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2009年3月29日 (日)

シベリウス 交響詩「フィンランディア」op.26 名盤 ~目覚めよフィンランド~

シベリウス特集が交響曲第4番まで終わったところで次は5番と思っていたのですが、ちょっと気が変わってフィンランド国民にとって大変に重要な作品に触れたいと思います。交響詩「フィンランディア」は知らない人が居ないほどに有名な曲ですが、この曲はフィンランドでは第二の国歌と呼ばれています。その理由は曲の作られた背景にあるのです。

Sibelius フィンランドは19世紀の初めから既に100年近くも国境が隣リ合うロシアの支配下にありましたが、当時は弾圧が一段と厳しくなった時期でした。その弾圧政策の一つとして出版物への検閲が義務付けられたのです。その為にフィンランドの新聞関係者が検閲への反対集会を行うことが決定されました。集会の最後には「フィンランドの目覚め」という劇が上演されることになったのですが、その音楽を担当したのがシベリウスでした。この劇のフィナーレとなった曲が他ならぬ「フィンランディア」の原曲なのです。そして、その原曲を後でコンサート用に編曲したものが交響詩「フィンランディア」です。この曲はとても親しみやすいので、特に曲の背景を知らなくても感動させられてしまいます。ですが、そのような曲の背景を知ることで感動が一段と増すのでは無いでしょうか。

この曲の演奏には大きく分けて、管弦楽のみで演奏される版と、合唱付きで演奏される版が有ります。更には合唱付きでも男性合唱と混声合唱とが有ります。僕は合唱付きで聴くのが好きなのですが、それぞれについての名演奏をご紹介したいと思います。

456 レイフ・セーゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィル/ポリテック男性合唱団(ONDINE盤) この演奏は男性合唱付きです。彼らは母国の賛歌を力強く感動的に歌い上げています。ロシアの圧制に屈することなく皆で立ち上がって戦おう、という祈りをストレートに感じます。他の国の合唱団がこのように歌うことはまず不可能でしょう。セーゲルスタムの指揮も、導入部の力強さや主部の速い部分の切れの良さは実に見事です。仮に合唱団が無かったとしても、大変素晴らしい演奏です。交響曲全集にも収められていますが、単売では4番と組み合わされています。

Cci00024 エリ・クラス指揮フィンランド国立歌劇場管/合唱団(ONDINE盤) この演奏は混声合唱付きです。男性合唱の場合だと、戦う為に立ち上がろうという力強さを感じるのですが、混声の場合にはもっと静かに母国への愛を歌いあげているように聞こえます。どちらも感動的なのことには変わりがなく、雰囲気の違いを楽しめるのが嬉しいです。歌劇場の管弦楽団もなかなか立派なものです。この演奏はシベリウスのカンタータ集というタイトルのCDに収められています。

Sicci00019 オッコ・カム指揮ヘルシンキ・フィル(TDK盤) これは1982年の日本でのライブ演奏なのでもちろん合唱は付きません。ところが非常に感動的な演奏なのです。導入部から異常なまでに気迫がこもっています。一音一音が迫るように訴えかけてきて圧倒されます。主部に入ってからは早いテンポで前のめりになるほど高揚するさまに興奮させられます。そして中間部では管弦楽がまるで人の歌声のように、というよりも歌声以上に感動的に母国賛歌を歌い上げるのです。何という演奏なのでしょう。オッコ・カムは非常に録音の少ない指揮者ですが、これほどの演奏の出来る人が実にもったいないことだと思います。この演奏は第2番のCDに収められています。TDKの録音は生々しく極上です。

51wgp741rql__ss400_ パーヴォ・ベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィル(EMI盤) この演奏も合唱無しです。ベルグルンドは同じEMIに僅か数年前にフィルハーモニアともこの曲を録音していますが、このヘルシンキ・フィルとの演奏の方が数段出来は良いです。まあフィンランド人の演奏家がこの曲を演奏して良くなければ、他の国にさっさと移住したほうが良いと思います。この演奏はもちろん非常に素晴らしいのですが、オッコ・カムの奇跡的な演奏と比べてしまいますと感動度合いで少々及ばないというところです。この演奏は全集盤や4~7番の輸入2枚組盤、国内の2番に収められています。

