル(FINLANDIA盤)、アンソニー・コリンズ指揮ロンドン響(DECCA盤)といったところですが、残念ながら愛聴盤には成り得ませんでした。

その他にも、ロシア、イギリスなどの指揮者、楽団がかなりの数の録音を行っていますが、結果的に母国フィンランド人がフィンランドの楽団を指揮した演奏ばかりを選んでしまいました。これは音楽への共感と響きの純度の点で、他国の演奏家では簡単に越えられない壁だからです。単に演奏技術が高いだけではどうにもなりません。

僕はシベリウスを聴く時には大抵その時に気が向いたものを全集単位で選んで聴いています。ですので各曲を単独で比較することは余り無いのですが、今回は丁度良い機会でもあるので、改めて第1番から順番に全集以外のCDも交えながら聴き比べてみようと思います。気長にお付き合い下されば大変嬉しい限りです。

<関連記事>
ヤルヴィの2度目の録音の全集も非常に素晴らしく、従来の愛聴盤に肩を並べます。
ネーメ・ヤルヴィ/エーテボリ響のシベリウス交響曲全集 新盤

ついに実現したカムの全集録音。過去の名盤を凌駕する最高のシベリウスです。
オッコ・カム/ラハティ響 シベリウス交響曲全集 新盤

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コメント

ハルくん様、こんばんは。
連載が楽しみです。

全集となると迷いますね。前にも書いた通りオケには苦痛も伴う難しい曲です。いつだったかラジオで日本のオケの演奏会をライブで放送していて、2番の演奏前にアナウンサーが「4楽章は楽譜の左上から右下まで同じ音型が延々と続く箇所があり・・・そこを日本のオーケストラの体力でどのように弾ききるかも見どころの一つです」という的確な(?)評をしていて爆笑しました。他方ヘルシンキ響が初来日で同じ2番を上演した時、確か近衛氏が「この楽団は特に2楽章と4楽章において無双の力を発揮した」と書いたそうですが、演奏場の困難や苦痛を喜びと感ずる(何だかSMのようですが)ということが名演の条件だと思います。
ヴァンスカ、ペッカ・サラステ、カム、いずれ劣らぬ名演かと存じます。オケの機能的にはラハティ響はすごいですね。

メールいただければ、ご指定のアドレスにフィンランド旅行記(mixiにリアップしたやつ)お送りすることができます。ただし明日から出張なので少しお時間ください。

投稿: かげっち | 2009年3月 8日 (日) 18時58分

かげっちさん、こんばんは。
いつもコメントありがとうございます。

聴いて楽しい曲と演奏して楽しい曲は必ずしも一致しないのは面白い事実ですね。
私もシベリウス2番は一度弾きました。逆さ吊るしの拷問にかけられているようなものです。私はMでは有りませんのでとても快感には感じられませんでしたよ。(大笑)
ですので、続にブルックナーオケとかシベリウスオケとして定評の有る楽団員のプロ根性と言うのは本当に凄いと思います。

フィンランド紀行楽しみです。さっそくメールしますので宜しくお願いします!

投稿: ハルくん | 2009年3月 8日 (日) 19時58分

ハルくんさん、お久しぶりです。年頭のご挨拶もせず大変失礼致しました。さて、僕は最近、チェリビダッケのブルックナーCD12枚組セットとシベリウス交響曲全集(安物です)を購入しました。シベリウスの音楽には疎いのですが、聴いてみた印象は、「自然」ですね。冬の北海道にはよく似合います。ハルくんさんの推薦盤もいずれ聴いてみたいです。
今年がよい年でありますように。

投稿: sasa yo | 2012年1月22日 (日) 14時43分

sasa yoさん、こんにちは。
ありがとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。

チェリビダッケのブルックナー・セットは僕も購入しました。これまで全部を持っていたわけではありませんし、残りのものを単独で買うよりも、今回セットで買ったほうが安かったので。それにしてもCDは安く成り過ぎですね。有り難いと言えば確かにそうなのですが。

僕は20代の頃に札幌に1年住んだことがあり、ひと冬を越しました。ですのでシベリウスが冬の北海道に似合うと言うのはよく理解できます。聴けば聞くほどに素晴らしい音楽ですので、是非じっくりと聴かれてください。

投稿: ハルくん | 2012年1月22日 (日) 22時54分

こんばんは。
3日間掛けて、ベルグルンド/ヘルシンキ盤を聞き終えた処です。

シベリウスはフィンランド民謡の音階を好んで徹底的に使っていると、1992年盤の解説書に書かれています。

音階という単語を聞くと、Miles Davis「Kind of Blue」が出てきます。スケールは決めるけど、その中では自由という所謂モード奏法です。

ブルックナーの多層な深奥でなく、抑制された深奥さ。theフィナーレって感じでなく、6番に代表する様に、フッと消えていく終わり方は逆に余韻を残しますし大好きです。

2番と3番で境界線というよりは、1番から順に聴いていったのですけど、4番から世界が変わった印象です。でも初演で聴衆が困惑したのと、自身への祝賀会の為もあって、5番は路線を戻したのかな...と勘繰ってみたり。

ボクにとってはとても良い意味での落差から、4番が最も気に入って、6番、7番と続きます。

どうも派手な曲でなく、深く深く沈んでいく音楽がジャズでも好きです。

室内楽、特に弦楽器が好きと話した馴染みのBar店主♀に「趣味がもうおじいちゃん」と笑われます。大して歳は変わらないその店主にアナログで掛けられ、そして貴Blogの影響です笑。

3楽章の曲が多いのは、チャレンジだったのでしょうか。音階を制限してたのが曲の短さに影響してたのでしょうか...しかも3楽章の曲でも1楽章あたりの時間は他の作曲家に比べると短いですし。

交響曲で1楽章しかない7番...スゴい発想です。初演では聴衆ザワついたでしょうね笑。

4番を特に気に入ったボクとしては、ベルグルンド/ヘルシンキ盤を選んで大正解です。コノ曲、余程の楽団が演奏しないと、つまらない曲でしかないのでは笑。

演奏に触れると、3番が音割れorそういう曲なのか、強奏で荒さを感じるので、1~3番は他の演奏で再聴してみたいです。不満はないのですが。

シベリウスは全集で..というお考えに納得しました。そうでなければコノ作曲家は掴めないと思います。


シベリウスという響きが、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーと違って「薄さ」を感じる為に笑、御名前で聴かず嫌いでした。御免なさい笑。

投稿: source man | 2014年12月25日 (木) 19時19分

source manさん、こんにちは。

ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーと、もちろん偉大な音楽家ですが、シベリウスも少しも負けない魅力を持ちますね。
この人の音楽に一度とりこになると、絶対に飽きることが有りません。
4、6、7番は自分も最も好きな曲ですが、なにしろ7曲全てが粒ぞろいの名曲だというのは正に驚異的です。

ベルグルンド以外にも良い演奏は幾つもあるので是非いろいろと聴き比べてみてください。楽しいですよ。

投稿: ハルくん | 2014年12月26日 (金) 17時47分

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