118 オスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団(BIS盤) この演奏も合唱無しです。ヴァンスカは素晴らしいシベリウス指揮者で管弦楽曲も全てといっていいほど録音しています。ところが、この演奏は中間部の賛歌のところを非常に小さな音で弾かせるので、音楽が痩せて聞こえてしまうのです。この表現は私はちょっと気に入りません。録音もなんだかパリッとしないこもった音なので物足りなさを感じるところです。他の母国演奏家と比べて一段落ちるのがとても残念に思います。この演奏は管弦楽曲のベスト盤に収められています。

486 有名曲なのでフィンランド以外の演奏も多く有りますが、その中で強いてあげればネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ管(グラモフォン盤)はなかなか良い演奏です。ヤルヴィはフィンランドと同じフィン民族の多いエストニア出身ですし、エストニアはやはり同じようにロシアからの独立闘争の歴史を持ちますので、この曲への共感は並々ならぬものが有って当然でしょう。オケの分厚く重々しい響きも私が生で聴いたエーテボリ管の音にかなり近い音です。この演奏は管弦楽曲盤もしくは2番のCDに収められています。

次回は交響曲第5番です。

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シベリウス(管弦楽曲)」カテゴリの記事

コメント

前にも書いたかもしれませんが、シベリウスはフィンランド独立運動を目の前にして、自分がSweden語を母語とすることにコンプレックスを抱いていたそうです(現在は両方が公用語です)。フィンランド語の歌詞でこの曲を書いたことには特に意味があったのかもしれない、というのが私のうがった見方です(笑)

それはともかく私はこのコラールが大好きでして、実は私が死んだら葬儀で使ってほしい音楽を今から遺言しているのですが(死期が迫っているわけではありません、念のため)、このコラールに別の歌詞を付けた讃美歌を最初に歌うよう指定してあります。ちなみに他は、ルターのコラール、ロシアの聖歌、そして後奏はドイツレクイエムの4曲目です。

もう一つ、コラールの旋律の1つ目と2つ目の音符にスラーがかかっているところ、日本人が普通に弾くと2つ目の音符はテヌート気味に伸ばしたくなるのですが、フィンランド語の歌詞を聞くとスラーの尻尾を軽く跳ねるのが正解だろうかと思えてきます。リートでもそうですが、その言語があって初めて成立した音楽の場合には、他国人には演奏が難しいですね。

投稿: かげっち | 2009年3月29日 (日) 17時47分

かげっちさん、

このコラール本当に良いですよね。私も大好きなのです。なのでこの曲を聴くと彼の交響曲にも負けないぐらい感動してしまうのですよ。

歌詞の無い音楽の場合は感じにくいのですが、やはり音楽の細かいイントネーションは言葉そのものなのですよね。だからフランス音楽はフランス人演奏家で無いとちょっと違うし、ロシア音楽もボヘミア音楽も同じだと思います。逆に欧米人からすれば日本人も韓国人も同じように見えるかもしれませんから、もしも彼らから「日本民謡は日本か韓国か中国の歌い手を聞いていれば大丈夫だ。」などと言われたらがっかりしますよね。これが私がシベリウスに限らず自国の演奏家に可能な限りこだわっている理由なのですよ。

投稿: ハルくん | 2009年3月29日 (日) 18時05分

夕方18時過ぎのNHK海外リポートでフィンランド特集をやっていました。ヘルシンキのテンペリアウキオ教会(岩を掘り抜いた建築)からの生中継で、現代フィンランドが抱える環境・雇用・若者の問題などを解説していました。

最後のほうで、学生オーケストラ(シベリウスアカデミーの音楽学生?)がフィンランディアを弾くシーンが出てきて、ある学生は「これを聴くと We can do ...! っていう気持ちになる」と答えていました。やはり彼らのsoul musicなのですね。

私が中2の頃、合唱コンクールで中3の課題曲がこの曲でした(無伴奏、知らない歌詞がついていた)。隣の教室から聞こえてくると、すごい美人の先輩が指揮をしていたせいもあって、私は気が気じゃありませんでした。が、翌年の中3の課題曲は別の歌でした。残念。

ところで、アレグロの主部に入る前のコンバスとティンパニーの5拍子も面白いですね。それから、TV版「宇宙戦艦ヤマト」のテーマソング「さらば地球よ」の前奏が、この曲のアレグロの主部に似ていると思ったことはありませんか?

投稿: かげっち | 2009年3月29日 (日) 22時34分

かげっちさん、

えっ、フィンランド特集ですか?気が付きませんでしたよ。フィンランドの学生オケの「フィンランディア」とは実に素適だなぁ。惜しいことをしてしまいました。
ところでその中にはかげっちさんお気に入りの先輩のような美人学生も居ましたか?フィン・ウラル民族にはあんまり日本人好みの美女って少ないような気がしますがどうでしようか?(笑)

主部の前の五拍子のところが、「さらば地球よ」!?今まで全く気が付きませんでしたが、そういわれてみれば確かに…。


投稿: ハルくん | 2009年3月29日 (日) 22時48分

5拍子のところではなく、その先のリピート記号以降の部分です。「オットトトトトト、トット」「コレーデイーノダサンセイハンタイ」「ヤッパパー!」の「ヤッパパー!」という部分だけの問題かもしれません(苦)←おわかりですか?

フィンランド人といっても、エストニア系、スウェーデン系などの血が入っているようで、いろんな風貌の方がいらっしゃるように思います。佳い音楽を奏しているときの女性はみんな魅力的だと思います、はい(笑)

投稿: かげっち | 2009年3月29日 (日) 23時17分

「ヤッパパー」ですか。「さらば地球よ」をしばらく聴いていないので前奏部分がよく思い出せないのですが、祖国を救う為に戦うイメージは万国共通なのかもしれません。

スウェーデンには美人が多いような気がします。それに対してフィン・ウラル系はパパ・ベルグルンドに代表されるような低めの鼻がやや上向きの顔のイメージなのですけど。
でも確かに何ごとにも熱中しているときの人の顔は素敵ですね。ということでお後がよろしいようで。(笑)

投稿: ハルくん | 2009年3月30日 (月) 00時10分

 えっ、フィンランド特集ですか? うわー、見たかったです。
 ......お邪魔してすみません。フィンランディア、たくさんCDがあるのですね。男声合唱入りが良いかなと品定めしています。コラールが良いのか....とこれもメモメモ。
 もしやこれも歌詞はフィン語でしょうか。ラテン語よりハードルが高いです。

投稿: すい | 2009年3月30日 (月) 21時31分

おおっ、すいさんいらっしゃい!
お邪魔だなんてとんでもないですよ。いつでも寄っていって下さいね。お茶は出せないけど。(笑)

記事にも書きましたけど、まずは男性合唱付きが必聴ですね。歌詞はもちろんフィン語です。僕らにとっちゃラテン語もフィン語も一緒ですけどね。(苦笑)

投稿: ハルくん | 2009年3月30日 (月) 23時18分

検索してみたら「北欧合唱曲シリーズ」(シンキョウ社)に訳詞つき楽譜があるらしいです。これらしき譜面が昔の中学の教科書に載っていたという証言も見つけました。

合唱団のCDで無伴奏の演奏も出ていますね、ヘルシンキ大学男声合唱団とか。

投稿: かげっち | 2009年3月31日 (火) 12時04分

かげっちさん、こんばんは。

中学校の教科書は名曲オンパレードでしたね。でも今でも不思議に思うのはグローフェの「グランドキャニオン」が有りました。あれって名曲ですかねぇ?

ヘルシンキ大学合唱団の「フィンランディア」ですか。本家ですねー。やはり「都の西北」なら早稲田大合唱団で聴きたいですし、シベリウスならヘルシンキ大ですよね。(笑)

投稿: ハルくん | 2009年3月31日 (火) 23時02分

ハルくんさま、こんにちは。

たぶん音楽の指導要領に「世界の音楽について理解する」みたいな指示があったので、歴史が浅いアメリカ音楽でクラシック風のものを選ぼうとして苦し紛れに(?)そうなったのでしょう。私ならキャンディードとか選びますけど。

昭和40~50年代の教科書は、まだ「社会主義音楽」が愛好されていた時代の匂いがしましたよ。「エルベ河」「道」「モスクワ郊外の夕べ」などソヴィエトの歌、イタリアパルチザンの歌、アルゼンチン社会主義政権の国歌なども記憶しています。

投稿: かげっち | 2009年4月 1日 (水) 12時38分

かげっちさん、こんにちは。

私はアメリカ音楽でしたら、ガーシュインがいいですね。「ポーギーとべス」とか。サマータイムなんて名曲が含まれていますし。「ラプソディー・イン・ブルー」あれも名曲だと思います。
あとはコープランドなんかも。「ビリー・ザ・キッド」「ロデオ」なんてタイトル名を見るだけで楽しくなってきます。って言うなら「グランドキャニオン」も変わらないかぁ。(苦笑)

投稿: ハルくん | 2009年4月 2日 (木) 22時40分

フィンランドに関しては悔しい思い出があります。
6年ほど前、私は本社勤務していましたが、人事異動で他の部署へ移ったのですが、その約1年後、私の後任の者がフィンランドへ出張したのであります。帰国後、感想を聞いてみたら「あんた、本当にフィンランドへ行ってきたの?」と言いたくなる状態で、あの時ぐらい自分の運の無さを怨んだことはありません。まさに「コノヤロ~」でした。

投稿: オペラファン | 2009年4月 4日 (土) 00時14分

オペラファンさん、こんばんは。

いやいや、それは本当に残念でしたね。5~6年前なら壮大な木造建築で有名なシベリウスホールも完成していましたので、そこでコンサートが聴けたかもしれませんよね。フィンランドの国立歌劇場なんかも滅多に観られる機会が無いですから、もしも観られたら最高でしたしね。
私も実はフィンランドへは行ったことが無いので、とても行きたく思っています。
でも、3年前に仕事でドイツへ行ったときにはバイエルン歌劇場で「神々の黄昏」を観る事が出来ましたので、そのときは非常に運が良かったです。

投稿: ハルくん | 2009年4月 4日 (土) 01時27分

 フィンランディアを聴きました! 図書館で借りてきたので演奏者の選択肢は無く、合唱無しのほうです。アシュケナージ指揮フィルハーモニック管弦楽団と書いてありますが、どこの楽団なのでしょう....??

 まず、こんなに短い曲だったのですね。交響詩という言葉から大曲をイメージしていました。10分に満たないなんてびっくりです。
 出だしから何かこう....激しい身振りで訴えかけてくるような曲でした。それから中盤過ぎのメロディに聴き覚えがあったのです。あ、知ってる知ってる! と夜中に大興奮。テレビでフィンランドが取り上げられた時にBGMになっていたのかなと思いました。

 聴きながら「フィンランド人は物静かだが、イベントがあると国歌とフィンランディアを大声で歌う」とどこかで読んだのを思い出しました。次は合唱付きを聴きたいです。

投稿: すい | 2009年4月 6日 (月) 19時22分

すいさん、フィンランディア聴かれたのですね。ねっ、このメロディご存知でしょう。なんといっても第二の国家ですから。合唱つきも是非お聴きになって下さい。特にフィンランドの男性合唱団のものでね!

フィルハーモニア管弦楽団はイギリスの楽団ですよ。戦後にEMIがレコーディングの為に優秀な奏者を集めて結成したのでイギリスでは1、2を争う名オケなのですよ。

投稿: ハルくん | 2009年4月 7日 (火) 00時34分

古い記事にコメントですが、今夏はフィンランディアの合奏版を演奏することになりました。プログラムは、前半がフィンランディアと「ドナウ」の合唱入りバージョン(日本語かもしれませんが)、後半がシベリウスの2番です。お盆休みに故郷にOBが集まっで、練習2日+本番で挑む予定です。詳しくは改めて報告します。

投稿: かげっち | 2010年8月 2日 (月) 12時59分

かげっちさん、

1年以上も前の記事にありがとうございます。
「フィンランディア」も合唱入りですか?いいですね~。
演奏会は北欧音楽中心プロですね。ご故郷というと北海道ですね?さすがに本場ものだけあって練習も手慣れたものですねー。
でも本番は頑張ってくださいね。詳しいご報告を楽しみにしています!

投稿: ハルくん | 2010年8月 3日 (火) 00時22分

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